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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科95巻2号

2023年02月発行

雑誌目次

特集 アレルギー疾患を広く深く診る 《総論》

アレルギー反応のメカニズム

著者: 後藤穣

ページ範囲:P.102 - P.106

POINT

●アレルギー性鼻炎はⅠ型アレルギー反応の典型である。

●喘息は気道炎症が病態の中心であり,好酸球浸潤が特徴である。

●アレルゲン特異的なアレルギー反応に加えて,環境因子による自然リンパ球が誘導する炎症反応が関与している。

検査法とその評価

著者: 意元義政

ページ範囲:P.108 - P.111

POINT

●現在アレルギー性鼻炎の患者数は増加傾向にあり,多数のアレルゲンに感作されている患者も多い。

●1型アレルギー疾患の治療には,原因となるアレルゲンの同定が重要である。

●原因となるアレルゲンの同定により,アレルゲン曝露の回避が可能となり,症状の改善や的確な投薬など,診療効率を上げる第一歩となる。

●アレルゲン同定のための検査の特性を理解することは,アレルギーの病態把握につながる。

予防と治療のオーバービュー

著者: 櫻井大樹

ページ範囲:P.112 - P.115

POINT

●アレルギー疾患の有病率の上昇,複雑化や重症例の増加,低年齢化が進んでいる。

●アレルギー疾患の発症予防と重症化予防は重要な課題である。

●国からアレルギー疾患対策基本法の公布と,アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針が発出されている。

●耳鼻咽喉科のアレルギー診療において,適切な治療と正しい情報の提供が重要であるとともに,予防治療や根本治療の発展も目指していくことが求められている。

《各種アレルギー疾患の基礎知識》

アレルギー性鼻副鼻腔疾患—アレルギー性鼻炎/好酸球性副鼻腔炎/好酸球性多発血管炎性肉芽腫症/アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎

著者: 代永孝明 ,   上條篤

ページ範囲:P.116 - P.120

POINT

●アレルギー性鼻炎は鼻粘膜のⅠ型アレルギー性疾患で,発作性・反復性のくしゃみ,水様性鼻漏,鼻閉を3主徴とする。

●好酸球性副鼻腔炎は鼻茸,嗅覚障害,気管支喘息の高率な合併を特徴とし,易再発性である。

●好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は好酸球増多が目立つ重症喘息が数年先行したのちに発症する全身性の小血管炎であり,初期段階で好酸球性副鼻腔炎をほとんどの症例に合併する。

●アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎は真菌に対するアレルギー反応により発症し,副鼻腔粘膜や鼻茸中に好酸球の浸潤が認められる,再発率の高い難治性鼻副鼻腔炎である。

アレルギー性口腔・咽頭疾患(口腔アレルギー症候群)

著者: 大澤陽子

ページ範囲:P.121 - P.127

POINT

●口腔アレルギー症候群は交差反応による食物アレルギーで,口腔症状だけでなく,全身症状(アナフィラキシー)を伴うことがある。

●本邦の口腔アレルギー症候群は,カバノキ科花粉やイネ科花粉による花粉・食物アレルギー症候群が多い。

●ラテックスアレルギーの患者は,バナナ・アボカド・クリ・キウイで口腔アレルギー症状を起こしやすい。

●大豆の花粉・食物アレルギー症候群は,アナフィラキシーを起こしやすく,診断にGly m4(大豆コンポーネント)の測定が有用で保険収載されている。

小児アレルギー疾患—アレルギーマーチ/食物アレルギー/アトピー性皮膚炎/気管支喘息

著者: 藤多慧 ,   田知本寛

ページ範囲:P.128 - P.132

POINT

●アレルギー疾患はそれぞれに関連性があり,包括的な管理が必要である。

●食物アレルギーは,詳細な問診と種々の検査から被疑食を同定後に,状態に見合った管理・治療を行っていく。

●アトピー性皮膚炎はitch scratch cycleからの脱却を目的とするため,薬剤選択とともに皮膚洗浄も重要である。

●気管支喘息の治療は急性期と慢性期に分かれており,発作予防には薬剤治療以外に規則正しい生活や体力作りが必要である。

アレルギー性呼吸器疾患—気管支喘息/アスピリン喘息/アレルギー性気管支肺真菌症/過敏性肺炎

著者: 小須田彩 ,   永田真

ページ範囲:P.134 - P.139

POINT

●気管支喘息では2型気道炎症が持続的に存在し,変動性をもった気道狭窄による症状を呈する。吸入ステロイド薬を中心とした薬物治療とともに,感作アレルゲンや増悪因子の回避,吸入手技の指導,合併症の管理も重要である。

●アスピリン喘息は酸性非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)により増悪が生じるため,使用する薬剤に注意する必要がある。

●アレルギー性気管支肺真菌症は非可逆性の気道破壊をきたすため,早期発見と管理が重要である。

●過敏性肺炎では職業や自宅環境を含む詳細な病歴聴取と,管理では病因アレルゲンの回避が重要である。

アレルギー性皮膚疾患—成人アトピー性皮膚炎/接触皮膚炎/蕁麻疹/重症薬疹

著者: 加藤則人

ページ範囲:P.140 - P.144

POINT

●成人アトピー性皮膚炎の治療の基本は,炎症を制御する薬物療法,皮膚バリア機能を補うスキンケア,悪化因子の検索と除去である。

●アレルギー性接触皮膚炎の原因検索には,パッチテストが重要である。

●蕁麻疹の多くは原因不明の特発性で,治療の基本はヒスタミンH1受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬)を中心とした薬物療法である。

●重症薬疹には,Stevens-Johnson syndrome,中毒性表皮壊死融解症,薬剤性過敏症症候群がある。

アレルギー性結膜炎

著者: 海老原伸行

ページ範囲:P.145 - P.150

POINT

●スギ・ヒノキによる花粉性結膜炎の有病率は男性32.4%,女性34.7%であり,国民病である。

●季節性・通年性アレルギー性結膜炎の主症状は「痒み」であり,QOLを低下させる。

●春季カタルは年少者に多く,免疫抑制薬点眼液が著効する。

●アトピー性角結膜炎の慢性期では結膜上皮の扁平上皮化生,杯細胞の消失を認め,ドライアイを呈する。

職業・環境アレルギー

著者: 久田剛志

ページ範囲:P.151 - P.155

POINT

●アレルギー,喘息の発症・重症化には,遺伝因子と環境因子が複雑に影響し合っている。

●exposomeは,アレルギー疾患の発症・重症化など,健康に悪影響を与える環境因子の総称であり,近年注目されている。

●職業性喘息は,特定の労働環境で特定の職業性物質に曝露されることにより発症する喘息である。

●原因となるアレルギー物質を同定して職場環境から除去する努力が必要である。

《知っておきたい対処法》

薬剤アレルギーへの対処法

著者: 山口正雄

ページ範囲:P.156 - P.160

POINT

●薬剤アレルギーは免疫が介在する有害薬物反応である。

●薬剤の副作用全体の5〜10%を占める。

●症状の原因として薬剤の可能性を思いつくことが重要である。

●原因薬剤の特定が,以降の原因薬剤の回避,代替薬選択のために重要である。

アナフィラキシーへの対処法

著者: 鈴木慎太郎

ページ範囲:P.161 - P.166

POINT

●アナフィラキシーショックは生命を脅かす急性病態であり,迅速な対応,治療・管理が求められる。皮膚・粘膜症状を欠くこともある。

●最も重要なことは,適応となる症状や徴候を認めた際にアドレナリンをためらわずに筋注することである。

●再発に備え,アナフィラキシーの誘因(原因)の検索が必要であることを患者に伝え,アドレナリン自己注射液(エピペン®)を積極的に処方する。

●アレルギー専門医と連携がとれる体制を構築しておく。

●『アナフィラキシーガイドライン』が2022年に8年ぶりに改訂された。

原著

鼻前庭に発生した血管平滑筋腫の1例

著者: 佐伯忠彦 ,   小川晃弘 ,   春名威範

ページ範囲:P.167 - P.171

はじめに

 平滑筋腫は,①女性生殖器(子宮)や消化管などに発生する平滑筋腫(leiomyoma,solid leiomyoma),②血管壁の平滑筋より発生する血管平滑筋腫(vascular leiomyoma,angioleiomyoma),③立毛筋や皮膚に発生する平滑筋芽腫(epithelioid leiomyoma,leiomyoblastoma),の3タイプに分類されている1)。平滑筋腫の多くは子宮から発生する子宮筋腫である。一方,血管平滑筋腫は主に静脈の血管平滑筋から発生し,好発部位は四肢の皮膚や皮下組織であり,頭頸部領域では比較的稀とされている2〜4)。今回われわれは,鼻前庭に発生した血管平滑筋腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

上顎癌治療後に判明した神経内分泌癌の頸部転移症例

著者: 福家智仁 ,   山田弘之 ,   金児真美佳 ,   小林大介 ,   竹市憲人

ページ範囲:P.172 - P.177

はじめに

 神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN)は全身に生じうる腫瘍であり,膵・消化管領域ではneuroendocrine tumor(NET)あるいはneuroendocrine carcinoma(NEC)として分類される。頭頸部領域に発生するものは,組織検査での核分裂像により高分化・中分化・低分化NECに分類され,鼻副鼻腔領域でかつては小細胞癌として報告された症例もある。希少病態であり病理診断も容易ではないため,生検で扁平上皮癌や腺癌などと診断されながら,切除標本の組織診断ではじめてNECと確定することも少なくない。今回,上顎洞の生検では扁平上皮癌と診断されながら,原発巣の治療後に出現した頸部リンパ節転移の組織診断でNECと修正すべき症例を経験したので,文献的考察を中心に報告する。

頸部郭清術後合併症の危険因子についての検討

著者: 今成隼人 ,   坂下智博 ,   杉浦文康 ,   三澤隆一

ページ範囲:P.178 - P.181

はじめに

 頸部郭清術はさまざまな頭頸部癌に対する外科的治療のなかで,重要な役割を果たしている。一方で,頸部郭清術では術後の合併症として血腫,神経障害,リンパ漏,乳び漏などが知られており,その発症が患者の術後のquality of life(QOL)に大きく関与する。しかしながら頸部郭清術全般に対して,合併症の危険因子を検討した報告はそれほど多くない。

 頸部郭清術における術後合併症の頻度とその危険因子を明らかにすることを目的とし,われわれが直近3年間で経験した頸部郭清術症例の術後合併症の危険因子について検討した。

当科で経験した副耳下腺腫瘍の3例

著者: 清水昭一朗 ,   粟倉秀幸 ,   山本一宏

ページ範囲:P.182 - P.187

はじめに

 副耳下腺はステノン管に沿って,主耳下腺から独立して耳下腺前方および咬筋外側に位置する異所性の唾液腺である。日本人(成人)の約30〜70%に存在する1)と報告されており,耳下腺本体と同じ組織からなる。

 発生する腫瘍の病理組織型は耳下腺腫瘍と同様であるが,その発生率は全耳下腺腫瘍のうち1〜7%ときわめて少ない2)。また,耳下腺腫瘍における悪性腫瘍の頻度が15〜30%程度であるのに対して,副耳下腺腫瘍では42〜52%と頻度は高い3)。当院において副耳下腺腫瘍を3例経験したため,文献的考察を加えて報告する。

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目次

ページ範囲:P.97 - P.97

欧文目次

ページ範囲:P.99 - P.99

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.188 - P.188

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.192 - P.192

 2023年を迎えて早一月。寒い毎日ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。相変わらずのコロナ禍にはもううんざり。レギュレーションが厳しいままの日本の医療機関に勤務する身としては,自由気ままな飲食や外出,特に海外出張を渇望しています。医学生も,例えば部活動に勤しみたくとも大会はおろか練習も満足にできない状況が持続し可哀そうです。限られた学生時代の貴重な時間を,これから一生のお付き合いになる友人とできるだけ充実させてほしいと願います。学生時代にスキー部員だった自分は,この冬の時期は多くの時間を雪山で過ごしました。合宿所で何十泊も寝食を共にした仲間との結束は今でも強固です。当時,今では日本睡眠学会をリードしている川崎市の某先生が1学年先輩でいらして,それこそ朝から晩まで体育会的にご指導頂き,正直辛いときもありましたが,すべてが自分にとっての大きな財産となっています。今年こそはコロナに対するレギュレーションが少しずつでも緩和され,本来の明るくて楽しい日常に戻りますように!

 さて,今月の特集はアレルギーです。アレルギー疾患に対しては,耳鼻咽喉科領域のみならず,内科,小児科,皮膚科,眼科領域疾患にまたがる幅広い知識に基づいた総合的な診療が求められます。2014(平成26)年に施行されたアレルギー疾患対策基本法に則った行政のサポートも受け,さまざまな分野の先生方がアレルギー疾患への対策を推し進めていらっしゃいます。本稿ではエキスパートの先生方に,われわれがアレルギー診療を広め・深めるために必要な知識をご執筆頂きました。お忙しいなかご寄稿下さり心より御礼申し上げます。他科の先生方には貴重な論文をご執筆頂き感謝しかありません。皆様にはご熟読頂き,明日からのアレルギー診療に反映して頂ければ幸いです。また今月号は原著論文4本も掲載されています。いずれも頭頸部腫瘍に関する大変興味深い報告です。ご一読頂ければと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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