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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科95巻7号

2023年06月発行

雑誌目次

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕 《音声障害に対する手術—喉頭微細手術》

顕微鏡下喉頭微細手術

著者: 杉山庸一郎

ページ範囲:P.486 - P.491

POINT

●最適な直達喉頭鏡の選択により良好な術野を展開する。

●手術に必要な鉗子類とその使用法について習熟する。

●microflap法のコンセプトと手術手技について確認する。

●microflap法の手術手技を応用する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月).

内視鏡下喉頭微細手術

著者: 原浩貴

ページ範囲:P.492 - P.497

POINT

●硬性内視鏡下に行う喉頭微細手術では,顕微鏡下喉頭微細手術と比較して,器具のセッティング,術中視野の特徴,手術手技などに従来法と異なるコツがある。しかし,喉頭微細手術の基本的なコンセプトは顕微鏡下手術と変わる点はない。

●声帯膜様部病変の切除時には健常組織への侵襲は最小限ですますこと,決して過剰切除をしないことを肝に銘じて手術に臨む必要がある。

《音声障害に対する手術—声帯内注入術》

コラーゲン注入術

著者: 松﨑洋海

ページ範囲:P.498 - P.500

POINT

●適応は,声帯レベル差がなく,かつ比較的小さい声門閉鎖不全の患者である。

●アテロコラーゲンは,すでに準備された製剤であるため,注入材料の採取は不要である。

●声門閉鎖不全に対する局所麻酔のオフィスサージャリーであるため,治療を受ける患者の種々の障壁が小さい。

●必要に応じて,同治療の追加を検討する。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月).

自家脂肪注入術

著者: 佐藤文彦 ,   栗田卓 ,   千年俊一

ページ範囲:P.501 - P.504

POINT

●声帯内注入術は,発声時に声門間隙を生じる疾患によい適応があり,嚥下障害治療の一環としても行われる。

●自家脂肪は安全性が確保されており,粘弾性は声帯粘膜に近いが,取り扱いが容易でなく,注入後に自然吸収するといった問題点もある。

●声帯内注入術では,病態に応じて喉頭の三次元立体組織解剖をイメージしながら注入部位と注入量を変えることが大切である。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月).

ヒアルロン酸注入術

著者: 楠山敏行 ,   中川秀樹

ページ範囲:P.505 - P.507

POINT

●硬度の異なる2種類のヒアルロン酸を使い分けて声帯内注入術を行っている。

●振動部の質量補正を目的としたソフトタイプ注入例では12か月間の有意な改善を示した。

●声帯の内方移動を目的としたハードタイプ注入例では24か月間の有意な改善を示した。

●個人輸入のデメリットがあるものの,①感染とアレルギー反応のリスクが低い,②外来で簡便に使用できる,③他手術の無効例にも適応がある,などの特長をもつ。

バイオペックス®注入術

著者: 齋藤康一郎

ページ範囲:P.508 - P.515

POINT

●発声時声門閉鎖不全に対する声帯内注入術に用いる物質のうち,バイオペックス®は吸収されにくい物質である。

●注入後に骨同様の強度を持つ注入塊となることから,声帯の容量を増加させ(augmentation),正中付近へ寄せる(medialization)というコンセプトにおいて,治療強度が高い。

●注入に際しては,練和液の量が硬化時間に大きく影響することを知って施術する。

●喉頭鏡で声帯に緊張をかけず,内視鏡下に注入することで,正確な注入を行うことができる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月).

《嚥下障害に対する手術》

内視鏡下輪状咽頭筋切断術

著者: 古川竜也

ページ範囲:P.516 - P.520

POINT

●低侵襲な嚥下機能改善手術として内視鏡下輪状咽頭筋切断術が普及しつつある。

●術中に必要なデバイス,スキルが外切開法と異なるため,経口的ビデオ喉頭鏡下手術(TOVS)などの経口的手術を多く実施している施設が導入しやすい。

●侵襲は低いものの,出血や感染時の対応が外切開法と異なる。

《良性疾患に対する手術》

喉頭乳頭腫

著者: 相良由紀子 ,   田山二朗

ページ範囲:P.522 - P.525

POINT

●喉頭乳頭腫の治療法は,本邦ではレーザーを用いた外科的治療が最も選択されている。

●Nd:YAGレーザーはCO2レーザーと比較して深部組織を蒸散するのに優れている。

副咽頭間隙腫瘍

著者: 宇野光祐 ,   荒木幸仁

ページ範囲:P.526 - P.531

POINT

●副咽頭間隙腫瘍に対する内視鏡併用経口的手術の報告が増えている。

●経口的手術の適応は定まっていないが,腫瘍下端が硬口蓋・翼突鉤より下方に位置し,咽頭内腔に張り出して,周囲との癒着のない単一病変はよい適応と考える。また,内頸動脈の前内方に位置する,血流が豊富でない,放射線照射歴を有さないことも考慮する。

●長径は約5cm程度の腫瘤に行われており,最大8cmまでの報告がある。

●手術の合併症の頻度は5〜10%程度で,合併症を回避するため,神経刺激装置やナビゲーションシステムを用いることが望ましい。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月).

下咽頭梨状陥凹瘻

著者: 寺西裕一

ページ範囲:P.532 - P.537

POINT

●下咽頭梨状陥凹瘻の根治治療は手術であるが,従来の外切開による瘻管摘出術のほかに経口的瘻管焼灼術や経口的瘻管摘出術がある。

●経口的瘻管摘出術は低侵襲かつ審美面に優れた術式であり,咽喉頭がんに対するtransoral videolaryngoscopic surgery(TOVS)を施行している施設では実施可能である。

●術中の判断で外切開法へ移行する可能性を考えておく必要がある。

●各術式の適応を理解し,術前検査結果に基づいて十分な説明を行ったうえで術式を決定するべきである。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月).

《悪性腫瘍に対する手術》

喉頭がん—Transoral laser microsurgery(TLM)

著者: 梅野博仁 ,   千年俊一

ページ範囲:P.538 - P.542

POINT

●声門がんに対する手術で使用する直達喉頭鏡は,斎藤式の小が喉頭展開に優れ,最も使用頻度が高い。

●声門上がんでは,術野とワーキングスペースの確保のため,Weerda型拡張式喉頭鏡を用いる。

●CO2レーザーを手術用顕微鏡に連結し,マイクロマニピュレーターを使用するtransoral laser microsurgery(TLM)では,低侵襲で精緻な手術操作が可能である。

●TLMを行う前に,喉頭解剖を熟知し,特に深部安全域の確保に注意する必要がある。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月).

下咽頭がん—内視鏡的咽喉頭手術(ELPS)

著者: 杉本太郎

ページ範囲:P.544 - P.549

POINT

●不要な出血の回避,適切な層での切除のためには生理食塩水の局所注射が重要である。

●深達度の浅いがんの切除時には筋膜,軟骨膜,上喉頭神経内枝を可及的に温存する。

●深達度の深いがんの切除時には上喉頭神経内枝を切断するが,上喉頭動脈が露出したらクリッピングする。

●輪状後部には出血しやすい小唾液腺の層が存在するが,深達度の浅いがんの切除時には切り込まないようにする。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月).

下咽頭がん—経口的咽喉頭部分切除術(TOVS)

著者: 四宮弘隆

ページ範囲:P.550 - P.553

POINT

●適切な開口器を用いて良好な視野を得ることが重要である

●内腔からみた解剖,特に層構造や血管の解剖を熟知して行う。

●narrow band imaging(NBI)により切除範囲を設定し,生食局注などを用いながら切除する。

●内視鏡と術者の干渉をうまくコントロールしながら行う。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2026年6月).

下咽頭がん—経口的ロボット支援手術(TORS)

著者: 藤原和典

ページ範囲:P.554 - P.557

POINT

●下咽頭がんに対するロボット手術は,咽頭の展開やロボットのセッティングの習熟がより重要となる。

●シングルポートのロボットなど新たな技術革新により,ロボット手術の適応拡大が期待される。

原著

上顎洞,口蓋扁桃,舌根,外耳道に生じた異時性4重癌

著者: 福家智仁 ,   山田弘之 ,   金児真美佳 ,   小林大介 ,   竹市憲人

ページ範囲:P.558 - P.562

はじめに

 画像検査などによる診断精度の向上と,的確な病態把握に準じた治療法の進歩が,癌の根治性を高め長寿に貢献するにしたがい,複数の癌治療を余儀なくされる多重癌の報告が増加している。特に,口腔・咽喉頭領域の悪性腫瘍は,喫煙や飲酒などが発癌の誘因となり,field cancerizationの概念から,しばしば同じ口腔咽喉頭領域,あるいは食道に同時性または異時性に重複癌が発見されやすい。一方で,同じ頭頸部領域であり同じ気道領域ともいえる鼻副鼻腔領域や聴器に重複癌が発生することは比較的稀である。

 今回,上顎癌治療後に口蓋扁桃・舌根に異時性の重複癌,さらに外耳道癌をきたした4重癌症例を経験したので報告する。

鼻前庭囊胞様所見を呈した静脈奇形例

著者: 橘智靖 ,   佐々木智章 ,   和仁洋治 ,   假谷彰文 ,   直井勇人 ,   安藤瑞生

ページ範囲:P.563 - P.566

はじめに

 The International Society for the Study of Vascular Anomalies分類(ISSVA分類)において,脈管異常は脈管性腫瘍と脈管奇形に大別される1)。脈管奇形はさらに単純型,混合型,主幹型,および関連症候群に分類され,静脈奇形は単純型に含まれる2)。鼻副鼻腔領域における静脈奇形は鼻腔内に病変が露出し,出血を契機に発見されることが多く,病変が皮下に存在し鼻前庭囊胞様所見を呈することは稀である3)。今回われわれは,鼻前庭囊胞様所見を呈した静脈奇形例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

抜歯,歯根端切除を行わずendoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)のみで根治した歯根囊胞例

著者: 福家智仁 ,   山田弘之 ,   金児真美佳 ,   小林大介 ,   竹市憲人

ページ範囲:P.567 - P.571

はじめに

 歯根囊胞は齲歯が進行し,歯髄,さらに根尖部に感染が波及し発生するが,上顎洞内に発生する歯根囊胞は無症状でも画像検査で偶然発見されることがある。根管治療や歯根端切除など歯科的治療で改善する場合もあるが,臼歯部など多歯根では頰側根のみにしかアプローチできないことから歯科的治療では限界と判断され,抜歯せざるをえない場合もある。今回,抜歯,歯根端切除を行わずにendoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)で加療した歯根囊胞の1例を経験したので報告する。

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目次

ページ範囲:P.481 - P.481

欧文目次

ページ範囲:P.483 - P.483

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.572 - P.572

あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.576 - P.576

 新型コロナウイルス感染症もいよいよ5月8日から5類扱いになりましたね。国内外の渡航制限も緩和されてきたので,さる3月にインド(アジア太平洋甲状腺外科学会),4月にワシントンDC(国際乳頭腫ウイルス学会)と久しぶりに海外の学会に参加してきました。パスポートをみると2019年3月に韓国に行って以来,実に4年ぶりの海外出張でした。久しぶりに海外出張してみるといろいろなことが変わっていました。以前から米国電子渡航認証システム(ESTA)はwebサイトから取得できましたが,インドもwebサイトでビザを申請できるようになっています。羽田やワシントンDCでは手荷物検査にCTが導入され,パソコンや携帯を手荷物から取り出さなくてよくなりました。新型コロナワクチンの接種証明書もマイナンバーカードがあればスマートフォンのアプリで取得でき,米国入国時には税関申告書の提出も不要。帰国時はスマートフォンでVisit Japan Webに登録しておけば,検疫・税関手続きもかなりスムースになっています。一番驚いたのは,インドの先生たちが発表時間をきっちり遵守していることでした。

 ワシントンDCでは,グローバルに展開しているヒト乳頭腫ウイルス(HPV)関連頭頸部がんの研究成果を報告してきました。近年,世界的にHPVが発症に関与した咽頭がんが急激に増加傾向にあります。既にわが国でも中咽頭がんの過半数を占め,米国では子宮頸がんを上回る勢いです。HPVワクチン接種は,子宮頸がんのみならず,中咽頭がんや喉頭・鼻副鼻腔乳頭腫の予防効果が期待されます。わが国でも欧米先進国と同様,HPVワクチンの定期予防接種は男女の区別なくすべての若者が対象となることが望まれます。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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