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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科95巻1号

2023年01月発行

雑誌目次

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス 《耳領域》

めまい/感音難聴—メニエール病とその周辺疾患

著者: 乾洋史 ,   北原糺

ページ範囲:P.6 - P.11

POINT

●内耳造影MRIで,健常成人の内耳に内リンパ腔の拡大を認めることがある。

●急性低音障害型感音難聴の回復例では内リンパ腔の拡大を認めない。また,前庭・蝸牛の内リンパ腔を観察することにより疾患予後の推定が可能である。

●内リンパ水腫関連疾患のなかでメニエール病の内リンパ腔が最も拡がっていた(内リンパ水腫)。

●メニエール病の症例に存在する前庭の内リンパ水腫は外側半規管や後半規管にも拡大することがあり,平衡機能検査に影響することがある。

腫瘍性疾患—顔面神経鞘腫・聴神経腫瘍/外耳道がん/グロームス腫瘍/コレステリン肉芽腫

著者: 濵田昌史

ページ範囲:P.12 - P.16

POINT

●前庭神経/顔面神経鞘腫はガトリニウム造影MRIにてよく描出されるが,腫瘍の存在部位に注意を払い鑑別する。

●外耳道がん診療においては,MRIの果たす役割は鑑別診断よりも進展度把握となる。

●グロームス腫瘍の診断においては,その鑑別に加え進展度評価にもMRIは有用である。

●側頭骨内コレステリン肉芽腫はMRI,特にT1強調画像にて先天性真珠腫(類上皮腫:epidermoid)と鑑別できる。

炎症性疾患—真珠腫性中耳炎/ベル麻痺・ハント症候群/頭蓋底骨髄炎

著者: 尾﨑昭子 ,   綾仁悠介 ,   萩森伸一

ページ範囲:P.18 - P.23

POINT

●MRIは真珠腫の診断や炎症を伴う合併症の診断に適している。

●拡散強調画像(DWI)は真珠腫の遺残や再発の診断に有用である。

●顔面神経麻痺において,原因検索および炎症部位を把握するのに造影MRIは有用である。

●頭蓋底骨髄炎ではT1強調画像で低信号を呈し,ガドリニウムによる造影効果もみられる。

《鼻副鼻腔領域》

副鼻腔炎/副鼻腔囊胞—片側副鼻腔炎/好酸球性副鼻腔炎/後鼻孔ポリープ/副鼻腔囊胞/真菌性副鼻腔炎/副鼻腔炎由来の眼窩内合併症・頭蓋内合併症/呼吸上皮腺腫様過誤腫(REAH)

著者: 松見文晶

ページ範囲:P.24 - P.28

POINT

●片側性副鼻腔陰影の質的診断としてMRIは有用である。

●副鼻腔囊胞例では多房性かどうかや,周囲構造との境界の判断にMRIは役立つ。

●真菌球,乾燥傾向の強い副鼻腔内貯留物,ムチンなどはT2強調画像で低〜無信号を示す。

●腫瘍性病変,鼻性頭蓋内合併症や浸潤性副鼻腔真菌症が疑われる場合などでは造影MRIを行う。

鼻副鼻腔良性腫瘍—内反性乳頭腫/血瘤腫・血管腫・若年性血管線維腫/線維性骨異形成症・骨形成性線維腫/神経鞘腫

著者: 髙田洋平 ,   朝子幹也

ページ範囲:P.30 - P.35

POINT

●鼻副鼻腔領域において,CTで片側性の鼻副鼻腔の占拠性病変や骨破壊像がみられた場合には腫瘍性疾患を鑑別する必要があり,軟部組織の評価には分解能の高いMRIが有用である。

●鼻副鼻腔腫瘍のMRI画像の特徴を理解しておくと,疾患の術前診断と治療方針の決定を行うための手助けになる。

鼻副鼻腔悪性腫瘍—上顎洞がん/鼻腔・篩骨洞がん/嗅神経芽細胞腫/悪性黒色腫

著者: 西谷友樹雄

ページ範囲:P.36 - P.40

POINT

●鼻副鼻腔腫瘍の質的評価と進展範囲評価にMRIは有用である。

●鼻副鼻腔悪性腫瘍は多彩な病理組織を示すため,それぞれの病期分類に基づいて適切な病期診断を行う。

●鼻副鼻腔悪性腫瘍の手術適応と切除限界について理解し,治療方針を決定する。

頭蓋底疾患/眼窩内疾患—髄液漏・髄膜瘤・髄膜脳瘤/髄膜腫/下垂体腫瘍・非腫瘍性病変/眼窩内血管腫

著者: 山内英臣 ,   尾尻博也

ページ範囲:P.41 - P.47

POINT

●髄液漏・髄膜瘤・髄膜脳瘤は横断像だけではなく,冠状断や矢状断のT2強調画像やheavily T2強調画像で頭蓋底の欠損部を評価することも重要である。

●髄膜腫は良悪性の鑑別,海綿静脈洞や視神経への進展,動脈の口径不整の有無の評価が大切となる。

●下垂体腺腫の評価にはダイナミック造影検査が有用で,正常下垂体の同定,海綿静脈洞浸潤の有無の評価が大切となる。

●眼窩腫瘤では血管腫と神経鞘腫との鑑別にダイナミック造影検査が有用である。

《咽喉頭・頭頸部領域》

口腔・咽頭腫瘍—舌がん/下歯肉がん/上・中・下咽頭がん

著者: 森田浩太朗 ,   三澤清

ページ範囲:P.48 - P.51

POINT

●口腔・咽頭腫瘍の診断や治療方針の決定にMRIは有用である。

●舌がんでは特にdepth of invasion(DOI)に着目する。

●中・下咽頭がんでは経口切除が可能かどうか,などに着目する。

唾液腺疾患—多形腺腫/ワルチン腫瘍/基底細胞腺腫/血管腫・血管奇形/粘表皮癌/腺房細胞癌/腺様囊胞癌/唾液腺導管癌/悪性リンパ腫/シェーグレン症候群/IgG4関連唾液腺炎/線維素性唾液腺炎/木村氏病

著者: 八木正夫

ページ範囲:P.52 - P.61

POINT

●典型的な多形腺腫のMRI像は,分葉状で境界明瞭,T2強調画像(T2WI)で被膜様構造を持ち,内部がT2WIで高信号,T1強調画像(T1WI)で低信号である。

●ただし,多形腺腫の内部は,①軟骨腫/粘液腫様組織,②線維状組織,③細胞成分の豊富さ,によってT2WIの信号強度は変化する。高信号を示す(①が多い)のは全体の約3/4で,②,③で構成される部分が多いと低〜等信号となる。

●多形腺腫以外でT2WIが高信号を示すことが多いものとしては,良性では神経鞘腫が挙げられ,腺房細胞癌,腺様囊胞癌などの低〜中悪性度癌は比較的高信号が多く,一部に被膜様構造がみられる。

●ワルチン腫瘍は境界明瞭な類円形のことが多く,被膜様構造は欠くことが多い。T1WI,T2WIのいずれも低信号であるが,囊胞性変化などにより内部は不均一なことが多く,囊胞部分は高信号のことが多いが,粘性な場合は低〜等信号となる。

●シェーグレン症候群では,主に耳下腺でT1WI,T2WIのいずれも内部不均一な像として描出され,T2WIや脂肪抑制画像で高信号な斑点状の陰影がみられるが,このような背景に加えて腫瘤性病変を持つ場合は,悪性リンパ腫を想定しておく必要がある。

甲状腺・副甲状腺疾患—甲状腺がんの隣接臓器浸潤/副甲状腺腺腫

著者: 北村守正

ページ範囲:P.62 - P.65

POINT

●甲状腺進行がんにおいて,MRIは隣接臓器浸潤の診断に有用である。

●副甲状腺腫瘍の部位診断には主に超音波検査,CT,MIBIシンチグラフィが用いられるが,MRI T2強調脂肪抑制画像は副甲状腺が高信号に描出され,局在診断の補助となる。

頸部・副咽頭間隙腫瘍—神経鞘腫/傍神経節腫(頸動脈小体腫瘍)/鰓裂囊胞/リンパ管奇形/静脈奇形/副咽頭間隙腫瘍

著者: 関水真理子

ページ範囲:P.66 - P.70

POINT

●頭頸部にできるさまざまな良性腫瘍を,その病変の解剖学的位置やMRIの画像所見の特徴から鑑別する。

●側頸部の囊胞性病変においては,囊胞性頸部リンパ節転移を鑑別に挙げることが重要である。

●副咽頭間隙腫瘍は,副咽頭間隙の脂肪組織の偏位によって由来間隙の類推ができる。

Review Article

神経温存と耳下腺手術

著者: 岩井大 ,   鈴木健介 ,   藤澤琢郎 ,   阪上智史 ,   八木正夫

ページ範囲:P.72 - P.79

Summary

●耳下腺腫瘍の治療として,耳下腺手術が確立してから50年を経たが,その後の治療成績の進展は十分でない。

●一方,最近になって,新しい工夫や治療法が考案されてきた。

●大耳介神経の走行が術前に推定可能となり,温存率が向上すると思われる。

●精細な3D拡大画面を提供する外視鏡システムと,持続的術中神経モニタリングシステムは,耳下腺手術における顔面神経温存率を向上させるものとして期待される。

原著

広範な硬膜露出を伴った錐体部真珠腫の術後長期経過

著者: 吉田尚生 ,   平塚康之

ページ範囲:P.80 - P.84

はじめに

 錐体部真珠腫は,側頭骨の深部に病変が存在するため外科的なアクセスが非常に困難である。経迷路法による錐体部手術では広い創腔が生じるが,創腔の処理について,開放創とするか,脂肪充塡などの閉鎖創とするかはさまざまな意見がある。

 今回われわれは,広範な硬膜の露出を併発した錐体部真珠腫の1例に対して経迷路法による錐体部手術を行い,創腔を開放創としたが術後長期にわたり良好な経過となった症例を経験したので報告する。

顔面神経麻痺を呈した頭蓋底骨髄炎の1例

著者: 堀中昭良 ,   成尾一彦 ,   松山尚平 ,   北原糺

ページ範囲:P.85 - P.90

はじめに

 典型的な頭蓋底骨髄炎は,高齢糖尿病患者に発症した緑膿菌による悪性外耳道炎を契機として頭蓋底へ炎症が波及したもので,時に致命的となりうる疾患である1,2)。近年は抗菌薬の進歩により,以前と比べ予後は改善しているが,脳神経症状は予後不良因子とする報告もある3)。今回われわれは,顔面神経麻痺を呈した頭蓋底骨髄炎の症例を経験した。手術ならびに十分な抗菌薬投与を行い,顔面神経麻痺は残存したものの,耳痛など他症状は消退し,CTでも後頭骨に新たな骨梁形成を認めたので報告する。

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目次

ページ範囲:P.1 - P.1

欧文目次

ページ範囲:P.3 - P.3

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.92 - P.92

あとがき

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.96 - P.96

 本特集号が刊行されるのは,年の瀬です。皆さまにとって,2022年はどのような年でしたか?

 世界は激動の1年でした。現代社会では,領土を奪い合うような戦争は「割に合わない」から,近代国家同士の戦争はもう起きないだろう,という論調をついこの間まで目にしていました。しかし,現実には「起きるはずがなかった」ことが起きて,いまだにウクライナでは戦禍が続いています。この現実を目の当たりにして,常識を頭から信じて行動してはいけない,という教訓が頭に浮かびます。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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