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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科95巻4号

2023年04月発行

雑誌目次

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル 《総論》

睡眠時無呼吸症候群の病態

著者: 陳和夫

ページ範囲:P.294 - P.298

POINT

●主な睡眠呼吸障害には閉塞性睡眠時無呼吸(OSA),中枢性睡眠時無呼吸,睡眠関連低換気障害がある。

●OSAの頻度は高く,治療が必要な中等症以上の患者は成人男性の約20%,閉経後女性の約10%に及ぶ。

●高血圧,糖尿病などの生活習慣病や,虚血性心疾患,心房細動がある患者のOSAの頻度はさらに高くなる。

●無呼吸・低呼吸が睡眠1時間あたり30回以上あると予後は悪化する。

睡眠時無呼吸症候群が社会に与える影響

著者: 和田裕雄 ,   谷川武

ページ範囲:P.299 - P.304

POINT

●睡眠時無呼吸症候群およびその併存症はabsenteeismあるいはpresenteeismの原因となり,また,医療コストの増加要因となる。

●睡眠時無呼吸症候群そのものの症状は個人レベルのパフォーマンスの低下と関連する。

●睡眠時無呼吸症候群があると社会経済状況が悪化し,また,低い社会経済状況は睡眠時無呼吸症候群の発症と関連するため,両者が悪循環を形成し,社会格差の原因となっている。

●睡眠時無呼吸症候群の予防および医療は,社会格差解消の一助となっている可能性がある。

睡眠呼吸障害の検査とその見方

著者: 大岡久司 ,   河内理咲

ページ範囲:P.305 - P.311

POINT

●睡眠呼吸障害の終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)波形を理解し,携帯用装置の自動解析の信頼性を確認したうえで,手動解析したい。

●携帯用装置のチャネルである末梢動脈波測定(PAT)の特性を紹介する。

●小児の睡眠呼吸障害に対するPSG以外の判断法を紹介する。

《各種治療の適応とその効果》

薬物治療/体位変換治療

著者: 西村洋一 ,   ,   ,   鈴木雅明

ページ範囲:P.312 - P.320

POINT

●閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の発症は多因子由来であるゆえに単一治療法での根治治療が困難であり,エンドタイプ,フィノタイプに沿った「個別化治療」が必要である。

●治療オプション(選択肢)の1つに「体位変換治療」がある。

●新たな治療オプションである「薬物治療」に期待が高まる。

●「薬物治療」は解剖を補正しない。すなわち「手術治療」は不滅である。

●治療薬にも持続気道陽圧(CPAP)と同様に継続率,合併症を含めた「アクセプタンス」の課題がある。

●治療薬の開発は「時間」「予算」「リサーチマインド」が必要である。

CPAP治療

著者: 原浩貴

ページ範囲:P.322 - P.330

POINT

●日本での経鼻的持続陽圧(CPAP)治療の保険診療上の適応は,自覚症状が強く,日常生活に支障がある症例で,AHI≧40であれば検査施設外睡眠検査(OCST)による診断でも導入できる。

●CPAP治療のアドヒアランス向上のキーポイントは患者教育と副作用対策である。

●患者教育では,閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)発症の原因,治療の必要性,他の治療でなくCPAP治療が適応になる理由を説明し,納得させることが重要である。

●代表的な臨床上の副作用は,インターフェース関連や治療圧関連が主であり,特に耐圧性の問題については耳鼻咽喉科医師による鼻呼吸障害への対処が重要である。

手術療法—鼻科手術/咽頭手術

著者: 柳原健一

ページ範囲:P.332 - P.336

POINT

●2021年に米国睡眠学会による成人閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対する手術ガイドラインが更新され,BMIが40未満で陽圧呼吸(PAP)治療不忍容の患者は,睡眠外科医にコンサルテーションを行うことを検討するよう強く推奨されている。

●いびき,OSAに対する咽頭手術は,1961年の池松の術式を皮切りに,時代の変遷とともに多くの術式が発案されてきたが,合併症や患者選択の問題から,慎重な適応判断を要する。

●鼻科手術はOSAの重症度を改善させる率は低いが,睡眠に関するQOLを改善させ,持続陽圧呼吸(CPAP)療法,口腔内装置(OA)療法を含めた保存的治療のアドヒアランスを改善させる。

●OSAに対する手術では術後合併症が多いことが報告されており,周術期管理に注意を要する。

歯科・口腔外科的治療—歯科・口腔外科の役割と個別化した医療連携をめざして

著者: 有坂岳大

ページ範囲:P.337 - P.341

POINT

●日本で閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対する保険診療が開始されて約20年が経過し,そのニーズも変化しつつある。

●口腔内装置は歯科を代表する治療で,さまざまな患者条件によりその使用法は異なる。

●睡眠外科では,口腔外科的な手術が最終段階として重要な位置づけとなっている。

●OSA治療は的確な医科歯科連携が個別化医療の要であり,患者から遺残症状を傾聴することが大切である。

舌下神経電気刺激療法

著者: 中島逸男

ページ範囲:P.342 - P.346

POINT

●睡眠医学のパイオニアといわれたChristian Guilleminault氏(2019年7月に逝去)によって,1976年に「睡眠時無呼吸症候群」が定義されてから40年以上が経過した。さまざまな研究を通して閉塞性睡眠時無呼吸症(obstructive sleep apnea:OSA)の病態の理解も深まり,現在では上気道の解剖学的要因のみならず,上気道の筋活動や呼吸調節などの機能的要因のバランス異常によって発症すると考えられている。

●国外においては,2014年からOSAの新規治療のひとつとして舌下神経刺激療法(hypoglossal nerve stimulation:HNSもしくはupper airway stimulation:UAS)が導入され,本邦では2018年に薬事承認を受け,2021年に保険収載された。

●本稿ではsleep surgeryにおける舌下神経刺激療法について,文献的考察を加えて概説する。

小児に対する治療戦略

著者: 井下綾子

ページ範囲:P.348 - P.355

POINT

●小児閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)の病態は年齢層,扁桃組織の肥大,鼻炎の状態などにより異なるため,適切な診断と治療選択が求められる。

●小児OSAの治療戦略の根幹は,口呼吸習慣の是正と鼻呼吸の獲得・維持で,小児期の誤った呼吸様式は,口腔機能の低下や顎顔面形態の劣成長を引き起こす。

●小児OSA児の口腔機能は低下していることが多く,その補完的治療として口腔筋機能訓練が着目されている。

《今後の展望》

遠隔医療

著者: 富田康弘

ページ範囲:P.356 - P.360

POINT

●遠隔医療はオンライン診療だけでなく,遠隔モニタリングなどさまざまな形で睡眠医療に役立つことが期待されている。

●新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行はオンライン診療の有用性が全世界で注目されるきっかけとなった。

●今後の日本で遠隔医療が発展するためには規制緩和が必要である。

●睡眠に関するビッグデータを活用することで,新たなエビデンス創出も期待される。

人工知能による診断・治療支援

著者: 中山秀章

ページ範囲:P.361 - P.365

POINT

●睡眠医療においても人工知能が利用され,その報告例が増加している。

●人工知能は,睡眠医療での疾患スクリーニング,病態分析,診断,治療の領域での可能性が示されている。

●ウェアラブル機器などの商用機器で,一般人での睡眠関連情報を評価するものが出てきている。

●将来的には,人工知能とビッグデータを組み合わせることで,睡眠医療における個別化医療の可能性がある。

Review Article

頭頸部がん治療の変貌と今後の課題—40年の経験から

著者: 菅澤正

ページ範囲:P.366 - P.379

Summary

●頭頸部がん治療は手術あるいは放射線治療など単一モダリティの治療から,それらを組み合わせた集学的治療に変化した。

●遊離組織移植の導入で手術適応は拡大し,術後機能も改善した。

●化学放射線療法は,機能温存治療として手術と並ぶ治療選択肢となり,年毎にその比率は増している。

●内視鏡画像の進歩により新しい疾患概念が生まれ,経口的切除の適応が拡大した。

●Enhanced Recovery After Surgery(ERAS)をはじめ周術期の管理法も,エビデンスに基づき大きく変更された。

●免疫チェックポイント薬の導入,ゲノム医療の発展により,頭頸部がん治療の選択肢は拡大した。

●手術技術伝承のためにも,電子カルテ時代に即した手術教育,手術記載が必要である。

お知らせ

第40回耳鼻咽喉科ニューロサイエンス研究会

ページ範囲:P.321 - P.321

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目次

ページ範囲:P.289 - P.289

欧文目次

ページ範囲:P.291 - P.291

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.380 - P.380

次号予告/増刊号予告

ページ範囲:P.381 - P.381

あとがき

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.384 - P.384

 厳しい寒さであった冬がようやく過ぎ,春めいた気候になってきました。皆さんはいかがお過ごしですか?

 耳鼻咽喉科頭頸部外科医にとって,3月は「花粉症で外来が忙しい時期」「3月3日は耳の日」などですが,昨年から学会主導で「耳鼻咽喉科月間」と命名され,さまざまな啓発活動がなされています。医局などにポスターが貼ってある施設も多いのではないでしょうか。日耳鼻ホームページを改めてみてみましたが,「生きるを彩る耳鼻咽喉科」と銘打って,日常診療にも役立つ情報が多く掲載されていました。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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