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講座 理学療法評価・7
運動失調・平衡機能の評価
著者: 洲崎俊男1 淺井仁1 奈良勲1
所属機関: 1金沢大学医療技術短期大学部
ページ範囲:P.477 - P.484
文献購入ページに移動われわれ理学療法士は,臨床場面において運動失調を呈する患者を担当する機会も多い1~10).しかし運動失調の原因疾患は多岐に及び病態生理学的にも複雑でかつ臨床症状が多種多彩なため,それの対応は非常に困難である.
特に我が国では諸外国と比較して運動失調への関心が強い.厚生省が1975年に脊髄小脳変性症を特定疾患として取り上げ調査研究班を発足させ,さらに1981年より運動失調症と名称を変更して調査研究を継続させたことが関心の強さにいっそう拍車をかけたものと思われる.
運動失調の理学療法11)として,主にFrenkel体操12,13),重量負荷法14),PNF法15~17),弾性緊縛帯法18~20)などを用いた基本動作の反復訓練によって一応の成果が得られている.その運動失調に対する個々の治療効果の裏付けや検査・測定においては,1980年代より飛躍的に開発されてきたME機器が用いられ,さらにデータの定量化(客観性)が推進されるようになってきた.
今回運動失調・平衡機能の評価について執筆する機会を得たので最近の動向を中心に整理し,要約したい.運動失調は原因疾患別区分も重要であるが臨床的には小脳性,脊髄後索(深部感覚)性および前庭・迷路性の三系統21,22)に大別して整理されるのが通常である.
まず,PartⅠにて運動失調の臨床的評価について述べる.また,立ち直り反射および平衡反応に関した平衡機能の評価については,PartⅡとし臨床および基礎研究を併せて述べる.
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