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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル23巻8号

1989年08月発行

雑誌目次

特集 医療事故

理学療法士のかかわる医療事故と法律

著者: 加藤良夫

ページ範囲:P.518 - P.520

 Ⅰ.初めに

 「理学療法士及び作業療法士法」第2条によると,「理学療法」とは‘身体に障害のある者に対し主としてその基本的動作能力の回復を図るため治療体操その他の運動を行なわせ,電気刺激,マッサージ,温熱その他の物理的手段を加えることをいう’とされている.そして「理学療法士」とは‘厚生大臣の免許を受けて理学療法士の名称を用いて医師の指示の下に理学療法を行なうことを業とする者をいう’とされている.

 「身体に障害を負った者が社会復帰するためには医学的リハビリテーションが極めて重要であり,その専門技術者の養成が必要である」との社会的認識が法律の制定の背景に存在している.(したがって理学療法士の資格を有しない者も理学療法を行なっている現状は,法律制定の趣旨に照らして好ましい状態ではない.)

 理学療法の有効性,安全性を確保するためには,資格を有し,十分な知識と経験とを有する者に実践させなくてはならない.リハビリテーションを受ける患者からすれば,そのような理学療法士の管理・指導の下に,有効性・安全性のある療法を受ける権利があるということになる.

 理学療法士は,理学療法についてのプロフェッションである.医師の指示の下に理学療法を行なうということになっているが,もし理学療法士の過誤により,患者に損害を与えたときは理学療法士が責任を負う余地がある.理学療法士の過誤がクローズアップされその責任が問われることは,理学療法士の専門性の確立,地位の向上と結び付いているので,「医師の指示」に逃げ込むことは正しい姿とは言えない.医師の具体的指示が誤っていると判断した場合には,その是正を求めて医師と討議をすることができるし,誤った療法についてはその実施を拒絶することさえできる場面があると解する.

小児科領域における医療事故

著者: 千代丸信一

ページ範囲:P.521 - P.526

 Ⅰ.初めに

 患者の身体に直接触れ,操作を加えるという術により医療行為を行なうことが多いわれわれ理学療法士にとって,医療事故は多かれ少なかれ付きまとう.だからと言って事故を弁護するものでは決してないが,業務の性質上ある程度やむをえない場合もあるように思われる.

 当センターは,1978年に肢体不自由児施設足立学園を母胎として,種々の発達障害を有する子どもに対応すべく総合的な医療・療育の専門機関として新たに発足した.それに伴い理学療法の対象となる疾患も,従来の肢体不自由児疾患に加えて,運動(発達)に影響を及ぼすあらゆる疾患にまで拡がりかなり多様となった.特にDown症を代表とする染色体異常,精神発達遅滞,癲癇(てんかん)や各種代謝疾患などが数多く来所するようになった.また肢体不自由児施設部門(収容,および通園)に加えて,0歳から3歳までの乳幼児総合通園(肢体不自由児通園,精薄幼児通園,および難聴幼児通園)も所内に開設され,外来部門の強化と相まって対象児の低年齢化も著明である.さらに対象児の重度化・重症化も,著しい.

 当センターに限らず今日の小児施設において理学療法士が対象とする子どもの特徴は,一般的に「対象疾患の多様化」,「低年齢化」,そして「障害の重度化,重複化」にあると言われている.それに伴い子どもが示す多種多様な状態に応じたリスク管理の必要性,重要性もまた高まっている.しかもこのような子どもたちが示す異常な運動機能が正常なものになるよう促すために,われわれはその子どもがもてる最大限の運動能力を引き出しかつ伸ばしていかなければならない.言わばわれわれ理学療法士は事故と隣り合わせの状況の中で業務を遂行することが多く,つねに不測の事故が起こる可能性も大きい.特に心身の苦痛などを的確に訴えられない乳幼児や重度児・重症児,適切な状況判断や注意力に劣る精神発達遅滞児や多動症状を示す子ども,強い負荷を与えられない虚弱児,および骨の脆弱な重度児など,訓練に伴う事故発生のリスクは大きい.

 この小論では当センターにおける,過去7年間の訓練事故のデータといくつかの実例について紹介および分析を行ない,検討を加えて事故防止のための方策を考察する.なお当センターでは子どもの運動の問題に対しておおよそ理学療法士,作業療法士の別無く対応しており,組織上も「運動訓練係」として一つの単位をなしている.したがって,以下のデータは当係のものを用いることをあらかじめお断りする.

理学療法部門における事故

著者: 糠野猛人 ,   成瀬進 ,   三木晃 ,   藤吉健司 ,   吉尾雅春

ページ範囲:P.527 - P.532

 Ⅰ.初めに

 最近,新聞などで医療過誤や医療事故が多く取り上げられ,医療界に大きな波紋を投じている.医療事故問題は約30年前から徐々に生じてきたことであるが,特に近年,国民の医療知識レベルが向上し,医療への権利意識も強くなるに従って急増してきた.

 患者の健康上の権利をできるかぎり守っていくことは,医療人にとって不可欠な姿勢である.しかしその反面,自らの立場を保護しようとするため,事故を公にしたがらないことも事実である.このことは,理学療法の分野でも認められることであり,われわれの分野において事故に関する本格的な研究がなされていない大きな理由である1).このようなことから,事故防止に当たっては,個人的かつ経験的なものに頼らざるをえず,不幸な事態が避けられていないのが現状である.

 有馬温泉病院では,事故を未然に防ぐことを目的に,院内で起こったすべての事故の報告書を作成し,反省を重ねてきた.今回,それらの事故報告書を基に理学療法部門の事故の実態を調査検討したので報告する.

<座談会>医療事故

著者: 加藤良夫 ,   新保松雄 ,   鶴見隆正 ,   藤林英樹 ,   古米幸好 ,   吉尾雅春

ページ範囲:P.533 - P.544

 理学療法を行なう中で,思いもかけず起こる事故.ほんとうにやむをえないのであろうか.各方面で活躍しておられる4名の理学療法士諸氏に,ややもすると秘めてしまいたい身近な事故の経験を紹介していただきながら,事故防止対策などの話を進めてみた.また,法的,社会的責任について弁護士の加藤氏に助言をいただき,人間の尊厳性や患者の権利について改めて考え,プロフェッションとしての理学療法士の在りかたを問い直してみた.

とびら

SCamp '88

著者: 今川忠男

ページ範囲:P.517 - P.517

 何を選んだらいいのか迷っているのがチラッチラッと母親を見つめる視線から手にとるようにわかる.「お母さんがここに来て決めてよ.」と言っているようである.隣では,キャンプが始まってすぐに話しかけてきた同じ年格好の男の子が,「今日は少し風が強いので,水上スキーは明日にして,乗馬をしようかな.」と言って,自分で机の上にある申込書にサインをしている.「君はどうするの?」と彼が話しかけてくる英語が理解できないので,ますます不安そうな顔つきになってしまう.たまりかねた母親が近づいてきて,「アーチェリーやミニ・バイクをしたかったんでしょ.ほかにも楽しそうなスポーツがたくさんあるから,順番に予約をしてあげようか.」と援助の手をさしのべてきた.ホッとした顔をして「ウン」とうなずいたところで,ペップスターのLindaが優しく,ゆっくりとした口調で「自分がしたいことは自分で決めるのよ,咲恵,裕人,瞬.それにお母さんも自分の予定を立ててくださいね.」と間に入ってきて,子どもたちと両親を引き離してしまった.今度は,母親のほうが頼り無さそうな表情になって子どもたちを見つめながら両親たちの集団に戻っていった.

講座 理学療法評価・8

疼痛の評価

著者: 濱出茂治

ページ範囲:P.545 - P.550

 Ⅰ.初めに

 種々の疾患に伴う疼痛症状は理学療法における治療対象の一つである.疼痛を改善するために用いられる理学療法には温熱療法や電気療法などの物理療法やモビリゼーションなどの徒手療法が挙げられる1,2)

 疼痛の発生原因は骨・関節に起因するものや神経圧迫によるものなどさまざまであるが,いずれにしても患者が表現する疼痛感覚は何らかの侵害刺激に対して身体が反応している状態,つまり身体組織の構造や機能が正常状態から逸脱していることを知らせるサインととらえることができる.したがって,その反応として生じている疼痛を単に抑えてしまおうとすることは必ずしも適当ではなく,そのサインがどのような侵害刺激によって表出されているものなのかよく検索する必要がある.

 疼痛を評価する目的はその内容を検討することも含まれるが,本質的にはその原因を追求することに他ならないと言える.また,理学療法の治療手段は疼痛に対して一時的な効果を発揮することは可能であるが,根治的な治療手段ではないため,治療前後の評価による効果判定も十分に行なう必要がある.

 本稿では理学療法領域でよく遭遇する器質的疼痛に対する評価の在りかたを主体に述べる.

哲学・2

哲学の立場

著者: 有福孝岳

ページ範囲:P.551 - P.556

 哲学の立場とは,そもそもどういう立場なのであろうか.立場(Standpoint,Standpunkt)とはもともと入が「立っている場所」であるが,普通は,その人の考えかた,信条・依りどころとしての根本前提をなすものである.そして,「哲学(Philosophia)」は,古来より,「知恵(Sopia)への愛(Philos)」と言われ,したがって,「哲学者」とは「愛知者(Philosophos)」である.そうすると,この「知恵(Sophos)」とは一体全体何を意味するのであろうか.このことばは,単に「理論的知識」のみならず「実践的智慧」も,さらには「制作的技量」をも意味するであろう.そのように「哲学」が錬磨すべき「知恵」は多様であり,一義的には決定し難い.したがって,この「知恵」を与えてくれるいろいろな契機―つまり,哲学のいろいろの立場―を考察することによって,その諸契機間に通底する何ものかを見いだすことができるときに,ならびに哲学の立場と哲学以外の立場との相違とを明らかにすることができるときに,われわれは求められている課題に初めて答えを見いだすことができるであろう.それゆえ,われわれは以下において,まず,第Ⅰ章においては,Aristotelesの考えかたを参考にして,哲学知の三つの立場(理論・実践・制作)を際立たせ,第Ⅱ章においては,Kantに依拠しつつ,哲学の諸学科(形而上学・道徳・宗教・美学)の立場の特質を,最後に第Ⅲ章においては,常識と科学の立場に対する哲学の立場の特有性をそれぞれ明らかにしようと思う.

雑誌レビュー

“Physiotherapy”(1988年版)まとめ

著者: 乾公美 ,   小塚直樹 ,   片寄正樹

ページ範囲:P.557 - P.560

 Ⅰ.初めに

 英国の理学療法士協会が発行する“Physiotherapy”の1988年版の総論文数は59編で,特集として職場の健康管理(Occupational Health)に関するものが7編,他に連載記事として「発展途上国の理学療法業務に関する報告」が2編あった,分野別に整理すると,物理療法6編,運動療法10編,呼吸に関する運動療法が4編,義肢・装具・自助具3編,教育・卒後教育6編,コミュニケーション3編,管理・運営5編,運動学2編,健康増進4編,研究活動に関するもの2編,その他7編であった.以下に分野別の論文を紹介する.なお,文中の[( ) ]の数字は,論文の掲載号数とページ数とを示す.

クリニカル・ヒント

一本のビデオ

著者: 高橋精一郎

ページ範囲:P.561 - P.562

 ここに一本のビデオソフトがある.JRの駅の階段で二人の女の子が車いすに乗った子を引き上げているシーンから始まっている.右隅に1989年6月5日の日付けが見える.

 彼らはこれから電車に乗り,街に行こうとしている.この駅の切符売り場は二階にある.そのためにはこの階段を昇り,切符を買って,また階段を降りてホームに行かねばならない.二人とも息を切らせて車いすを引き上げている.

プログレス

多機能大腿義足

著者: 藤本浩志

ページ範囲:P.563 - P.563

 1.大腿義足の現状

 病気や事故などにより下肢を切断した障害者にとって,義足は日常生活を送る上で失われた形態や機能を代替する不可欠なリハビリテーション機器である.しかし現用の大腿義足は平地歩行専用であり,生活空間の中に多く存在する段差や階段において不自然な歩容を強いられている.また歩行中に膝関節の特性を調節する機構を備えていないために決まった速さ(歩行周期)でしか歩行できず,機能の改善が待たれているのが現状である.

PT最前線

日本理学療法士協会のヴィジョンとマスタープラン―日本理学療法士協会新協会長奈良勲氏おおいに語る

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.564 - P.565

 岩手での第24回日本理学療法士学会後,最前線に立たされたのは新協会長奈良勲氏.早速にインタビュー.日本理学療法士協会の行く先を熱っぼく語ってくださった.

あんてな

脳卒中リハビリテーションマニュアル作成の動き

著者: 松村秩

ページ範囲:P.566 - P.566

 高齢化社会の到来とともに要介護老人,とりわけ寝たきり老人の増加(1985年60万人)が,社会,そして家庭にとって大きな負担となることが危惧されているが,その原因疾患の少なくとも30%以上が脳卒中によるものと推定されている.

 一方,脳卒中患者に対してリハビリテーションを早期から適切に行なうことにより,脳卒中後の機能障害の回復のみならず,寝たきり老人の発生防止に有効であると報告されている.

資料

第24回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1989年度) 模範解答と解説・Ⅰ―理学療法(1)

著者: 和才嘉昭 ,   橋元隆 ,   中山彰一 ,   高橋精一郎 ,   千住秀明 ,   田原弘幸 ,   中野裕之 ,   井口茂 ,   鶴崎俊哉 ,   大島吉英 ,   佐藤豪 ,   神津玲 ,   安永尚美 ,   古場佐登子

ページ範囲:P.567 - P.573

1ページ講座 臨床検査値のみかた・8

「内分泌疾患」

著者: 江藤文夫

ページ範囲:P.574 - P.574

 XV.内分泌疾患

 内分泌は代謝系と関連するものが多い.肥満を呈する疾患を例に考えると,Cushing症候群,甲状腺機能低下症(粘液水腫),インスリノーマ,糖尿病,偽性副甲状腺機能低下症,性腺機能低下症,Stein Leventhol症候群などがあり,機能(負荷)テストにより内分泌異常を検出されるものとして,視床下部性肥満,Laurence-Moon-Biedl症候群,Prader-Willi症候群,Klinefelter症候群,Turnur症候群などがある.多種多様な内分泌疾患の中から甲状腺疾患を中心に概説する.

学会印象記 〈第24回日本理学療法士学会〉

現代日本のウィークポイントに迫る

著者: 菅原巳代治

ページ範囲:P.575 - P.576

 第24回日本理学療法士学会は5月19日,20日(実際には前日の18日に地域シンポジウムがあり,3日間だが)の両日にわたり,みちのく岩手県盛岡市において,清水学会長をはじめとする岩手県士会の万全な準備の下,盛大かつ有意義な開催となりました.

 岩手の地は,本誌Vol23 No4の紹介にあるごとく,あるいは歴史的にみても,数々の賢人,政治家,国際人を輩出し,古い史実や昔話からも魅力たっぷりの郷土性をもつすばらしい所です.また,今ブームともなっている「奥の細道」の松尾芭蕉もやはり,このみちのく岩手を最大のテーマに来たと言われるほどで,まさに時代に即応した開催地と言えたようです.きっと学会に参加なさった会員の多くは,学会運営の周到さとともに,この地の不思議な魅力にたっぷり浸ることができたのではないかと感じました.

初めての演者,体験記

著者: 中石睦

ページ範囲:P.577 - P.578

 第24回日本理学療法士学会は,岩手県盛岡市において,「理学療法士と福祉社会」をテーマに開催されました.全国から約1,600人が参加し,演題数も270題と非常に盛大な学会でした.

 理学療法士としての経験3年目を迎えた私も,今回は初めて演者として参加しました.このような全国レベルの学会で演題発表をするとなるとどなたも緊張するものでしょうが,初めて発表をする私には,自分だけが緊張しているように思われてなりませんでした.しかも私の発表は2日目の午後のセッションでしたので,学会開催期間中ずっと緊張しっ放しでした.その間,他の先生方の演題発表を聞いていても,緊張のあまり頭に入らないということがしばしばありました.それどころか,活発な質疑応答を聞いているうちにますます緊張感が高まり,自分の演題に対する質問の傾向と対策で頭がいっぱいになってしまいました.準備の段階でもっと十分に対策を講じていればもう少し落ち着いていられただろうにと,つくづく後悔させられました.

おおいに刺激され,おおいに学んだ―初めて演題発表を経験して

著者: 吉原裕美子

ページ範囲:P.579 - P.579

 「理学療法士と福祉社会」というテーマで第24回日本理学療法士学会が岩手県盛岡市にて開催されました.今回は,一般演題のほかに前日の地域シンポジウム,選挙,特別講演など多様な内容で,おおいに学ぶところがありました.

 参加総数は,おそらく1,000名以上と思われます.これは,全国の理学療法士の約8人に1人が参加したことになり,この学会が私たちにとっていかに権威あるものかを確信いたしました.

〈第23回日本作業療法学会〉

テーマどおり,行く末を考えさせられた

著者: 浅山章

ページ範囲:P.580 - P.581

 1.初めに

 一番礼所霊山寺を不安をもちつつも出発した八十八ヶ所参り四国路は,坦々とした田園風景の中「こんなものか」と心がゆるむ.徳島県内札所も終わりに近づくと見上げるような山頂の札所が続き苦しみの道中を思い知らされる.さらに高知県最初の24番札所室戸岬最御崎寺へは80km余り,徒歩一昼夜.正に青少年期から社会人としての厳しさを痛感する道中である.

書評

『リハビリテーション整形外科学』改訂第3版―国立療養所村山病院 大谷清著

著者: 首藤貴

ページ範囲:P.556 - P.556

 このたび,大谷清先生の「リハビリテーション整形外科学」改訂第3版が出版された.1979年に初版が発行されて以来,版を重ねるごとに新しい知識を得るための項目が加えられ,リハビリテーション医学に関連する整形外科学が整理されて,一段と充実した内容をもつ教科書となってきた.

 著者は本書をリハビリテーション診療に携わるスタッフ,主として理学療法士・作業療法士の方々,またリハビリテーション学院の学生さんのための整形外科書として書かれている.そのため内容が的確に理解できるように,図・表・写真が合わせて356と数多く使用されていて読みやすく,読者の知識整理が自然にできるように配慮されている.

『脳卒中・神経筋疾患のマネージメント;QOL向上のために』―横浜市立市民病院 本多虔夫 伊豆菲山温泉病院 重野幸次著

著者: 山崎京子

ページ範囲:P.581 - P.581

 脳卒中,筋疾患はいずれも,神経,筋肉を侵すものでその症状には共通のものが多い.しかも,手足の麻痺,失語など日常生活に大きな支障をきたす.このような病気への相談に応ずるとき,「今,この人に何をすべきか」を判断するのに戸惑いを感ずることがある.

 それは,その人の一生を見通すような長期間にわたるビジョンをもって,急性期の治療から慢性期の生活まで,その病期に必要な安全で的確なしかも実行可能な具体的な援助が求められるからである.

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文献抄録

ページ範囲:P.584 - P.585

編集後記

著者: 吉尾雅春

ページ範囲:P.588 - P.588

 一瞬にして15名の命を奪った越前海岸国道305号線の崖崩れ事故はあまりにも悲惨なものでした.設計強度の100倍の岩盤が崩壊したため,ロックシェッドはひとたまりもなく押し潰されたのだそうです.予想もできなかったということで不可抗力ということになるのでしょうか.15名の命は何だったのでしょうか.地元の人たちは,前日からの大雨で,「あそこは危ないから近づかないほうがいい」と言っていたといいます.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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