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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻13号

2022年12月発行

雑誌目次

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

ページ範囲:P.1093 - P.1093

《耳科領域》

外リンパ瘻

著者: 岩崎聡 ,   岡晋一郎

ページ範囲:P.1094 - P.1098

Point

●新しい診断基準に外リンパ特異的蛋白(CTP)検査の項目が追加された。

●2022(令和4)年7月1日よりCTP検査が保険収載されたため,一般の施設でも施行可能になった。

●疑わしい症例で保存的治療により改善しないものは,早期の手術を考慮すべきである。

●手術方法については今後のエビデンスの蓄積が望まれる。

顔面神経麻痺

著者: 高橋昌寛

ページ範囲:P.1099 - P.1104

Point

●緊急手術の適応となる顔面神経麻痺の要因には,外傷性,医原性,耳炎性,腫瘍性が挙げられる。

●治療方針を決めるうえで,直達的な神経損傷か,循環不全などによる神経損傷かを判断することは重要である。

●直達的かつ持続的神経損傷がある症例に対する手術は,より早期(発症2週間以内)に行うことが望ましい。

乳様突起炎・耳性頭蓋内合併症

著者: 高橋邦行

ページ範囲:P.1105 - P.1110

Point

●急性乳様突起炎の所見,進展形式は,年齢,既往などにより特徴があることを知っておく。

●急性乳様突起炎を疑った場合,CTでの詳細な観察が大切である。反対側も参考にし,外側進展か内側進展かを判断する。

●内側進展で頭蓋内へ炎症の波及が懸念される場合は緊急手術の適応である。

●S状静脈洞の灌流障害は神経学的後遺症を残すことがあるため,S状静脈洞には特に注目する。

《鼻科領域》

鼻出血

著者: 赤澤仁司

ページ範囲:P.1112 - P.1115

Point

●止血の基本は,出血点を見つけて,その出血点を焼灼することである。

●出血点が見つからない場合,まずはガーゼパッキングで止血を図る。

●ガーゼパッキングで止血できない場合に,手術加療を検討する。

●止血術の術式は想定される出血部位に応じて選択する。

副鼻腔炎の眼窩内合併症

著者: 細川悠

ページ範囲:P.1116 - P.1120

Point

●眼窩は副鼻腔の炎症が波及しやすい構造である。

●視力障害は不可逆になりやすく,緊急手術を検討する徴候である。

●早期の治療介入のためには他科との連携,知識啓蒙が重要である。

●緊急手術は内視鏡手術単独,外切開手術併用の選択肢がある。

《咽喉頭・頸部領域》

扁桃術後出血

著者: 古家裕巳 ,   立川隆治

ページ範囲:P.1121 - P.1125

Point

●当科で経験した扁桃摘出術後出血の代表的な症例を提示し,その際の対応について述べた。

●出血時の対応で重要なのは全身麻酔への移行タイミングである。

●全身麻酔での止血の際には,挿管方法について理解し,緊急時の外科的気道確保について必ず準備をしておく必要がある。

●止血方法について結紮止血・凝固止血の違いを理解し,止血困難な場合は外頸動脈結紮や選択的動脈塞栓術を検討する。

●止血術後にも頸部血管への炎症波及や仮性動脈瘤の形成などで再出血の可能性はあり,CTなどの画像検査を検討する必要がある。

気道閉塞

著者: 齋藤康一郎 ,   雪野広樹

ページ範囲:P.1126 - P.1136

Point

●気道閉塞の原因は多彩である。

●慎重な問診と,内視鏡や画像検査を用いた病態診断を可及的速やかに行う。

●疾患・病態によっては,経時的な気道の観察が必要である。

●必要と判断した場合,適切な気道確保手技を迅速に行う。

頸部の急性感染症(頸部膿瘍)

著者: 山本佳史

ページ範囲:P.1138 - P.1141

Point

●頸部の急性感染症症例に気道狭窄所見が確認されれば,呼吸困難感が出現する前に気道確保すべきである。

●気道確保の方法として,多くの場合は経口挿管ではなく外科的気道確保(気管切開,輪状甲状間膜切開)が勧められる。

●頸部膿瘍に危険因子を伴っていれば,ためらわずに切開排膿すべきである。危険因子がなければ,穿刺排膿も選択肢に入る。

●膿瘍腔は分葉していることが多いので,排膿処置時は膿瘍周囲の疎な結合織を用手的に十分穿破する。

頸部術後出血

著者: 小村豪

ページ範囲:P.1142 - P.1145

Point

●術後出血をゼロにすることは不可能であるが,その確率を極力ゼロに近づけるための努力を怠ってはならない。

●術中になるべく出血させないことが最も肝要である。止血は後回しにせず,確実に止血してから次の操作に移るのが望ましい。

●抜管時には頸部腫脹,ドレーン排液量の急速増加,創縁からのoozingがないか確認する。

●血腫形成の可能性を少しでも疑ったら必ず開創する。

《その他》

顔面外傷

著者: 高林宏輔

ページ範囲:P.1146 - P.1150

Point

●顔面外傷で緊急で手術をすべき病態は,線状型眼窩吹き抜け骨折に認められる。

●小児の眼窩吹き抜け骨折に緊急で手術すべき症例が潜んでいることが多い。

●顔面の外傷性変化は軽度で,眼窩の紫斑や浮腫を認める症例は稀である。

●computed tomographyでも骨の偏移は軽度で,吹き抜けた眼窩内容物も少量であることが多く,軽症に見える。

●可及的速やかな手術による整復が,後遺障害の回避には重要である。

異物

著者: 真栄田裕行

ページ範囲:P.1151 - P.1156

Point

●気道異物は超緊急的処置が必要となることが多い。なかでも気管閉塞の可能性が高い豆類や飴,角のない丸い異物は危険性が高い。

●声門上を占拠する大きな食塊は経口的・用指的な摘出を試みる。

●気道異物以外は待機的な扱いでよいが,出血を伴うものや激しい疼痛を訴える例では準緊急的に処置せざるをえない場合もある。

●幼小児や高齢者は緊急度が高くなる。

●ボタン・コイン型アルカリ電池は腐食作用があるため早急に摘出する。

原著

外耳道耳垢腺腫の1例

著者: 石垣賢人 ,   白倉真之 ,   池田怜吉

ページ範囲:P.1157 - P.1161

はじめに

 外耳道に発生する腫瘍は稀であり,外来で遭遇する頻度は総外来患者の0.05%程度といわれている1)。そのなかでも耳垢腺腫は,外耳道の耳垢腺から発生する外耳道に特異的な良性腫瘍である。耳垢腺由来の腫瘍は良性・悪性を問わず,肉眼所見が類似しており,組織学的な多様性が高いことから,組織型や良性・悪性の鑑別を含めた正確な診断が困難であることが多いとされている2)

 今回われわれは,耳垢腺腫と診断された1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

咽喉頭サルコイドーシスの1例

著者: 狩野拓也 ,   高橋宏尚 ,   兵頭純 ,   暁清文 ,   勢井洋史

ページ範囲:P.1162 - P.1168

はじめに

 サルコイドーシスは肺門縦隔リンパ節,肺,眼,皮膚,神経,筋,心臓,腎臓,骨,消化器など全身のさまざまな臓器に非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫を形成する原因不明の多臓器疾患である。発症時の臨床症状は多彩で,その後の臨床経過も多様である1)。病変が咽喉頭に生じたものは咽喉頭サルコイドーシスと呼ばれ,特徴的臨床所見に乏しいことから,多くは病理組織学的検査によって診断される。

 今回,急性口蓋扁桃炎,急性喉頭蓋炎として抗菌薬やステロイドによる治療を行ったが改善せず,口蓋扁桃の生検を施行し,最終的に咽喉頭サルコイドーシスと診断した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

舌根部に発生した骨性分離腫の2例

著者: 小池智 ,   岩元秀輔 ,   木村隆幸 ,   山本雅司 ,   佐藤満雄 ,   北野睦三 ,   大月直樹 ,   安松隆治

ページ範囲:P.1169 - P.1174

はじめに

 舌根部に生じる骨性病変は比較的稀である。舌に発生した骨または軟骨性病変は,1913年にMonserrat1)がOsteotomaとして報告したのが最初とされる。その後,1971年にKrollsら2)が,本病変を骨性分離腫(osseous choristoma)と称することを提唱した。

 分離腫とは,「胎生期における器官・組織の発生中に,組織の一部が離断して異常な部位に出現したもので腫瘍状を呈するもの」と定義され3),発育過程に発生した結節性の異所性組織と考えられている。口腔・咽頭内軟組織に発生し硬組織を形成する分離腫は,混在する組織により骨性分離腫,軟骨性分離腫および骨軟骨性分離腫に分類されており,いずれも稀である。分離腫は元の組織や臓器から離れた場所で原始細胞が腫瘍状に増殖したものとみなし,骨腫や過誤腫,二次的石灰化と区別すべきとされている2)

 今回われわれは,舌根部に発症した骨性分離腫の2例を経験したので,その概要を,文献的考察を加えて報告する。

書評

トラブルを未然に防ぐカルテの書き方

著者: 松村由美

ページ範囲:P.1175 - P.1175

 本書は,𠮷村長久氏と山崎祥光氏の共同編集によるものです。𠮷村氏は,京大眼科教授から北野病院病院長になられました。山崎氏は,京大医学部卒業後,同大学での研修医を経て,同大学法科大学院で学び,現在は弁護士として活躍されています。𠮷村氏は管理者として,山崎氏は弁護士として,カルテ記載の重要性を痛感され,本書を企画されたのだろうと思います。私も,医療安全管理者として,カルテ記載がいかに重要かを知っています。重要性を認識している3名に共通することは,「痛い目」を経験しているということかもしれません。

 病院管理者,医療側弁護士,医療安全管理者は,あらゆるトラブルを経験します。私も,臨床医のまま一生を終えていたら経験しなかったようなことを経験してきました。その経験の中で,ぜひ,スタッフに伝えたいと思ったことが「カルテの書き方」です。今まで,私がこの十数年,経験的に学んだことが,本書では,コンパクトでありつつ,豊富な根拠を示した上で記載されています。本書はどの部分から読んでも,一つひとつの話題や内容が完結しているために,カルテ記載について気になったときに読むということもできます。また,時間のあるときにパラパラとめくって,斜め読みするだけでも,十分勉強になります。医局に数冊置いておくと有用であること間違いなしです。

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目次

ページ範囲:P.1089 - P.1089

欧文目次

ページ範囲:P.1091 - P.1091

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1176 - P.1176

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.1180 - P.1180

 11月5日(土)・6日(日)の2日間,第36回日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 秋季大会が大阪国際会議場で開催されました。お陰様で参加登録は3600人に上り,1200人以上の会員が会場にお越しになりました。皆さん,練りに練られたプログラムと,ミルクボーイと笑い飯の漫才を満喫してくださったようで,広報委員長として嬉しい限りです。残念ながらM-1チャンピオンの漫才は現地限定ですが,他のコンテンツはこれからオンデマンド配信が始まります。参加できなかった方,お好みの講習を見逃した方は,ぜひ,オンデマンドでご視聴ください。今回の講習会では,新たな試みとして領域講習を「勤務医向け」「開業医向け」「勤務医・開業医向け」の3種類に分けています。例えば神戸大の四宮弘隆先生が担当した「勤務医・開業医向け」の領域講習は,勤務医・開業医のどちらにも役立つように,「頭頸部がんを見逃さないコツ」を中心とした講演内容となっています。受講される際にぜひ,参考にしてください。

 ところで,手術を成功させるには技術はもちろん必要ですが,一番大切なことは適応とタイミングですね。どんなに良い腕をもっていても,適応を誤っては良い結果は得られませんし,緊急手術は機を逸すると取り返しがつかないことになりかねません。ということで,今月の特集は「見逃すな!緊急手術症例」と題して,耳科領域では外リンパ瘻や顔面神経麻痺,鼻科領域では鼻出血や眼窩合併症,頭頸部領域では術後出血や気道異物など代表的な緊急手術を取り上げ,エキスパートの皆さんに手術の適応とタイミングを中心に解説いただくことにいたしました。緊急手術が必要な患者さんは,突然に訪れます。緊急手術を担当する勤務医の皆さんは勿論のこと,開業医の先生方も手術が必要な患者さんを見逃さないようにぜひ,ご通読いただき,いざという時に備えてください。

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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