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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科96巻9号

2024年08月発行

原著

当科における嗅覚障害患者42例の検討

著者: 二宮千裕1 鈴木淳1 逸見朋隆1 生島寛享1 香取幸夫1

所属機関: 1東北大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科

ページ範囲:P.757 - P.762

文献概要

はじめに

 嗅覚障害は患者のQOLに大きく関連し,生活満足度を低下させる。食生活の質の低下,またガス漏れのにおいに気づくことができないといった,生命予後にも影響を与えうる重要な問題である。嗅覚障害を発症する原因として鼻副鼻腔炎,感冒,薬剤,外傷などが挙げられ,主に耳鼻咽喉科で治療が行われることが多い1)。また嗅覚障害の診断と治療には,嗅覚検査による重症度判定が重要とされる2)。基準嗅力検査はT & Tオルファクトメーター(第一薬品産業株式会社,以下T & T)を用いて施行される嗅覚域値評価法であり3),嗅覚障害の程度や治療効果を評価することが可能である4)。しかしながら,嗅覚障害の基礎的な検査とされる基準嗅力検査の機器を有する医療施設は少なく,基準嗅力検査を使用した検討例は多いとはいえない。嗅覚障害の治療過程で基準嗅力検査を行い,治療効果を評価・検討することは,嗅覚障害の治療成績の向上に寄与する可能性がある。

 今回われわれは,東北大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科を受診し,治療前後で基準嗅力検査を実施した嗅覚障害患者を対象に,臨床的特徴と治療効果を検討したので報告する。

参考文献

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2)嗅覚障害診療ガイドライン作成委員会:嗅覚障害診療ガイドライン.日鼻誌56:487-556,2017
3)三輪高喜・他:嗅覚研究・臨床の進歩—嗅覚検査の現状と展開.日耳鼻111:399-404,2008
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5)森 恵莉:嗅覚障害のリハビリテーション.耳喉頭頸89:698-704,2017
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17)鄭 雅誠・他:外傷性嗅覚障害における治療改善因子.日鼻誌57:581-589,2018
18)弦本結香・他:嗅覚障害患者の長期予後と神経変性疾患の発症について.日鼻誌58:47-53,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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