icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科96巻4号

2024年04月発行

雑誌目次

特集 頭頸部がん診療のControversy

頭頸部がん診療のControversial topics

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.312 - P.314

 頭頸部領域は,聴覚や平衡覚,嗅覚,味覚,音声・言語,呼吸,摂食・嚥下など,さまざまな機能を担っている。頭頸部がんに対する治療において,根治とともに機能や形態の維持が,他の領域以上により強く求められるゆえんである。この命題を果たすため,1960年代の上顎洞がんに対する三者併用療法に始まり,さまざまな治療が開発されてきた。特に,この10年の発展は目覚ましく,薬物療法・外科的療法ともに多彩な治療法が選択できるようになった。本特集では,特に選択に迷う最新の治療法を取り上げ,エキスパートの皆様に解説していただいた。目の前の患者に最適な治療を選び出すためにご活用いただきたい。

術前導入化学療法による縮小手術はアリ?

口腔がん

著者: 辻川敬裕

ページ範囲:P.315 - P.317

Point

●頭頸部がんへの導入化学療法は臓器・機能温存に寄与する。

●口腔がんへの術前導入化学療法による縮小手術・機能温存の可能性が示されている。

●毒性の低いレジメンとしてPCE療法による術前導入化学療法が報告されている。

p16陽性中咽頭がん

著者: 藤本保志

ページ範囲:P.318 - P.319

Point

●p16陽性中咽頭がんであっても,導入化学療法による縮小手術はいまだ標準治療ではない。

●高い完全奏効率が期待できるレジメンを選択し,治療効果を見極めた場合には,縮小手術(経口切除)が成立する可能性がある。進行中の臨床試験の結果が待たれる。

導入化学療法 どっちを選ぶ? TPF vs PCE

TPF

著者: 田村真吾 ,   中島寅彦

ページ範囲:P.320 - P.323

Point

●TPF療法は多くの臨床試験で検証された化学療法で,喉頭温存目的の導入化学療法レジメンとして推奨される。

●高い奏効率を背景に,生存期間延長や後治療の負担軽減が期待されている。

●骨髄抑制をはじめとした毒性には注意が必要であるが,慎重なマネジメントにより管理可能である。

PCE

著者: 星裕太 ,   岡野晋

ページ範囲:P.324 - P.326

Point

●TPF療法で生じうる強い毒性の懸念から,PCE療法は開発された。

●PCE療法の安全性は優れていて,後治療である化学放射線療法ヘの移行率も良好である。

●PCE療法を実施する際には,対象症例の選択が大切である。

化学放射線療法 どっちを選ぶ? Triweekly CDDP-CRT vs Weekly CDDP-CRT

Triweekly CDDP-CRT

著者: 古平毅

ページ範囲:P.327 - P.329

Point

●シスプラチン3週毎投与法は,高いエビデンスレベルで支持される局所進行扁平上皮癌の標準治療法である。

●通常分割照射(70Gy/35回/7週)とシスプラチン3週毎投与法の同時併用が有効である。咽頭がんの治療では,強度変調放射線治療が有害事象軽減の観点で推奨される。

●一次効果は最も良好であるが,長期結果では重度の晩期有害事象の増加が問題とされ,低侵襲治療の開発が課題となっている。

Weekly CDDP-CRT

著者: 浜田誠二郎 ,   加納里志

ページ範囲:P.330 - P.333

Point

●術後化学放射線療法(CRT)においては,JCOG1008試験にて,weekly CDDP-CRT(シスプラチン40mg/m2)がtriweekly CDDP-CRT(100mg/m2)に対して非劣性であることが証明された。

●初回治療においても,weekly CDDP-CRTがtriweekly CDDP-CRTと比較して非劣性であると報告されている。

●高齢者に関しては,有害事象によりtriweekly CDDP-CRTの実施・完遂が困難である可能性があり,weekly CDDP-CRTでの検証が望まれる。

動注化学放射線療法はアリ?

舌がん

著者: 光藤健司

ページ範囲:P.334 - P.337

Point

●切除可能な舌がんは手術が標準治療であるが,手術を拒否,あるいは希望しない進行舌扁平上皮癌の症例に対しては動注化学放射線療法が治療選択肢となる。

●動注カテーテル留置後はフローチェックにより薬剤の還流域を確認する。

●動注化学放射線療法は治療の適応を慎重に検討し,十分な経験のある施設で行う。

喉頭がん

著者: 小野剛治 ,   田中法瑞 ,   梅野博仁

ページ範囲:P.338 - P.341

Point

●喉頭がんの支配血管は上甲状腺動脈の分枝がほとんどであり,動注のよい適応といえる。

●低用量シスプラチン動注化学放射線療法は重篤な毒性が少なく,喉頭機能温存に有用であると考えられる。

●現在までに喉頭がんに対する動注化学放射線療法が経静脈的化学放射線療法よりも優れているというエビデンスはなく,喉頭温存の治療オプションの1つとして選択するのがよいと考えられる。

上咽頭がんに対する薬物療法 どっちを選ぶ?

Induction chemotherapy vs Adjuvant chemotherapy

著者: 清田尚臣

ページ範囲:P.342 - P.345

Point

●化学放射線療法後にadjuvant chemotherapyを行うことが従来の標準治療である。

●induction chemotherapy後に化学放射線療法を行うことの有用性が示されている。

●メタアナリシスの結果からはinduction chemotherapyが推奨される。

前頭蓋底手術 どっちを選ぶ? Endoscopic vs Endoscopic and Exoscopic

Endoscopic:内視鏡下経鼻前頭蓋底手術

著者: 菊地正弘

ページ範囲:P.346 - P.350

Point

●経鼻前頭蓋底手術を内視鏡で行う最大の利点は高解像度の術野を得ることであり,腫瘍の浸潤の有無の判断や骨縫合線の確認に役立つ。

●腫瘍後方端/骨切り後方端が確認できない場合は腫瘍の減量を行う。

●頭蓋底骨削開は後方から前方に向かって行う。

Endoscopic and Exoscopic:経鼻内視鏡と開頭操作のcombined approach

著者: 蓼原瞬

ページ範囲:P.352 - P.355

Point

●経鼻内視鏡操作の限界範囲を把握しておく。

●腫瘍の進展範囲に応じて開頭操作を併用する。

●開頭操作では双眼顕微鏡のほか,外視鏡という選択肢もある。

●開頭操作を併用する場合でも,求められる経鼻内視鏡技術は変わらない。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2027年4月)。

HPV関連中咽頭がんに対する治療 どっちを選ぶ? TORS vs CRT

経口腔的ロボット支援下手術(TORS)

著者: 塚原清彰

ページ範囲:P.356 - P.357

Point

●T2以下で,節外浸潤を伴うリンパ節転移なしのHPV関連中咽頭がんが経口腔的ロボット支援下手術(TORS)の適応である。

●軟口蓋切除時は術後の鼻咽腔閉鎖機能を考慮に入れて検討する。

化学放射線療法(CRT)

著者: 齊藤祐毅

ページ範囲:P.358 - P.360

Point

●ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭がんが化学放射線療法(CRT)により良好な予後が見込めることのエビデンスは強い。

●CRTの有害事象への対応は適切に行う必要がある。

●CRTと経口腔的ロボット支援下手術(TORS)を比較した臨床試験は小規模なものに限られる。

下咽頭がんに対する経口的手術 どっちを選ぶ? TOVS vs ELPS

経口的咽喉頭部分切除術(TOVS)

著者: 宇野光祐 ,   塩谷彰浩 ,   荒木幸仁

ページ範囲:P.362 - P.366

Point

●ビデオ喉頭鏡手術(TOVS)は顕微鏡下レーザー手術(TLM)を内視鏡的に発展させた経口的手術で,筋層浸潤例も対象としている。

●おのおのの手術の開発のコンセプトを理解し,人員や手術環境を鑑みてどちらの手技が自施設で遂行可能かを判断し,適応症例を適切に選択することが重要である。

内視鏡的咽喉頭手術(ELPS)

著者: 岸本曜 ,   河合良隆 ,   藤村真太郎 ,   清水孝洋 ,   二階堂光洋 ,   堅田親利

ページ範囲:P.368 - P.370

Point

●下咽頭がんに対する内視鏡的咽喉頭手術(ELPS)は表在がんがよい適応だが,浸潤がんにも応用されつつある。

●ELPSでは彎曲型咽喉頭直達鏡を用いて下咽頭を展開することで,十分なワーキングスペースを確保できる。

●ELPSでは上部消化管内視鏡の機能を活用できる。

●ELPSでは術後の嚥下障害に留意する。

予防的頸部郭清術 本当に要る?

早期舌がん

著者: 塚本康二 ,   花井信広

ページ範囲:P.371 - P.373

Point

●早期舌がんの潜在的頸部リンパ節転移の割合は20〜30%である。

●実臨床では臨床的均衡(clinical equipoise)が成立していた。

●日本でのランダム化比較第Ⅲ相試験(JCOG1601)の結果が期待される。

進行喉頭がん

著者: 小林謙也 ,   齊藤祐毅

ページ範囲:P.374 - P.377

Point

●局所進行cN0喉頭がんの潜在的リンパ節転移率は20%前後である。

●進行T期,epilarynx浸潤,甲状軟骨浸潤,低分化組織型が転移のリスク因子である。

●予防的頸部郭清による全生存や疾患特異的生存への有意性は示されていない。

進行下咽頭がん

著者: 有泉陽介

ページ範囲:P.378 - P.380

Point

●放射線治療歴のない下咽頭がんへの下咽頭・喉頭全摘術では,予防的頸部郭清術が必要である。

●梨状陥凹がんでは術前診断がN0でも両側レベルⅡ〜Ⅳ郭清と片側Ⅵ郭清を行う。転移が疑わしければレベルⅠやⅤの郭清を追加する。健側Ⅵ転移が明らかな場合は両側Ⅵ郭清を行う。健側Ⅵ転移が明らかでなくても,術前に気管切開を行っている場合は両側Ⅵ郭清を検討する。両側Ⅵ郭清では術後副甲状腺機能低下症の頻度が高くなる。原発巣が正中を越えていない場合などは健側Ⅱ〜Ⅳ郭清を省略できる可能性がある。

●輪状後部がんと後壁がんでは両側Ⅱ〜Ⅳ郭清と両側Ⅵ郭清を行う。

局所再発頭頸部がんに対する治療 どっちを選ぶ? ホウ素中性子捕捉療法 vs 光免疫療法

ホウ素中性子捕捉療法

著者: 粟飯原輝人

ページ範囲:P.382 - P.385

Point

●ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)はα粒子を用いた高linear energy transfer(LET),高relative biological effectiveness(RBE)の細胞選択的粒子線治療である。

●2020年6月から保険医療として切除不能局所進行,または局所再発頭頸部癌に対しての治療が開始され,開始から3年の解析で40%強の完全奏効率であった。

●重篤な有害事象も認められ,有効性および安全性の向上のためにさらなる解析が必要である。

アルミノックス治療(光免疫療法)

著者: 岡本伊作

ページ範囲:P.386 - P.388

Point

●頭頸部アルミノックス治療は外科医が行う「手術」である。

●国内の多くの施設で治療が可能となっている。

●治療目的は「局所制御」と「QOLの維持」である。

原著

若年発症した頭蓋底骨髄炎の1例

著者: 橋本孝佑 ,   石神瑛亮 ,   坂井田寛 ,   竹内万彦

ページ範囲:P.389 - P.394

はじめに

 側頭骨の頭蓋底骨髄炎(skull base osteomyelitis:SBO)は,外耳道炎や中耳炎などをきっかけに炎症が頭蓋底に拡大し,さまざまな脳神経症状を呈するものである1)。従来の特徴として高齢糖尿病患者,緑膿菌による壊死性外耳道炎の併存が挙げられるが2),近年では易感染宿主に起こる場合や3),緑膿菌以外の細菌・真菌を起因菌とする例もみられる4)。一般に高齢発症が多く,渉猟しうる限りで,20代という若年発症の頭蓋底骨髄炎の本邦での報告例はない。今回われわれは,25歳という若年齢で発症した頭蓋底骨髄炎を経験したため報告する。

書評

AO法骨折治療 アドバンスト頭蓋顎顔面手術—腫瘍,骨矯正,外傷

著者: 貴志和生

ページ範囲:P.395 - P.395

 本書『AO法骨折治療 アドバンスト頭蓋顎顔面手術』は,AO頭蓋顎顔面グループから2020年に出された書籍の日本語版です。本書は頭蓋顎顔面領域の骨に関した治療における最新の技術と方法論を網羅的に扱った貴重なテキストであります。またコンピュータ支援仮想手術計画や患者個別のカスタムメイドインプラントの作製といった革新的な技術を含んでおり,口腔外科医や形成外科医,さらには広く頭蓋顎顔面外科に携わる全ての医師・歯科医師にとって必読の書であります。本書は豊富な内容を含んでおりますので,原著では読むに大変な労力がかかると思われますが,わかりやすい日本語訳を行っていただいたおかげで短い時間で大変理解しやすくなっています。日本語訳を行われた先生方の多大な努力に感謝致します。

 本書は,基本的な手術技術から最先端の技術まで,非常に豊富な写真とイラストを用いて頭蓋顎顔面領域に関する複雑な手術手技をわかりやすく解説しております。そのため視覚的な学習効果があり,実際に手術に携わる方々の手術の理解には非常に有効です。前半部分は,現在臨床に携わっている医師・歯科医師にとって理論と実践のバランスがよく取れた内容になっています。後半部では,コンピュータ支援手術計画の章は,現代の医療技術がいかに進化しているかを示しており,また,カスタムメイドインプラントの章は,個々の患者に対する個別化医療の重要性と,その実現方法について詳しく説明しており,実践的な知識を提供しています。実際の症例を基にした説明は,理論と実践のギャップを埋め,より実践的な知識の習得を可能にしています。

--------------------

目次

ページ範囲:P.306 - P.307

欧文目次

ページ範囲:P.309 - P.309

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.396 - P.396

次号予告/増刊号予告

ページ範囲:P.397 - P.397

あとがき

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.400 - P.400

 春は新しい生活の始まりの季節ですね。勤務先を異動される先生方も多くいらっしゃることと思います。期待と緊張,不安を胸に始まる新生活ですが,この4月はすべての勤務医にとって大きな変化が訪れるかもしれません。いよいよ,医師の働き方改革がスタートします。

 私が勤務する大学でも,この2,3年はさまざまな準備が進み,勤務時間の管理,時間外労働の概念の浸透,当直制度の廃止・各科オンコール制の導入,主治医制からチーム医療への移行,院内タスクシェアの推進などが行われてきました。通常の会社勤務であれば当たり前と思われる勤務体制へと徐々に変わってきています。「専修医は勉強させてもらっているのだから,安い賃金・長時間労働は当たり前」とされていた私の若手医師時代を振り返りますと,現在はようやく正常化してきていると感じます。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?