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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻11号

2022年10月発行

雑誌目次

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

ページ範囲:P.901 - P.901

—ここが変わった!—頭頸部癌診療ガイドライン改訂のポイントと2022年版の特徴

著者: 本間明宏

ページ範囲:P.902 - P.904

POINT

●診療ガイドラインの役割は,複数の治療法や検査法のエビデンスをまとめ,患者と医療者の協働の意思決定を支援するために最適と考えられる方法を「推奨」という形で示すことである。

●最新のエビデンスを含め検討し,現時点での標準的な検査・治療の考え方を示している。

●クリニカルクエスチョン(CQ)の設定についてはできるだけ時代の進歩を反映させ,新しい検査・治療を取り上げた。解説についても細部の文言まで議論し,修正を加えた。

《総論》

放射線治療

著者: 全田貞幹

ページ範囲:P.905 - P.907

POINT

●2018年と比較して,放射線治療の頭頸部癌診療における立ち位置はほぼ変わっていない。

●記載の変更は,主に機器の進歩と,保険承認など本邦における施設事情を加味した部分である。

薬物療法

著者: 本間義崇

ページ範囲:P.908 - P.912

POINT

●頭頸部扁平上皮癌では,①術後再発高リスク例に対する化学放射線療法における併用レジメン,②局所進行例に対する導入化学療法,③再発・転移例に対する免疫チェックポイント阻害薬を用いた緩和的化学療法,に焦点を絞ったクリニカルクエスチョン(CQ)が設定された。

●免疫チェックポイント阻害薬については,「プラチナ製剤感受性」と「プラチナ製剤抵抗性」の定義を明文化し,それぞれを対象としたCQが設定・解説されている。

●甲状腺癌については,各組織型において推奨されるマルチターゲットキナーゼ阻害薬について最新の知見も含めて解説を行い,近年保険適用となった「がん遺伝子パネル検査」に基づく新たな治療選択肢についても言及されている。

●唾液腺癌についても,HER2陽性例に対して近年適応拡大となったトラスツズマブのエビデンスや,がん遺伝子パネル検査を行うべき組織型について言及がなされている。

《各論》

口腔癌

著者: 花井信広

ページ範囲:P.913 - P.916

POINT

●UICC-TNM分類の正誤表で口腔癌T4aの定義に関する訂正が行われた。

●毎週投与の術後化学放射線療法の非劣性が示され,口腔癌にも推奨される。

●Stage Ⅰ/Ⅱ舌癌に対する予防的頸部郭清術の意義について,臨床試験が進行中である。

●舌・口腔癌のN1症例に対する肩甲舌骨筋上頸部郭清は明確な推奨ができない。

上顎洞癌

著者: 小川武則

ページ範囲:P.917 - P.920

POINT

●上顎洞癌の約80%は扁平上皮癌である。

●頸部リンパ節転移頻度は,24.6%と低い。

●手術,放射線治療,化学療法を組み合わせた集学的治療を行う。

●視力温存のために,強度変調放射線治療(IMRT),粒子線治療を弱く推奨する。

上咽頭癌

著者: 安田耕一

ページ範囲:P.922 - P.926

POINT

●強度変調放射線治療(IMRT)は「強く推奨する」になった。

●ⅢおよびⅣA期において,同時併用化学放射線療法(CCRT)は「推奨する」から「強く推奨する」になった。

●ⅢおよびⅣA期において,CCRTへの導入化学療法(ICT)の追加は「慎重な判断を要する」から「弱く推奨する」になった。

●ⅢおよびⅣA期のアルゴリズムにおいて,上からICT+CCRT,CCRT+補助化学療法,CCRTの順となった。

中咽頭癌

著者: 安藤瑞生

ページ範囲:P.928 - P.931

POINT

●中咽頭癌の病期診断において,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)関連の有無を判断するp16免疫染色は必須の検査である。

●HPV関連中咽頭癌はHPV非関連癌に比べて予後が良好であるが,HPV関連の有無によって標準治療を変更するエビデンスはいまだ確立していない。

●現時点では,HPV関連中咽頭癌に対する低侵襲治療は,あくまで臨床試験において実施することが求められる。

●早期中咽頭癌に対して経口的切除術の有用性が報告されているが,放射線治療あるいは化学放射線療法との比較・検討データが十分ではない。

下咽頭癌

著者: 篠﨑剛

ページ範囲:P.932 - P.935

POINT

●前版と比較して病期分類や治療アルゴリズムに変更はない。

●経口的切除についてクリニカルクエスチョン(CQ)を追加した。現在発展中の治療であり,推奨度は「弱く推奨」となっている。

喉頭癌

著者: 鈴木基之

ページ範囲:P.936 - P.939

POINT

●前版と比較して病期分類や治療アルゴリズムに変更はない。

●T2喉頭癌に対する化学放射線療法の適応について,クリニカルクエスチョン(CQ)を追加した。推奨度は「弱く推奨」となっている。

甲状腺癌

著者: 四宮弘隆

ページ範囲:P.940 - P.943

POINT

●放射性ヨウ素内用療法(RAI)の3種類の使用法について明確に区別して記載した。

●治療法の選択にリスク分類が重要となる。

●分子標的治療における推奨を改訂し,新たなマルチターゲットキナーゼ阻害薬(mTKI)や,NTRKRETBRAFを標的とした分子標的治療について追加した。

●TSH抑制療法,および遺伝子パネルについてのクリニカルクエスチョンが新たに追加された。

唾液腺癌

著者: 加納里志

ページ範囲:P.944 - P.947

POINT

●術前および術中の病理診断について,システマティックレビューに基づいて解説されている。

●唾液腺癌に対する術後放射線治療の有効性,適応について解説されている。

●組織型特異的な分子メカニズムが解明されてきている。

●HER2およびNTRK融合遺伝子を標的とした分子標的薬が保険承認された。

原発不明癌

著者: 安藤瑞生

ページ範囲:P.948 - P.951

POINT

●本分類は,頸部リンパ節から扁平上皮癌(上咽頭癌を含む)が確認されるが,原発巣が不明なものに適用する。

●HPV/p16陽性あるいはEBV陽性であった場合,中咽頭T0や上咽頭T0ではなく,あくまで原発不明T0と分類される。

●診断には,各種検査と細胞診,組織診を活用した綿密なwork-upが必要である。

●原発不明癌の治療に関する前向き比較試験はまだ存在しない。

Review Article

めまい診療の最近の進歩と標準化

著者: 武田憲昭

ページ範囲:P.952 - P.961

Summary

●メニエール病,遅発性内リンパ水腫,良性発作性頭位めまい症(BPPV),前庭神経炎,両側前庭機能障害の診断基準が改定された。持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD),前庭性片頭痛,前庭性発作症の診断基準が新しく提案された。メニエール病,遅発性内リンパ水腫,BPPV,前庭神経炎の診療ガイドラインが改訂された。

●赤外線CCDカメラを用いた眼振検査により,眼振の検出率が飛躍的に向上した。新しい平衡機能検査であるビデオヘッドインパルス検査と前庭誘発筋電位により,3つの半規管と2つの耳石器の機能を分離して評価できるようになった。内リンパ水腫画像検査により,内リンパ水腫が内耳造影MRIで評価できるようになった。

●BPPVに対する耳石置換法が普及し,メニエール病に対する中耳加圧治療が保険収載された。急性期・亜急性期のめまいの診療が標準化され,慢性期の前庭リハビリテーションも標準化された。デバイスを用いた新しい前庭リハビリテーションが開発中である。

原著

鼻中隔に発生した鼻腔神経線維腫の1例

著者: 神山和久 ,   密田亜希 ,   大平真也 ,   山口裕聖 ,   綱由香里 ,   中村允人 ,   中島一鴻 ,   栃木直文 ,   和田弘太

ページ範囲:P.963 - P.967

はじめに

 耳鼻咽喉科領域における神経原性腫瘍のうち鼻・副鼻腔に発生するものは比較的稀であり,神経線維腫の発生は非常に稀と考えられている1)

 今回われわれは,鼻閉・後鼻漏を主訴に受診し,術前に神経線維腫の診断となり,手術加療を行い,良好な経過をたどった孤立性神経線維腫の1例を経験したため報告する。

骨腫を伴う前頭洞炎から眼窩および頭蓋内合併症をきたした1症例

著者: 長野源太郎 ,   安原一夫 ,   向井俊之 ,   甲田研人 ,   菅澤駿一

ページ範囲:P.969 - P.973

はじめに

 急性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎の急性増悪から眼窩内,頭蓋内へ炎症が波及し,種々の重篤な合併症をきたすことが知られている。今回われわれは,骨腫を伴う前頭洞炎の急性増悪により眼窩内合併症をきたし,その後に硬膜外膿瘍に至った1例を経験したので報告する。

Sjögren症候群の治療経過中にMALTリンパ腫を発症した1例

著者: 仲吉博紀 ,   須藤敏 ,   島袋拓也

ページ範囲:P.974 - P.978

はじめに

 Sjögren症候群は,主に唾液腺と涙腺へのリンパ球浸潤と破壊を特徴とし,口腔内乾燥や眼球乾燥をきたす症候群であり,耳鼻咽喉科にとって比較的馴染み深い自己免疫疾患である。Sjögren症候群の患者は,非ホジキンリンパ腫,特に粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)リンパ腫の発症リスクが44倍高いといわれている1)。今回,Sjögren症候群の患者の治療経過中に,耳下腺に発生したMALTリンパ腫を経験した。持続する耳下腺腫脹という局所所見と,特徴的なMRI検査の所見からMALTリンパ腫を疑い,病理組織検査により診断できた。私達耳鼻咽喉科医は留意すべきと考えられるので報告する。

咽喉頭浮腫を合併したムンプス感染症の1例

著者: 内藤智之 ,   牧原靖一郎 ,   津村宗近 ,   松本淳也 ,   假谷伸 ,   安藤瑞生

ページ範囲:P.979 - P.982

はじめに

 流行性耳下腺炎はムンプスウイルスによる感染症であり,耳下腺の腫脹・疼痛や発熱を主症状とする。主に小児期に好発するが,成人発症も少なからず存在する。しばしば感音難聴や髄膜炎,睾丸炎などの合併症を生じるが,咽喉頭浮腫は比較的稀である。過去にも報告例があり1〜20),特に顎下部の腫脹を伴う場合では注意が必要とされている。今回,ムンプスウイルス感染に伴う喉頭浮腫と呼吸困難をきたした症例を経験したので,若干の文献的考察を含め報告する。

45年前に留置したシリコンプレートによる眼窩内巨大囊胞例

著者: 橘智靖 ,   春名威範 ,   最所裕司 ,   小松原靖聡 ,   黒田一範 ,   假谷彰文 ,   直井勇人 ,   安藤瑞生

ページ範囲:P.983 - P.986

はじめに

 眼窩外傷に対する手術の際,眼窩壁の補強のためにシリコンプレートが用いられることがある。異物留置後の創部感染の報告はこれまでにも散見されるが,シリコンプレートによる囊胞形成の報告は比較的稀である1〜8)。今回われわれは,45年前に留置したシリコンプレートが原因と考えられた眼窩巨大囊胞に対して,経鼻内視鏡的に開窓およびプレートの摘出を行い良好な経過が得られた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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目次

ページ範囲:P.897 - P.897

欧文目次

ページ範囲:P.899 - P.899

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.988 - P.988

あとがき

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.992 - P.992

 皆さま,今年の夏はどのように過ごされたでしょうか? 夏休みは秋の学会シーズン前の貴重な充電期間になりますが,今年は科研費の申請締め切りが例年より早まっていて,科研費を獲得しようという先生方にとっては,その準備に追われる期間にもなってしまったのでは,と思います。よい仕事を成すには,一定の休息も必要ですので,ぜひオン・オフのメリハリのある時間をお過ごしください。

 また,この夏は何といっても新型コロナウイルス感染症の第7波が予想外でした。私の勤める病院も,いままでにない規模で医療者の感染が相次ぎ,小児病棟が一時入院不可となるなど,大きな影響がありました。一方,子どもたちの活動をみますと,過去2年はさまざまに制限があった課外活動もかなりの部分が再開されている印象で,社会全体では確実に多くの活動が再開されているようです。われわれ医療者は,新型コロナウイルス感染拡大の波の影響を正面から受けてしまいますが,さまざまに工夫しながら活動を再開していきたいものです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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