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雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科95巻13号

2023年12月発行

雑誌目次

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

周術期の休止薬剤リストと休薬期間中の対応

著者: 谷口新

ページ範囲:P.1106 - P.1109

POINT

●術前使用薬の継続と中止のリスクとベネフィットを理解して判断する。

●抗血栓薬は抗凝固薬と抗血小板薬に分類される。それぞれの特性を理解する必要がある。

●エストロゲン・プロゲステロン製剤は血栓症のリスクを高める。

●経口血糖降下薬のなかには,アシドーシスを引き起こすものがある。

手術時に必須な確認事項

著者: 菊地龍明

ページ範囲:P.1110 - P.1116

POINT

●左右誤認手術のうち頭頸部手術の占める割合は大きい。手術部位マーキングは手術部位そのものか手術部位の近くに行い,覆布を掛けたあとも視認できることが重要である。

●タイムアウトでは,術者が述べた患者氏名や手術部位が正しいか,手術同意書と照合することが重要である。

●カウント間違いが起こりやすいため,X線造影糸入りガーゼを使用し,術後のX線確認を組み合わせて遺残の有無を判断する。

●術後引き継ぎでのブリーフィングは患者の予後を改善する。個別事例ごとに具体的な術後指示を行う。

植込み型医療機器を持つ患者への手術デバイス使用に関する注意点

著者: 森崎綾

ページ範囲:P.1118 - P.1121

POINT

●手術デバイスは高周波などのエネルギーを利用した電気手術器である。

●電気メスは高周波交流電流による電磁干渉(EMI)を起こし,周辺機器に誤動作を起こす危険がある。

●植込み型医療機器は生体に電気刺激を与え,生体機能を正常に維持する装置である。

●手術用エネルギーデバイス使用時には,それに合わせた植込み型医療機器の刺激出力の設定が適宜必要である。

手術部位感染の予防

著者: 椎名和弘

ページ範囲:P.1122 - P.1124

POINT

●手術部位感染(SSI)は手術操作が加わった部位に発生する感染症の総称である。

●耳鼻咽喉科領域では主に術後30日以内に発生した感染症を指す。

●SSIを引き起こす要因は患者要因,手術要因に分けられ,さまざまなものがある。

●創クラス分類に基づく予防抗菌薬の使用がガイドラインで勧告されている。

緊急事態発生時の対応—ノンテクニカルスキル(NTSs)の重要性とトレーニングの必要性

著者: 内藤善介 ,   井上莊一郎 ,   中川雅史

ページ範囲:P.1125 - P.1127

POINT

●緊急事態発生時の適切な対応が重要。

●ノンテクニカルスキル(NTSs)の必要性。

●リーダーシップの重要性と役割。

●チームワークと効果的なコミュニケーションの必要性。

●定期的なトレーニングとフィードバックの重要性。

頭頸部外科患者の術後ICU管理

著者: 望月俊明

ページ範囲:P.1128 - P.1131

POINT

●頭頸部腫瘍患者は基礎疾患を持つフレイル患者が多く,遊離皮弁を用いた再建手術が多いため,術後の気道・呼吸器合併症のリスクが高い。

●術後のICU入室は必須ではないが,喫煙歴,人工呼吸器の必要性,両側頸部郭清の術式,APACHE Ⅱスコア10点以上,大量輸血などの患者側リスクと,ICUの病床数や病棟のマンパワーなどの施設環境を考慮した適応判断が必要である。

●頭頸部腫瘍に対する遊離皮弁移植手術後のICU管理は,遊離皮弁の管理と全身管理がメインとなる。

●皮弁管理において術後の低血圧は避ける必要があるが,過剰輸液は避けるべきで昇圧薬の使用が有用である。

●全身管理のポイントは呼吸不全とせん妄の予防で,多職種によるチーム医療が有用である。

術後疼痛管理

著者: 近藤一郎 ,   吉村三恵

ページ範囲:P.1132 - P.1136

POINT

●診療報酬改定により,術後疼痛管理チームの必要性が高まっている。

●術後疼痛管理のターゲットとなる耳鼻咽喉科領域の術式は,頭頸部腫瘍に対する皮弁再建術が多い。

●術後少しでも痛いときは自己調節鎮痛法(PCA)のボタンを押してもらうよう指導する。

●エビデンスに基づいた多角的鎮痛(multimodal analgesia)管理を行う。

日帰り鼻科手術患者への対応

著者: 荒木康智

ページ範囲:P.1137 - P.1140

POINT

●世界的潮流である日帰り鼻科手術は,本邦でも近年増加傾向にある。

●日帰り鼻科手術にまつわる諸問題は世界的にも議論が多く,入院鼻科手術とは異なる問題点に対して施設ごとにさまざまな対応策が存在する。

●周術期の安全管理や長期経過を見据えたうえでの患者や手術の選定が最も重要である。

《術前患者評価と対応》

腎臓・高血圧疾患

著者: 田中克哉

ページ範囲:P.1074 - P.1077

POINT

●術前のCr値などによる推定GFR,尿蛋白,尿アルブミン値から,慢性腎臓病(CKD)の重症度を評価し,普段の血圧および降圧薬の種類の確認をしておく。

●周術期の急性腎障害(AKI)は術後心合併症や死亡のリスクとなり,術前にできるAKI予防の1つは腎機能に影響する薬剤の中止・変更である。

●術前Cr値 2mg/dL以上はRevised Cardiac Risk Index(RCRI)の項目であり,周術期の心血管イベントが上昇することを認識しておく。

●透析患者では,術前・術後の透析の計画,術前の貧血・電解質の確認をしておく。

循環器疾患

著者: 中尾元基 ,   永井利幸

ページ範囲:P.1078 - P.1082

POINT

●頭頸部外科手術は,主要心血管・脳血管合併症発症の中リスク(1%以上5%未満)に該当する。

●周術期リスクスコア(Revised Cardiac Risk Index:RCRI)が2項目以上該当する場合,運動耐容能評価および経胸壁心臓超音波検査のうえ,循環器内科にコンサルトする。

●12誘導心電図で異常を認める場合,循環器内科にコンサルトする。

●心血管・脳血管合併症リスク評価の観点から留意すべき循環器疾患を有する場合,循環器内科にコンサルトする。

糖尿病・代謝・内分泌疾患

著者: 永井義夫

ページ範囲:P.1084 - P.1087

POINT

●術前の高血糖は術後合併症のリスクとなる。

●スクリーニング検査のセット化や即日の確認の徹底が重要である。

●術前の血糖管理目標をHbA1c値で提唱し,7%以上であれば適切な対応が必要となる。

●周術期管理チームなど,多職種の連携でより安全な手術が期待できる。

呼吸器疾患

著者: 新井良

ページ範囲:P.1088 - P.1095

POINT

●周術期の術後肺合併症を減らすには,喘息,慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような呼吸器疾患の評価・管理が重要である。

●喘息の術前管理として,病歴・重症度の評価により適切な治療介入を行うことで,1秒量を予測値あるいは自己最高値の80%以上にすることを目標にする。

●COPDの術前管理として,肺機能検査,血液ガス分析,画像検査,血液検査などで重症度の評価をし,最適な治療介入により術後肺合併症を減少させることを目標にする。

●周術期におけるステロイドカバーは,外科手術の侵襲に応じたグルココルチコイドの補充スケジュールを検討する。

低栄養

著者: 矢田部智昭

ページ範囲:P.1096 - P.1099

POINT

●頭頸部がん患者の25%程度が診断時に低栄養であるとされ,低栄養の患者では術後合併症が生じる可能性が高くなる。

●低栄養の世界的な統一診断基準として,2018年末にGlobal Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準が発表された。

●術前に栄養スクリーニングツールを用いて栄養障害のリスクを評価する。

●栄養障害のリスクに応じた術前からの栄養療法が術後合併症の軽減に有用かもしれない。

肥満

著者: 白石としえ

ページ範囲:P.1100 - P.1104

POINT

●術前に肥満患者の病態を把握したうえで併存合併症を評価し,専門的な介入を実施することが望ましい。

●呼吸器合併症として閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)や肥満低換気症候群(OHS)の評価をし,必要に応じて術前に持続陽圧呼吸(CPAP)療法を導入する。

●高血圧などの循環器系疾患,糖尿病や脂質異常などのメタボリック症候群,うつなどの精神疾患も有病率が高い。

●困難気道に対処するために,困難度の評価や体位の最適化(ramp体位)など,万全の準備が必要である。

原著

水痘帯状疱疹ウイルスによる混合性喉頭麻痺(Schmidt症候群)を呈した1例

著者: 森内亨 ,   晝間清 ,   多村悠紀 ,   小森学

ページ範囲:P.1141 - P.1145

はじめに

 Schmidt症候群は,1892年にAdolf Schmidtによって報告された核性,または核下性に迷走神経,副神経が障害された混合性喉頭麻痺に名付けられた症候群である1,2)。今回われわれは,嗄声,嚥下困難,肩挙上困難を主訴に受診した,水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の再活性化により迷走・副神経障害を呈した混合性喉頭麻痺(Schmidt症候群)を経験したので,文献的考察を加え報告する。

ラブドイド形質を伴う唾液腺導管癌の1例

著者: 小池吉彦 ,   丹治峻之 ,   浅井俊成 ,   伊藤一洋 ,   佐藤綾香 ,   杉本亮 ,   刑部光正 ,   佐藤孝 ,   志賀清人 ,   栁川直樹

ページ範囲:P.1146 - P.1151

はじめに

 唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma:SDC)は全唾液腺腫瘍の約10%を占め,高齢者,男性,耳下腺に好発する高悪性度の腫瘍である。組織学的に乳管癌に類似し,明瞭な核小体と類円形の核,および好酸性の細胞質を有する腫瘍細胞が篩状構造や乳頭状・充実性の増殖パターンを示すのが特徴である。組織学的亜型として肉腫様亜型,富粘液亜型,浸潤性微小乳頭亜型などがあるが,稀ながらラブドイド様亜型を示すことがある1)。今回,われわれはラブドイド形質を伴う唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma with rhabdoid features:SDCRF)を経験したので報告する。

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目次

ページ範囲:P.1065 - P.1065

欧文目次

ページ範囲:P.1067 - P.1067

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.1152 - P.1152

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.1156 - P.1156

 4月のインド,6月のローマに続いてバリ(インドネシア)の国際学会にお招きいただきました。10月下旬,日本ではもう朝夕だいぶ冷え込みますが,こちらではまだホテルのお客さんは海水浴を楽しんでます。“East meets West”と題した頭頸部がんに関するroundtableにオランダ,イタリア,インドネシア,タイの先生とご一緒しました。ご存知のように,現在では,米国では中咽頭がんの大半が,本邦でも約半数がHPV関連ですが,ASEAN諸国では2〜3割,欧州でもまだ約3割だそうです。日本と同様に遺伝的にアルデヒド脱水素酵素活性が弱い人が多いASEAN諸国は兎も角,オランダやイタリアでも頻度が低いのは意外でした。同じ白人でもいわゆるsexual behaviorが違うのでしょうか。

 一方,ローマでは高齢者の頭頸部がんに関するパネルディスカッションに参加しました。本邦同様,欧米諸国でも高齢化が進み,さまざまな併存症や臓器機能・認知機能の低下を抱える高齢者の治療に悩まされているようです。特に再建を伴う長時間の手術では術前・術中・術後の管理は大変です。

人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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