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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻3号

2022年03月発行

雑誌目次

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

ページ範囲:P.213 - P.213

《総論》

耳科手術指導医をめざそう—解剖と手技はスキルアップの両輪である

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.214 - P.216

POINT

●耳科手術指導医制度は2020年より日本耳科学会内に創設された制度であり,中耳・側頭骨手術に対する技術認定制度である。

●中耳手術が減少するなか,指導医認定取得への道のりは険しくなっている。

●スキルアップに向けたトレーニングが重要であり,特にoff the jobトレーニングは充実してきている。

●中耳手術に習熟した耳鼻咽喉科医が一定数維持されることは,耳科学の発展にもつながり,社会全体へ資することになる。

《Off the jobトレーニング》

ドリル・顕微鏡操作のコツとトレーニング

著者: 湯浅有

ページ範囲:P.217 - P.221

POINT

●顕微鏡とドリルは耳科手術において重要な位置を占める。

●これらの機器の構造と特性の理解が安全で効率的な手術の条件となる。

●顕微鏡に関してはアームの挙動,および焦点・倍率の適切な調整が重要である。

●ドリルに関しては適切なバーの選択が重要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年3月)。

中耳・側頭骨3Dレイヤー解剖教材を用いたトレーニング

著者: 平賀良彦

ページ範囲:P.222 - P.227

POINT

●中耳・側頭骨3Dレイヤー解剖教材による手術トレーニングについて解説した。

●実際の手術に沿った25段階のレイヤー解剖をさまざまな方向から3Dで観察できる。

●キーとなる方向を探りながらレイヤーを進めていくことで,手術解剖を効率的に学習することができる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年3月)。

側頭骨3Dモデルを用いた実践的手術トレーニング

著者: 高橋邦行

ページ範囲:P.228 - P.235

POINT

●側頭骨手術トレーニングにおいて,3Dモデルは倫理面の問題などがなく,非常に有用なツールである。特に石膏を原料とした3Dモデルは実際の手術にかなり近い感触を得られる。

●3Dデータがあればいくつも複製が可能であるが,現時点では3Dプリンターは高価であり,モデルの作成には造形後の余剰粉末の除去,二次硬化などのポストプロセスに手間がかかる。

●作成過程での限界があり,側頭骨3Dモデルでは乳突蜂巣のような細かな含気腔,アブミ骨のような微細な構造を忠実に再現することは難しい。

●高難度症例など,実際の症例に合わせたモデルの作成ができ,手術シミュレーションにも適している。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年3月)。

側頭骨カダバーダイセクションによる実践的手術トレーニング

著者: 平海晴一

ページ範囲:P.236 - P.240

POINT

●側頭骨カダバーダイセクションでは目標をもって1つ1つの手技を進めていくことが重要である。

●骨削開に関連した道具の使い方に習熟するよう心がける。

●実習マニュアルに加え,解剖アトラスや側頭骨病理アトラス,手術書も併用する。

●解剖の理解とアプローチ法のトレーニングは両立しないことがあり,いずれを優先して行うかを決めておく。

《On the jobトレーニング》

鼓膜操作のポイント

著者: 田中康広

ページ範囲:P.241 - P.245

POINT

●鼓膜操作に不慣れなうちは,鼓膜の剝離が不十分な段階でローゼン探針を使用しない。

●慢性穿孔性中耳炎に対する鼓膜操作では,残存鼓膜をなるべく温存するように留意する。

●鼓膜の硬化病変に対しては,術者の技量に合わせて処理方法を検討する。

●癒着性中耳炎や緊張部型真珠腫では,鼓室に癒着した鼓膜を丁寧に剝離し,遺残のないよう注意する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年3月)。

安全かつ失敗しない耳小骨操作への心構え

著者: 髙田雄介

ページ範囲:P.246 - P.249

POINT

●操作には最大限の注意を払い,最小限の力を込める。

●キヌタ骨は迷うなら外す。

●アブミ骨には全方向から歩み寄る。

●アブミ骨底板こそ確実に同定する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年3月)。

内耳窓・半規管操作のポイント

著者: 山内大輔

ページ範囲:P.250 - P.256

POINT

●内耳窓・半規管の操作では,内耳の解剖生理をよく理解して常にイメージしながら行うことが大切である。

●できるだけ最後に操作し,直接外リンパの吸引操作をしないよう,慌てず丁寧に行う。

●内視鏡をうまく活用し,できるだけよい視野で施行する。

●underwaterで行い,内耳機能障害を軽減できるよう工夫する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年3月)。

《副損傷の回避,起きてしまったときの対処方法》

顔面神経損傷

著者: 山田啓之

ページ範囲:P.258 - P.263

POINT

●顔面神経の副損傷を回避するためには,①解剖を熟知し,②安全な術野を作り,③神経を同定し,④神経障害が生じない病変清掃を行うこと,が求められる。

●安全な術野を作るためには術前に患者の頭位を確認し,広くて明るい術野展開を心がける。また電気刺激によるモニター監視装置を必要に応じて用いる。

●顔面神経の同定はサジ状突起,外側半規管,アブミ骨,キヌタ骨短脚,顎二腹筋稜をランドマークとする。顔面神経管を削開して骨壁を薄くすると,走行を確実に同定できる。

●病変の清掃は鈍的に行うだけではなく,状況に応じて鋭的に行う。また,側頭骨CT検査で異常がない症例でも骨欠損の可能性を常に念頭に置き,病変を清掃する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年3月)。

S状静脈洞・硬膜損傷

著者: 伊藤真人

ページ範囲:P.265 - P.270

POINT

●術前のCT(MRI)によるリスク評価が最も大切である。

●硬膜近傍でカッティングバーを使用しない。

●bone workを始めたら,電気メスは使用禁忌である。

●最初の硬膜欠損部位の固定修復が最も重要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2025年3月)。

原著

上顎洞に発生した神経内分泌癌の1例

著者: 喜山敏志 ,   永野広海 ,   馬越瑞夫 ,   大堀純一郎 ,   山下勝

ページ範囲:P.271 - P.275

はじめに

 神経内分泌癌の多くは,内分泌臓器,消化器系臓器,乳腺,泌尿生殖器などから発生する稀な腫瘍である。鼻副鼻腔領域からの報告はさらに少なく,その予後は不良である。

 今回われわれは,上顎洞に発症した神経内分泌癌に対して化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy:CCRT)を施行した症例を経験したので,文献的考察を踏まえて報告する。

鼓膜原発と考えられた中耳カルチノイドの1例

著者: 山本陽平 ,   菅原一真 ,   橋本誠 ,   山下裕司

ページ範囲:P.276 - P.281

はじめに

 神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor:NET)は,神経内分泌細胞に由来する腫瘍で,膵臓のほか下垂体,甲状腺,上皮小体,副腎,消化管,胸腺,肺など,内分泌臓器のみではなく多様な臓器に生じる。これらの腫瘍は当初カルチノイドと名づけられ良性腫瘍と考えられてきたが,その後,転移をきたす症例も多数報告され,現在では悪性腫瘍と認識されている1)。今回,われわれは鼓膜から発生したと思われるNET症例を経験したため報告する。

両側高度感音難聴・平衡機能障害をきたした髄膜癌腫症の1例

著者: 木田渉 ,   中屋宗雄 ,   稲吉康比呂 ,   伊東明子 ,   熊田純子

ページ範囲:P.283 - P.286

はじめに

 髄膜癌腫症は,悪性腫瘍が播種性に髄膜に移行・増殖する病態で,多彩な神経症状を呈することが知られている。また進行が早く,予後はきわめて不良である。髄膜癌腫症では種々の脳神経麻痺が出現するが,両側の聴覚障害をきたすことは比較的稀である。今回われわれは,髄膜癌腫症により比較的早い経過で両側感音難聴・平衡機能障害が進行した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

中咽頭前壁粘表皮癌・甲状腺癌同時重複の1例

著者: 栢野香里 ,   髙畠伶奈 ,   吉澤宏一 ,   新井啓仁

ページ範囲:P.287 - P.293

はじめに

 中咽頭前壁は嚥下・音声機能に密接に関わる部位であり,癌の発症時には根治性と機能温存のため,治療法の選択に苦慮することがある。また,この部位での粘表皮癌の発症は稀で,同時重複癌の本邦報告例はこれまでに認めていない。今回,中咽頭前壁粘表皮癌と甲状腺癌の同時重複例を経験したため,診断と治療法について,考察を加えて報告する。

耳下腺内顔面神経鞘腫の1例

著者: 平野寛人 ,   林崇弘 ,   加藤光彦 ,   三輪好 ,   井上準 ,   松村聡子 ,   蝦原康宏 ,   中平光彦 ,   菅澤正

ページ範囲:P.295 - P.299

はじめに

 耳下腺腫瘍は日常診療でよく遭遇する疾患であり,多くの施設で手術が行われている。耳下腺良性腫瘍の多くはワルチン腫瘍または多形腺腫であり,顔面神経鞘腫は全体の0〜2.4%1)と報告される稀な疾患である。今回われわれは,細胞診で多形腺腫疑いであったが,手術中に下行枝由来の顔面神経鞘腫と判明した耳下腺内顔面神経鞘腫の1例を経験したので報告する。

書評

臨床研究21の勘違い

著者: 菊地臣一

ページ範囲:P.264 - P.264

 昔日,己の臨床研究デザインの拙さをイヤと言うほど突き付けられたことがありました。臨床研究デザインの基本を学ばなければ世界で闘うことはできないと思うきっかけになった,恥ずかしい,そして悔しい痛切な経験でした。この本を手にしたとき,わが国の臨床研究の水準もここまできたのかと,万感胸に迫るものがあります。今の私には,わが国における臨床研究の現状がどのくらいかわかりません。したがって,以下に記すことが見当違いであれば見逃してください。

 病院に勤務しながら独りで臨床研究をしていた頃の話です。当時,回帰曲線の作成をコンパス,糸,そして手計算でやっていました。自ら理解して実践しないと論文作成は不可能でした。今は,キーボードに触れるだけで,一瞬でできてしまいます。

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目次

ページ範囲:P.209 - P.209

欧文目次

ページ範囲:P.211 - P.211

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.300 - P.300

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.304 - P.304

 早いもので,5月25〜28日開催の日耳鼻総会・学術講演会まで,残すところあと3か月あまりとなりました.神戸での開催は昭和43年以来であり,教室員・同門一同,一丸となって鋭意準備を進めております.この原稿を書いている時点では,ようやく落ち着いたかにみえた新型コロナウイルス感染症は,感染力の高いオミクロン株のまん延により第6波に突入し,再び全国的にまん延防止等重点措置が適用される事態となっています.しかし,2月下旬〜3月にピークを迎え,春の訪れとともに終息に向かうとの報道もみられます.5月下旬には3回目のワクチン接種も行き渡り,安心して御来神いただける状況になっていることと信じています.ライブ配信・オンデマンド配信も行いますが,ぜひ,会場に足をお運びいただき,久しぶりにface to faceで交流を深めていただきたいと思います.なお,本学会参加は原則として事前登録をお願いしております.日耳鼻会員マイページからお申し込みいただけます.3月1日から参加登録受付を開始しておりますので,ぜひ,ご利用ください.

 さて,本学会は日耳鼻の名称に「頭頸部外科」が加わって初めての開催となることから,手術手技の習得を主要なテーマの1つとし,11種類の手術セミナーに加え,「耳鼻咽喉科頭頸部外科のOff-the-Job Training」と題したパネルディスカッション(PD)を企画しました.香取幸夫教授(東北大)と本間明宏教授(北大)のお二人に司会を,鈴木正宣先生(北大),松延 毅先生(日本医大),伊藤 吏先生(山形大),塚原清彰先生(東京医大),小川武則先生(岐阜大)に講師をお願いし,コンピュータシミュレーション,virtual reality,動物モデル,cadaverによるoff-the-job(OJT)トレーニングの実際について解説していただく予定です.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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