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クリニカル・ヒント
〈雑感〉臨床理学療法あれこれ
著者: 石橋朝子1
所属機関: 1札幌医科大学衛生短期大学部
ページ範囲:P.343 - P.344
文献購入ページに移動臨床ということばを広辞苑でみる.“病床に臨むこと”“病人を実地に診察・治療すること”とある.
私は今,学校という臨床場面からは,かけ離れた場所で臨床理学療法士のタマゴを養成しているので,表題はそぐわないものがあるかもしれない.
編集室からの「成書には無い,実践の中から得られたこつ,ポイント,ヒントをどうぞ」ということなので,生来の老婆心も手伝い,これまでの目につくまま,思いつくままを綴ってみたい.
まず初めに臨床理学療法への思いから,現東邦大学教授のF先生の御ことばを,ここに紹介したい.F先生は私の前任地,東京都立養育院付属病院での,かつての恩師であり内科学(呼吸器)の権威でいらっしゃるが,ある日,訓練室でしみじみと以下のようなことを言われた.「あなた方が手一つで患者に接し,そこから潜在的,生理的な生体がもっている仕組みというものを,うまく引き出しながら,患者全体を,いきいきと活性化させてゆく様をみると薬物療法主体の西洋医学というものを考え直さねばなるまいナ」と.
まことに理学療法士冥利に尽きるおことばをちょうだいしたものであるが,その後も年を経るごとに臨床理学療法の一面を語るものとして今もなお,実感を新たにするのである.その後も,しだいに,こうした考えが臨床医学の中に取り入れられて理学療法の位置づけも,治療医学の中に定着してきつつあるかに思える.しかし反面,こうした医療側の期待に対して,はたして臨床理学療法全般が,うまく,呼応しているであろうか.残念ながら未だしの感を拭(ぬぐ)いえないのである.
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