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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科96巻6号

2024年05月発行

雑誌目次

特集 上手にやろう 外来処置と小手術 《処置・検査》

耳垢除去

著者: 坂口博史

ページ範囲:P.406 - P.410

POINT

●顕微鏡下操作が基本である。

●耳垢の性状に応じた適切な器具を選択する。

●可能なら耳鏡なしで操作を行う。

●困難例では事前説明と柔軟な器具の取り扱いが重要である。

鼓室処置

著者: 蓑田涼生

ページ範囲:P.411 - P.414

POINT

●正常構造物の位置を常に念頭に置き操作を行う。

●両手操作が必要なときは裸眼・顕微鏡,より奥の広範囲の病変の観察・操作は硬性内視鏡を用いる。

●硬性内視鏡下での清掃には,先端を曲げた耳用吸引管,通気管が有用である。

●シリンジにノンベベル針を取り付けることにより,深部の病変に薬剤を効率的に投与できる。

耳管処置(耳管通気)

著者: 守田雅弘

ページ範囲:P.415 - P.418

POINT

●耳管機能の概念を理解したうえで耳管通気を!

●耳管狭窄症がどんな病態かわかれば治療に生かせる!

●耳管通気が必要なわけとカテーテル法とポリッツェル法の違い。

●耳管狭窄症に対する耳管カテーテル通気のコツと,してはいけないこと。

鼻副鼻腔自然口開大・洗浄

著者: 松根彰志

ページ範囲:P.419 - P.422

POINT

●自然口開大および鼻副鼻腔洗浄は,急性鼻副鼻腔炎や内視鏡下鼻内副鼻腔手術の術後に対して,有効かつ重要である。

●副鼻腔炎治療用カテーテルは,自然口開大,鼻副鼻腔洗浄の有効な選択肢である。

●非好酸球性鼻副鼻腔炎例が対象であることが多いが,術後の洗浄は好酸球性鼻副鼻腔炎例でも行われるべきである。

鼻・咽頭・喉頭の生検—除痛のしかたを含めて

著者: 岡田晋一

ページ範囲:P.423 - P.426

POINT

●頭頸部領域の生検は反射(咳嗽・嘔吐・迷走神経)との戦いである。

●いったん反射が起こると過緊張状態がしばらく継続し,生検が困難になる。

●的確な麻酔が生検の成否を分ける。

リップバイオプシー

著者: 室野重之

ページ範囲:P.427 - P.430

POINT

●リップバイオプシー(口唇小唾液腺生検)は,シェーグレン症候群の診断基準の一項目である病理組織検査のために有用である。

●下口唇粘膜を切開し,露出した小唾液腺を摘出することが基本的な手技となる。

●口輪筋,下唇動脈,オトガイ神経などの解剖を理解しておく。

●手技的には難しくはないが,十分にインフォームド・コンセントを行い,必要最小限の侵襲で確実に採取する。

頸部腫瘤の細胞診・針生検

著者: 西谷友樹雄

ページ範囲:P.432 - P.435

POINT

●目的と部位によって最適な穿刺方法を選択する。

●適応と合併症について患者に適切な説明を行う。

●交叉法では針先端を正確に描出することが重要である。

●同一平面法では平面に沿った穿刺を行うことが重要である。

《小手術》

鼓膜穿孔閉鎖術

著者: 門脇誠一

ページ範囲:P.436 - P.439

POINT

●鼓膜穿孔閉鎖術の適応であるかどうかの見極めが重要である。辺縁の状態を観察し,二次性真珠腫は確実に除外する。

●局所麻酔下での操作となるため,除痛はきわめて重要となる。痛みがあれば無理に処置を続けず,適宜浸潤麻酔を追加する。

●新鮮化は確実に穿孔縁全周にわたって全層で行う。粘膜層は広めに新鮮化し,鼓膜裏面に角化上皮を残す可能性を小さくするとよい。

●ゼラチンスポンジは一旦トラフェルミンに浸したのち,乾ガーゼで圧縮・脱水すると鼓室内への留置が容易となり,穿孔辺縁への接触が確実となる。留置後にトラフェルミン液を滴下して膨隆させ,糊で固定する。

外耳道・鼻腔異物摘出術

著者: 横山菜悠 ,   小森学

ページ範囲:P.440 - P.443

POINT

●小児の異物摘出には患児の姿勢保持が重要である。

●状況に応じて摘出器具を使い分ける。

●摘出時の出血などの二次損傷を予防する。

●ボタン電池や磁石の異物には早急な対応が必要である。

鼻出血止血術

著者: 小幡翔 ,   武田和也

ページ範囲:P.445 - P.449

POINT

●鼻出血の患者が来院した場合,まず圧迫止血を試みるとともに,問診・バイタルチェック,必要に応じて採血・ルートキープなど,適切な初期対応を行う。

●圧迫止血,ガーゼ挿入により出血が弱まってきたところで,鼻内をくまなく観察し,出血点を同定する。

●止血処置に使用するデバイスとして,バイポーラだけでなく,吸引付きモノポーラやボール電極も日常的に準備しておくとよい。

●出血点が不明,もしくは処置困難な部位である場合にはパッキングを行う。パッキングを行っても再出血するようであれば,速やかに蝶口蓋動脈手術や血管塞栓を検討する。

●患者には,止血術後の再出血の可能性について伝えるとともに,出血時の対応と予防策について説明しておく。

痛くない鼻骨骨折整復術

著者: 由井亮輔

ページ範囲:P.450 - P.452

POINT

●整容面に大きく関わる要素であるため,患者や家族への説明,認識の共有が重要である。

●鼻内のガーゼ麻酔に加え,正しい部位に浸潤麻酔を行うことで痛みを軽減することができる。

●総合的に判断して観血的整復術か非観血的整復術を決定する。

●超音波検査を併用して,確実な整復を行うことが望ましい。

顎関節脱臼整復

著者: 佐藤公則

ページ範囲:P.453 - P.456

POINT

●顎関節脱臼新鮮例の徒手整復にはヒポクラテス法が用いられているが,患者の筋緊張が強く,術者の力が弱い場合には,顎関節脱臼の整復が難しい。

●患者を床に座らせ,壁に背をもたれかからせ,術者が患者の両足をまたぎ患者の前に立つ体位で徒手整復術を行う方法は,患者の筋緊張が強く,術者の力が弱い場合でも,助手は必要なく1人の術者で顎関節脱臼の整復が容易かつ確実に行える。

●脱臼した顎関節の解剖を頭にイメージしながら徒手整復術を行うとよい。

扁桃周囲膿瘍における外科的治療—穿刺または切開排膿

著者: 佐藤大 ,   齋藤康一郎

ページ範囲:P.457 - P.459

POINT

●扁桃周囲膿瘍は耳鼻咽喉科の日常診療で頻繁に見かける急性疾患の1つである。適切な処置を行わなければ,重症化や重篤な合併症をもたらすおそれがあるため,迅速かつ的確な診断,外科的治療を行う必要がある。

●扁桃周囲膿瘍における外科的治療は,穿刺・切開排膿,即時扁桃摘出があり,外来診療では穿刺や切開排膿を行う。

●外科的処置である穿刺・切開排膿においては,患者の不安を増幅させないため,わかりやすい説明によるインフォームド・コンセントの取得が必要不可欠である。

口唇囊胞摘出術

著者: 池田このみ

ページ範囲:P.461 - P.464

POINT

●口唇粘液囊胞は貯留型と漏出型に大別される。好発部位は下口唇である。保存的治療または経過観察でも縮小なく再発を繰り返す場合には,手術による摘出術を行う。

●術前の患者への説明では,出血・疼痛・感染などの一般的な外科手術時の合併症のほかに,口唇の痺れや変形などが後遺症として残存することがある点も説明しておく。

●術中は口唇粘膜を翻転し緊張をかけ,囊胞と周囲の組織の間を鋭的に剝離し摘出する。

●術後は圧迫止血を行い,抗菌薬および鎮痛薬を投与し,約1か月後に再発の有無,および口唇の瘢痕・痺れの有無を確認する。

唾石摘出術(口内法)

著者: 大峡慎一

ページ範囲:P.465 - P.468

POINT

●唾石の多くは顎下腺唾石である。小さな唾石は自然排出される場合もあるが,唾石が存在する限り感染を起こす可能性があるため,外科的に摘出する必要がある。

●アプローチ法には口内法と外切開による顎下腺摘出があり,口内法は外来での局所麻酔下で施行可能だが,適応となるのはワルトン管内に存在し,容易に口腔内から触知される唾石である。

●口内法による合併症は少ないが,注意すべき点はある。また,唾石が迷入したり摘出困難になったりした場合は撤退し,改めて全身麻酔での摘出術を行う選択肢も考慮する。

原著

外耳道に腫瘤を形成し,顔面神経麻痺を発症したMTX-LPDの1例

著者: 高浪太郎 ,   増田大晃 ,   牛尾宗貴 ,   太田康 ,   鈴木光也 ,   清水直美 ,   蛭田啓之

ページ範囲:P.469 - P.472

はじめに

 メトトレキサート(MTX)は,現在では関節リウマチ(RA)のうち予後不良群に対する第一選択として広く用いられている1)。MTX関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders:MTX-LPD)は,低用量のMTX投与中の患者に発生するリンパ増殖性疾患であり,実臨床においては悪性腫瘍との鑑別が問題となる。今回,外耳道に腫瘤を形成した稀なMTX-LPDの1例を経験したので,文献的な考察を加えて報告する。

6年後に転移・再発した喉頭濾胞性リンパ腫の1症例

著者: 中島一鴻 ,   井上彰子 ,   島田顕央 ,   藤川桃紀 ,   松島康二 ,   加藤孝邦 ,   和田弘太

ページ範囲:P.473 - P.477

はじめに

 喉頭に発生する悪性リンパ腫は稀である。さらに,喉頭に転移・再発した報告となるとほとんどない。われわれは,嗄声を主訴とし,6年前に発症した鼠径原発の濾胞性リンパ腫が,左仮声帯に転移・再発した症例を経験した。組織学的検査を行う際は全身麻酔下にFK-WOリトラクター(経口的手術用拡張器:オリンパスメディカルシステムズ社)で術野展開した。経口的に腫瘤を摘出し,確定診断を得ることができた。喉頭機能も改善し,術後経過も良好であったので,術前・術中・術後所見を添えて報告する。

起立試験における日本人健常者データの集計

著者: 雨皿和輝 ,   三輪徹

ページ範囲:P.479 - P.484

緒言

 前庭系と自律神経系との間には,前庭自律神経反射経路が存在しており,前庭刺激を受けた際には自律神経機能異常が引き起こされる1)。めまい患者においては,副交感神経活動度が低下しており,前庭刺激時に交感神経反射が相対的により大きく認められることが報告されている2)。すなわち,めまい患者においては,回転性めまいや浮動性めまいのほかに吐き気,頭痛,腹痛,冷汗,立ちくらみなどの自律神経症状の随伴を認めることが多い。

 一般耳鼻咽喉科診療においては,これまで自律神経の評価として,圧受容器反射の機能を評価するために起立試験(Schellong試験3))が行われてきたが,判定基準として小児の診断基準4)が用いられ,成人の基準5)は用いられてこなかった。また,起立試験において,起立時の心拍変動係数(coefficient of variation of R-R intervals:CVRR)の変動は多くの報告6〜10)があるが,5分間以上立位時のCVRRの変動に関してはこれまで報告がなかった。さらに,年齢や性別による違いについても差異があると指摘がある10〜13)にもかかわらず,診断基準にはいまだ使用されてこなかった。

コブレーションが有用であった鼻腔原発の孤立性線維性腫瘍の手術例

著者: 鈴木慎也 ,   小林正佳

ページ範囲:P.485 - P.490

はじめに

 孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:SFT)は,1931年にKlempererら1)により初めて報告された間葉系細胞由来の腫瘍で,そのほとんどが胸膜などの漿膜に発生し,鼻副鼻腔領域での発生は稀である。SFTは血流豊富な腫瘍であり,内視鏡下での摘出手術時に難渋することが多い。今回われわれは,鼻腔SFTに対してコブレーション機器を用い,大量出血することなく良好な術野で摘出できた経験を報告する。

書評

—ウォーモルド直伝—内視鏡下鼻副鼻腔手術トレーニング[Web動画付]

著者: 近藤健二

ページ範囲:P.460 - P.460

 内視鏡下鼻副鼻腔手術を学ぶ手法として,手術書を読む,手術に入って指導医に教わる,洗練された手術の動画を視聴する,などがある。いずれも手術修練の重要な要素であるが,手術書は通常「仮想的・理想的」な解剖の症例に対する手順が示されており,実際の症例の解剖の多様性に遭遇したときに,はたと行き詰まってしまう場合がある。手術の助手や洗練された手術動画の視聴から得られるものは大きいが,次々とモニターに現れて瞬時に処理される個々の構造物に対する系統的な知識がなければ,教育効果を最適化することは難しい。

 本書は内視鏡下経鼻手術の第一人者であるアデレード大学のWormald教授と北大耳鼻咽喉科の先生方により企画された,内視鏡下鼻副鼻腔手術の症例問題を論理的に解く力を身につけるためのユニークなトレーニングブックである。もちろん単独で読んでも学習効果が上がるが,Wormald教授の原著『ウォーモルド内視鏡下鼻副鼻腔・頭蓋底手術』をよりよく理解するための傍用の参考書にもなり,また原著から得られた知識や手術手技をさらに飛躍させ自分のものとするための実践のための書ともなる。加えて本書は用語の解説が豊富で,自分で鼻科学の原著論文を読むための基礎知識の習得にも役立つ。

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目次

ページ範囲:P.401 - P.401

欧文目次

ページ範囲:P.403 - P.403

バックナンバーのご案内

ページ範囲:P.492 - P.492

あとがき

著者: 鴻信義

ページ範囲:P.496 - P.496

 新年度が始まりはや1か月,いよいよ医師の働き方改革が開始され,これまで医師の長時間労働や業務集中をもって何とか支えられてきた医療現場では,ある意味今まで以上に大変な状況となっている部分があると思います。どうぞご体調に気を付け,待望のGW連休や,5月という肌に心地よい季節をお過ごしください。

 さて小生,4月4〜6日にInternational Society of Inflammation and Allergy of the Nose(ISIAN)-International Rhinologic Society(IRS)2024を主宰いたしました。51か国から950名の先生方にご登録いただき,key note lectureやsymposiumなど65の企画セッション,298の一般演題をはじめ,慈恵医大より会場にライブ中継した12の解剖デモと大村講師によるESS,器機展示場におけるハンズオンセミナーなどを通して,rhinologyに関する討議が活発に行われました。ご満足いただける内容であったと信じます。開催に際しては,国内外の多くの先生方から多大なご支援・ご教示を頂戴しました。また事務局長の森講師をはじめ教室員にもずっと支えられました。無事に全プログラムを終えられ,まずは一安心です。お関わりくださった皆様には心から御礼申し上げます。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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