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特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法
精神疾患によるめまいへの対応
著者: 清水謙祐12
所属機関: 1医療法人建悠会 吉田病院精神科・耳鼻咽喉科 2宮崎大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室
ページ範囲:P.793 - P.803
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●精神疾患によるめまいへの対応をするときは,心身同時診療を心がける。「心」は不安の検査・問診(アナムネ)・不眠の評価,「身」は耳鼻咽喉科診療であり,めまい診療においてこれらを同時に行うことは,耳鼻咽喉科医にしかできないことである。
●めまい患者に,不安・抑うつ・食欲低下・多弁・攻撃性・幻聴・妄想・認知障害・不眠などの精神症状を認めた場合,精神疾患併存(psychiatric comorbidity)の可能性を考え,治療・精神科医との連携を図るべきである。
●持続性知覚性姿勢誘発めまいでは精神疾患併存を高率(93.2%)に認め,多くは向精神薬による治療が必要である。
●めまい疾患治療のために睡眠評価は必須である。睡眠障害を認めた場合はその治療を勧めるべきである。
●抗うつ薬を用いる場合,うつ病と双極性感情障害の鑑別が必要であるものの容易ではない。特に双極性感情障害では,抗うつ薬を投与することで躁転する場合があるため,注意する。
●ベンゾジアゼピン系薬物は,頓用でも常用量依存をきたすことがあり,要注意である。
●患者の病状がよくならなくても落ち込まず,患者と自分自身に“希望”を処方することを忘れてはならない。
●精神疾患によるめまいへの対応をするときは,心身同時診療を心がける。「心」は不安の検査・問診(アナムネ)・不眠の評価,「身」は耳鼻咽喉科診療であり,めまい診療においてこれらを同時に行うことは,耳鼻咽喉科医にしかできないことである。
●めまい患者に,不安・抑うつ・食欲低下・多弁・攻撃性・幻聴・妄想・認知障害・不眠などの精神症状を認めた場合,精神疾患併存(psychiatric comorbidity)の可能性を考え,治療・精神科医との連携を図るべきである。
●持続性知覚性姿勢誘発めまいでは精神疾患併存を高率(93.2%)に認め,多くは向精神薬による治療が必要である。
●めまい疾患治療のために睡眠評価は必須である。睡眠障害を認めた場合はその治療を勧めるべきである。
●抗うつ薬を用いる場合,うつ病と双極性感情障害の鑑別が必要であるものの容易ではない。特に双極性感情障害では,抗うつ薬を投与することで躁転する場合があるため,注意する。
●ベンゾジアゼピン系薬物は,頓用でも常用量依存をきたすことがあり,要注意である。
●患者の病状がよくならなくても落ち込まず,患者と自分自身に“希望”を処方することを忘れてはならない。
参考文献
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