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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル23巻10号

1989年10月発行

文献概要

特集 下肢切断の理学療法

悪性腫瘍による高位下肢切断患者の理学療法

著者: 滝野勝昭1 長屋崇1 菊池詞1 石川朗1 福山勝彦1

所属機関: 1帝京大学医学部附属病院

ページ範囲:P.688 - P.694

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 Ⅰ.初めに

 高位下肢切断とは,特に定義があるわけではないので,本稿では半側骨盤切断(hemipelvectomy,以下HPと略す.),股関節離断(hip disarticulation,以下HDと略す.)および大腿切断の短断端の症例とする.

 このレベルの切断症例は大多数が骨盤あるいは大腿骨近位部に発生した腫瘍が原因となっている.したがって治療はまず生命の予後が改善することを優先すべきであり,理学療法は化学療法と並行して進めることが不可欠である.

 下肢切断者の最終的目標は,実用的な歩行と日常生活動作とを獲得して社会生活に復帰することにあるが,その前提条件として義足を装着して容易に歩行するための筋力と関節可動域との確保,そして義足への体重負荷に関して痛みの無い健康な断端を育成する必要がある.HPおよびHDの最終的目標も当然のことながら股義足を装着した歩行を目指すべきである.

 義足を選択するに当たっては,第一の条件として機能的に優れていること,第二は外観が良いことなどが挙げられる.近年,大多数の症例に骨格構造のカナダ式股義足が処方されるのはこれらの要素が満たされているからである.

 下肢切断者の理学療法を進めてゆく上で,一般的なポイントとして第一に患者の身体的機能の向上,すなわち全身の運動能力を向上させるとともに,断端の成熟を図ること,第二は適切な義足の各部の選択と軸調整が,第三には理学療法士の治療方法と指導方法の在りかたを挙げることができる.下肢切断者の理学療法は,つねにこの三つの視点から検討してゆくことがたいせつである.また患者の心理的側面に対しても十分に配慮しなければならない.原疾患が腫瘍である場合はことに心理面への配慮を念頭に置く必要がある1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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