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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科95巻12号

2023年11月発行

雑誌目次

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕 《総論》

嚥下障害への手術適応

著者: 津田豪太

ページ範囲:P.974 - P.977

POINT

●重度な嚥下障害症例に対して行われる嚥下機能改善手術と誤嚥防止手術の手術適応について解説した。

●喉頭機能を維持しながら嚥下機能を回復させる嚥下機能改善手術では,ムセのない誤嚥の有無の検索,嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査での障害部位と代償機能の精査が必要である。

●誤嚥防止手術では,対象となる患者は原疾患の進行に伴い不可逆的な喉頭ダメージが強く,誤嚥防止の代償として発声機能の喪失につながるので,患者本人や家族との十分なインフォームド・コンセントが必要である。

●いずれの治療でも,原疾患の主治医と連携することが術式や手術タイミングなどを決めるにあたって大切な要素になる。

《嚥下機能改善手術》

輪状咽頭筋切断術

著者: 丸尾貴志

ページ範囲:P.978 - P.982

POINT

●輪状咽頭筋には咽頭静脈叢がある。

●出血を想定した粘膜切開,筋肉切除が大事である。

●頰咽頭筋膜を温存し,重大な合併症を回避する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年11月).

喉頭挙上術

著者: 上羽瑠美

ページ範囲:P.983 - P.987

POINT

●喉頭挙上術は,喉頭を舌骨あるいは下顎方向に牽引・挙上することにより,①喉頭挙上遅延の代償,②喉頭前庭の閉鎖強化,③食道入口部の開大に寄与する。

●輪状咽頭筋切除(断)術と併用することで,嚥下機能改善効果がさらに期待できる。

●喉頭を挙上しすぎると気道狭窄が生じやすいので,注意が必要である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年11月).

甲状軟骨形成術Ⅰ型/披裂軟骨内転術

著者: 竹本直樹 ,   讃岐徹治

ページ範囲:P.988 - P.992

POINT

●甲状軟骨形成術Ⅰ型では,声帯レベルのデザインが最も重要である。

●披裂軟骨内転術では,筋突起に牽引糸をしっかりかける。

●術後のトラブルに迅速に対応できるよう,経時的な創部および喉頭所見の確認が必要となる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年11月).

咽頭弁形成術

著者: 河本勝之

ページ範囲:P.993 - P.996

POINT

●手術適応は,嚥下時に食塊や水分が上咽頭へ逆流する一側性の上咽頭閉鎖不全症例である。

●咽頭弁形成術は,咽頭後壁に筋皮弁を短冊状に作製し,軟口蓋と縫合する。

●筆者は上茎弁を軟口蓋横切開部に挿入して縫合固定する方法を行っており,その詳細を解説する。

●咽頭収縮不良による食道入口部通過障害症例には,輪状咽頭筋切断術など別の手術を検討する必要がある。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年11月).

鼻咽腔閉鎖不全に対する上咽頭脂肪注入術

著者: 上坂紗貴子 ,   武田紘子 ,   古川竜也 ,   四宮弘隆 ,   丹生健一

ページ範囲:P.997 - P.1001

POINT

●鼻咽腔閉鎖不全の治療法には,手術と軟口蓋挙上装置などの装着やリハビリテーションなどの保存的治療がある。

●脂肪注入療法は手術加療のうち咽頭後壁隆起術の1つである。

●鼻咽腔閉鎖不全が軽度な症例が脂肪注入療法の適応となる。

●脂肪は遠心分離にかけ,注入部位を中咽頭後壁に絞ると生着率が向上する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年11月).

《誤嚥防止手術》

気管切開術とカニューレ選択

著者: 木村百合香

ページ範囲:P.1002 - P.1005

POINT

●嚥下障害に対する気管切開術は,誤嚥した唾液をカフでせき止め,カフ上吸引ラインより可及的に回収する手段として適応がある。

●気管切開孔の存在は,嚥下機能を低下させることを認識する必要がある。

●嚥下障害に対する気管切開術では,唾液誤嚥による感染から肉芽形成を生じやすく,一旦肉芽が生じるとその処理に難渋することが多い。

●誰にでも管理できる,閉じない,カニューレ交換が容易で,かつ事故抜去の起こりにくい気管切開孔の作成を目指す。

声門閉鎖術

著者: 古川竜也

ページ範囲:P.1006 - P.1010

POINT

●一般に誤嚥防止手術を受ける患者は栄養状態や全身状態が悪化していることが多く,外科治療後の合併症が起こりやすい状態であるうえに,再手術など合併症への治療も重い負担となる。

●誤嚥防止手術はすべての術式で咽頭または喉頭の粘膜縫合を要するが,この部分に誤嚥物(術後は主に唾液)が貯留する構造になっている。

●最も重要な合併症は縫合不全と気管孔狭窄であるが,誤嚥防止手術のうち鹿野らが発表した声門閉鎖術は,これらのリスクを低くできるよう開発された方法である。

●当科ではさらに少しでもリスクを軽減するよう術式を少しずつ改変している。

喉頭中央部切除術

著者: 平野愛 ,   太田淳

ページ範囲:P.1011 - P.1015

POINT

●喉頭中央部切除術は低侵襲で,かつ術後の摂食に有利な消化管を形成できる術式である。

●嚥下機能の改善が望めない成人例がよい適応になると思われる。

●2割程度の症例では,術後にカニューレ挿入を必要とする気管孔狭窄を生じる。

●気管孔狭窄の予防のために,永久気管孔を広く形成する工夫が有効である可能性がある。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年11月).

喉頭気管分離術—東京女子医科大学附属八千代医療センター方式

著者: 三枝英人

ページ範囲:P.1016 - P.1021

POINT

●可能な限りの努力を行っても制御ができない誤嚥性肺炎,もしくはその進展が強く予測される患者に対して行う。

●低栄養,免疫能低下,耐性菌感染など,手術に対する条件が不良である場合が多いので,操作が容易・確実,かつ縫合不全などの合併症発生時にも,安全に対処できる手技が望ましい。

●本法では線維性の強固な結合組織である弾性円錐と内軟骨膜を合わせた組織を用いることで,安全に喉頭と気管の分離が行える。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年11月).

喉頭摘出術

著者: 東野正明

ページ範囲:P.1022 - P.1025

POINT

●術前のインフォームド・コンセントは十二分に行い,慎重に適応を決定する。

●術前の全身状態の管理が手術の成功を導く。

●術中はできるだけ残せるものは残して,術後のトラブルを極力予防する。

●術後のリスクの説明も忘れることなく,患者の状態に応じて対応する。

《術後のトラブルシューティング》

術後非改善例への対応

著者: 佐藤文彦 ,   千年俊一

ページ範囲:P.1026 - P.1030

POINT

●嚥下機能改善手術は,咽頭期嚥下障害に対して行われ,経口摂取回復に有効な手段であるが,嚥下機能改善手術で効果が得られなかった症例もしばしば経験する。

●嚥下機能改善手術後に効果が得られない場合は,段階手術,誤嚥防止手術,リハビリテーション継続や内容変更のいずれかを選択することになる。

●高度の咽喉頭機能障害でも,障害部位と程度を検討し,段階手術を行うことは有用である。

●複数回の段階手術で効果が得られず,嚥下性肺炎のリスクが高い症例では,誤嚥防止手術の必要性の見極めも重要である。

術後感染症への対応

著者: 大久保啓介 ,   中山美智子 ,   稲木香苗

ページ範囲:P.1031 - P.1037

POINT

●頸部皮下に唾液の貯留が疑われたら早期に瘻孔を確認し,咽頭皮膚瘻を作成する。

●咽頭皮膚瘻に対する局所陰圧閉鎖療法は近年注目されており,有用性が高い。

●術式別の対処方法を日頃から熟知し,感染が疑われたときに最善の一手を打つこと。

Review Article

Heads-up surgery—内視鏡下耳科手術と外視鏡下耳科手術

著者: 欠畑誠治

ページ範囲:P.1038 - P.1050

Summary

●顕微鏡下耳科手術の問題点として,「死角」の存在と,術者に負担を強いる「手術時の姿勢」がある。内視鏡下耳科手術と外視鏡下耳科手術はこれらの問題点を解決し,heads-up surgeryという新たなパラダイムへの道を拓いた。

●経外耳道的内視鏡下耳科手術では,術者の正面に術野を,その延長線上にモニターを置くというきわめて自然な姿勢で手術を行える。

●外視鏡は顕微鏡を覗き込むというくびきから術者を解放した。また小型かつ自由度の高いカメラによりワーキングスペースが広くなり,術野も確保しやすいなどの利点がある。

●モニターで内視鏡の画像と外視鏡の画像を瞬時に切り替えたり,2画面表示させたりすることが可能になる。両者の使用によりシームレスなheads-up surgeryが可能となる。

原著

ムンプスウイルスが原因と考えられた小児前庭神経炎症例

著者: 杉山智宣 ,   吉田沙絵子 ,   菊池さおり ,   飯野ゆき子

ページ範囲:P.1051 - P.1054

はじめに

 小児のめまいは成人の1%程度の有病率1)とされる。そのなかでも,前庭神経炎が占める割合は20%ほど2,3)であることから,小児前庭神経炎は稀な疾患と考えられる。前庭神経炎の病因としてウイルス感染が一因と考えられているが,ウイルス感染が証明された症例は多くはなく,ムンプス感染が小児前庭神経炎の原因とされる症例は今までに報告はない。今回,ムンプス感染症が原因と考えられた小児前庭神経炎症例を経験したので報告する。

顎下腺唾石症を伴った茎状突起過長症の1例

著者: 佐伯忠彦 ,   小川晃弘 ,   春名威範

ページ範囲:P.1055 - P.1059

はじめに

 茎状突起過長症は,過長な茎状突起により,のどの違和感,頸部痛や耳痛などの多彩な症状を呈する疾患である1)。診断は問診,触診,画像診断の所見を総合して行われるが,茎状突起過長症の存在を念頭に置くことが最も重要といえる2)。今回われわれは,同側の顎下腺唾石症を伴った茎状突起過長症の稀な1例を経験したので報告する。

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目次

ページ範囲:P.969 - P.969

欧文目次

ページ範囲:P.971 - P.971

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1060 - P.1060

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.1064 - P.1064

 暮秋の候,皆様いかがお過ごしでしょうか? このあとがき,9月末に書いています。東京はようやくジャケットを羽織れるようになったばかり。異様に暑かった夏のせいで,随分と体力を消耗した気がします。これから迎える冬はどんな気候なのでしょうか? 実は小生,つい先ほどまでブドウを食べていました。猛烈に暑い夏を元気に過ごした日本のブドウ,非常にたくさんの品種がありますが,それぞれに個性があって楽しいです。夏暑くて冬寒く,温度差があるほど甘くなると言われますが,本当に素晴らしく美味しい。日本の果物の品質,味と香りは世界トップレベルですが,ブドウも間違いなくその1つですね。しかも種なしとか皮ごと食べられるとか,面倒くさがりの自分にはありがたい。今はピオーネとかシャインマスカットが人気ですが,子供の頃デラウェアが大好きでした。冷蔵庫で見つけたときの嬉しさ! ナントカえびせんみたいに,食べ始めると止まらないものの1つで,たくさんの実を一度に口に入れ頬張り,プチプチとかみしめたときの触感や酸味が混ざったジューシーな甘い味は今も覚えています。デラウェアはアメリカ原産ですが,種なし栽培に初めて成功したのは山梨県なんです。さすが日本屈指のフルーツ王国。近年は日本のワインもかなり美味しくなってきましたが,近い将来,世界のトップブランドになってほしいです。しばし味覚の秋。また冬は冬でたくさんの食材が旬を迎えます。いつまでも美味しいものを美味しいと感じながら食べていられる元気な体でありますように。

 さて今月の特集は,嚥下障害に対する手術療法です。13名のエキスパートに多種多様な手術手技の適応,選択,成功のためのコツ,トラブルシューティングなどをご執筆いただきました。ご多忙のなか,ご寄稿くださいました著者の先生方に心より御礼申し上げます。また本号では,内視鏡下と外視鏡下の耳科手術を切り拓き世界をリードされた欠畑誠治先生にReview Articleをご執筆いただきました。ご寄稿に感謝申し上げます。さらに興味深い内容の原著論文も掲載され,盛りだくさんの内容です。ぜひご一読くださいませ。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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