文献詳細
原著
下咽頭癌に対してセツキシマブ併用の化学放射線治療中に門脈気腫が生じた1例
著者: 山本祐輝1 横田知衣子1 寺西裕一1 大石賢弥1 角南貴司子1
所属機関: 1大阪公立大学大学院医学研究科耳鼻咽喉病態学
ページ範囲:P.781 - P.784
文献概要
腸管気腫症(pneumatosis intestinalis:PI)は,腸管壁内にガスを含む多発性囊胞が形成された病態である1)。腸管壁内にガスが存在する病態であるPIの場合,門脈気腫(portal venous gas:PVG)を同時もしくは続発的に認めることがある。PVGを認める場合は,腸管壊死や消化管穿孔などを考慮する必要があり,予後不良の徴候であり,場合によっては緊急手術を要することがある2)。頭頸部扁平上皮癌に対する分子標的薬としてセツキシマブが保険適用となっている。特に,プラチナ製剤を代表とする殺細胞性抗がん薬に不耐の症例に対して放射線併用療法や再発・転移症例に対する多剤併用化学療法のキードラッグとして使用されることが多い。
セツキシマブの有害事象としてinfusion reaction,間質性肺炎,ざ瘡様皮疹,爪囲炎などの報告はあるが,PIやPVGなどの気腫に関する有害事象は挙げられていない。しかし,PIは頭頸部領域において最近報告されている事例が見受けられる3〜5)。今回われわれは,下咽頭癌に対してセツキシマブ併用化学放射線治療中に偶然PIやPVGを認め,保存的加療で軽快した1例を経験したので報告する。
参考文献
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