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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻9号

2022年08月発行

原著

眼窩先端症候群が回復しなかった副鼻腔炎からの鼻性視神経症の1例

著者: 松山尚平1 成尾一彦1 阪上剛1 堀中昭良1 岡本倫朋1 北原糺2

所属機関: 1奈良県総合医療センター耳鼻いんこう科 2奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室

ページ範囲:P.775 - P.779

文献概要

はじめに

 副鼻腔炎は耳鼻咽喉科の日常診療において頻度の高い疾患であるが,時に眼窩や頭蓋内など周辺臓器に影響を及ぼし,眼窩内蜂窩織炎や眼窩内膿瘍,髄膜炎や脳膿瘍などの原因となることがある1,2)。眼痛や眼瞼腫脹,眼瞼下垂,複視,眼球突出,視力低下,頭痛,嘔気嘔吐などを初発症状とすることから,眼科や脳神経外科などを初診することが多い。視機能,特に視力障害があればきわめて迅速な治療が必要だが,他科受診後に耳鼻咽喉科へ紹介された時点ですでに視力低下が進行し,緊急手術をはじめとする懸命な治療にもかかわらず視力が回復しないこともある1〜6)

 われわれは,複視と視力低下が生じて複数の医療機関を受診後に奈良県総合医療センター(以下,当院)を初診となり,眼窩先端症候群を呈する急性副鼻腔炎からの鼻性視神経症の診断となった症例を経験した。視力低下発症4日目に緊急で鼻内視鏡手術を行ったが,視力ならびに眼球運動障害は回復しなかった。文献的考察を加えて報告する。

参考文献

1)吉福孝介・他:鼻性眼窩内合併症の検討—眼窩内合併症5例.耳鼻56:171-176,2010
2)生駒 亮・他:視機能障害を伴う急性副鼻腔炎症例.日耳鼻120:1079-1085,2017
3)富多 茜・他:副鼻腔炎に合併し急激に失明に至った眼窩蜂窩織炎,眼窩骨膜下膿瘍の1例.眼科56:655-659,2014
4)百束 紘・他:眼窩内上外側の眼窩内膿瘍を呈した急性副鼻腔炎例.耳鼻臨床107:117-120,2014
5)内藤圭介・他:視力障害をきたした副鼻腔疾患症例の検討.徳島赤十字病医誌20:35-39,2015
6)三浦拓也・他:慢性副鼻腔炎急性増悪後に眼窩骨膜下膿瘍をきたし外科的ドレナージを必要とした1例.耳展63:71-78,2020
7)日本鼻科学会(編):急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2010年版.日鼻誌49:143-198,2010
8)Younis RT, et al:The role of computed tomography and magnetic resonance imaging in patients with sinusitis with complications. Laryngoscope 112:224-229, 2002
9)Hosokawa Y, et al:Predictors of visual acuity and usefulness of a treatment algorithm in rhinogenous optic neuritis. Ear Nose Throat J 100:162-166, 2021
10)中澤祐則:神経眼科—鼻性視神経症.眼科62:1199-1202,2020
11)金子研吾・他:副鼻腔炎による眼窩内合併症—32症例の臨床的検討.日鼻誌42:130-137,2003
12)三村 治・他:介達性外力による視神経障害.日の眼科73:977-980,2002
13)門井千春・他:鼻性視神経症(炎)の検討.日眼紀44:47-52,1993
14)蔦 佳尚・他:眼症状を呈した副鼻腔囊胞の検討.耳鼻臨床84:945-951,1991
15)川畠雅樹・他:鼻性眼窩内合併症の臨床的特徴と視力予後.頭頸部外29:267-272,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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