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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科96巻12号

2024年11月発行

雑誌目次

特集 必携! 救急対応・手技マニュアル

急性中耳炎・急性乳突蜂巣炎—鼓膜切開の適応と抗菌薬の選択

著者: 中西啓

ページ範囲:P.992 - P.997

POINT

●急性中耳炎は,耳痛,啼泣・不機嫌,発熱などの臨床症状が急性に発症し,鼓膜の膨隆,耳漏/中耳貯留液,発赤などの鼓膜所見が認められた場合に診断される。

●臨床症状と鼓膜所見から軽症/中等症/重症に分類し,その重症度に応じて抗菌薬で治療する。

●一次選択薬抗菌薬群として高用量AMPCやCVA/AMPC,二次選択抗菌薬群としてCVA/AMPCに加えてCDTR-PI,TFLX,TBPM-PIが推奨される。

●重症例および中等症例のなかでは鼓膜の膨隆が強く耳痛・発熱が高度の場合には,鼓膜切開も検討される。

●急性乳突蜂巣炎の有無に注意し,診断した場合には入院治療を行う。

側頭骨骨折・外リンパ瘻—診断のポイントと緊急手術の見極め

著者: 三橋亮太

ページ範囲:P.998 - P.1003

POINT

●外リンパ瘻は早期手術によって蝸牛・前庭症状の著明な改善が期待できる。

●側頭骨骨折や外傷性鼓膜穿孔ではめまいの訴えがなくても外リンパ瘻を念頭に置いて詳細に評価を行うことが重要である。

●赤外線眼振計で患側下頭位での眼振増強を認める場合には外リンパ瘻を強く疑う。

●側頭骨骨折に伴う顔面神経麻痺に対する手術適応に一定の見解はないが,発症時期・重症度・画像所見などから手術適応があると判断した場合には,可及的速やかに手術を行う。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年11月)。

外耳・鼻腔異物—処置のポイント

著者: 野田昌生 ,   甲州亮太 ,   伊藤真人

ページ範囲:P.1004 - P.1009

POINT

●外耳道や鼻腔の異物は小児に多く,感染など合併症を引き起こす可能性があるため早急な処置が必要となる。

●診察では正確に異物や局所の状態を把握し,組織の傷害や異物の迷入を考慮する。

●適切な器具の選択や患者の確実な固定が重要であり,そのためには保護者や医療スタッフの協力が不可欠である。

●除去後も組織の損傷や残存,再発のリスクも含めて患者・家族への説明を行う。

鼻出血—止血法の選択

著者: 中村有加里 ,   三輪高喜

ページ範囲:P.1010 - P.1014

POINT

●鼻出血は日常診療で遭遇しやすい疾患であり,患者の状態と原因,出血部位に応じた対応が必要である。

●出血点を念入りに確認し,圧迫や焼灼止血はピンポイントに行う。

●出血点が不明な場合や出血多量の場合は適切なパッキング,外科的治療を行う。

●全身疾患や患者背景を十分に把握したうえで,止血処置を選択する。

鼻骨骨折—診断のポイントと整復術の選択

著者: 大塚雄一郎 ,   久満美奈子

ページ範囲:P.1015 - P.1018

POINT

●CTの普及により鼻骨骨折の診断は容易となったが,軽微な外傷でも撮影されることが増えて被曝リスクが危惧される。

●超音波検査の活用により被曝リスクの低減を図ることが可能である。

●画像検査では整復の要否を判断できない症例もあり,従来通り外鼻所見が重要である。

眼窩壁骨折—診断のポイントと整復術の選択

著者: 原隆太郎 ,   小林正佳

ページ範囲:P.1020 - P.1024

POINT

●眼窩壁骨折は眼球に鈍的な外傷が加わることで生じる吹き抜け骨折(blowout fracture)が多く,その種類は主に内側壁型,下壁型,その両者の混合型に分けられる。下壁型単独骨折が約半数を占める。

●主な症状は眼球運動障害,複視,眼球陥凹,悪心で,診断にはCTが有用である。

●開放型骨折(非線状型骨折)では経過観察または待機的な手術が選択肢として挙げられるが,閉鎖型骨折(線状型骨折,trap door type)では眼窩内容物の嵌頓,絞扼により不可逆的な機能障害を生じうるため,緊急手術を要する場合がある。

●手術は内視鏡下経鼻的アプローチが一般的であるが,骨折の程度によって経眼窩法や経上顎洞法,これらを併用する場合があり,適宜眼科,形成外科と協力して対応する。

顔面・口腔腫脹—急性副鼻腔炎,アレルギー,クインケ浮腫など

著者: 稲木香苗 ,   大久保啓介

ページ範囲:P.1025 - P.1028

POINT

●詳細な問診,病歴の確認が重要である。

●気道緊急に注意する必要がある。

●眼科や歯科との連携が必要な場合もある。

●常に悪性疾患に留意する。

急性扁桃炎,扁桃周囲膿瘍—入院適応,抗菌薬の選択,切開排膿の適応

著者: 宇野敦彦

ページ範囲:P.1029 - P.1033

POINT

●急性咽頭炎・扁桃炎の軽症例,A群β溶血性連鎖球菌(GAS)が検出されない中等症では,抗菌薬の初期投与は推奨されない。

●経口摂取が困難な例,急激に症状が悪化する例,上気道狭窄が生じているか今後その可能性がある例は入院治療が必要である。

●重症の細菌性扁桃炎,扁桃周囲膿瘍例では,GASを含む溶血性連鎖球菌類と嫌気性菌が抗菌薬の標的である。

●扁桃周囲膿瘍の症状経過と部位に応じて,穿刺排膿,切開排膿,膿瘍扁摘の適用を判断する。

急性喉頭蓋炎—気道確保の適応と手段

著者: 室野重之

ページ範囲:P.1034 - P.1038

POINT

●気道確保の指標を参考に,体制やマンパワーなども考慮し適切に判断する。

●対応が後手になることが懸念される場合には,比較的安全な状態で気道確保を行う。

●頸部伸展位を取りにくい,仰臥位になれないなど,通常の気管切開術よりも難易度が高まる。

●物品の所在確認やシミュレーションなど日頃から備えておくとともに,救急医や麻酔科医との連携を確立しておく。

喉頭外傷—保存的治療,気管切開の見極め

著者: 宇野光祐

ページ範囲:P.1039 - P.1042

POINT

●喉頭外傷は外損傷と内損傷からなり,外損傷には鋭的損傷と鈍的損傷がある。

●鈍的損傷において広範な頸部気腫,喘鳴を伴う呼吸困難,重度の吐血や喀血がみられれば,気道確保をすべきである。SpO2の数値にとらわれてはいけない。

●気道確保は気管切開術を第一選択として可及的低位で行う。

●受傷後2日以内は呼吸困難をきたす可能性があり,慎重に経過観察する。

咽頭喉頭異物—摘出のポイント

著者: 木村有貴 ,   渡邉昭仁

ページ範囲:P.1043 - P.1049

POINT

●咽頭異物で最も頻度が多い魚骨異物は口蓋扁桃,舌根に介在することが多い。

●経口的に摘出できることもあるが,内視鏡操作で摘出することが必要な症例が多く,内視鏡操作に慣れ親しむことが大切である。

●咽頭に嵌頓するような比較的大きめの魚骨異物では全身麻酔下の彎曲喉頭鏡による展開が有用であり,術式選択の1つに挙げられる。

●超高齢社会で義歯異物の増加が危惧される。鋭的金属が付いている異物では摘出操作に難渋することがあり,この際も彎曲喉頭鏡を用いて咽頭を広く展開することが有用である。

深頸部膿瘍,降下性壊死性縦隔炎—抗菌薬の選択,緊急手術の見極め

著者: 山下拓

ページ範囲:P.1050 - P.1054

POINT

●深頸部膿瘍は全身状態の急激な悪化や生命をも脅かす病態に進展する可能性があり,迅速な診断・病態評価・治療介入が必要である。

●頻呼吸の有無の観察や咽喉頭ファイバースコープ検査を迅速に行い,中等度以上の喉頭浮腫,上気道狭窄があれば,呼吸状態が悪化する前に気管切開,輪状甲状膜切開などの気道確保を検討する。

●深頸部膿瘍を疑った場合,造影CTは必須検査であり,降下性壊死性縦郭炎の合併も考慮し撮像範囲は頸胸部まで行う。

●連鎖球菌,ブドウ球菌と嫌気性菌の混合感染が多いこと,βラクタマーゼ産生の耐性菌も多いことを念頭に広域のエンピリックセラピーを行い,その後de-escalationする。

●蜂窩織炎にとどまっているか,ごく限局した膿瘍以外は切開排膿術の適応であり,適切な介入が予後や治療期間短縮につながる。

Review Article

機能性難聴

著者: 小林一女

ページ範囲:P.1055 - P.1063

Summary

●機能性難聴は小児では心因性難聴,健診難聴が主で,成人の心因性難聴は若い女性に多く,詐聴は男性に多い。

●小児心因性難聴は学童期の女児に多く,学校健診がきっかけで受診することが多い。難聴は両側性が多いが,片側性では突発性難聴との鑑別が大切である。

●小児では発達の問題,精神疾患などが背景にある場合,発達心理検査を行う。小児神経科,児童精神科などへコンサルトする。

●詐聴は補償を求めて受診する。診断書,意見書を記載する場合,備考欄に「会話聴取良好」などと記載しておく。

原著

外傷性眼窩内血腫に対し緊急減圧術を施行して失明を回避した1例

著者: 竹市憲人 ,   小林大介 ,   濵口宣子 ,   金児真美佳 ,   福家智仁

ページ範囲:P.1064 - P.1067

はじめに

 外傷により眼窩内に血腫を生じるとコンパートメント症候群を引き起こすことがあり,失明や複視の原因となりうる。失明の機序としては網脈中心動脈閉塞や視神経の圧迫,虚血性視神経障害などが考えられている1)。一般的に受傷から2時間を経過すると受傷前の視力に回復することは困難とされているが2),それ以上経過していても視力が改善する可能性がある。予後は時間経過ともに悪化するため,迅速な治療介入が求められる3)。今回,外傷性眼窩内血腫に対して眼窩減圧術を実施し,失明を回避した症例を経験したので報告する。

さまざまな経過をたどった再発性多発軟骨炎の3例

著者: 宮本翔太郎 ,   牧原靖一郎 ,   田中慎太郎 ,   浦口健介 ,   津村宗近

ページ範囲:P.1068 - P.1072

はじめに

 再発性多発軟骨炎relapsing polychondritis(RP)は,全身の軟骨組織特異的に慢性かつ再発性の炎症をきたす疾患である。本邦では2015年より厚生労働省の指定難病に認定されている1)。診断基準としてDamianiらのもの(表1)2,3)が汎用されている。現在でも1割程度の死亡例が存在し,その約半数は気道軟骨炎による呼吸器関連が原因と報告されている。今回,当科で①耳介病変のみ,②喉頭病変に対して免疫抑制療法中,③喉頭病変に対して気管切開後の3症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

麻痺発症から8年経過した超高齢者の反回神経浸潤甲状腺乳頭癌の1例

著者: 谷口貴哉 ,   福家智仁 ,   山田弘之

ページ範囲:P.1073 - P.1077

はじめに

 甲状腺乳頭癌のリスク分類が浸透したことで,リスクに応じた甲状腺切除範囲が推奨されるようになり,高リスク癌において甲状腺全摘術を選択することには異論はないと思われる。とはいえ,すでに術前から片側の反回神経麻痺が存在している場合の甲状腺全摘術では,麻痺のない症例以上に術後の両側反回神経麻痺への懸念が大きく,時に両側声帯麻痺による日常生活活動度(activities of daily living:ADL)の低下が深刻なものとなりうる症例も存在する。

 今回,反回神経浸潤を伴う超高齢者の高リスク甲状腺乳頭癌に対する甲状腺切除範囲として片葉切除を選択した。また発症から8年経過した陳旧性麻痺であるものの,術後の音声改善を期待し,反回神経即時再建術を行った。本症例における甲状腺切除範囲の是非を問うとともに,反回神経即時再建の意義について考察した。

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.987 - P.987

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.989 - P.989

あとがき フリーアクセス

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.1082 - P.1082

 ロサンゼルス・ドジャース,メジャーリーグベースボール(MLB)ナショナルリーグ地区優勝おめでとうございます! 立役者である大谷翔平選手の大活躍に,毎日のように元気をもらっていました。日本時間の9月29日時点で54本塁打と58盗塁! 打点と打率も高く,3冠王も狙える状況でレギュラーシーズン最終戦に臨みます。凄すぎます。特に本塁打を54本も打つなんて,予想できた人がどのくらいいるのか。あの松井秀喜選手でさえ,日本でこそ巨人時代の2002年に50本塁打を放っているものの,MLBではヤンキース在籍中の2004年に打った31本塁打が年間最多です。小生,子供の頃から長嶋茂雄さんの大ファンで,東京ドームにも何度か応援に訪れています。大体は3塁側内野席から試合を見ていました。そのあたりの座席からは,一塁側ベンチの向かって一番右手にいつも座っていた長嶋監督がよく見えました。カッコ良かった。そしてもう一人,左打者である松井選手のバッティングも3塁側内野席では正面からじっくりと見ることができました。幸い本塁打も実際に何度か見ました。どの本塁打ももの凄い弾丸ライナーでライトスタンドに吸い込まれていったことを覚えています。日本じゃ収まらないレベルだし,早くMLBに挑戦して欲しいなと思っていました。しかし大谷選手,そんな松井選手の2倍近い本塁打を打ってしまう。一体どんな体なのだろう。もう何としても,この目で生の大谷選手のバッティングを見たい。同じ左打者,また昔のように3塁側に座れれば近くに良く見えるし。あーあ,いつかドジャース戦のチケット当たらないかなあ。

 さて今月の特集は,「必携! 救急対応・手技マニュアル」です。われわれ耳鼻咽喉科頭頸部外科医,急患を診察する機会は少なくありません。多忙な日々の診療のなかで求められる診断から治療までの適切かつ速やかな対応について,12名のエキスパートにご執筆いただきました。さらにReview Articleでは,昭和大学耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座前主任教授の小林一女先生から機能性難聴について総説をご寄稿いただきました。著者の先生方に心より御礼申し上げます。また本号では,興味深い内容の原著論文3本も掲載され,とても盛りだくさんの内容です。ぜひご一読くださいませ。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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