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文献概要
原著
正円窓を穿破した耳かき外傷例
著者: 篠森裕介1 有友宏1 上田哲平1
所属機関: 1松山赤十字病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.780 - P.784
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耳かき外傷は日常診療で経験することが比較的多い疾患で,外耳道皮膚の損傷にとどまる例から,耳小骨連鎖の障害や外リンパ瘻をきたす例までさまざまである。耳かき棒などによる鼓膜損傷は鼓膜前下象限に多いとされ1〜4),その場合はほとんどの例で自然治癒が期待できる。しかし後上象限へ穿入すると鼓膜損傷にとどまらず,さらに深部で耳小骨損傷をきたす危険性が高くなる1)ことは解剖学的位置関係から自明である。特にアブミ骨損傷に伴い卵円窓から外リンパ瘻を生じた場合は,早急な外科的対応を要することがある。一方,正円窓は解剖学的に外耳道側からの直達的な損傷は受けにくい形態になっている5)ため,直達外力による正円窓破裂の報告は非常に少ない。われわれは,耳かき棒が鼓膜後下象限を経由して正円窓を穿破し,さらに内耳に破片が残存した非常に稀な耳かき外傷を経験したので報告する。
耳かき外傷は日常診療で経験することが比較的多い疾患で,外耳道皮膚の損傷にとどまる例から,耳小骨連鎖の障害や外リンパ瘻をきたす例までさまざまである。耳かき棒などによる鼓膜損傷は鼓膜前下象限に多いとされ1〜4),その場合はほとんどの例で自然治癒が期待できる。しかし後上象限へ穿入すると鼓膜損傷にとどまらず,さらに深部で耳小骨損傷をきたす危険性が高くなる1)ことは解剖学的位置関係から自明である。特にアブミ骨損傷に伴い卵円窓から外リンパ瘻を生じた場合は,早急な外科的対応を要することがある。一方,正円窓は解剖学的に外耳道側からの直達的な損傷は受けにくい形態になっている5)ため,直達外力による正円窓破裂の報告は非常に少ない。われわれは,耳かき棒が鼓膜後下象限を経由して正円窓を穿破し,さらに内耳に破片が残存した非常に稀な耳かき外傷を経験したので報告する。
参考文献
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