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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻7号

2022年06月発行

雑誌目次

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

ページ範囲:P.501 - P.501

《治療法別支持療法》

化学放射線治療時の支持療法

著者: 藤澤建志 ,   全田貞幹

ページ範囲:P.502 - P.506

POINT

●放射線治療による有害事象は,障害される臓器によって症状が出現する時期や完治までの期間が異なる。

●味覚低下,口腔内乾燥といった有害事象は治療期間中から出現するが,治療後も完治しないことがある。

●放射線治療後に生じる神経障害や筋肉組織への影響は不可逆的であることが多く,患者へは十分な説明が必要である。

殺細胞性抗がん剤投与時の支持療法

著者: 伊東山舞 ,   横山和樹 ,   本間義崇

ページ範囲:P.507 - P.513

POINT

●頭頸部がん領域の薬物療法に用いる殺細胞性抗がん剤の特性と,典型的な有害事象について理解する。

●頻度の高い有害事象(骨髄抑制・消化器毒性・粘膜炎・腎機能障害)について,基本的な知識とその支持療法を理解する。

●その他,きわめて稀だが時に致死的となる有害事象や,毒性の強い多剤併用療法の管理について紹介する。

分子標的薬投与時の支持療法

著者: 小山泰司

ページ範囲:P.514 - P.519

POINT

●分子標的薬では特徴的な副作用がみられる。

●支持療法は治療の継続性に関わるため重要である

●各薬剤の特徴を捉えて患者指導を行う。

免疫チェックポイント阻害薬投与時の支持療法

著者: 瓜生英興 ,   田村真吾 ,   中島寅彦

ページ範囲:P.520 - P.525

POINT

●免疫関連有害事象(irAE)の早期発見のために,免疫チェックポイント阻害薬(ICI)導入前後の検査項目を設定する。

●ICI使用症例に対しては夜間・休日も含めた病院全体での取り組みが重要である。

●チーム医療によりirAEに対する取り組み,患者教育を行う。

《症状別支持療法》

疼痛管理

著者: 塩田祐子

ページ範囲:P.526 - P.531

POINT

●頭頸部がんでは,疼痛以外に発声や嚥下機能障害,感覚器の障害,容貌変化などさまざまな苦痛を伴うことが多く,全人的苦痛と捉えて対応することが肝要である。

●頭頸部がん患者では,腫瘍の神経浸潤や治療関連などによるさまざまな難治性疼痛を高頻度に認めるため,QOLの維持と治療遂行のため適切な疼痛管理を行うことが重要である。

●痛みの性状,パターン,重症度および患者の状態などを評価し,適切な鎮痛薬を最善の方法で投薬することが必要である。

●オピオイドを含む鎮痛薬の副作用と対応策を把握し,患者が安心して服用できるよう十分に説明することが大切である。

栄養管理

著者: 末廣篤

ページ範囲:P.532 - P.537

POINT

●頭頸部がん患者では,早期より経口摂取が制限されていることが多く,治療開始前にすでに低栄養状態にある患者も少なくない。

●低栄養状態は,標準治療に伴う合併症の発現を高めることが知られており,早期から適切な栄養介入を行うことはガイドラインでも強く推奨されている。

●筆者らの施設では,頭頸部がん患者のみを対象とする栄養および嚥下診療介入チームを立ち上げ,初診から退院後まで,継続的な栄養介入を行っている。

●当科を初診した頭頸部がんT4患者の約半数が低栄養状態であったが,チームの管理下に放射線化学療法を施行した患者では,ほとんどの症例で栄養状態の維持・改善を得ることができた。

心のケア(サイコオンコロジー)

著者: 和田信

ページ範囲:P.538 - P.543

POINT

●頭頸部がん患者では,飲酒歴のある人が多いため,せん妄のハイリスクに相当する患者の率が高く,他の領域のがんに比べてせん妄が出現しやすい。

●せん妄の治療は,原因を同定し改善することが根本である。原因が改善しないのに対症療法的薬剤だけでせん妄を治せるわけではないことに注意する。

●多量飲酒を長期間続けてきた患者が突然禁酒ないし減酒すると,アルコール離脱せん妄が生じる場合がある。

●頭頸部がんでは,手術侵襲により声を失ったり,会話や摂食に苦労したり,容貌が変化するなど,心的ストレスが強くなる場合も少なくなく,これらに起因する適応障害やうつ病にも注意する。

口腔ケアと歯科的支援

著者: 上野尚雄

ページ範囲:P.545 - P.549

POINT

●頭頸部がん患者は,治療中はもとより,治療後も口腔内にさまざまな有害事象を起こすリスクが高い。

●口腔内の有害事象に対するベースラインの対応として,口腔ケアの有用性が認識されている。

●口腔ケアをはじめとした歯科支持医療の提供のために,がん医科歯科連携が有効である。

皮膚・爪症状の管理

著者: 西澤綾

ページ範囲:P.550 - P.554

POINT

●EGFR阻害薬による皮膚障害ではステロイド外用が基本であるが,長期投与例では細菌感染の併発に注意する。

●脂漏性皮膚炎様皮疹の頭皮の痂皮固着は,感染の温床となりやすいため,適宜除去対策を行う。

●爪囲炎の管理には被覆材などを使用した保護が有効である。

《退院支援・緩和ケア》

退院支援

著者: 篠田麻里

ページ範囲:P.556 - P.560

POINT

●地域包括ケアシステムが推進されるなか,頭頸部がんの治療を担う病院は,患者が住み慣れた地域に戻れるように地域との連携が必要となっている。

●頭頸部がん患者の退院時は医療処置が継続する場合があり,地域の受け入れ先との調整には注意点が多い。

●受診早期から院内連携・地域連携をすすめ継続することで,終末期の退院支援が円滑にすすみやすい。

在宅緩和ケア

著者: 粱勝則

ページ範囲:P.561 - P.565

POINT

●痛みの治療にポイントを絞って緩和医療非専門医に有益な情報を提供する。

●薬による疼痛コントロールは,常に作用と副作用のモニタリングおよび調整が必要であり,可能であれば短期的な副作用が少ない緩和的放射線治療の適応の有無について,放射線治療専門医にコンサルテーションする。

●その可能性がない場合,①十分な量のアセトアミノフェン,②基準量の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS),③弱オピオイドの順に変更,もしくは追加して疼痛緩和を図る。

●④強オピオイドは,処方に際して精緻な配慮が必要であるが,フェンタニル貼付剤は副作用の観点から非専門医も比較的使用しやすい薬剤であり,推奨できる。

●フェンタニル貼付剤でコントロール困難な場合は,緩和医療に精通した医師の併診が必要となる場合が多い。

入院から看取りを通した緩和ケア

著者: 大嶋健三郎 ,   外池祐子 ,   小林一女

ページ範囲:P.566 - P.570

POINT

●頭頸部がんの入院緩和ケアにおいて概略を解説する。

●頭頸部がんの入院緩和ケアは,耳鼻咽喉科・頭頸部外科の知識・技術を要する。

●患者・家族との良好なコミュニケーションが重要である。実際の説明例を呈示した。

●入院緩和ケアに必要な知識である,上気道狭窄,皮膚浸潤・がん性創傷,せん妄について解説する。

原著

外科的治療が奏効した上咽頭放線菌症の1例

著者: 佐久間琴子 ,   松見文晶 ,   室野重之

ページ範囲:P.571 - P.575

はじめに

 放線菌症は,グラム陽性嫌気性菌であるActinomycesによって起こる感染症である。本症は頭頸部領域に好発するとされるが,上咽頭に発症した例の報告は少なく稀である。今回われわれは,上咽頭に生じた放線菌症に対し外科的治療が奏効した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する。

草刈り機により飛来した金属異物による外鼻・鼻中隔穿通性外傷例

著者: 松見文晶 ,   橋本千織 ,   平岡美菜

ページ範囲:P.576 - P.580

はじめに

 草刈り機による事故は,以前から注意喚起がなされているものの,現在もなお発生し続けている状況にある。事故による受傷部位としては四肢が多いが1),眼外傷により失明などの後遺症を生じた例も散見され,頭部や顎顔面,頸部,胸部領域の外傷例でも重篤な例や死亡例が報告されている。

 今回われわれは,道路脇での草刈り作業により飛来した金属異物で,歩行中に外鼻・鼻中隔穿通性外傷を受傷した症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する。

動眼神経単独麻痺をきたした蝶形骨洞囊胞の1例

著者: 福家智仁 ,   山田弘之 ,   金児真美佳 ,   小林大介 ,   平田智也

ページ範囲:P.581 - P.585

はじめに

 副鼻腔囊胞のなかで蝶形骨洞囊胞は比較的稀な病態であるが,解剖学的特徴から視力障害などの視器症状を呈する頻度が高い。これら視器症状のうち,視神経症状を呈することなく,動眼神経麻痺のみを認める症例はきわめて稀である。今回われわれは,複視,眼瞼下垂を発症し,蝶形骨洞囊胞による動眼神経単独麻痺を呈し,囊胞開放術を行った症例を経験したので報告する。

当科における先天性耳瘻孔48症例の検討

著者: 石田ちひろ ,   松本尚之 ,   木田渉 ,   中屋宗雄

ページ範囲:P.586 - P.590

はじめに

 先天性耳瘻孔は耳介およびその周囲にみられる先天性の瘻孔である。第一鰓弓,第二鰓弓由来の発生異常と考えられており,発症頻度は1%程度とされている1)。今回われわれは,10年間に当科で先天性耳瘻管摘出術を施行した患者48人(13〜68歳)について,過去の報告と比較検討し,若干の知見を得たので報告する。

ダブルルーメンチューブによる声門下狭窄の1例

著者: 中角美穂 ,   太田伸男 ,   舘田豊 ,   野口直哉 ,   山崎宗治 ,   鈴木貴博 ,   東海林史 ,   伊藤洋介 ,   長屋慶 ,   田畑俊治

ページ範囲:P.591 - P.596

はじめに

 声門下狭窄は炎症,長期挿管,気管切開後のカニューレ不適合,外傷など,種々の疾患に伴う一つの病態である。症例ごとにその成因や経過は異なり,さまざまな臨床像を呈するため,それぞれの病態に合った対応が必要とされる。しかし,周術期に発生すると致死的であり,迅速な診断と対応が求められ,耳鼻咽喉科医にとっても十分な理解を深める必要がある。

 近年,肺癌の増加と,呼吸器外科領域での気管支鏡による手術適応の拡大により,気管挿管時に分離肺換気を行うダブルルーメンチューブ(double-lumen tube:DLT)が広く用いられている。今回,70歳の女性に対するダブルルーメンチューブを使用した肺癌術後2日目に,声門下狭窄をきたし,さらに肉芽腫性病変による気道の完全閉塞が認められた症例を経験したので,若干の文献的な考察を含めて報告する。

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目次

ページ範囲:P.497 - P.497

欧文目次

ページ範囲:P.499 - P.499

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.555 - P.555

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.600 - P.600

 このあとがきが読まれるのは6月。小生が会長を務めた第123回日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会総会・学術講演会が終了している頃ですね。多くの会員の皆様が,久しぶりに現地に集い,再会を楽しみ,神戸の魅力を堪能していただいていることを祈ります。肝心の講演会場から足が遠のいていたとしても心配はご無用です。6月15日〜7月31日までオンデマンド配信を行います。今からでも参加登録できますので,ぜひ,見逃したプログラムをオンデマンドでご視聴ください。

 さて,今月号の特集は「頭頸部がんに罹患した患者さんに対する支持療法と緩和ケア」です。これまで,「頭頸部がんの支持療法」といえば,白血球の減少や腎機能低下への対策,嘔吐や吐き気への対応,疼痛管理や栄養管理と相場が決まっていました。しかし,ここ数年,免疫チェックポイント阻害薬やさまざまな作用機序の分子標的薬が登場し,甲状腺機能低下や間質性肺炎,下垂体炎,劇症1型糖尿病などの免疫関連有害事象,高血圧,皮膚障害,蛋白尿,神経症状,心機能障害など,従来,全く経験したことがない病態に出くわすようになりました。歯科との連携による口腔ケアに加え,内科や皮膚科との連携は不可欠となっています。一方,これまで緩和ケアといえば「看取り」が中心でしたが,現在では「がん」と診断がついたそのときから,心のケアが求められます。退院支援や転院支援も,終末期だけではなく,「治療が終わったら,どのようにしたら在宅で過ごすことができるのか」を念頭に置いて,治療計画を立てるようになっています。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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