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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル23巻1号

1989年01月発行

文献概要

特集 理学療法の展望 これからの理学療法を考える

中枢神経疾患の運動療法に対する一視点

著者: 星文彦1

所属機関: 1北海道大学医療技術短期大学部

ページ範囲:P.40 - P.42

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 1.初めに

 種々の疾患に対する理学療法,特に運動療法に関する科学的根拠として,呼吸循環器系は運動とその生体反応との対応関係から説明され,また整形疾患においても筋力や関節可動域の変化が組織変化に対応した形で説明される.この分野は運動療法が生理学や解剖学といった基礎医学によってある程度理論的に説明できると思われる.しかし中枢神経疾患に対する運動療法はBobath法やPNF法など神経生理学的アプローチなどと言われるアプローチに代表される1)が,その名称に対応した説明がどれだけなされているのであろうか,はなはだ疑問である.つまり末梢からの局部的刺激が脊髄レベルあるいは上位中枢に及ぼす現象は部分的に明らかにされてきているものの2~4),健常脳と部分的に損傷を受けた脳とではその反応性に違いがあるはずである.われわれが運動療法を行う場合,種々の感覚器を通して多くの刺激を同時に提供し具体的な運動動作を獲得させていくのであるが,その具体的な機能変化に対応した説明がなされているわけではない.また,実際運動療法を行っている場合に,われわれは神経生理学的現象を操作しているという実感をもって運動療法を行っているであろうか.このように中枢神経疾患に対するアプローチにはその名称に対しても種々の疑問がある.藤原も指摘している5)が,理学療法にとっての生理学は,「その理論的背景よりも,治療手技の発達が先行した理学療法分野に科学的思考性と方法論を提供してくれた」ものであり,神経生理学に基づいたという意味での,神経生理学的アプローチという名称が一般化するには時期尚早だったのかもしれない.

 本論では中枢神経疾患に対する運動療法に関し,われわれが臨床で問題としているものは何か,操作(ハンドリング)の直接的目的は何か,学問的基盤をどこに置いたら良いかを考えながら,現在混乱している中枢神経疾患に対する運動療法について考えてみることにする.そして,これからの理学療法,特に中枢神経疾患に対する運動療法を考えるうえでの一つの問題提起となれば幸いである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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