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特集 不全四肢麻痺;高齢者を中心に
在宅不全四肢麻痺患者のADL
著者: 椎野達1 渡辺富久美1 西村朗1 戸渡富民宏1
所属機関: 1総合せき損センターリハビリテーション科
ページ範囲:P.100 - P.105
文献購入ページに移動不全四肢麻痺患者の家庭でのADL能力の維持,向上は彼らのリハビリテーションの上での最終目標である.病院とは異なった環境である家庭内では,種々のADL阻害因子があり,特に高齢者では年とともに,低下する体力と相互して5年先10年先のADL能力および環境適応能力を予想し対応していかなければならない.また主たる介護者である妻の高齢化にも留意しなければならない.
総合せき損センターで1979年~1988年5月の過去10年間の入院動向をみると,60歳以上の四肢麻痺患者は86名で,そのうち67名(78%)が不全麻痺であった.不全四肢麻痺患者のADL能力を歩行動作の面でみると,67名中32名(49%)が独歩19名(28%)が杖または松葉杖歩行,歩行不可は16名(23%)であった.このように不全麻痺率が非常に高い原因について調べてみると,受傷原因(図1)では自宅での転倒,階段からの転落が19名.自転車に乗っていて転倒,転落した者13名など比較的弱いダメージによって頸髄損傷となっており,86名中16名にX線像上頸椎の後縦靱帯骨化を伴っていた.これらを推察すると,老人には骨の老化現象および疾病による頸椎骨の強度の低下,脊柱管の狭窄,脊柱の柔軟性の低下を伴うため,わずかな外力によっても脊髄の損傷が引き起こされるが,原因となった外力が小さいために不全麻痺になる確率が高いのではないかと思われる.
当センターでは四肢麻痺患者の退院に際し,ADLを維持,向上するために患者,家族の教育と指導,身障者用機器の紹介,開発,製作および住宅改造などを積極的に行なってきた.これらを紹介し若干の知見を述べてみる.
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