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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル23巻3号

1989年03月発行

文献概要

講座 科学としての理学療法学・3

運動療法の科学的基礎・1―末梢神経・筋障害を中心として

著者: 灰田信英1

所属機関: 1金沢大学医療技術短期大学部

ページ範囲:P.203 - P.209

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 Ⅰ.初めに

 長期臥床を戒(いまし)め,早期に離床させることが運動療法にとってたいせつである.これは過度の安静に伴う退行性変化が,原疾患をさらに増悪させる場合が多く,元の機能に復帰させるために,多大な期間を要し,時には非可逆的な運動器の荒廃をもたらすことが,臨床的,実験的に証明されているからである1,2)

 この退行性変化の一つとして筋萎縮があり,筋が量的に減じた状態を指す.筋の退行性変化として二次ニューロンを侵す神経疾患あるいは筋に原発するものが存在する.一方,日常よく遭遇する筋萎縮として,骨・関節の疾患による廃用性のものがある3).このように筋萎縮には成因から一次性のものと二次性のものとに区分できる.この成因が一次的,二次的いずれにしろ,萎縮し弱化した筋を強化したり,筋萎縮の進行を抑止したりすることは,運動療法における重要な課題であり,早期からの運動は筋機能の維持・改善に役だつものと期待される.

 筆者は現在,萎縮筋の発現機構とその回復とについて,各種実験動物モデルを用いて検索を進めている4~7).本稿では廃用性筋萎縮と筋原性筋萎縮との自験例から,廃用に陥った筋はどのような機能的,形態的変化を示すのか,また廃用進行中の運動が筋萎縮をどの程度予防,あるいは改善できるのか,さらに筋原性疾患に対しての運動が,筋に対してどのような病理的変化を及ぼすのかを検討し,筋萎縮に対する運動の役割について考えてみる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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