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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科95巻8号

2023年07月発行

雑誌目次

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント 《総論》

真菌の基礎知識

著者: 槇村浩一

ページ範囲:P.582 - P.586

POINT

●真菌とヒトはともにオピストコンタである。

●系統的に近縁であるため検出(診断)も治療も難しい。

●真菌は多様である。

●カビ・酵母・キノコに本質的な違いはない。

真菌の感染様式とその診断

著者: 渡邉哲

ページ範囲:P.587 - P.591

POINT

●真菌の感染様式には経気道,経皮,経腸管の3つがある。

●培養検査は時間を要し,感度も高くないが,起因菌同定に努めるべきである。

●細胞診,病理検査はきわめて有用であるが,菌種同定は困難であることが多い。

●各種血清検査の性能はおおむね高いとは言えない。

抗真菌薬の使い方と注意点

著者: 吉田耕一郎

ページ範囲:P.592 - P.595

POINT

●リポソーマルアムホテリシンBは安全性の改善が図られたが,アムホテリシンBに特有の副作用には注意を要する。

●フルシトシンは他の抗真菌薬との併用が原則である。

●アゾール系薬は比較的安全性は高いが,併用禁忌,併用注意の薬剤が多いので確認を要する。

●原因真菌がCandida parapsilosisと判明している場合はキャンディン系薬を選択しない。カンジダ眼症にはキャンディン系薬を用いない。

《各種真菌症の病態・診断・治療》

アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎

著者: 尹泰貴

ページ範囲:P.596 - P.601

POINT

●アレルギー性真菌性副鼻腔炎(AFRS)は鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の一種であり,真菌へのⅠ型アレルギー反応を主とするType 2炎症性疾患である。

●好酸球性副鼻腔炎とよく似た症状や所見を呈するが,AFRSでは片側病変が多い。

●AFRSは手術療法および術後の薬物治療が有効とされている。抗体製剤などの新規治療法も報告されており,さらなる研究報告が待たれる。

非浸潤性副鼻腔真菌症

著者: 藤井博則 ,   橋本誠 ,   山下裕司

ページ範囲:P.602 - P.606

POINT

●副鼻腔真菌症は急性浸潤性,慢性浸潤性,慢性非浸潤性に分類される。

●非浸潤性副鼻腔真菌症は最も頻度が高いとされ,上顎洞に好発する。

●CTにて集簇性に微小石灰化を伴うこと,MRIのT2強調画像で無信号領域を伴うことが特徴である。

●外科的摘出により予後良好な疾患であるが,浸潤性副鼻腔真菌症との鑑別のため,摘出の際に副鼻腔粘膜の生検は必須である。

浸潤性副鼻腔真菌症

著者: 佐々木崇暢

ページ範囲:P.608 - P.612

POINT

●高齢化が進む本邦では,浸潤性副鼻腔真菌症の診療機会が増加している。

●浸潤性副鼻腔真菌症の診断は,患者背景,症状,検査所見から総合的に判断する必要がある。

●拡大手術が治療の第一選択だが,内視鏡下鼻副鼻腔手術・抗真菌薬の全身投与・免疫低下状態の是正により病勢のコントロールが可能となる。

●非手術例は予後不良因子であり,早期診断・治療のために可及的速やかな手術療法が推奨される。

外耳・中耳の真菌症

著者: 穐山直太郎

ページ範囲:P.614 - P.618

POINT

●外耳道真菌症は,基本的には外耳道における浅在性真菌症である。

●原因菌はAspergillus属が多数を占め,次いでCandida属が多く,そのほかにMalassezia属などの報告がある。

●本稿では,その病態,診断,治療を中心に述べる。

口腔・咽頭・喉頭の真菌症

著者: 井藤雄次 ,   瀧澤義徳

ページ範囲:P.620 - P.625

POINT

●真菌は口腔咽頭の常在菌として存在し,宿主が健康な状態であれば病原性を生ずることは稀である。

●全身的,局所的な免疫機能低下などの要因があると口腔・咽頭・喉頭の真菌症を発症する。

●口腔咽頭粘膜に点状・斑状の白色偽膜がみられ,ひりひりとした痛みや違和感などの症状を呈する。

●喉頭真菌症も粘膜に白色塊や,白苔の所見を示す。真菌症発症のリスクがある患者が受診した場合は,一般喉頭所見を確認する。

●病的な口腔咽頭〜喉頭の粘膜の所見を重視し,症状,局所所見,治療効果などから総合的に判定することが重要である。

食道カンジダ

著者: 山岸由佳

ページ範囲:P.626 - P.630

POINT

●AIDSの指標疾患である。

●糖尿病や消化性潰瘍,化学療法患者,頸部への放射線照射患者,抗菌化学療法,ステロイド全身投与などの影響により,非HIV感染者における症例が増加している。

●嚥下痛,嚥下困難,後胸部痛を認めることが多い。

●診断では内視鏡検査を行う。

●治療は無症状で所見が軽微の場合は経過観察でよいが,有症状あるいは中等症以上の所見の場合は全身抗真菌薬投与を行う。

下気道真菌症

著者: 浅野浩一郎

ページ範囲:P.632 - P.636

POINT

●下気道に定着して病態を形成しうる真菌は,分生子のサイズや至適発芽温度などの条件を満たすアスペルギルス・フミガーツスなど一部の真菌に限定される。

●宿主の気道病変・免疫状態によって,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症,慢性肺アスペルギルス症,侵襲性肺アスペルギルス症など多彩な病態をきたす。

●病態によって,診断に適したモダリティ(血清反応,ガラクトマンナン抗原,PCRなど)を使い分けることが重要である。

●アゾール系経口抗真菌薬を中心に,病態,真菌の種類,薬剤感受性,他臓器機能などに応じて治療を選択する。

真菌性敗血症

著者: 詫間隆博

ページ範囲:P.638 - P.643

POINT

●耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域以外の重症真菌症について概説した。

●カンジダ血症の原因にはカテーテルカンジダ症が多く,カテーテルの抜去,血液培養陰性化の確認,眼内炎のチェックが重要である。

●クリプトコックス髄膜炎は免疫正常者でも起こりうるが,細胞性免疫低下時にはより起こりやすくなるため注意が必要である。

●侵襲性肺アスペルギルス症に対しては,近年新しい抗真菌薬が開発されており,今後治療推奨が変わってくる可能性にも注意が必要である。

Review Article

加齢性難聴と補聴器を取り巻く諸問題

著者: 小川郁

ページ範囲:P.644 - P.652

Summary

●加齢性難聴は言語機能および思考,情動などの精神活動にも深く関わっている。

●難聴は認知症の危険因子であり,難聴への介入は認知症の予防法として最も有効である。

●加齢性難聴の治療法や進行の予防法はいまだなく,現時点では補聴器による介入が主である。

●コロナ禍による高齢者の「コロナフレイル」が社会的懸念となっており,高齢者の社会活動の活発化に加えて,難聴対策が喫緊の課題となっている。

●日本では補聴器が適切に普及しているとは言いがたい。

●今後,高齢者の聴覚検診の整備,および補聴器購入に際しての公的補助制度や補聴器供給システムの改善など,難聴対策が進むことを期待したい。

原著

好酸球性副鼻腔炎に合併した頭蓋底に付着する篩骨洞骨腫の1例

著者: 中村允人 ,   大平真也 ,   神山和久 ,   綱由香里 ,   中島一鴻 ,   松井秀仁 ,   松浦賢太郎 ,   長舩大士 ,   三上哲夫 ,   和田弘太

ページ範囲:P.653 - P.656

はじめに

 副鼻腔に発生する骨腫は多くが無症状であり,潜在的に骨腫を有していることも少なくない。治療は手術による摘出が必要であるが,その手術法に関する報告は比較的少ない。今回われわれは,好酸球性副鼻腔炎を伴った頭蓋底に付着する骨腫症例を経験し,内視鏡下鼻内手術で摘出できたため,若干の文献的考察をふまえて報告する。

溶接火花による耳管鉄粉異物の1例

著者: 林和広 ,   相澤寛志 ,   佐藤公輝

ページ範囲:P.657 - P.660

はじめに

 溶接作業中に火花が外耳道を経由して鼓膜に損傷を与えることが報告されている1)。しかし,飛来した火花が金属異物として中耳腔や耳管内に停滞することはきわめて稀である。今回われわれは,溶接火花による耳管鉄粉異物の1例を経験したので報告する。

一過性反回神経麻痺の原因が副甲状腺腺腫であったと推察された1例

著者: 又吉博紀 ,   島袋拓也 ,   赤澤幸則 ,   真栄田裕行 ,   鈴木幹男

ページ範囲:P.661 - P.666

はじめに

 一般的に副甲状腺腺腫(parathyroid adenoma:PA)は倦怠・脱力感,腹痛や消化不良などの消化器症状,骨痛や腎結石症など,副甲状腺機能亢進に伴う多彩な症状を呈することが多い。その一方で反回神経麻痺を生ずることは稀であるため,一側性声帯麻痺がみられた場合,反回神経の走行領域に副甲状腺腺腫が存在すれば,副甲状腺癌(paratyhroid adenocarcinoma:PAC)を疑うことがある。

 今回われわれは,声帯麻痺に伴う嗄声を契機に副甲状腺腺腫が発見された1例を経験したが,嗄声が一過性であったことも加えて,副甲状腺癌との鑑別に苦慮したため,文献的考察を含めて報告する。

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目次

ページ範囲:P.577 - P.577

欧文目次

ページ範囲:P.579 - P.579

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.668 - P.668

あとがき

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.672 - P.672

 皆さん,ついにコロナ禍の影響がなくなってきましたね! 私は福岡での日耳鼻総会,そして大阪での日本顔面神経学会に参加してきましたが,現地での交流は本当に以前の通りで,アクリル板越しの発表はなく,マスクも外してマイクに向かうことができ,座長の席からは発表の先生方の表情を見ながら質問させていただくことができました。いつ生活が以前のように戻るのか,もうしばらく変わらないのではないか,と思っていましたが,本当に何よりと思います。耳鼻咽喉科・頭頸部外科は,新型コロナでもっともダメージを受けた科の一つでしたが,これを挽回できるかどうかは,ひとえに私たちのこれからのアクティビティにかかっていると思っています。皆さん,開放感を楽しみながら,積極的に活動していきましょう!

 コロナのために新たに発展したことの一つに,ウェビナーの普及が挙げられると思います。この言葉,聞いたことがありませんでしたが,「ウェブ」と「セミナー」を組み合わせた造語だそうです。このたび日本耳科学会では,このウェビナーを使った学会主導の教育セミナーを新たに開催することになりました。耳科学をこれから学ぼうという若手の先生を主な対象とし,少しでも自信をもって日々の診療に当たっていただけるような情報の提供が目的です。7月末に第1回を開催,その後は約2か月に1回を予定しています。特に,なかなか耳科臨床の教育を受ける機会が少ない若い先生方にとってためになる内容としていくつもりです。奮ってご参加ください!

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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