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特集 不全四肢麻痺;高齢者を中心に
頸部脊髄症による不全四肢麻痺の理学療法―特に高齢者について
著者: 吉成俊二1 伊藤真奈美1 鷲見正敏2
所属機関: 1国立神戸病院 2国立神戸病院理学診療科
ページ範囲:P.86 - P.91
文献購入ページに移動頸部脊髄症は,加齢による退行変性が基盤となり発症するため,高齢化社会を迎えた現在,高齢者の本症罹患率が上昇してきている.一方,最近の麻酔や手術手技の進歩に伴って,高齢者に対しても手術的治療が積極的に施行されている.また,高齢者自身の活動性も高くなり,保存的治療が効果的でない高齢者がより高いQOLを求めて手術的治療を希望する場合が増加してきている.それに伴って,われわれ理学療法士も術後の理学療法を行なう機会が多い.一般に高齢者の場合,症状の悪化が緩やかで慢性に経過し,罹病期間が長く重症度も高いと言われている1~3).また,術後の回復経過もさまざまな因子が関与し,正確なゴール設定が困難なことが多い.
頸部脊髄症のため四肢の筋力低下,痙性麻痺,知覚異常などをきたす疾患としては,頸部脊椎症性脊髄症(以下,CSMと略),頸椎後縦靱帯骨化症(以下,OPLLと略),頸椎椎間板ヘルニア(以下,CDHと略)が代表的なものである.今回,われわれは,1985年4月から1988年7月までの間に頸部脊髄症のため,当院整形外科で手術的治療を施行され,理学診療科で理学療法を行なった65歳以上の頸部脊髄症患部の術後経過と訓練プログラム,および理学療法施行上の問題点について述べる.なお,同時期に手術的治療を施行された65歳以下の同疾患症例を比較対象群とした.なお,慢性関節リウマチによる頸椎症性脊髄症,アテトーゼ型脳性麻痺による頸椎症性脊髄症,外傷,腫瘍および先天性奇形などによる頸部脊髄症は,術前の機能障害の程度や手術方法などにかなりの差異があるので今回の対象から除外した.
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