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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科94巻9号

2022年08月発行

文献概要

原著

正円窓を穿破した耳かき外傷例

著者: 篠森裕介1 有友宏1 上田哲平1

所属機関: 1松山赤十字病院耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.780 - P.784

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はじめに

 耳かき外傷は日常診療で経験することが比較的多い疾患で,外耳道皮膚の損傷にとどまる例から,耳小骨連鎖の障害や外リンパ瘻をきたす例までさまざまである。耳かき棒などによる鼓膜損傷は鼓膜前下象限に多いとされ1〜4),その場合はほとんどの例で自然治癒が期待できる。しかし後上象限へ穿入すると鼓膜損傷にとどまらず,さらに深部で耳小骨損傷をきたす危険性が高くなる1)ことは解剖学的位置関係から自明である。特にアブミ骨損傷に伴い卵円窓から外リンパ瘻を生じた場合は,早急な外科的対応を要することがある。一方,正円窓は解剖学的に外耳道側からの直達的な損傷は受けにくい形態になっている5)ため,直達外力による正円窓破裂の報告は非常に少ない。われわれは,耳かき棒が鼓膜後下象限を経由して正円窓を穿破し,さらに内耳に破片が残存した非常に稀な耳かき外傷を経験したので報告する。

参考文献

1)森山 寛・他:経外耳道性外傷(耳掻き)による耳小骨損傷.耳展27:589-595,1984
2)佐竹純一・他:外傷性鼓膜穿孔の臨床的観察.臨耳10:128-129,1983
3)吉川兼人・他:外傷性鼓膜穿孔症例の検討.耳鼻臨床78(増2):1293-1301,1985
4)山崎一春・他:外傷性鼓膜穿孔に関する臨床的検討.日耳鼻113:679-686,2010
5)高橋晴雄:人工内耳手術における局所解剖.久保 武(編):耳鼻咽喉科診療プラクティス2.聴覚の獲得.文光堂,東京,2000,pp68-72
6)内田真哉・他:外耳道外傷・外傷性鼓膜穿孔の集計的観察.耳鼻臨床87:51-59,1994
7)小川 郁・他:耳掻きによる外傷性外リンパ瘻の検討.Otol Jpn 4:189-195,1994
8)相原康孝:直達外力による外傷—外傷性外リンパ瘻.耳喉頭頸69:47-51,1997
9)暁 清文・他:急性高度難聴—外リンパ瘻の治療.JOHNS 10:905-909,1994

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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