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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル23巻5号

1989年05月発行

文献概要

講座 科学としての理学療法学・5

日常生活動作の評価,治療の科学的基礎

著者: 冨田昌夫1 宇野潤1 梅村文子1 吉村美紀子1 安藤徳彦1 水落和也1 佐々木和義1 小川亮2 宮森孝史3

所属機関: 1神奈川リハビリテーション病院 2早稲田大学人間工学部 3脳血管センター七沢病院

ページ範囲:P.357 - P.363

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 Ⅰ.初めに

 ADL評価項目は患者が日常生活の中で遭遇する条件にできるだけ近づけ,しかも少しずつ違った側面から検討する目的で選ばれる.したがって項目はややもすると羅列的になりやすい.高橋1)によれば全国的に集めた80種の評価表に収録された評価項目は3388にも上ぼる.これら多くの評価表が何の関連も無く独自に使用されていたのが日本のADL評価の実状であった.厚生省特定疾患神経・筋疾患リハビリテーション調査研究班ADL分科会ではこれらの評価項目を全面的に検討し,整理統合したものをすべての障害に共通して使用可能な共通評価表試案2)として1982年に公表した.起居動作,移動動作,食事動作,更衣動作,整容動作,トイレ動作,入浴動作,コミュニケーションの八大項目に含まれる32小項目および社会的自立性より構成される.しかしこの評価表の標準化に至る作業は完了していない.

 これとは別にもっとも広く利用されているADL評価表の一つにBarthel Indexがある.障害者の自立度を手軽に評価でき,結果を数量化できること,および米国で標準化されたADL評価表ということで利用頻度こそ高いが,生活習慣や文化の違う日本で標準化されているものではない.したがって我が国には標準化されたADL評価方法は存在しないと言える.

 一方ADL評価表はその重要性が叫ばれながら臨床場面では意外に利用されていない側面がある.ADL評価では従来目的動作ができるか,できないかという自立度中心の評価に偏りがちであったためいくつかの問題点が指摘されてきた.例えば①障害の量的変化はとらえられても質的変化はみられない,②主観的要素が入りやすい,③統合された目的動作をテストするため障害の原因がつかみにくく何を評価しているのかわからない,などが批判の主な理由になっている.これらの批判をふまえて,私たちが臨床場面で行なうADL評価や治療を客観的でより科学的なものとするためにはどのような配慮が必要か述べてみたい.当病院作業療法科で行なったADL評価の検討もふまえて論を進めさせていただく.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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