耳鼻咽喉科・頭頸部外科96巻3号

2024年03月発行

特集 顔面神経麻痺—治癒への10の鍵

《将来展望》

顔面神経麻痺重症例の予後予測の精度は上がるか

著者： 山田浩之¹

所属機関： ¹けいゆう病院耳鼻咽喉科

ページ範囲：P.258 - P.261

文献概要

POINT

●重症例の予後を最も効率よく予測できる検査は誘発筋電図検査（ENoG）で，特に正中法は得られる複合筋活動電位（CMAP）も大きく，ばらつきが小さいため結果がわかりやすい。

●ENoG ＜ 5％となるような最重症例をより早期に判定する目的で，発症4〜5日に施行する「早期ENoG」の有用性について検討した。

●対象55例中，早期ENoG値が10％未満となった症例は1例存在したが，発症9日目に減荷術を施行し，発症後7か月で完治した。

●早期ENoGは特異度が低い検査であり，単独で早期手術を決定する検査としては有用性が低い。

参考文献

1）日本顔面神経学会（編）：顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版．金原出版，東京，2023

2）日本顔面神経研究会（編）：顔面神経麻痺診療の手引—Bell麻痺とHunt症候群 2011年版．金原出版，東京，2011

3）和田晋一・他：正中法Electroneurography（ENoG）の予後推定基準の再検討—一般法ENoGとの比較をもとに．Facial Nerv Res 35：135-137，2015

4）Fisch U：Prognostic value of electrical tests in acute facial paralysis. Am J Otol 5：494-498, 1984

5）上野真史・他：Bell麻痺予後不良例に対する顔面神経減荷術の治療効果．Facial Nerv Res 39：79-81，2020

6）青柳 優：顔面神経麻痺の電気的診断法．耳鼻臨床95：985-995，2002

7）石川雄惟・他：顔面神経減荷術の適応をより早期に判断することは可能か—発症早期ENoGの試み．Facial Nerv Res 43，2023（受理済）

8）Wasano K, et al：Pretreatment hematologic findings as novel predictive markers for facial palsy prognosis. Otolaryngol Head Neck Surg 155：581-587, 2016