耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻11号

2022年10月発行

原著

45年前に留置したシリコンプレートによる眼窩内巨大囊胞例

著者： 橘智靖¹ 春名威範² 最所裕司³ 小松原靖聡¹ 黒田一範¹ 假谷彰文¹ 直井勇人⁴ 安藤瑞生⁴

所属機関： ¹姫路赤十字病院耳鼻咽喉科 ²姫路聖マリア病院耳鼻咽喉科 ³姫路赤十字病院形成外科 ⁴岡山大学学術研究院医歯薬学域耳鼻咽喉・頭頸部外科学

ページ範囲：P.983 - P.986

はじめに

　眼窩外傷に対する手術の際，眼窩壁の補強のためにシリコンプレートが用いられることがある。異物留置後の創部感染の報告はこれまでにも散見されるが，シリコンプレートによる囊胞形成の報告は比較的稀である^1〜8）。今回われわれは，45年前に留置したシリコンプレートが原因と考えられた眼窩巨大囊胞に対して，経鼻内視鏡的に開窓およびプレートの摘出を行い良好な経過が得られた症例を経験したので，若干の文献的考察を加えて報告する。

参考文献

1）長内 一・他：シリコーン製プレートを用いた眼窩ブローアウト骨折手術後に生じた囊胞の2例．あたらしい眼科22：861-864，2005

2）牧 昌利・他：眼窩底骨折に対するシリコンプレート再建術後12年で発生した眼窩内粘液囊腫の1例とその再発—粘液囊腫の取り扱いに関する考察．日頭顎顔会誌36：129-135，2020

3）福屋安彦・他：術後長期経過中に囊腫を形成した眼窩床骨折の1例．形成外科27：341-346，1984

4）菱山潤二・他：術後18年を経て巨大扁平上皮性囊胞を生じたシリコンシートによる眼窩底骨折再建例の治療経験．日頭顎顔会誌32：20-26，2016

5）東野哲也・他：Blowout fracture整復手術後の晩発性合併症としての眼窩偽腫瘍形成症例．耳鼻咽喉56：225-229，1984

6）小野倫嗣・他：眼窩底骨折手術に使用したシリコンプレートが原因で囊胞形成を認めた1例．耳鼻臨床110：175-179，2017

7）都甲武史・他：眼窩骨折手術に使用したシリコンシートが原因で眼球突出が生じた1例．形成外科45：967-974，2002

8）本田隆司・他：術後長期経過を経て合併症をきたした眼窩床骨折例の経験．日頭顎顔会誌9：23-29，1993