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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科96巻13号

2024年12月発行

雑誌目次

特集 内視鏡下鼻副鼻腔手術—基本とコツで上手くなる

術後パッキングの位置づけ—パックの有無,医療材料

著者: 西田幸平

ページ範囲:P.1146 - P.1150

POINT

●術後パッキングの目的は,出血を減らす,創傷治癒の促進,癒着防止である。

●鼻洗浄によりゲル化あるいは加水分解するパッキング材料が主に使用されている。

●術後パッキング材料は2週間程度ですべて除去することが望ましい。

●術後パッキングでは医療材料の特徴を理解したうえで,よりよい創傷治癒のために使い分ける必要がある。

副損傷を防ぐ工夫と生じてしまった場合の対応

著者: 細矢慶

ページ範囲:P.1151 - P.1155

POINT

●安全に内視鏡下鼻副鼻腔手術を行うために,明るく鮮明な術野を確保する。

●術前CTで解剖学的バリエーションを把握する。

●明視化で手術機器を操作し,マイクロデブリッターの先端は病変に押し付けない。

●副損傷が起こりうることを念頭に置いて手術を行う。

《内視鏡下鼻副鼻腔手術の実際》

鼻中隔矯正術

著者: 平位知久

ページ範囲:P.1114 - P.1120

POINT

●目的または状況に応じ,必要最小限の侵襲で十分な効果が得られる術式を選択する。

●CT画像解析により鼻中隔前彎の有無を評価する。

●鼻中隔前彎症例に対しては前彎矯正術を施行する。

●中鼻道開大を主目的とする場合は内視鏡下鼻中隔部分切除術を施行する。

●鞍鼻をきたした場合は鼻内から即時整復を行う。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年12月)。

篩骨洞手術

著者: 清水藍子 ,   牧原靖一郎

ページ範囲:P.1121 - P.1127

POINT

●篩骨洞手術はESSの要である。

●基板の概念とarea managementが重要である。

●術前の画像評価はリストを作成し漏れがないようにする。

●術中は常に眼窩・頭蓋底のラインを意識し安全に手術を進める。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年12月)。

上顎洞手術

著者: 井之口豪

ページ範囲:P.1128 - P.1132

POINT

●内視鏡下上顎洞手術には①中鼻道経由,②内側壁経由,③前壁経由の3つのアプローチがある。

●鼻腔外側壁の解剖,特に鈎状突起,上顎洞膜様部,下鼻甲介と涙骨の位置関係を理解する。

●それぞれの術式の特徴を理解し,症例によって最適な術式を選択,組み合わせる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年12月)。

前頭洞手術

著者: 橋本誠 ,   沖中洋介

ページ範囲:P.1134 - P.1139

POINT

●前頭洞手術は構造が複雑で狭いうえ,危険部位が隣接しており,難易度が高いとされている。

●前頭陥凹における排泄路の走行経路を同定する。

●手術操作では危険部位を認識して温存しつつ,隔壁を除去して排泄路を最大化させる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年12月)。

蝶形骨洞手術

著者: 柳徳浩

ページ範囲:P.1140 - P.1144

POINT

●手術部位での限界壁,解剖学的部位をきちんと理解することが大切である。

●蝶形洞前壁の分類を理解し適切な開放ルートを選択する。

●徹底的な病変の除去による術後治癒と,安全な鉗子操作を遵守し副損傷を生じないことで根治的かつ安全に手術を行う。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年12月)。

原著

舌下腺唾石症の1例

著者: 熊田純子 ,   中屋宗雄 ,   伊東明子 ,   稲吉康比呂 ,   木田渉 ,   中澤良太

ページ範囲:P.1156 - P.1159

はじめに

 唾液腺の腺管内あるいは腺体内に形成された結石を唾石という。唾石が存在しても無症状に経過することもあるが,唾液腺や周囲の組織が炎症を起こすことがあり,これを唾石症と呼ぶ。唾石症は通常顎下腺に好発し,次いで耳下腺に認められるが舌下腺にできることは稀である1)。また,唾石とは別に舌下腺に腫瘍ができる頻度も同様に稀であるが,舌下腺腫瘍は悪性である可能性が80〜90%と非常に高い2)。本症例は口腔底の違和感で受診し,画像診断で舌下腺内に腫瘤を認めた1例である。舌下腺腫瘍の可能性を考えて舌下腺摘出術を行ったところ,術後の病理学的検査で舌下腺唾石症の診断に至った。文献的考察を加えて報告する。

鼻副鼻腔内反性乳頭腫34例の臨床的検討

著者: 滝沢亮介 ,   祢津宏昭 ,   審一範 ,   高木大

ページ範囲:P.1160 - P.1165

はじめに

 鼻副鼻腔に発生する内反性乳頭腫(inverted papilloma:以下IP)は,鼻副鼻腔腫瘍の0.7〜7%を占める良性の腫瘍である1)。好発年齢は50〜60代,男女比は3:1と男性に多く,年間10万人あたり0.6人の発生と報告されている2,3)。手術の再発率が比較的高く(2.3〜28%),悪性腫瘍が合併することもあるため(5〜15%),局所の徹底的な切除が推奨されている4,5)。分類法としてはKrouseによるstaging system6)(以下Krouse分類)が提唱されており,手術法の選択などに広く用いられている。以前は手術法として外側鼻切開手術による上顎部分切除が一般的であったが,内視鏡やナビゲーションシステムなどの手術支援機器の発達により,近年では内視鏡下鼻副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery:ESS)を始め,endoscopic medial maxillectomy(EMM)などの侵襲の少ない術式が用いられることが多い7,8)。またIPは原則として良性であるため,下鼻甲介と鼻涙管を温存したendoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)も術式として選択可能である9)。今回われわれは,当科で過去10年における鼻副鼻腔IPの手術症例34例について臨床的に検討し,手術方法や予後について考察を行った。

TRT(tinnitus retraining therapy)18年間の統計から—治療器の推移について

著者: 伊藤まり ,   小川郁 ,   大石直樹 ,   西山崇経 ,   田路正夫

ページ範囲:P.1166 - P.1169

はじめに

 耳鳴再訓練法(tinnitus retraining therapy:TRT)とは1980年後半にPawel Jastreboffによって提唱された音響療法と教育カウンセリングで成り立っている治療法である1)。TRTは耳鳴を消失させることが目的ではなく脳に順応を起こすことで耳鳴の苦痛を減少させる治療である。耳鳴治療器(tinnitus control instrument):サウンドジェネレーター(sound generator:SG)の作用機序は,静寂を避け,耳に雑音を与えることにより大脳皮質における耳鳴の信号のコントラストを減弱させ耳鳴に対する過敏性を減らすように働きかけ,耳鳴に対する順応を起こすとされている。また補聴器の作用機序は,補聴器による外界音の入力によって①耳鳴を紛らわせること,②蝸牛障害による末梢入力低下により上昇した聴覚中枢での神経活性を抑制することとされている。Jastreboffが提唱するプロトコールでは難聴の自覚のない耳鳴症例ではSGを,難聴の自覚のある耳鳴症例では補聴器を推奨している(表1)1)

 本邦においては2001年の松田による報告以来2,3),TRTを行う施設は増加した。筆者が2004年4月〜2022年3月の18年間でTRTを施行し購入された治療器は,SG,補聴器,SG付き補聴器,一側性難聴に対するCROS補聴器であった。本稿では購入された治療器の個数の推移について報告する。

書評

—AO法骨折治療—アドバンスト頭蓋顎顔面手術—腫瘍,骨矯正,外傷 フリーアクセス

著者: 三谷浩樹

ページ範囲:P.1113 - P.1113

 「これは手術かな……」と考える患者を診たときに,CT/MRI,触診/視診から「どこまで切ればよいのか」を考えるが,いざ手術が始まれば次々と現れる動脈・静脈・神経の処理が待っており,術者には迷っている猶予はない。例えば下顎歯肉癌では,Ca断端に近づくことなく下顎周囲組織をフリーにする必要があり,そこからいよいよ下顎骨の処理に入っていく。レシプロソーで骨を切る時間はごく一瞬であるので,「刃を当てる位置,角度,力加減」がベストでなければ,術前に思い浮かべたとおりの切除にならないし,少しズレただけでも場所によっては,その後の再建計画にも影響を及ぼすことになる。

 本書『AO法骨折治療 アドバンスト頭蓋顎顔面手術』は,そのような頭蓋・顎顔面骨の手術に携わる医師にとって,基本から応用までを網羅した良い指南書である。第2部の「下顎の切除と再建」を例に挙げると,骨切りの基本法から下顎再建法まで,項目ごとに実践に沿って,立体的なイラストとともに詳しく述べられている。この挿絵は,切除前/切除後の様子がわかるように本文とマッチしており,実際の手術の「一瞬の骨切除」の際にも,術者の脳裏にイメージが浮かび上がり,正しい切除ラインをトレースする助けになるであろう。

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1085 - P.1085

欧文目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.1087 - P.1087

あとがき フリーアクセス

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.1174 - P.1174

 今シーズンは大谷翔平さんの大活躍で野球が盛り上がりましたね! 右肘手術のリハビリ中にもかかわらず,打者に専任した今季は159試合に出場で打率.310,54本塁打,130打点,59盗塁とキャリアハイを記録。ワールドシリーズでは左肩の怪我に見舞われましたが,豊富な資金力で集めたスター軍団が一丸となって戦い,見事に全米ナンバーワンとなりました。まるで漫画のようなサクセスストーリーですね。

 ただ,教室の責任者としては日本のプロ野球もワクワクしました。パ・リーグでは,生え抜きの選手や他球団でくすぶっていた若手をリクルートし見事に貴重な戦力に育て上げた北海道日本ハムファイターズがパ・リーグ2位へと大躍進し,セ・リーグでは,ペナントレースでは3位だった横浜DeNAベイスターズがクライマックスシリーズを勝ち抜き,他球団のエースや中心バッターをかき集めた福岡ソフトバンクホークスを破り日本一になりました。われわれも,せっかく入局してくれた新人の専攻医の皆さんのモチベーションを保ち,大切に育てていかないといけませんね。大変,参考になりました。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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