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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科96巻2号

2024年02月発行

雑誌目次

特集 実践! 花粉症治療マニュアル2024 《花粉症の予防》

花粉飛散予測と初期療法開始のタイミング

著者: 池田浩己 ,   森田勲

ページ範囲:P.112 - P.116

POINT

●花粉飛散予測は,前年度の気象条件を含めいろいろな要因が絡んでいる。

●メディアで流れる花粉情報がどのように観測されているかを紹介する。

●花粉症治療の選択肢は多岐にわたるが,まずは環境調整と初期療法が大切である。

●薬剤の選択は個々の症例に合わせて行うのが臨床医の腕の見せ所である。

花粉の回避と除去

著者: 米倉修二

ページ範囲:P.117 - P.121

POINT

●抗原回避と除去は花粉症治療の第一歩である。

●リアルタイムの花粉飛散情報を上手に利用する。

●マスク,メガネは鼻や眼への花粉侵入を防ぐ。

●花粉回避のための外用薬も市販されている。

《花粉症治療の実際》

鼻アレルギー診療ガイドライン第10版における治療方針概略と花粉症重症化ゼロ作戦

著者: 岡野光博 ,   金井健吾 ,   山田まり恵 ,   岡愛子

ページ範囲:P.122 - P.127

POINT

●鼻アレルギー診療ガイドラインの最新版である改訂第10版が刊行される。手引き形式としては最終版となる。

●治療開始時に患者と相談しながら目標を設定し,目標達成型の治療(treat to target)を開始する。

●花粉症には,症状が重症化する前に治療を開始する初期療法,重症化した際の抗IgE抗体療法,根治的治療としてのアレルゲン免疫療法など,さまざまな治療法がある。アレルギー性鼻炎の発症メカニズムをベースとした各種治療法の作用機序を理解し,治療方針を策定する。

●日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「近未来の耳鼻咽喉科医療の在り方ワーキンググループ」の活動の一環として,2030年までに花粉症の重症化をゼロにするキャンペーン「花粉症重症化ゼロ作戦」が開始された。

抗ヒスタミン薬,抗ロイコトリエン薬,抗プロスタグランジンD2・抗トロンボキサンA2

著者: 松原篤

ページ範囲:P.128 - P.131

POINT

●花粉症の有病率は著増しており,低年齢化も顕著である。

●くしゃみ・鼻漏型には第2世代抗ヒスタミン薬を使用する。

●鼻閉型には抗ロイコトリエン薬を処方する。

●初期療法は薬理学的にも理にかなった治療法である。

漢方薬

著者: 村上大地 ,   保富宗城

ページ範囲:P.132 - P.135

POINT

●花粉症における蒼白・浮腫状の鼻粘膜などの所見は,「寒」と「水滞」と考え,利水剤などの処方を選択する判断材料になる。

●鼻粘膜の蒼白所見に対する代表的な漢方薬としては,小青竜湯,麻黄附子細辛湯,苓甘姜味辛夏仁湯,葛根湯加川芎辛夷がある。

●鼻粘膜の発赤・充血所見は,「熱」の病態と考え,鼻粘膜の炎症の制御が重要となる。

●鼻粘膜の発赤・充血所見に対する代表的な漢方薬としては,越婢加朮湯が挙げられる。

局所および全身ステロイド

著者: 寺田哲也

ページ範囲:P.136 - P.142

POINT

●花粉症の治療は抗原の回避を基盤とし,薬物療法や抗原特異的免疫療法,手術療法を加える。

●くしゃみ・鼻水症状には抗ヒスタミン薬,鼻閉症状には鼻噴霧用ステロイド薬または抗ロイコトリエン薬を主に用いる。

●花粉飛散のピーク時には経口ステロイドの短期使用を選択してもよいが,グルココルチコイドによる副作用出現のメカニズムと,生じうる多彩な副作用症状についての理解が大切である。

分子標的薬

著者: 松岡伴和

ページ範囲:P.144 - P.148

POINT

●分子標的薬の一種である抗体薬は,がんに対する薬物療法,関節リウマチや気管支喘息に対する治療など,幅広く使用されている。

●抗IgE抗体であるオマリズマブは,近年,季節性アレルギー性鼻炎の治療に対して保険適用となった。

●オマリズマブは,重症・最重症のスギ花粉症に使用可能であるが,適正使用に際し細かな施設要件や患者要件が設けられている。処方に際して煩雑な部分もあるが,重症スギ花粉症患者にとって有効な治療の1つである。

アレルゲン免疫療法

著者: 湯田厚司

ページ範囲:P.150 - P.153

POINT

●皮下免疫療法と舌下免疫療法のアレルゲン免疫療法は根本的な治療法として重要な位置付けにあり,舌下免疫療法が広く行われている。

●舌下免疫療法の有効性は高く,3年以上の継続で治療中止後も長期にわたり有効性の持続が期待できる。

●頻度はきわめて稀であるが,治療の特性上,アナフィラキシーへの対応準備が必要である。

●舌下免疫療法の施行中でも,花粉飛散期に症状が出れば適切な薬物治療を併用し,ヒノキ花粉期の症状悪化にも注意する。

手術療法

著者: 西嶌大宣

ページ範囲:P.154 - P.158

POINT

●花粉症に対する手術は保存的治療に抵抗性の症例に対して行われる。

●アレルギー性鼻炎に対する手術術式は,鼻粘膜変性手術,鼻腔形態改善手術,鼻漏改善手術に分類される。

●各術式の特徴をよく把握し,症例によって適切な術式を選択する必要がある。

●アレルギー性鼻炎の3主徴はいずれも鼻の防御機能として重要な反応であり,手術により鼻腔の正常機能を損ないすぎないよう注意が必要である。

●近年,世界的にもその有用性が評価されつつある。

《特殊なケースへの対応》

口腔アレルギー症候群患者への対応

著者: 岡山吉道

ページ範囲:P.160 - P.165

POINT

●花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)とは,花粉感作後に,花粉と交差抗原性を有する植物性食物を経口摂取して,IgE依存性のアレルギー反応をきたす病態を指す。

●口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)は,食物アレルゲンを摂取して,口腔咽頭症状を主徴とするIgE依存性のアレルギー反応をきたす病態を指す。

●OASをきたす原因アレルゲンのうち大豆,セロリ,香辛料,およびラテックスと交差抗原性を示すバナナ,クリ,アボカドとキウイフルーツでは,アナフィラキシーショックなどの重篤な全身症状を呈することがあり,注意が必要である。

小児花粉症への対応

著者: 太田伸男

ページ範囲:P.166 - P.172

POINT

●小児のスギ花粉症の症状や病態は成人と大きく異なる。就学後の児童の症状は成人と同様であるが,就学前児童や乳幼児では,症状も男女比も成人とは大きく異なる。

●低年齢児のスギ花粉症を含めたアレルギー性鼻炎は男児に多く,成人に近づくほど女児が増加する。

●成人ではくしゃみ・鼻水・鼻閉が主症状であるが,就学前の幼少児では鼻の掻痒感が最も多く,痒みに伴う顔面のサインや一見癖のようなしぐさが生じている。また,小児はスギ花粉症に伴う少量の鼻汁でも鼻閉が生じやすく,睡眠時の呼吸に影響が生じる。小児のスギ花粉症の症状は多彩であることを念頭に置き,問診を進め的確に診断し,速やかに治療することが重要である。

●小児の治療にあたっては,生活指導と薬物治療が重要である。しかし,小児のスギ花粉症では気管支喘息や慢性副鼻腔炎などの合併が多く,これらの合併症に対する併用薬との薬物相互作用や副作用にも十分留意することが肝要である。

妊婦・授乳婦への対応

著者: 村越毅

ページ範囲:P.174 - P.177

POINT

●妊婦および授乳婦への薬剤投与は,きちんとした考え方のもとに行えばより効果的な治療が可能で,医療者・患者とも安全な医療,および安心を得ることができる。

●医薬品添付文書は参考にすべきものであるが,薬剤が上市される時点で妊婦や授乳婦を対象とした安全性を評価することは不可能である。新しい薬剤よりも,古くから使用されていて妊婦・授乳婦へのリスク・副作用の報告がない薬剤を優先的に使用することを考慮する。臨床で役立つ各種の書物などを紹介する。

●花粉を取り込まない生活指導(マスク,鼻洗いなど)も重要である。投与した薬剤の母体血中濃度を上げないためには,局所投与(点鼻)→経口投与の順に薬剤を選択する。

原著

漢方治療が奏効した舌脈管奇形の1例

著者: 呉明美 ,   伊藤有未 ,   成田憲彦 ,   藤枝重治

ページ範囲:P.179 - P.183

はじめに

 舌静脈奇形や舌リンパ管奇形のうち,舌の2/3を占める大きなものは,切除によって欠損部位が大きくなるために手術適応にならない。一方で,レーザー治療も焼灼が広範囲となるため,舌の硬化などによる機能障害が懸念される。リンパ管奇形で囊胞状を呈するものは硬化療法が選択肢に挙がるが,海綿状を呈するものは,硬化剤を注入するスペースがないため,その適応にならないことが多い。今回,舌脈管奇形(舌血管奇形・舌リンパ管奇形)に対し,漢方薬の内服で著明な縮小を認めた症例を経験したので,脈管奇形に対する治療法の1つとして報告する。

血管塞栓術を要さず内視鏡的に摘出しえた鼻中隔glomangiopericytomaの1例

著者: 大氣大和 ,   坪倉杏奈 ,   福井健太 ,   吉田興平 ,   桑原達 ,   佐藤要 ,   磯野泰大 ,   丹羽一友 ,   畠山博充 ,   折舘伸彦

ページ範囲:P.184 - P.188

はじめに

 glomangiopericytomaは血管周囲筋様細胞に由来する低悪性度の軟部組織腫瘍で1〜3),鼻腔腫瘍全体の0.5%以下を占める稀な腫瘍である1)。1942年,Stoutら4)により血管外皮細胞から発生する腫瘍としてhemangiopericytomaが報告されており,当初,hemangiopericytomaの亜型と考えられていたが,2005年のWHO分類改定によりglomangiopericytomaと定義された。治療は外科的切除が原則とされているが,血流豊富な腫瘍であり,出血を制御するために術前に血管塞栓術を行った報告もある1)

 今回われわれは,術前血管塞栓術を施行せずに内視鏡下鼻内手術で摘出した症例を経験したので報告する。

ワイドバンドティンパノメトリー(WBT)を用いた内リンパ水腫評価の予備的検討

著者: 五島史行 ,   津田幸子 ,   鈴本典子 ,   大上研二

ページ範囲:P.189 - P.192

はじめに

 ワイドバンドティンパノメトリー(wideband tympanometry:WBT)は,単一周波数(226Hz)で測定する従来のティンパノメトリーと比較して,226〜8000Hzの広帯域クリック音を使用してpeak pressureおよび大気圧(ambient)におけるアブソーバンスを測定する検査である1,2)。WBTは外耳から発生する音響エネルギーと,鼓膜において反射される音響エネルギーを測定することで,中耳への音響エネルギーのアブソーバンスを測定する。本来は中耳の機能検査である。しかし,中耳機能にも影響を与える可能性がある内耳機能,特に内リンパ水腫の評価に応用可能であると考えられる。

 WBTの実際の測定結果として,はじめに健常者(図1)のデータを示す。周波数ごとのアブソーバンスと共振周波数が記録される。これまでWBTを用いた内リンパ水腫関連疾患の検討3,4)では,小林ら5,6)が著明前庭内リンパ水腫は低音域のアブソーバンスが上昇しており,正常範囲からの逸脱が大きかったと報告している。本検査法は簡便に行うことができるため,従来の内リンパ水腫推定検査7,8)である蝸電図,グリセロールテスト,フロセミドテスト,フロセミド負荷前庭誘発筋電位(vestibular evoked myogenic potential:VEMP),ガドリニウム造影MRIなどと比較して短時間で行うことができる。そのため,内リンパ水腫のスクリーニング検査として応用できる可能性がある。また,内リンパ水腫に対する中耳加圧治療9)などの治療の効果を,同一症例で評価するなどの目的で活用することも考えられる。

広範な自然壊死を伴った耳下腺多形腺腫例

著者: 青木光広 ,   小原奈津子 ,   奥田弘 ,   宮田英雄 ,   森秀樹

ページ範囲:P.193 - P.196

はじめに

 疼痛,急激な腫脹,顔面神経麻痺は,耳下腺悪性腫瘍を疑う3大徴候である。ワルチン腫瘍では炎症により急激な増大を示す場合があるが,多形腺腫では急激な腫脹や痛みを伴うことは珍しい1)。一方,耳下腺良性腫瘍に穿刺吸引細胞診を繰り返すことで内部壊死を引き起こし,続発的に疼痛や腫脹を呈することが報告されているが,自然壊死を生じることはきわめて稀である2)。今回,右耳下部の急激な腫脹と疼痛を主訴に受診し,腫瘍内部に広範な自然壊死を呈した耳下腺多形腺腫例を経験したので報告する。

喉頭蓋囊胞の臨床的検討

著者: 佐伯忠彦 ,   小川晃弘 ,   春名威範

ページ範囲:P.197 - P.201

はじめに

 喉頭蓋囊胞は耳鼻咽喉科の日常診療においてしばしば遭遇する疾患である。通常は自覚症状に乏しく積極的な治療対象にならない場合が多いこともあり,これまで多数例を対象にした臨床的検討は行われていない。

 今回われわれは喉頭蓋囊胞の実態を把握し,今後の同疾患に対する診療の一助とする目的で,日常診療にて確認できた喉頭蓋囊胞例の臨床的検討を行ったので報告する。

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目次

ページ範囲:P.107 - P.107

欧文目次

ページ範囲:P.109 - P.109

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.204 - P.204

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.208 - P.208

 元旦の能登半島地震による甚大な被害に心を痛めています。寒いなか,どうかこれ以上ご体調を崩されませんよう,1日も早く被災地の復旧・復興が進みますよう,心よりお祈り申し上げます。

 さて小生,4月4〜6日に主催するISIAN-IRS 2024に向け,全力で準備しております。最近はYouTubeなどで外国人が好きな日本食やお菓子,また日本の印象や魅力・好感を持ったポイントなどの情報を集めています。とくにお菓子! 和食が美味しく芸術的であることは言うまでもありませんが,日本の駄菓子もなかなかのクオリティだと思っています。高級な和食をたびたび食べ歩くわけにはいきませんが,駄菓子なら手軽に買えて味を確認できます。子供の頃からずっとある昭和のお菓子など,懐かしくなるものから令和のお菓子まで食べまくり。美味しくて最高です。ちょっと太りましたが……。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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