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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻8号

2022年07月発行

雑誌目次

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

ページ範囲:P.605 - P.605

《総論》

ウイルスの基礎知識—形態,感染様式などについて

著者: 小林伸行 ,   近藤一博

ページ範囲:P.606 - P.610

POINT

●ウイルスは細菌と異なり,自力では増殖できず,宿主細胞の機能を利用して増殖する。

●ウイルスはエンベロープの有無により,アルコールへの耐性が異なる。

●ウイルスの感染様式には,気道感染,接触感染,経口感染,性感染,血液感染,母子感染および昆虫媒介感染がある。

●ウイルスに対する生体防御機構として,液性免疫と細胞性免疫がある。

抗ウイルス薬の基礎知識—種類,使い方,薬剤耐性対策などについて

著者: 池田正徳

ページ範囲:P.611 - P.615

POINT

●抗ウイルス薬はウイルスのライフサイクルのどのステップを標的とするかで分類される。

●ウイルスのポリメラーゼ,プロテアーゼ,逆転写酵素などが抗ウイルス薬の標的となる。

●作用点の異なる複数の抗ウイルス薬を同時に投与することで,薬剤耐性変異を予防できる。

●抗がん剤・免疫抑制薬の使用にあたっては,B型肝炎の再活性化に注意が必要である。

ワクチンの基礎知識—現状と今後の展望

著者: 金井信一郎

ページ範囲:P.616 - P.620

POINT

●ワクチン接種(予防接種)の主な目的は感染予防,発症予防,重症化予防,感染症のまん延予防で,ワクチンで防げる病気はワクチンで防ぐことが重要である。

●日本では新型コロナワクチンを除いて,複数のワクチンの同時接種が可能で,接種間隔の規定も注射生ワクチンと注射生ワクチン以外ではなくなっている。

●おたふくかぜワクチンの定期接種化と,ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的勧奨再開後のキャッチアップも含めた接種の推進が望まれる。

●新規モダリティのワクチンとして,mRNAワクチン,DNAワクチン,ウイルスベクターワクチンも実用化されており,新型コロナワクチン以外での開発も期待される。

《各論》

麻疹/風疹/水痘/ムンプス

著者: 新庄正宜

ページ範囲:P.621 - P.626

POINT

●麻疹,風疹,水痘,ムンプスの生ワクチン接種は有効で,医療関係者へも推奨される。

●麻疹・水痘曝露後の各生ワクチン,麻疹曝露後のグロブリン,水痘曝露後の抗ウイルス薬は,二次発症の予防に有効である。

●麻疹,風疹,水痘の各ワクチンは定期接種対象であるが,ムンプスワクチンは定期接種に向けて検討中である。

●予防接種の普及とそれに伴う典型例の減少により,臨床診断が必ずしも容易ではなくなってきた。

インフルエンザ/アデノウイルス感染症

著者: 齋藤雄一郎

ページ範囲:P.627 - P.633

POINT

●A型インフルエンザウイルスは,数十年に一度,不連続変異してパンデミックを起こす。

●現行のインフルエンザワクチンの主目的は,高い感染防御効果ではなく,重症化予防と間接的予防効果である。

●ヒトアデノウイルス(Ad)は,飛沫,接触により伝播し,型や種によって多種多様な症状を引き起こす。

●咽頭結膜熱は,小児に多くみられるが成人にも発症する。感染拡大防止には接触感染対策が重要である。

●Ad下気道感染症に対する経口Ad生ワクチンは,米国で認可されているが,使用は軍人(新兵)に限られている。本邦では認可されていない。

新型コロナウイルス感染症

著者: 木村百合香

ページ範囲:P.634 - P.638

POINT

●COVID-19の感染経路は,飛沫感染,接触感染に加え,空気感染の3つである。

●耳鼻咽喉科は上気道炎症状を有する患者を対象とした診療を行う機会が多く,診療や処置に際しては十分な換気を心がけ,飛沫・空気感染対策に適した個人防護具を使用する。

●抗ウイルス薬が複数承認されているが,それぞれの薬剤の適応や禁忌を理解する。

●2022年3月現在,オミクロン株の流行に伴い,重度の急性咽喉頭炎を呈する症例が増加しており,最新の情報に留意する。

ヘルペス属ウイルスと顔面神経麻痺

著者: 岩田真治 ,   羽藤直人

ページ範囲:P.639 - P.643

POINT

●顔面神経麻痺全体の約7割をヘルペス性神経障害が占め,なかでもBell麻痺とHunt症候群は十分な理解が必要な疾患である。

●ステロイドと抗ウイルス薬が治療の主軸となるが,いずれも早期治療介入が重要である。

●初診時に3主症状のすべてが揃うHunt症候群は少ないため,zoster sine herpete(ZSH)の可能性も念頭におき治療を行う。

●水痘ワクチンは帯状疱疹の発症抑制にも明らかに有効であり,Hunt症候群の罹患頻度減少が期待されている。今後,発症に関する水痘・帯状疱疹ウイルスワクチンの介入コホート研究の必要性が増してきている。

サイトメガロウイルスと聴覚障害

著者: 水本結 ,   浦中司 ,   樫尾明憲

ページ範囲:P.644 - P.648

POINT

●妊娠中にサイトメガロウイルスに感染した場合,胎児に先天性サイトメガロウイルス感染症を起こし,聴覚障害,視覚障害,神経疾患や知的障害などを合併することが知られている。

●難聴の形態・程度はさまざまであり,長期的な観察が必要である。

●抗ウイルス薬の投与は,生後初期であれば効果的ともいわれる。

●人工内耳手術は補聴器効果に乏しい重度・高度難聴児に施行されるが,併存する合併症によっては効果が限定的になる。

●現時点で有効なワクチンはなく,妊婦への感染予防の啓発と教育が重要である。

HIV/AIDS—耳鼻咽喉科医が押さえておくべき知識について

著者: 平井由児

ページ範囲:P.649 - P.654

POINT

●ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者の8人に1人は自身の感染を知らず,無症候感染者の早期発見が求められる。

●HIVとともに生きる人々(PLWH)の余命は健常人に近づいており,生活習慣病や発がんが問題である。

●適切な抗ウイルス療法によるHIVウイルス量の抑制は,HIVの伝播を抑制できる。

●コンドームの使用はHIVを含む性感染症,ウイルス性肝炎,ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症を抑制できるユニバーサルな予防策である。

ヒト乳頭腫ウイルスと関連腫瘍

著者: 鈴木幹男 ,   平川仁

ページ範囲:P.655 - P.659

POINT

●ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)は頭頸部領域から広く検出される。

●良性疾患では,喉頭乳頭腫を生じる。

●悪性疾患では,HPV関連中咽頭癌(特に側壁,前壁)を生じる。

●予防ワクチンは3種類あり,積極的な勧奨が差し控えられていたのが終了し,2022年4月から個別に定期接種の通知が発送されている。

EBウイルスと関連腫瘍

著者: 高原幹

ページ範囲:P.660 - P.664

POINT

●Epstein-Barr virus(EBV)は頭頸部悪性腫瘍である上咽頭癌や鼻性NK/T細胞リンパ腫の原因となる。

●腫瘍細胞におけるEBVの同定にはEBV-encoded small nuclear early region(EBER)in situ hybridizationが行われる。

●治療は化学放射線治療が行われることが多い。

●現在,EBV感染を予防する有効なワクチンは存在しない。

Review Article

術後QOLからみた中耳手術

著者: 阪上雅史

ページ範囲:P.666 - P.676

Summary

●聴力が改善し真珠腫が再発しなければ術者は満足するが,患者は術後快適に過ごすことも同時に求めている。

●ビジネスパーソンの真珠腫に対しては,術後早期に乾燥し快適に仕事ができるように,外耳道保存型鼓室形成術が勧められる。

●アブミ骨手術後のめまいを少なくするために,レーザーを用いたstapedotomyが勧められる。

●アブミ骨手術後の同側の味覚障害は1年以上続く症例が30〜40%あり,術前に説明したほうがよい。

●聴力改善や真珠腫再発率減少をめざすだけでなく,術前の患者の希望に沿った術式を選ぶべきである。

原著

当科で経験した副甲状腺癌の2例

著者: 堀健志 ,   菅原一真 ,   竹本洋介 ,   津田潤子 ,   西村省吾 ,   橋本誠 ,   山下裕司

ページ範囲:P.677 - P.681

はじめに

 原発性副甲状腺機能亢進症の原因の大部分は副甲状腺腺腫であり,副甲状腺癌が原因である頻度は1%以下である。術前の画像検査で明らかな周囲組織への浸潤傾向や転移巣が認められない場合は,術前に副甲状腺癌と判断することは非常に困難とされる1)。今回われわれは,術前に診断しえなかった副甲状腺癌症例を2例経験したので,文献的考察を加えて報告する。

甲状腺混合性髄様濾胞細胞癌の1例

著者: 三浦直一 ,   木村宜彦 ,   藤野泰志

ページ範囲:P.682 - P.686

はじめに

 甲状腺乳頭癌,濾胞癌は甲状腺濾胞細胞から生じ,髄様癌は傍濾胞細胞に由来するとされ,その両者が同一腫瘍内で併存することはきわめて稀であり,全甲状腺癌の0.15%と報告されている。1982年に,Hales1)らにより,髄様癌に濾胞癌が混在した腫瘍が最初に報告されたが,その後の報告数は少なく,いまだその発生のメカニズム,臨床経過については不明な点が多い。今回われわれは,混合性髄様濾胞細胞癌の1例を経験したので報告する。

歯性感染から鼻中隔膿瘍に至った1例

著者: 堀江怜央 ,   晝間清 ,   肥塚泉

ページ範囲:P.687 - P.691

はじめに

 抗菌薬の発達した現代において,鼻中隔膿瘍は比較的稀な疾患である。しかし,早期診断と適切な処置がなされなければ,髄膜炎や敗血症といった重篤な合併症や,治癒後に外鼻変形を引き起こすことがある。今回われわれは,歯性感染から鼻中隔膿瘍をきたし,治癒後に後遺症として鞍鼻を呈した1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

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目次

ページ範囲:P.601 - P.601

欧文目次

ページ範囲:P.603 - P.603

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.692 - P.692

あとがき

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.696 - P.696

 先日,神戸で開催されました第123回日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会総会・学術講演会に現地参加してきました。コロナ感染の勢いが全国的に少しずつ弱くなっているなか,久しぶりに多数の会員の先生方が現地参加されている学会であったと感じました。広い第1会場,第2会場も座席が多く埋まっていて,ランチョンセミナーも満席となっていたところがありました。Web会議の良さもありますが,久しぶりの現地参加は,他大学の多くの先生方に直接お会いできる貴重な機会となり,Webだけでは到底行うことができない交流をもつことができました。本号が発行される6月末は,7月31日までのオンデマンド配信が続いている真っ只中であると思います。現地に参加された先生方も,参加されなかった先生方も,オンデマンド配信でまだまだ学ぶことができます。ぜひご視聴なさってください。

 さて,今月の特集は,ウイルス感染です。新型コロナウイルスの感染拡大が生じたこの2年間ほど,ウイルスやワクチンが注目されたことはなかったと思います。mRNAワクチンという新しい概念が,これほど早く実用化されるとは思ってもいませんでした。私は,2回目のワクチン接種後,しばらくして帯状疱疹に罹患しました。因果関係はわかりませんが,重度の帯状疱疹症状が数か月でようやく過ぎ去ったあと,中年以降の接種を勧めた帯状疱疹ワクチンの企業広告を見かけました。罹患後となっては時すでに遅し,ですが,ワクチンの重要性を再認識する経験が続いています。ワクチンには副作用が一定の確率で生じうるのも事実ですが,正しい理解のもと,ワクチン接種の意義を正しく伝えていくことも重要だと感じています。本特集号は,ウイルス感染症に関して,各領域の専門の先生方にご執筆いただきました。タイムリーに幅広く正しく学ぶことができる素晴らしい特集号となっています。ぜひご一読ください。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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