文献詳細
原著
ワイドバンドティンパノメトリー(WBT)を用いた内リンパ水腫評価の予備的検討
著者: 五島史行1 津田幸子1 鈴本典子1 大上研二1
所属機関: 1東海大学医学部耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.189 - P.192
文献概要
ワイドバンドティンパノメトリー(wideband tympanometry:WBT)は,単一周波数(226Hz)で測定する従来のティンパノメトリーと比較して,226〜8000Hzの広帯域クリック音を使用してpeak pressureおよび大気圧(ambient)におけるアブソーバンスを測定する検査である1,2)。WBTは外耳から発生する音響エネルギーと,鼓膜において反射される音響エネルギーを測定することで,中耳への音響エネルギーのアブソーバンスを測定する。本来は中耳の機能検査である。しかし,中耳機能にも影響を与える可能性がある内耳機能,特に内リンパ水腫の評価に応用可能であると考えられる。
WBTの実際の測定結果として,はじめに健常者(図1)のデータを示す。周波数ごとのアブソーバンスと共振周波数が記録される。これまでWBTを用いた内リンパ水腫関連疾患の検討3,4)では,小林ら5,6)が著明前庭内リンパ水腫は低音域のアブソーバンスが上昇しており,正常範囲からの逸脱が大きかったと報告している。本検査法は簡便に行うことができるため,従来の内リンパ水腫推定検査7,8)である蝸電図,グリセロールテスト,フロセミドテスト,フロセミド負荷前庭誘発筋電位(vestibular evoked myogenic potential:VEMP),ガドリニウム造影MRIなどと比較して短時間で行うことができる。そのため,内リンパ水腫のスクリーニング検査として応用できる可能性がある。また,内リンパ水腫に対する中耳加圧治療9)などの治療の効果を,同一症例で評価するなどの目的で活用することも考えられる。
参考文献
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