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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科95巻9号

2023年08月発行

文献概要

原著

頭頸部がん終末期患者の転帰先と看取りの現状

著者: 飯野瑛太1 岩本剛熙1 安野佑樹1 東野正明2 安田知佳3 田所洋志3 河田了2

所属機関: 1大阪医科薬科大学 2大阪医科薬科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 3大阪医科薬科大学広域医療連携センター

ページ範囲:P.745 - P.750

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はじめに

 がん治療において,積極的な治療が困難となった場合,症状緩和を中心とした終末期医療へ移行する。厚生労働省による人口動態統計1)によると,自宅で最期を看取られる人が1951年には82.5%であったが,その割合は年々低下し,2005年には12.2%となった一方で,病院で最期を看取られる人が79.8%まで上昇した。本邦では2007年にがん対策推進基本計画2)として,在宅医療の充実を図ることが目標とされ,最期を自宅で迎えることが推奨された。その後,徐々に在宅での看取りが増えつつあるが,2020年でも15.7%と,まだ低率にとどまっている1)。一方で,2017年度の「人生の最終段階における医療に関する意識調査」3)において,“食事や呼吸が不自由であるが,痛みはなく,意識や判断力に問題がない末期がん状態の場合,どこで過ごしたいか?”という問いに対して,医療従事者か否かにかかわらず,60〜70%の人が自宅を希望した。また,そのなかで自宅にて最期を看取られたい人は約70%であった。すなわち,終末期がん患者において,在宅医療への移行率を上昇させ,自宅での看取り率を上げることが,われわれ医療者に求められている。

 終末期医療への移行の際に,患者やその家族にどのように終末期であることを伝えて,どうコーディネートするかは,主治医に委ねられることが多い。がん患者では,再発しても積極的な治療中の日常生活動作(activities of daily living:ADL)は比較的保たれ,希望をもって治療を受けていることが多いが,終末期になると急激なADLの低下をきたすという特徴がある。特に頭頸部がん患者では,呼吸管理や栄養管理が直接の問題となるため,がんの進行とともに急激に病状が変化する可能性がある。しかし,終末期頭頸部がん患者に対するbest supportive care(BSC)提示後の経過についての過去の報告は少ない4,5)。また,在宅医療専門施設における頭頸部がん患者の在宅看取り率は他がん種よりも低率であり,終末期頭頸部がん患者の自宅での対応が難しいとの指摘もある6)

 そこで,入院中にBSCの方針となった頭頸部がん終末期患者の在宅医療への移行の現状を明らかにすること,さらに自宅退院ができるか否か,自宅退院後の患者が自宅で最期を迎えることができるか否かの要因について,患者の介護度に着目して検討した。

参考文献

1)厚生労働省:厚生統計要覧(令和3年度).人口動態.第1-25表 死亡数・構成割合,死亡場所×年次別,2021 https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_1_2.html
2)厚生労働省:がん対策推進基本計画 平成19年6月,2007 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0615-1a.pdf
3)厚生労働省「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」:人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書 平成30年3月,2018 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_h29.pdf
4)那須 隆・他:頭頸部がん症例の終末期管理と看取りの現状—山形大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科および関連施設における対応.頭頸部癌40:391-396,2014
5)岸野毅日人・他:香川県における頭頸部がん終末期症例の転院調整の現状と課題.日耳鼻122:1127-1133,2019
6)榎本美紀・他:在宅訪問診療を行った終末期頭頸部がん患者15例についての報告.日耳鼻123:722-728,2020
7)岩澤和子・他(監):看護必要度 第4版.日本看護協会出版会,東京,2010,pp3-89
8)大鳥和子・他:地域包括ケア病棟入院患者の転帰先と関連要因.医療マネジメント会誌20:14-18,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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