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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科96巻5号

2024年04月発行

雑誌目次

増刊号 ランドマークはこれだ! 局所解剖アトラス〔特別付録Web動画〕 1.耳

側頭筋を用いる手術のための筋膜・血管の局所解剖

著者: 永塚大樹 ,   矢澤真樹

ページ範囲:P.6 - P.12

Point

●側頭領域では,皮弁として浅側頭筋膜,深側頭筋膜,側頭筋をそれぞれ単独あるいは組み合わせて利用できる。

●浅側頭筋膜は浅側頭動脈を栄養血管としており,薄くしなやかなため,頰部,眼窩,耳介などの再建に広く使用できる。

●深側頭筋膜は側頭筋表面に付着する筋膜であり,浅側頭筋膜と組み合わせてより広い面積を被覆できる。栄養血管は中側頭動脈であり,側頭窩から頭側の骨膜まで栄養しているため,側頭筋膜に頭蓋骨の外板を付着させることで,血行のある骨付き筋膜弁を挙上することができる。

●側頭筋は顎動脈の枝の深側頭動脈を主な栄養血管としている。全量ないし一部を筋弁として挙上することで,組織欠損の補塡や機能的な再建に用いることができる。

耳介・先天性耳瘻孔手術のための局所解剖

著者: 橋本研

ページ範囲:P.13 - P.17

Point

●耳前部瘻孔では,瘻管の後側で耳輪軟骨外側面を同定し,瘻管との付着範囲を合併切除することで,それより深部の操作がしやすくなり,また瘻管が軟骨を貫通していても見逃しにくくなる。

●繰り返す感染ののちに残存した膿瘍や肉芽,炎症性瘢痕は,瘻管由来の角化上皮を含む可能性があるためすべて摘出すべきであるが,これらが側頭筋膜下に及ぶことは稀で,ほとんどの場合は摘出の深部端を側頭筋膜直上とすれば確実に角化上皮を摘出できる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2029年4月)。

外耳道・鼓膜手術のための局所解剖

著者: 大平真也 ,   小森学

ページ範囲:P.18 - P.24

Point

●骨縫合線の位置関係や外耳道と近接する重要な解剖学的構造物(顔面神経垂直部,キヌタ骨)の位置関係を理解し,外耳道操作・削開時における重要構造物の損傷を予防することが大切である。

●鼓膜操作を行う際には鼓膜の3層構造を理解し,鼓索神経との位置関係を理解することが重要である。

●必要かつ十分な外耳道の削開を行うには解剖学的理解が重要であり,十分な外耳道削開により鼓膜の操作も容易となる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2029年4月)。

中耳手術のための局所解剖

著者: 田中康広

ページ範囲:P.25 - P.31

Point

●線維性鼓膜輪と鼓索神経を確実に判別し,おのおのを同定してから鼓膜の剝離・挙上を行い,鼓室内の操作へ移る。

●中鼓室内の観察において真珠腫の存在によりキヌタ・アブミ関節の確認が困難な場合は,ツチ骨柄と鼓索神経の走行からキヌタ骨長脚の位置を推測し,同定する。

●ツチ骨前方に進展する真珠腫に対してはツチ骨と鼓膜張筋腱,顔面神経水平部との位置関係に注意し,真珠腫上皮の剝離を進める。


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内視鏡下中耳手術のための局所解剖

著者: 水足邦雄

ページ範囲:P.32 - P.37

Point

●内視鏡では広角で高拡大の視野が容易に得られる。そのため,複雑な中耳の解剖が内視鏡画像では理解しやすい。

●従来はdifficult access siteとされていた部位も,内視鏡で明視下の処置が可能である。

●中耳には多彩な解剖のバリエーションがあるため,術前画像などで予想しながら慎重に手術を進める必要がある。


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乳突削開術のための局所解剖

著者: 中村雄 ,   髙橋邦行

ページ範囲:P.38 - P.45

Point

●側頭骨は正常バリエーションが多いため,手術の前にCT画像にて危険構造物(中頭蓋窩やS状静脈洞)を意識して解剖を確認しておくことが最も重要である。

●ハート形の乳突削開術と視軸を意識する。

●外側半規管隆起,キヌタ骨短脚の位置をイメージして行う。


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顔面神経減荷術(経乳突法)のための局所解剖

著者: 山田啓之

ページ範囲:P.46 - P.51

Point

●顔面神経垂直部は外側半規管とその前方に透見される水平部から走行を予測する。予測にあたっては第二膝部が外側半規管と錐体隆起の間にあり,その屈曲が95〜120度であることを念頭に置く。

●顔面神経水平部は外側半規管とアブミ骨の間,サジ状突起の上方を走行する。膝神経節から見て水平部は末梢に向かって下降している。

●顔面神経迷路部の開放は中頭蓋窩底,上半規管,顔面神経水平部で囲まれる蜂巣を削開して行う。膝神経節から見て迷路部は中枢に向かって下降している。


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人工内耳手術のための局所解剖

著者: 南修司郎

ページ範囲:P.52 - P.55

Point

●鼓索神経の走行を,手術前に側頭骨CTで確認し,顔面神経との距離を計測しておく。

●蝸牛鼓室階基底回転は,正円窓から前下方に延びている。上方から正円窓にアクセスすることで,鼓室階への直線的なアクセスが可能となる。


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外耳道がん手術(外側側頭骨切除術)のための局所解剖

著者: 堤剛

ページ範囲:P.56 - P.63

Point

●顔面神経垂直部の走行に注意する.

●顎関節窩における耳管の位置に注意する.

●鼓膜輪と頸静脈球の位置関係に留意しながら削開する.


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2.外鼻・鼻中隔

外鼻・鼻中隔手術のための局所解剖

著者: 細川悠

ページ範囲:P.66 - P.70

Point

●大鼻翼軟骨(LLC)の立体構造を理解する。

●左右LLCを繋ぐ靱帯を的確に切離する。

●鼻中隔軟骨前角(ASA)を同定するため鼻背正中を見失わない。

●前鼻棘(ANS)を確実に同定する。

3.鼻腔

アレルギー性鼻炎手術のための局所解剖

著者: 鈴木元彦

ページ範囲:P.72 - P.79

Point

●鼻中隔矯正術においては鼻中隔穿孔に注意する。

●下鼻甲介手術においてはempty noseに注意する。

●後鼻神経切断術においては,後鼻神経を明視下に確認して切断する。

●内視鏡下でよりよい視野で手術を行う。


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4.副鼻腔

篩骨洞手術のための局所解剖

著者: 赤澤仁司

ページ範囲:P.82 - P.87

Point

●篩骨洞の構造は複雑であるため,解剖構造の把握においては基板概念の理解が重要である。この基板の順番(第Ⅰ基板→第Ⅱ基板→……)に沿って篩骨洞開放を行うと,手術は効率的に進められる。

●篩骨洞開放においては,眼窩内側壁および頭蓋底といった限界壁を早期に同定して危険領域を把握しながら手術を行うarea managementを念頭に置き,安全な手術操作に努める。


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上顎洞手術のための局所解剖

著者: 森泰樹 ,   鴻信義

ページ範囲:P.88 - P.95

Point

●上顎洞自然孔の不完全な開放は炎症再燃の原因となるため,自然孔の位置をしっかりと認識し,十分に開放することを心がける。

●鼻涙管,眼窩内側壁,蝶口蓋動脈外側後鼻枝などの温存すべき構造物の位置関係を理解し,安全に上顎洞を開放する。

●中鼻道からのアプローチが困難な症例ではendoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)やdirect approach to the anterior and lateral part of the maxillary sinus with an endoscope(DALMA法)を用いて対応する。


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蝶形骨洞手術のための局所解剖

著者: 和田弘太

ページ範囲:P.96 - P.106

Point

●篩骨洞側も開放する場合は,蝶形骨洞自然口から開放を外側に拡げる。

●視神経管の位置を常に意識する。

●視神経管損傷,内頸動脈損傷などの重篤な合併症を起こしてはならない。


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前頭洞手術のための局所解剖

著者: 鈴木正宣 ,   志津木健

ページ範囲:P.107 - P.112

Point

●Building Block Conceptで前頭洞排泄路を予想する。

●排泄路を同定し,周囲のセルを切除すると前頭洞が開放される。

●axillary flapアプローチでは視野がよくなり,操作が簡単になる。


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5.顔面

上顎骨骨折・頰骨骨折整復術のための局所解剖

著者: 北谷栞 ,   權太浩一 ,   太田伸男

ページ範囲:P.114 - P.120

Point

●①顔面形態の回復,②眼球運動機能の回復,③正常咬合・咀嚼機能の回復を最終的な治療目標とし,骨折とそれに伴う軟部組織の損傷状態を,術前の理学的身体所見と画像所見から正確に把握する。

●損傷状態の術前診断に基づいて,①必要十分な骨固定点の選択,②患者年齢・社会背景や骨質・固定部位に合った固定材料の選択,③骨固定点を含む手術計画の遂行に適した切開部位・アプローチ法の選択,④正確かつ可及的非侵襲的な骨折整復操作,⑤適正な眼球運動や上下顎の咬合位置の獲得を含む顔面機能および整容面の回復を可能にするような骨片の内固定操作を実施する。

●術後に咬合によるストレスが骨折部に加わる上顎骨骨折ではもちろん,頰骨骨折においても,顔面骨のbuttress(梁構造)を理解しつつ,できるだけこれを再建するような整復・内固定計画を術前に立てておくことが重要である。

6.眼窩

眼窩壁骨折整復術のための局所解剖

著者: 高林宏輔

ページ範囲:P.122 - P.130

Point

●眼窩下壁は眼窩下神経管,眼窩下神経溝が骨折の外側縁になりやすい。

●眼窩内側壁は前篩骨孔が骨折の上縁になりやすい。

●眼窩壁骨折では,眼窩内容物のためにランドマークが認識しづらい場合がしばしば認められる。

●経鼻と経眼窩のコンバインド手術では,眼窩内容物をもう1人の術者に牽引してもらうことでランドマークの認識が容易となる。


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鼻涙管手術のための局所解剖

著者: 舘野宏彦

ページ範囲:P.132 - P.139

Point

●経鼻的にアプローチした際に鼻内視鏡下に涙囊鼻涙管を見つけ出したり,涙囊内腔を確認したりするためのランドマークを理解しておくことが重要である。

●涙囊を切開・開窓する際は涙道内視鏡で涙囊内を確認し,確実に涙囊内腔に到達すること,および涙囊開窓後は涙囊内腔粘膜を確認し,仮道形成になっていないことを確認する。

●涙囊開窓部を大きく維持し再閉塞を予防する目的と,涙囊内腔と内総涙点の確認,仮道形成がないことの確認のため,開放した涙囊弁の前後・上下を鼻粘膜弁と縫合する。


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眼窩内腫瘍手術のための局所解剖

著者: 栗田惇也 ,   新井智之 ,   花澤豊行

ページ範囲:P.140 - P.144

Point

●①生検と摘出のどちらを目的とした手術なのか,②眼窩内における腫瘍の局在,③画像診断などによって想定される病理組織型の3点をふまえて手術プランニングを行う。

●眼窩内腫瘍手術において,経鼻内視鏡は眼球赤道面より後方かつ内側(特に下方)病変に優位性をもつ。上方,外側病変においては,経鼻内視鏡手術にこだわらず外切開,もしくは経鼻内視鏡と外切開の併用も検討する。

●眼窩尖端病変では3-handもしくは4-hand手術を前提としたプランニングを行い,適切なカウンタートラクションをかけながら,視神経・動眼神経分枝,眼動脈分枝に配慮した丁寧な操作を行う。

7.口腔

舌がん手術のための局所解剖

著者: 向川卓志

ページ範囲:P.146 - P.153

Point

●口腔側と頸部側の切除ラインの整合に注意を払う。

●解剖学的にどの外舌筋や舌骨上筋群にあたるのかを認識し切除を進めることで的確な切除ラインがとれる。

●特に茎突舌筋と舌骨舌筋の把握は切除安全域の点からも重要性が高い。

●また,筋層の正確な認識が舌下神経や舌動脈の適切な処理に繋がる。


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8.咽頭

口蓋扁桃摘出術のための局所解剖

著者: 勝沼紗矢香 ,   大津雅秀

ページ範囲:P.156 - P.162

Point

●口蓋扁桃周囲の解剖を理解する必要がある。扁桃床周囲に位置する組織は,通常術野で目視することはないが,上咽頭収縮筋や舌咽神経舌枝の走行を知っておくことは重要である。

●口蓋扁桃周辺の血管を理解する。特に,扁桃被膜とその周囲の血管径についての知識は,手術手技や術式の理解に重要である。また,口蓋扁桃の栄養血管やその走行の理解は,術後出血に対する外科的治療に必須である。

●扁桃被膜を確実に露出すること,扁桃被膜に沿って剝離することが,術後出血を減らすために最も重要である。


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経口的中咽頭がん切除のための局所解剖

著者: 清水顕 ,   塚原清彰

ページ範囲:P.163 - P.168

Point

●深部切除限界は副咽頭脂肪織より内側である。内側にある上咽頭収縮筋,副咽頭脂肪織を貫く茎突舌筋と茎突咽頭筋の解剖と,近接する血管走行を十分に理解することが重要である。

●後壁側で頰咽頭筋膜を認識して剝離層を決定すると,深部限界がわかりやすい。

●内腔からの血管走行把握は手術を安全に行うために必須である。


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9.唾液腺

耳下腺腫瘍手術のための局所解剖

著者: 八木正夫

ページ範囲:P.170 - P.177

Point

●顔面神経本幹を露出する際には,複数のランドマークを確認することが重要である。

●末梢枝の露出の際には,解剖学的バリエーションが多いためランドマークとの距離を参考にしつつ,神経モニタリングを用いて探査することが有用である。

●耳下腺管(Stenon/Stensen管)は,耳下腺が前方に突出している部位から耳下腺外に出現することが多く,頰骨弓から一横指程度尾側を走行し,頰筋枝などと伴走することが多い。

顎下腺腫瘍手術のための局所解剖

著者: 東野正明 ,   河田了

ページ範囲:P.178 - P.182

Point

●顔面神経下顎縁枝は基本的には非同定法で温存するが,どの層に顔面神経下顎縁枝が走行しているかを意識する。

●顔面動静脈の処理法について解説する。

●舌神経とワルトン管を処理するための視野展開について解説する。


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10.音声障害

喉頭微細手術のための局所解剖

著者: 杉山庸一郎

ページ範囲:P.184 - P.190

Point

●喉頭微細手術のために適切な喉頭展開による視野確保が重要である。

●マイクロフラップ法では,正常組織を可及的に温存することが重要である。

●声帯粘膜の層構造を確認し,病変を丁寧に剝離・摘出することが肝要である。


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喉頭枠組み手術のための局所解剖

著者: 竹本直樹 ,   讃岐徹治

ページ範囲:P.192 - P.198

Point

●甲状軟骨形成術Ⅰ型のポイントは,甲状切痕と甲状軟骨下縁,下結節をもとに水平基準線をしっかり引くことである。

●披裂軟骨内転術のポイントは,筋突起を確認して筋突起を掴み,しっかり糸をかけることである。

●甲状軟骨形成術Ⅱ型のポイントは,正確に甲状軟骨を正中切開し,内軟骨膜を温存することである。


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11.嚥下障害

嚥下機能改善手術のための局所解剖

著者: 丸尾貴志

ページ範囲:P.202 - P.208

Point

●解剖学的構造を認識して安全に手術を行う。

●より低侵襲な手技を目指す。

誤嚥防止手術のための局所解剖

著者: 古川竜也 ,   玉川晃太朗

ページ範囲:P.210 - P.216

Point

●誤嚥防止手術は原理的に喉頭全摘出術がベースとなっており,これに必要な頸部正中領域の解剖を理解することは,他の術式に取り組むうえでも基礎となる。

●喉頭気管分離術は操作範囲が狭く,比較的解剖は複雑ではないが,安全に実施するには気管粘膜の丁寧な温存が必要となる。

●声門閉鎖術のように喉頭レベルで閉鎖する手術を実施するには,喉頭の軟骨の枠組みと,声帯などの内部の軟部組織についての理解が必要となる。

12.喉頭・下咽頭

喉頭・下咽頭がんに対する経口的手術のための局所解剖

著者: 岸本曜 ,   河合良隆 ,   藤村真太郎

ページ範囲:P.218 - P.223

Point

●喉頭・下咽頭がんに対する経口的手術には,inside-out anatomyの理解が重要である。

●術後機能の温存のため,腫瘍の進展範囲を正確に評価し,必要最小限の切除とする。

●切除可能であっても必ずしも手術適応ではなく,広範に及ぶ病変などで低侵襲性が担保されない場合は,慎重に手術適応を検討する必要がある。


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外切開による喉頭部分切除術のための局所解剖

著者: 岸川敏博 ,   花井信広

ページ範囲:P.224 - P.229

Point

●喉頭部分切除術は高い局所制御率のもと,呼吸・発声・嚥下機能を温存することが可能な術式である。

●反回神経,上喉頭神経は可能な限り温存すべき神経であり,走行を熟知しておく必要がある。

●腫瘍摘出時には咽喉頭腔への適切な進入,摘出後は声門腔の再形成が機能温存のために重要である。

下咽頭部分切除術のための局所解剖

著者: 小村豪

ページ範囲:P.230 - P.237

Point

●甲状軟骨上角(+舌骨大角)は切離し,腫瘍から離れたところから咽頭腔に入る。

●咽頭腔に入ったら,切除側と温存側の粘膜に支持糸を細かくかけながら術野を展開していく。

●最近では,経口腔的切除を応用して咽頭腔から頸部へ切開することも多い。その場合は後壁から腫瘍頭側を切開して頸部に抜ける。

13.頸部

気管切開のための局所解剖

著者: 小林謙也

ページ範囲:P.240 - P.247

Point

●体表解剖への精通は気管切開には不可欠である。

●筋膜解剖に基づいた局所解剖の理解は,円滑な手術進行に役立つ。

●気管の局所解剖を理解し,適切な気管孔形成を行う。


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甲状腺腫瘍手術のための局所解剖

著者: 入谷啓介

ページ範囲:P.248 - P.253

Point

●反回神経を確認する際は,走行の解剖学的左右差に留意しておく必要がある。

●甲状腺上極の処理を行う際は,上甲状腺動脈が分岐する位置よりも末梢側で血管を処理する。

●副甲状腺機能の温存のためには,下甲状腺動脈からの血流を遮断せずに術野に保存する必要がある。


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頸部郭清術のための局所解剖

著者: 大峡慎一 ,   松本文彦

ページ範囲:P.254 - P.261

Point

●術前に確認すべきメルクマール,手術手順についてシミュレーションを行うことが,スムーズな頸部郭清術を可能にする。

●手術中はそのとき操作している部位,およびその周囲の構造物が何かということを常に意識する。


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外側咽頭後リンパ節郭清のための局所解剖

著者: 手島直則

ページ範囲:P.262 - P.265

Point

●外側咽頭後リンパ節はルビエールリンパ節とも呼ばれ,前方は咽頭収縮筋,後方は椎骨前筋膜を境とする咽頭後間隙に存在し,特に上咽頭がん,中咽頭側壁・後壁がん,下咽頭後壁がんで転移が好発するといわれている。

●下咽頭喉頭全摘術と同時に外側咽頭後リンパ節郭清を施行する場合,術野を広く展開することが可能であり,重要臓器を温存しながら比較的容易かつ迅速に郭清組織を摘出することができる。

●上・中咽頭,鼻副鼻腔,甲状腺の進行がんにおいても外側咽頭後リンパ節転移を引き起こすことがあり,通常の頸部郭清を施行したのちに外側咽頭後リンパ節郭清を施行できるよう,解剖とアプローチ方法を理解しておく必要がある。

上縦隔リンパ節郭清のための局所解剖

著者: 手島直則

ページ範囲:P.266 - P.270

Point

●上縦隔リンパ節郭清を行う際に頸部からのアプローチで対応可能なことが多いが,術野確保が困難な際には胸骨切開を行い,明視下で安全に郭清することが重要である。

●術後の創部感染や出血,リンパ漏は対応に難渋し,創傷治癒遅延につながるため,術中の細やかな止血,結紮処置に留意する。

副咽頭間隙腫瘍手術のための局所解剖

著者: 戸田幸歩 ,   丹生健一

ページ範囲:P.272 - P.278

Point

●副咽頭間隙腫瘍の多くは耳下腺深葉や神経由来の良性腫瘍である。

●周囲との癒着はほとんどなく,明視下に経頸部アプローチで摘出可能なことが多い。

●顔面神経を露出せず,耳下腺下極と顎下腺を一塊に挙上することにより,手術時間が短縮し,顔面神経へのダメージを回避できる。


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14.頭蓋底

頭蓋底手術のための局所解剖—脳浸潤のある嗅神経芽細胞腫に対して

著者: 有泉陽介

ページ範囲:P.280 - P.288

Point

●頭頸部外科と脳神経外科の双方の術者が,頭側から見た解剖と経鼻内視鏡下の解剖を熟知している必要がある。

●Outside-in Draf 3の際に鼻堤を削開して涙囊を露出する。涙囊後方の骨や眼窩紙様板を剝離して眼窩骨膜を同定する。

●篩骨動脈と視神経管は,眼窩紙様板を眼窩骨膜から剝離していけばおのずと見つかる。


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トルコ鞍・傍鞍部手術のための局所解剖

著者: 坂本達則

ページ範囲:P.289 - P.293

Point

●蝶形骨洞前壁を下方,外側下方に十分に除去し,palatovaginal arteryを確認する。

●蝶形骨洞前壁の上側も十分に除去し,Onodi cell,必要なら上鼻甲介・最上鼻甲介も切除のうえ,optico-carotid recess,視神経管隆起,内頸動脈隆起を確認する。

●これによって,3 or 4 hands surgeryを行うためのワーキングスペースを確保できる。

翼口蓋窩手術のための局所解剖

著者: 菊地正弘

ページ範囲:P.294 - P.301

Point

●蝶形骨洞側窩,側頭下窩,錐体尖,軟骨部耳管など,翼口蓋窩周辺に発生した病変に対して翼口蓋窩を開放後,翼状突起を削開して病変に到達する術式をtrans-pterygoid approachといい,広義の翼口蓋窩手術である。

●翼口蓋窩は翼状突起と口蓋骨の間隙で,脂肪,動脈,神経が存在する。間隙の内容物を外側に翻転することで,翼状突起に到達することが可能となる。

●翼状突起のVidian canalと正円孔の2つの孔は重要なメルクマールとなる。


*本論文中,動画マークのある箇所につきましては,関連する動画を見ることができます(公開期間:2029年4月)。

聴神経腫瘍手術(経側頭骨)のための局所解剖

著者: 須納瀬弘

ページ範囲:P.302 - P.308

Point

●代表的術式となる経迷路法(translabyrinthine approach:TLA)やtransotic approach(TO)は,迷路への破壊的操作に伴い失聴するため,適応は慎重に検討する。

●半規管と前庭を破壊する術式は,神経の位置が固定された内耳道底で顔面神経を同定できるため,神経温存に有利となる。

●蜂巣を広く削除して大きく開窓することで出血などのトラブルに対処しやすく,大幅に減じた蜂巣の開口をボーンワックス(骨蝋)で確実に閉じることで髄液漏が発生しにくくなる。

中頭蓋窩法のための局所解剖

著者: 大石直樹

ページ範囲:P.309 - P.312

Point

●中頭蓋窩法はランドマークに乏しく,弓状隆起や膝神経節の見え方は症例によりかなり異なる。その点,外耳道入口部や錐体縁は確実に同定できる解剖学的ランドマークとして有用である。

●内耳道の同定法をいくつか把握しておくことが必要で,症例ごとに異なる有用な同定法を用いることができる。

●中頭蓋底側からみた耳管や鼓膜張筋の解剖も理解しておくとよい。


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頸静脈孔手術のための局所解剖

著者: 小宗徳孝

ページ範囲:P.313 - P.319

Point

●頸静脈孔を開放するためには,頸静脈突起(jugular process)と迷路骨包下方の骨削開が重要である。

●頸静脈孔腫瘍を扱う際は,頸静脈球の(前)内側の静脈壁を温存することで,下位脳神経の障害を避ける。

●側頭骨内顔面神経の前方移動は行わなくても,多くの症例で十分な手術野を作製できる。

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目次

ページ範囲:P.2 - P.4

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.271 - P.271

あとがき

ページ範囲:P.320 - P.320

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

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