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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科95巻5号

2023年04月発行

雑誌目次

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル 1 耳鼻咽喉科医が処方する主な薬剤の種類と使い方

抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬の種類と使い方

著者: 河野正充 ,   保富宗城

ページ範囲:P.8 - P.12

ポイント

●抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬は抗微生物薬と総称され,感染症治療薬として重要である.

●抗微生物薬は各診療ガイドラインおよび手引きに従って,必要な症例に対し,適正に使用する1〜5)

●経口あるいは静注抗真菌薬は,侵襲性感染症に対して使用を検討する.

●抗ウイルス薬はウイルス増殖を抑制する薬剤であり,発症早期の使用が望ましい.

消炎・消炎鎮痛薬の種類と使い方

著者: 今井貴夫

ページ範囲:P.13 - P.17

ポイント

●非オピオイド鎮痛薬には,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とアセトアミノフェンがある.

●NSAIDsは炎症がある局所でのプロスタグランジンの産生阻害により,消炎鎮痛効果を示す.

●オピオイドの鎮痛効果は,中枢神経や末梢神経にあるオピオイド受容体を介して発現する.

副腎皮質ステロイド・アレルギー治療薬の種類と使い方

著者: 岡野光博 ,   金井健吾 ,   岡愛子

ページ範囲:P.18 - P.23

ポイント

●ステロイド薬は側鎖に付加されるヒドロキシ基やメチル基などによって抗炎症作用やNa蓄積作用が異なるので,個々のステロイド薬の効力や生物学的半減期を理解する.

●ステロイド薬の全身投与としては経口や注射(静注,筋注)があり,局所投与としては耳内(点耳,鼓室内注入),鼻内(点鼻,鼻噴霧),口腔・咽喉頭内(塗布,吸入),経皮(塗布)などがある.

●ステロイド薬の副作用は多彩であり,個人差もあるが,数日以内の早期に生じるもの,数週間後に生じるもの,数か月後に生じるもの,さらに晩発的に生じるものに分けることができ,投与後のフェーズに応じた副作用の発現に留意する.

●アレルギー治療薬にはケミカルメディエーター遊離抑制薬,ケミカルメディエーター受容体拮抗薬(抗ヒスタミン薬,抗ロイコトリエン薬,抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬),Th2サイトカイン阻害薬などがあり,さらに最近では抗IgE抗体などの生物学的製剤も用いられる.

漢方薬の種類と使い方

著者: 陣内賢 ,   田中耕一郎

ページ範囲:P.24 - P.28

ポイント

●体質,病態,処方薬の寒熱を検討する.

●漢方エキス剤は2剤の併用または西洋薬との併用を検討する.

●保険診療では適応症への配慮が必要である.

外用薬の種類と使い方

著者: 松原篤

ページ範囲:P.29 - P.32

ポイント

●塗布薬は,ワセリンなど油性基材を使用した軟膏と,水分やグリセリンを加えて乳化させたクリームに分けられる.創部には刺激の少ない軟膏を使用する.

●塗布薬は,配合されたステロイドの薬効と抗菌薬を理解して,使用部位や炎症の程度で使い分ける.

●鼓膜に穿孔を有する場合には,アミノグリコシド系抗菌薬を含有する外用薬の耳内使用は行わない.

向精神薬の種類と使い方

著者: 清水謙祐

ページ範囲:P.33 - P.42

ポイント

●耳鼻咽喉科患者に精神疾患の併存を認めた場合には,可能な範囲で精神疾患の診断と治療を行い,精神科医などとの連携を図るべきである.

●持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)は高率(93.2%)に精神疾患の併存を認め,多くは向精神薬による治療が必要である.

●抗うつ薬を用いる場合には,うつ病と双極性感情障害の鑑別が必要であるが,容易ではない.特に双極性感情障害の場合,抗うつ薬の投与で躁転する場合があり,注意すべきである.

●ベンゾジアゼピン系薬物は,たとえ頓用投与であっても常用量依存をきたすことがあるため,要注意である.

●患者の病状がよくならなくても落ち込むことなく,患者と自分自身に“希望”を処方することを忘れてはならない.

2 併用薬への対処法

抗凝固薬/抗血小板薬

著者: 松浦元 ,   深谷英平

ページ範囲:P.44 - P.47

ポイント

●非心臓手術周術期の抗血栓療法は,出血リスクと血栓リスクの層別化を行い,患者個々に応じて適切な抗血栓薬の管理を決定することが重要である.

●抗血栓薬の種類により術前の休薬期間が異なるため,各薬剤の特徴や拮抗薬の有無などを事前に把握しておく必要がある.

●周術期のヘパリン置換は,人工弁置換術後などで確実な抗凝固療法の継続が必要とされる場合以外は,出血助長の観点から原則として推奨されない.

糖尿病薬

著者: 大野隆行 ,   高橋紘 ,   西村理明

ページ範囲:P.48 - P.51

ポイント

●乳酸アシドーシスのリスクを考慮し,ビグアナイド薬は手術の2日前から投与を中止する.

●正常血糖ケトアシドーシスのリスクを考慮し,SGLT2阻害薬は手術の3日前から投与を中止する.

免疫抑制薬

著者: 池口亮太郎 ,   清水優子

ページ範囲:P.52 - P.55

ポイント

●免疫抑制薬は,自己免疫性疾患の治療や移植患者の拒絶反応予防において幅広く用いられている.

●免疫抑制薬特有の副作用や薬物相互作用があるため,使用する際に注意を払う必要がある.

●免疫抑制薬を使用している患者の診療を行う場合,免疫抑制薬を処方している診療科および薬剤部と密に連携をとることが重要である.

3 耳の感染症/炎症 《外耳》

外耳道炎・湿疹

著者: 山田浩之

ページ範囲:P.58 - P.60

処方のポイント

●投薬だけでは治療は完結しないため,耳かき習慣の中止を指導する.

●軟膏より点耳薬を選択する.

●漫然と抗菌薬・ステロイド点耳薬を処方しない.

外耳道真菌症

著者: 田渕経司

ページ範囲:P.61 - P.62

処方のポイント

●抗真菌薬を塗布する以前の耳処置で,外耳道内の真菌,耳漏,落屑物などを丁寧に除去し,耳内を清掃することが重要である.

●検出される真菌はAspergillus属,Candida属が多く,これら2つの属で外耳道真菌症のほとんどを占める.

●治療に難渋する可能性,また再発・再燃も多いことを頭に入れ,薬物の治療期間を考慮するとともに患者へも説明する.

悪性外耳道炎(頭蓋底骨髄炎)

著者: 高橋邦行

ページ範囲:P.63 - P.65

処方のポイント

●起炎菌を検索したうえで,ターゲットとなる細菌,真菌に対する薬剤を長期に投与する.起炎菌がはっきりしない場合は緑膿菌をターゲットにする.

●頭痛の消失,CRPの低下を参考に早期に抗菌薬を中止してはならない.

●非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)で疼痛コントロールができない症例は,麻薬性鎮痛薬の投与を考慮する.

《中耳》

急性中耳炎/急性乳様突起炎

著者: 渡部高久

ページ範囲:P.66 - P.72

処方のポイント

●15歳未満の急性中耳炎の診断・治療に対するガイドラインが,本邦でも2006年に初版が公表され,2018年には4回目の改訂がなされた.ペニシリン耐性肺炎球菌,アンピシリン耐性インフルエンザ桿菌を予防する観点から,ガイドラインが推奨するエビデンスに基づいた重症度分類と,その重症度に応じた適切な抗菌薬治療の選択が重要である.

●重症度分類のスコアリングシステムは,①年齢,②症状,③鼓膜所見からなり,特に鼓膜所見が最も重要な項目とされている.治療前の重症度判定のみならず,治療効果判定として適切な鼓膜所見の判断が適正な抗菌薬使用に重要である.

●2歳未満の乳幼児は重症化因子であり,その治療には注意を要する.

●急性乳様突起炎の治療方針はガイドラインに含まれていない.起因菌は急性中耳炎と同様であるが,初期治療は抗菌薬点滴が推奨されている.

滲出性中耳炎

著者: 笹野恭之 ,   小森学

ページ範囲:P.73 - P.76

処方のポイント

●周辺器官の感染に対する適切な治療が必要である.

●滲出性中耳炎のみに対しての漫然とした抗菌薬投与,ステロイド,抗ヒスタミン薬などの投与は長期的な有効性が認められず,避けるべきである.

●3か月間改善しない場合は,鼓膜換気チューブ留置の適応を検討する必要がある.

慢性中耳炎

著者: 田中康広

ページ範囲:P.77 - P.80

処方のポイント

●慢性中耳炎に対する薬物療法は中耳炎によって出現する症状を抑える治療であり,根本的な治療法は手術による外科的治療であることを理解する.

●薬物療法としては鼓室内への局所投与による点耳薬が有効である.

●反復する耳漏に対する頻回の点耳や長期にわたる抗菌薬の使用は,耐性菌が出現する原因となるため,長期間使用しないよう注意する.

好酸球性中耳炎

著者: 野村彩美 ,   佐々木亮

ページ範囲:P.81 - P.84

処方のポイント

●局所副腎皮質ステロイド治療と,抗ロイコトリエン薬,イブジラスト(ホスホジエステラーゼ阻害薬),好酸球抑制効果のある第二世代抗ヒスタミン薬の併用により,副腎皮質ステロイドの全身投与を避けられることがある.

●鼻症状が軽度でも鼻噴霧用ステロイド薬は併用する.

●気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎を合併している場合は,それらの治療を強化することで好酸球性中耳炎の症状の改善が期待できる.

ベル麻痺/ハント症候群

著者: 和佐野浩一郎

ページ範囲:P.85 - P.88

処方のポイント

●治療の基本となるステロイドはプレドニゾロン60mgから開始し,麻痺重症例においては点滴による高用量投与を検討する.軽症例の場合は重症化の可能性を考えたうえで低用量投与を検討する.

●抗ウイルス薬には腎機能障害をきたす可能性がある薬剤が含まれるため,その場合は年齢や腎機能に応じて処方する.

●角膜保護の点眼薬,および胃粘膜保護薬もしくは胃酸分泌抑制薬を併用する.

4 鼻副鼻腔の感染症/炎症

急性鼻副鼻腔炎

著者: 堀口茂俊

ページ範囲:P.90 - P.93

処方のポイント

●局所薬を用いた吸引・観察(鼻処置)が内服薬物治療と同等に重要である.

●軽症例では対症療法が中心となり,抗微生物薬(抗菌薬)は使用しない.

●抗菌薬はペニシリン系を第一選択とする.

慢性鼻副鼻腔炎

著者: 松根彰志

ページ範囲:P.94 - P.95

処方のポイント

●好酸球性副鼻腔炎との鑑別を行う.

●アレルギー性鼻炎,下気道疾患,歯科疾患の合併の有無を確認する.

●急性増悪時は感染症の有無を確認する.

真菌性鼻副鼻腔炎

著者: 戸嶋一郎

ページ範囲:P.96 - P.98

処方のポイント

●アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(AFRS)には,術後の局所処置(鼻噴霧ステロイド薬,鼻副鼻腔洗浄)と短期間のプレドニゾロン内服が有用である.

●浸潤型には,速やかな病変部の外科的除去と抗真菌薬の全身投与が重要である.

●浸潤型で起因菌がアスペルギルスの場合はボリコナゾールを,ムーコルの場合はアムホテリシンBリポソーム製剤が第一選択薬となる.

好酸球性副鼻腔炎

著者: 竹野幸夫 ,   川住知弘 ,   石川知慧

ページ範囲:P.99 - P.102

処方のポイント

●診断(JESRECスコア)と重症度分類,中等症以上例では指定難病申請を考慮する.

●手術療法を併用し,内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)による鼻腔形態の矯正と副鼻腔含気腔の単洞化を行うことも検討する.

●好酸球性浸潤を伴うType 2炎症の制御,副鼻腔炎が有する非感染性病態の側面に注目する.

5 口腔・咽喉頭の感染症/炎症

口内炎/難治性口腔咽頭潰瘍

著者: 高原幹 ,   林達哉

ページ範囲:P.104 - P.107

処方のポイント

●口内炎をきたす疾患はきわめて多彩である.

●基本的には局所薬物療法を行うが,原因により治療法が異なる.

●鑑別診断が重要である.

手足口病/ヘルパンギーナ

著者: 仲野敦子

ページ範囲:P.108 - P.109

処方のポイント

●手足口病もヘルパンギーナも予後良好な疾患で,治療の基本は咽頭痛や発熱に対する対症療法である.必要に応じて,解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)を処方する.

●乳幼児〜小児で脱水が疑われる例では,補液などが必要となる.

●手足口病の皮膚病変に対する処方は,通常は不要である.

●成人の手足口病は,小児例より咽頭痛が強いことが多い.

急性咽頭炎

著者: 大堀純一郎

ページ範囲:P.110 - P.112

処方のポイント

●A群β溶血性連鎖球菌(GAS)陰性の咽頭炎に対しては,抗菌薬の投与はせずに対症療法を行う.

●GASが原因の急性咽頭炎にはアモキシシリン投与が第一選択である.

●安易にニューキノロン系抗菌薬の投与を行わない.

扁桃炎/扁桃周囲膿瘍

著者: 中島逸男

ページ範囲:P.113 - P.116

処方のポイント

●扁桃炎の軽症例では,ただちに抗菌薬の投薬を行わず,対症療法を基本とする.

●扁桃炎の中等症例では,溶連菌感染の場合は重症化しやすく,合併症の恐れもあるため,ペニシリン系抗菌薬の投与を少なくとも10日間は行う.ペニシリン系抗菌薬の薬剤アレルギーがある場合はセフェム系抗菌薬とする.

●扁桃炎の重症例では,入院補液が可能な施設に紹介・移送し,ペニシリン系抗菌薬を中心とした点滴加療を行う.

●扁桃周囲膿瘍では,排膿処置と併せて好気性菌・嫌気性菌を幅広くカバーできる薬剤を選択する.起炎菌ならびに薬剤感受性確定後にはde-escalationを意識して対応する.

急性喉頭炎/急性喉頭蓋炎/急性声門下喉頭炎

著者: 山下勝

ページ範囲:P.117 - P.120

処方のポイント

●急性喉頭炎では対症療法薬の処方が中心となる.

●急性喉頭蓋炎に対しては抗菌薬,副腎皮質ステロイド製剤の点滴投与を行う.

●急性声門下喉頭炎では副腎皮質ステロイド製剤の全身投与,アドレナリンのネブライザー吸入が有効である.

6 唾液腺の感染症/炎症

急性化膿性唾液腺炎/反復性唾液腺炎

著者: 八木正夫

ページ範囲:P.122 - P.125

処方のポイント

●急性化膿性唾液腺炎は,シェーグレン症候群や唾石に併発するものを除けば,多くは脱水や衰弱を契機として発症する.特に高齢の術後患者などに多く,治療の基本は補液と静注抗菌薬投与である.

●急性化膿性唾液腺炎に対する治療薬については,明確なエビデンスはないが,黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などを原因菌と想定し,ペニシリン系抗菌薬が第一選択と考える.

●長期入院患者や抗菌薬投与中,あるいは投与直後の患者では,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)を想定した抗菌薬を考慮する.

●小児反復性耳下腺炎もエビデンスレベルの高い治療法がないため,口腔内常在菌である連鎖球菌を想定し,必要に応じてペニシリン系抗菌薬を投与する.

シェーグレン症候群

著者: 伊藤晴康 ,   黒坂大太郎

ページ範囲:P.126 - P.128

処方のポイント

●治療目標は乾燥症状を改善し,QOLの改善を図ると同時に,齲歯や角膜障害などの合併症を予防することである.

●対症療法が治療の中心となるので,薬物療法に加えて,非薬物療法や患者教育も重要である.

●反復性耳下腺炎に対する内服ステロイドの投与は短期間にとどめる.

IgG4関連疾患(涙腺・唾液腺炎)

著者: 高野賢一

ページ範囲:P.129 - P.130

処方のポイント

●IgG4関連疾患の多くはステロイド投与が標準治療であり,奏効する.

●維持投与が必要となる症例が多い.

●IgG4関連大動脈周囲炎を認める場合は,ステロイド投与は慎重な判断を要する.

線維素性唾液管炎

著者: 田宮亜希子 ,   山村幸江

ページ範囲:P.131 - P.133

処方のポイント

●本疾患ではアレルギーの関与が示唆されており,抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬の内服で効果が得られ,症状に応じて長期内服も可能である.

●ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(セレスタミン®)を長期内服したのちに突然中止すると,ステロイド離脱症候群を発症するため,漫然とした処方は避けるべきである.

●エビデンスには欠けるが,漢方の処方でも効果が得られる可能性がある.柴苓湯のほかには,小青竜湯や柴朴湯なども選択肢となる.長期内服が可能だが,稀ではあるもののアレルギー性肝障害や偽性アルドステロン症,間質性肺炎を発症することがあるため,定期的に血液検査で肝機能障害や電解質異常の有無を確認することが望ましい.

軟部好酸球性肉芽腫症(木村病)

著者: 伊東明子 ,   中屋宗雄

ページ範囲:P.134 - P.136

処方のポイント

●軽症例には,抗アレルギー薬を用いて効果をみるが,腫瘤が大きく症状が強い例や,増悪時にはステロイドの漸減内服を行う.

●再発を繰り返す例も多く,長期的な経過観察が必要で,ステロイドの頻回内服による副作用に留意する.

●重症化した症例や難治例には,集学的治療を考慮する必要がある.

7 甲状腺の感染症/炎症

急性化膿性甲状腺炎

著者: 森崎剛史 ,   藤原和典

ページ範囲:P.138 - P.140

処方のポイント

●口腔内常在菌,口腔常在性の嫌気性菌を標的とした抗菌薬を使用する.

●耐性菌の出現,再燃を防ぐため,十分な期間の抗菌薬使用を心がける.

●膿瘍を形成した場合は早急に外科的処置を検討する.

亜急性甲状腺炎

著者: 西秀昭 ,   熊井良彦

ページ範囲:P.142 - P.145

処方のポイント

●治療のベースは抗炎症薬の長期使用である.

●甲状腺中毒症にはβ遮断薬を併用する.

●甲状腺機能低下には甲状腺ホルモン製剤を併用する.

慢性甲状腺炎(橋本病)

著者: 北野睦三 ,   安松隆治

ページ範囲:P.146 - P.148

処方のポイント

●甲状腺機能低下症では補充療法が必要である.

●潜在性甲状腺機能低下症ではTSH値>10μU/mLでLT4製剤補充の対象となる.

●内服量を増減する際には,TSH値が新たなセットポイントに落ち着くまで6〜8週間を要することを認識しておく.

8 頸部の感染症/炎症

急性リンパ節炎

著者: 岸野毅日人

ページ範囲:P.150 - P.152

処方のポイント

●小児の細菌性疾患では,リンパ節炎のみか,随伴症状・所見があるかに留意する.

●小児例で咽頭炎を合併する場合の抗菌薬投与期間は,A群β溶血性レンサ球菌感染の検査を参考にする.

●伝染性単核球症例ではペニシリン系薬剤の投与を避ける.

亜急性壊死性リンパ節炎

著者: 眞方洋明 ,   折田頼尚

ページ範囲:P.154 - P.155

処方のポイント

●基本的には薬物療法は不要である.

●いつでも病理検査を行える状態で慎重に経過観察する.

●薬物療法を行う必要があると思われる症例に関しては,処方開始前に病理学的検査を行い,他疾患の可能性を否定する必要がある.

深頸部膿瘍

著者: 鹿島和孝

ページ範囲:P.156 - P.160

処方のポイント

●薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)対策として抗菌薬の適正使用が求められている.エンピリックな治療を開始するにあたり,想定される菌をカバーした薬剤を選択する.

●治療状況や細菌検査の結果をみながら最も狭域な抗菌薬を選択し,可能な限りde-escalationを進めていくことが重要である.

●薬物動態学/薬動力学(pharmacokinetics/pharmacodynamics:PK/PD)理論に基づき,抗菌薬の特性を生かした投与を心がける.

9 上気道感染症

かぜ症候群

著者: 柏木隆志

ページ範囲:P.162 - P.165

処方のポイント

●診断が遅れると重篤になる感染症を見逃さない.

●「かぜを早く治す」特効薬はないことを患者に説明し,不要な投薬は避ける.

●遷延性咳嗽と紛らわしい疾患を除外する必要がある.

インフルエンザ

著者: 濵田洋平 ,   青木洋介

ページ範囲:P.166 - P.169

処方のポイント

●インフルエンザは治療選択肢の多いウイルス性疾患であり,症状緩和や重症化・合併症防止のため,発症後48時間以内であれば抗インフルエンザ薬の投与が推奨される.

●重症例や肺炎症例ではバロキサビル,オセルタミビルやペラミビルが推奨され,外来患者や肺炎のない入院患者ではいずれの薬剤も選択肢となる.抗インフルエンザ薬の成分や剤型の違いを理解し,重症度や患者背景に応じて使い分けることが重要である.

新型コロナウイルス感染症

著者: 木村百合香

ページ範囲:P.170 - P.173

処方のポイント

●発症早期かつ重症化リスクのある患者では,抗ウイルス薬の適応がある.

●現在,わが国で使用可能な抗ウイルス薬はレムデシビル,モルヌピラビル,ニルマトレルビル/リトナビル,エンシトレルビルであり,前3者は重症化リスクを軽減する.後者は症状消失を短縮する効果が期待されているが,今後の臨床試験の結果を注視する必要がある.

●中和抗体は,オミクロン株への有効性は減弱していることから,抗ウイルス薬の投与が不可能な場合に使用を検討する.

伝染性単核球症

著者: 濱本隆夫

ページ範囲:P.174 - P.176

処方のポイント

●症状に応じた水分・栄養補充,解熱・鎮痛薬の投与,補液を行う.

●「二次感染予防」や「念のため」といった安易な抗菌薬投与は控える.

●細菌性感染の合併時は抗菌薬の使用を考慮する.

●抗菌薬の選択ではペニシリン系を避け,そのほかであっても皮疹や肝障害の可能性を考慮する.

結核

著者: 児玉達哉 ,   森本耕三 ,   吉山崇

ページ範囲:P.177 - P.179

処方のポイント

●必ず感受性のある薬剤を3剤以上使用する.

●治癒させるために十分な期間治療を継続する.

●規則正しく服薬すること.

非結核性抗酸菌症

著者: 榎本優 ,   大島信治

ページ範囲:P.180 - P.183

処方のポイント

●薬物療法の基本は多剤併用療法である.

●肺MAC症ではクラリスロマイシン(CAM)・エタンブトール(EB)・リファンピシン(RFP)の3剤併用が標準治療として推奨される.

●副作用への対応は,投与前後のモニタリングや投与法・代替薬の工夫が重要となる.

放線菌症

著者: 角田梨紗子

ページ範囲:P.184 - P.186

処方のポイント

●抗菌薬適正使用のためには,放線菌症の診断が重要である.

●ペニシリン系薬が第一選択薬である.

●混合感染の場合は,β-ラクタマーゼ阻害薬配合の抗菌薬も効果が期待できる.

マイコプラズマ肺炎

著者: 岩永直樹

ページ範囲:P.187 - P.190

処方のポイント

●第一選択薬はマクロライド系薬であり,治療抵抗性の場合はテトラサイクリン系薬の使用を考慮する.

●「成人肺炎診療ガイドライン」を参考にしつつ,マイコプラズマを含めた非定型肺炎の鑑別を考慮する.

●実際の処方にあたっては薬物相互作用に注意する必要がある.

10 性感染症

梅毒

著者: 有賀健治

ページ範囲:P.192 - P.195

処方のポイント

●抗菌薬治療開始24時間以内のJarisch-Herxheimer反応に留意する.

●第一選択薬はペニシリンであるが,ペニシリンアレルギーの場合はミノサイクリンが推奨される.

●神経梅毒の場合は他科との連携が必須である.

カンジダ症

著者: 上川善昭

ページ範囲:P.196 - P.200

処方のポイント

●口腔に保険適用のある抗真菌薬は内服だが,外用と同様に真菌に直接作用する.

●症状と発症部位に応じ,剤形を考慮して処方すると効果が高い.

●抗真菌薬療法の目的とゴールは,抗真菌薬により仮性菌糸形カンジダを除去し,酵母形カンジダのみにすることである.

●アゾール系抗真菌薬には併用禁忌薬,併用注意薬が多いので注意を要する.

HIV感染症

著者: 照屋勝治

ページ範囲:P.201 - P.205

処方のポイント

●1日1回1錠の治療が可能になっているが,服薬アドヒアランスが悪いと耐性化による治療失敗のリスクがあるため,継続的な患者教育が必要である.

●1〜2か月に1回の筋注で治療が可能な注射薬が登場したが,全例が適応となるわけではない.

咽頭クラミジア

著者: 瀬尾達

ページ範囲:P.206 - P.209

処方のポイント

●アジスロマイシンが,有効性,利便性ともに高く,最も推奨される.

●クラリスロマイシンも有効性が高いが,利便性に劣り,相互作用や併用禁忌薬剤にも注意する必要がある.また,妊婦には使用を避けたい.

●ミノサイクリンは,古典的治療で耐性菌が多いとの報告もあり,よほどの合理的理由のない限り使用を避けたい.

11 アレルギー性疾患

アレルギー性鼻炎

著者: 山田武千代

ページ範囲:P.212 - P.219

処方のポイント

●抗原の確認を行い,症状の程度から重症度を観察して,抗原回避,内服,鼻噴霧薬,抗アレルゲン免疫療法,抗体療法,手術療法の適応を評価し,ガイドラインに従い治療を行う.

●花粉症,通年性アレルギー性鼻炎はそれぞれ,くしゃみ発作または鼻漏の回数,鼻閉の程度により,治療法を確認して選択する.スコアが高い症状により鼻閉型,くしゃみ・鼻漏型,両症状が同程度の場合は充全型に分類され,治療法が異なる1)

口腔アレルギー症候群

著者: 松岡伴和

ページ範囲:P.220 - P.223

処方のポイント

●口腔アレルギー症候群(OAS)に対する治療の原則は原因食物の除去である.抗ヒスタミン薬は,誤食などで症状が出てしまった際のレスキュー薬として使用する.

●抗ヒスタミン薬の効果には個人差があるので,処方例にとらわれず,これまでに内服したことがあり効果を実感した薬剤があれば,それを第一選択としてもよいと考える.

●エピペン®は,アナフィラキシーの既往がある患者については必ず処方する必要があり,投与のタイミングについて教育のうえ携帯を促す.

喉頭アレルギー

著者: 阪本浩一

ページ範囲:P.224 - P.226

処方のポイント

●喉頭アレルギーの治療は,ヒスタミンH1拮抗薬が基本となる.

●効果不十分な場合に追加を検討する薬剤としては,点鼻ステロイド薬,吸入ステロイド薬,漢方薬がある.

●喉頭アレルギーには胃食道逆流症の合併が多くみられ,プロトンポンプ阻害薬の投与による治療的診断が行われる.

●喉頭アレルギーにはさまざまな病態が混在していることが多い.治療投薬による患者の症状の変化,所見の変化を評価しつつ治療法を変更していくことが重要である.

12 全身性自己免疫疾患

ベーチェット病

著者: 大木雅文

ページ範囲:P.228 - P.233

処方のポイント

●ベーチェット病は慢性再発性の全身性の炎症性疾患であり,疑った場合は全身的な評価のため,眼科,皮膚科,膠原病科などを中心に総合的に診察・加療する必要がある.

●症状や重症度,重篤な後遺症を残す可能性を考慮して治療法を選択する.

●皮膚粘膜病変には局所ステロイドで対応し,視力障害を残すような眼症状や生命予後に関与する特殊病型には全身ステロイド投与,免疫抑制薬,TNF阻害薬などによる薬物療法を行う.

サルコイドーシス

著者: 横井秀格

ページ範囲:P.234 - P.236

処方のポイント

●可及的に組織診断による確定診断のもとでの処方が求められる.

●一般的に将来の機能予後・生命予後の悪化が予想される場合に,ステロイドの全身投与の適応がある.

●ステロイドの全身投与が長くなる際,効果が乏しい際および漸減療法にて症状の悪化・再燃を認める症例に,免疫抑制薬単独またはステロイドとの併用投与を考慮する.

●耳鼻咽喉科領域のサルコイドーシスは,ステロイドの局所投与が主となる.ただし,気道狭窄などが生じる際は外科的な処置を行う.

多発血管炎性肉芽腫症

著者: 波多野瑛太 ,   吉川衛

ページ範囲:P.238 - P.241

処方のポイント

●多発血管炎性肉芽腫症(GPA)を疑う所見を認めた場合,早期診断を行い,全身型へ進展する前の早期治療が重要となる.

●標準治療はステロイドや免疫抑制薬が主体となるため,年齢や副作用を考慮して行う必要がある.

●GPAは寛解に至っても再燃することがあるので,長期の経過観察を要する.

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症

著者: 吉田尚弘

ページ範囲:P.242 - P.244

処方のポイント

●気管支喘息,好酸球性副鼻腔炎に類似した鼻症状で経過観察中に多発性単神経炎,発熱,心・消化器症状を生じて気づかれることが多い.早期診断,早期治療開始が大切である.

●重症度に応じて副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬(シクロホスファミド),メポリズマブの投与,また末梢神経症状の強いときには免疫グロブリン大量静注療法を行う.

13 難聴・めまい

急性感音難聴・突発性難聴

著者: 鬼頭良輔 ,   工穣

ページ範囲:P.246 - P.249

処方のポイント

●急性感音難聴の多くは,突発性難聴に準じた治療が実施されている.

●突発性難聴では,副腎皮質ステロイドを中心とした薬物治療が行われている.

●ステロイドの投与方法として,近年では鼓室内投与も選択肢となっている.

ステロイド依存性難聴

著者: 神崎晶

ページ範囲:P.250 - P.251

処方のポイント

●ステロイドに依存して改善ないしは悪化する変動性感音難聴であれば,本疾患を疑う.

●プレドニゾロン(PSL)40mgから開始し,15mgまでは4〜5日ごとに5〜10mgずつ漸減し,2〜3週間かけて10mgまで減らす.それ以降は2〜4週間ごとに1mgずつ漸減する.

●開始前はインフォームド・コンセントを行い,感染症,胃腸関連の副作用,血糖値高値などの副作用にはくれぐれも注意し,定期的に血液検査,採尿などを要する.

先天性サイトメガロウイルス感染症

著者: 山本修子 ,   船木孝則

ページ範囲:P.252 - P.254

処方のポイント

●先天性サイトメガロウイルス感染症の診断には,生後3週間以内の尿検体による核酸検出検査が必要である.

●症候性感染児では生後30日以内,遅くても2か月以内の抗ウイルス療法開始が推奨されている.

●抗ウイルス療法は好中球減少などの副作用の出現率が比較的高く,定期的な検査が必須である.

前庭水管拡大症/ミトコンドリア病

著者: 細谷誠

ページ範囲:P.255 - P.257

処方のポイント

●前庭水管拡大症・ミトコンドリア病に起因する急性感音難聴に対しては,突発性難聴に準じてステロイドによる加療を検討する.めまいに対しては抗めまい薬による加療を検討する.

●ミトコンドリア病においては,アミノ配糖体系抗生物質の使用歴を確認する.

●ミトコンドリア病に対してステロイドを使用する場合,糖尿病を合併していることがあり,血糖コントロールに注意する.

良性発作性頭位めまい症

著者: 藤本千里

ページ範囲:P.258 - P.260

処方のポイント

●耳石置換法が行えない患者に,急性期の薬物療法を行い,自然軽快を待つ.

●耳石置換法施行後,症状軽減目的に薬物療法を行う.

●再発予防目的に行う薬物療法については,最新の診療ガイドラインに記載はあるが,本邦ではまだ一般的でない.

メニエール病

著者: 將積日出夫

ページ範囲:P.261 - P.264

処方のポイント

●急性期めまい症例に対してめまいが高度な場合は,原則入院のうえで点滴治療を行う.

●めまいを伴う急性感音難聴については副腎皮質ステロイド薬の使用を考慮する.

●めまい発作後の間歇期には,発作予防として薬物治療が行われる.

前庭神経炎

著者: 井谷茂人 ,   稲垣太郎

ページ範囲:P.265 - P.268

処方のポイント

●初期はめまい症状が強くて内服が困難なことが多く,点滴治療がメインとなることが多い.

●嘔気・嘔吐に対しては,トラベルミン®やドラマミン®などの第1世代の抗ヒスタミン薬が有効である.

●慢性期には抗めまい薬,内耳循環改善薬,抗不安薬,ビタミン剤などの経口投与を行う.

●抗ウイルス薬の投与は,半規管麻痺の改善に対して効果は認めなかった.

持続性知覚性姿勢誘発めまい

著者: 堀井新

ページ範囲:P.269 - P.271

処方のポイント

●選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)あるいはセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)を用いる.

●向精神薬を投与する理由と投与初期の腹部症状を十分説明する.

●治療効果発現まで比較的長期間(1〜2か月)を要することを説明する.

耳鳴/聴覚過敏

著者: 高橋真理子

ページ範囲:P.272 - P.276

処方のポイント

●急性期疾患に伴う耳鳴は,原疾患の治療を行うことにより耳鳴の軽減や消失が期待できる.

●慢性耳鳴に対する薬物治療は,薬剤のエビデンスが認められていないため,効果がみられない場合には漫然と投与を継続することは避けるべきである.

●慢性耳鳴や聴覚過敏に対する薬物療法は,教育的カウンセリングや音響療法の補助的な役割とすべきである.

14 痛み・異常感

嗅覚障害

著者: 近藤健二

ページ範囲:P.278 - P.281

処方のポイント

●嗅覚障害のタイプに応じて薬物を選択する.

●気導性嗅覚障害では原因となる鼻副鼻腔炎の治療を行う.

●神経性嗅覚障害では各種の薬物療法に嗅覚刺激療法を組み合わせる.

味覚障害

著者: 田中真琴

ページ範囲:P.282 - P.284

処方のポイント

●「味覚障害」を保険適応症とする薬物はない.

●亜鉛補充療法は味覚障害に対して唯一エビデンスのある治療であるが,短期間では効果を認めず,少なくとも3か月間の継続投与が必要である.

●質的味覚障害に,ベンゾジアゼピン系薬物が有効なことがある.

舌痛症

著者: 豊福明

ページ範囲:P.285 - P.287

処方のポイント

●薬ですべて制圧しようとしない.

●至適最小用量をめざす.

●年単位のお付き合いを覚悟する.

顎関節症/口腔顔面痛

著者: 臼田頌

ページ範囲:P.288 - P.292

処方のポイント

●顎関節症は「顎関節炎」と「筋筋膜性疼痛症候群(筋筋膜痛)」を鑑別してから処方する.

●口腔顔面領域の痛みの原因として「筋筋膜痛からの関連痛」が非常に多く,その他の疾患に対する薬物療法を適切に行うためには,筋触診による「筋筋膜痛」の除外が必須である.

●「筋筋膜痛」の治療は患者自身による理学療法が主体となるので,それを支援する薬物療法は有効だが,薬に依存しないように十分な疾患教育を行う.

三叉神経痛/舌咽神経痛

著者: 森岡基浩

ページ範囲:P.294 - P.296

処方のポイント

●薬物治療は少量からスタートし,3〜5日おきに増量する.

●副作用としてめまい/ふらつき,さらにカルバマゼピン(テグレトール®)では顆粒球減少/薬疹にも注意する.

●痛みの増悪に従って薬剤を漫然と増量すると,ふらつきや眠気でQOLを損ねる可能性がある.

15 頭頸部がん

副鼻腔がん

著者: 四宮弘隆

ページ範囲:P.298 - P.300

処方のポイント

●鼻副鼻腔扁平上皮癌に対する動注化学放射線治療では,チオ硫酸ナトリウムによる確実な中和が重要である.

●動注化学放射線治療では腫瘍栄養血管の確実な同定が重要となる.

中咽頭がん

著者: 山村晃司 ,   齊藤祐毅

ページ範囲:P.301 - P.306

処方のポイント

●他の部位の頭頸部がんと同様に癌腫による症状の存在に常に注意する.

●根治治療の場合には支持療法を尽くし,根治治療が安全に完遂できるようにする.

●再発転移をきたした場合にはQOLを保ちながら生存期間延長を試みる.

喉頭がん/下咽頭がん

著者: 星裕太 ,   岡野晋

ページ範囲:P.307 - P.311

処方のポイント

●局所進行例に対する薬物療法のkey drugはシスプラチンを中心としたプラチナ製剤である.

●再発・転移例に対する初回薬物療法は,プラチナ製剤感受性とプラチナ製剤抵抗性で第一選択が異なり,前者ではPD-L1(combined positive score:CPS)の値により薬剤を検討する.

●免疫チェックポイント阻害薬投与後の化学療法(subsequent chemotherapy)は奏効割合が高い傾向にあるため,subsequent chemotherapyを施行するタイミングを逸しないことが大切である.

甲状腺がん

著者: 森谷季吉

ページ範囲:P.312 - P.316

処方のポイント

●甲状腺全摘後の甲状腺機能低下症に対する甲状腺ホルモンの補充,および甲状腺刺激ホルモン(TSH)抑制療法の維持.

●術後性副甲状腺機能低下症による低Ca血症に伴う急性期症状の予防と改善.

●永続性副甲状腺機能低下症に対する血清Ca値の維持療法.

唾液腺がん

著者: 岩城翔 ,   川北大介 ,   多田雄一郎

ページ範囲:P.317 - P.320

処方のポイント

●切除不能・再発転移唾液腺がんに対して薬物療法の実施を検討する.

●唾液腺がんは組織型が多彩であり,一部の組織型では分子標的薬などの有効性が報告されている.

●切除不能・再発転移の診断時点,または初回施行レジメンが無効と判断した時点で,がん遺伝子パネル検査を行うことが考慮される.

悪性リンパ腫

著者: 松岡広

ページ範囲:P.321 - P.324

処方のポイント

●きわめて多様な疾患単位を含み,症例ごとにさまざまな病態を呈する.そのなかに,迅速に(1週間単位で)診断を確定させて化学療法を開始すべき例が存在する.

●至適なタイミングと方法で生検を行うことがスムーズな治療開始のための最重要ポイントである.

●生検前のステロイド投与は避ける.

●血液内科医との連携が重要である.

16 がん治療の副作用・疼痛緩和

骨髄抑制

著者: 山崎知子

ページ範囲:P.326 - P.328

処方のポイント

●抗がん剤治療中,化学放射線療法中に骨髄抑制をきたすことがある.

●発熱性好中球減少症に注意を要する.

●治療終了後も骨髄抑制が遷延することがあるため,定期的な採血検査を行う.

白金製剤・分子標的薬による腎障害

著者: 小山泰司

ページ範囲:P.329 - P.332

処方のポイント

●腎機能障害を治療する確立した方法はなく,予防が基本である.

●腎機能障害を認めた場合には電解質異常の補正を行うことを忘れない.

●早期発見するための定期的なチェックが重要である.

白金製剤による消化器毒性

著者: 横田知哉

ページ範囲:P.333 - P.336

処方のポイント

●制吐薬の選択は,予定する抗がん薬の催吐性リスク,過去の制吐療法の効果,悪心・嘔吐の発現時期,患者背景因子や合併症を考慮して決定する.

●頭頸部がん領域で頻用されるシスプラチンは高度催吐性リスクがあるため,5-HT3受容体拮抗薬,NK1受容体拮抗薬,ステロイド薬,抗精神病薬などの複数の制吐薬を組み合わせた予防的投与を積極的に行う.

抗体薬・タキサン系抗がん剤によるinfusion reaction

著者: 尾上琢磨 ,   岩江信法

ページ範囲:P.337 - P.339

処方のポイント

●軽症例では,対症療法を行う.

●重症例では,エピネフリン(アドレナリン)の投与をためらわない.

抗EGFR抗体薬・免疫チェックポイント阻害薬による間質性肺炎

著者: 仲野兼司

ページ範囲:P.340 - P.342

処方のポイント

●早期の診断・治療開始ができるよう,疑わしい症例を拾い上げる体制を整える.

●他疾患(感染症)との鑑別を並行して行いながらステロイドを導入する.

●効果判定を数日おきに行い,有効であればステロイドの減量を,無効であれば他の薬剤追加を考慮する.

抗EGFR抗体薬による皮膚障害

著者: 藤山幹子

ページ範囲:P.343 - P.345

処方のポイント

●ざ瘡様皮疹には,初期にはステロイド外用薬,後期には抗菌外用薬を用いる.

●爪囲炎には適宜抗菌薬を使用する.

●乾燥には保湿薬を,乾燥性皮膚炎にはステロイド外用薬を使用する.

タキサン系抗がん剤による神経障害

著者: 岡﨑舞 ,   坂東裕子

ページ範囲:P.346 - P.349

処方のポイント

●抗がん剤治療開始前に神経障害のリスクを評価する.

●化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)は客観的に評価することがむずかしいため,患者の訴えをよく聞き,早期からの対応が重要である.

●症状が重症になると長期化するため,日常生活に支障をきたす前に抗がん剤の減量や休薬を検討する.

免疫関連有害事象

著者: 横山和樹 ,   本間義崇

ページ範囲:P.350 - P.353

処方のポイント

●免疫関連有害事象(irAE)の早期発見・早期対応のために,必要な検査項目と注意すべき症状を理解する.

●初期対応として,自分で対応しなければならないものと,専門医にコンサルトするものを理解する.

●非特異的な症状である倦怠感や軽微な皮疹は見過ごされる傾向にあり,注意して症状をフォローする.

●初期対応をしたが悪化傾向にあるirAEは直ちに専門医に相談する.

疼痛緩和

著者: 瓜生英興 ,   内龍太郎 ,   中島寅彦

ページ範囲:P.354 - P.357

処方のポイント

●頭頸部のがん性疼痛は,炎症,神経浸潤,治療関連などさまざまな要因があり,がん治療を継続するためにも適切な疼痛コントロールが必要である.

●早期より積極的にオピオイド鎮痛薬を使用する.

●オピオイドの選択は,投与方法や,患者の自立度など個別に検討し,丁寧な説明と副作用対策が重要である.

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目次

ページ範囲:P.2 - P.5

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.359 - P.359

あとがき

ページ範囲:P.360 - P.360

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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