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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻1号

1990年01月発行

雑誌目次

特集 脳血管障害

脳卒中と廃用症候群

著者: 池田信明 ,   大井通正 ,   三宅徹也

ページ範囲:P.4 - P.7

 Ⅰ.初めに

 廃用症候群はリハビリテーション医学にとってきわめて重要な概念である.廃用症候群は誤用症候群とともに二次的合併症に位置付けられている.身体の器質的障害そのものに由来する基本的機能障害の回復は生体の回復能力そのものに規定されているが,廃用症候群はリハビリテーション医学の諸手法により予防できる可能性を有すものであり,リハビリテーション医学の真価を発揮できる主要な対象であると言える.

 廃用症候群に関しては,すでに多くの総説が出ている1~7).本稿ではこれらと重複する事項にはふれない.

 この論文では,脳血管障害の臨床における廃用症候群をめぐる課題を整理するとともに,リハビリテーション医学の発展段階に対応した廃用症候群の概念の拡大について論述する.

非麻痺肢筋の廃用萎縮の評価と予防

著者: 前田哲男 ,   溜池修 ,   村木宏行

ページ範囲:P.8 - P.12

 Ⅰ.初めに

 脳卒中片麻痺患者の理学療法プログラムは現在再検討の時期にあり1~3),これまで行なわれてきた個人の経験を重視したプログラムの立案から,データに基づく研究成果に裏付けられたプログラムの立案に変わろうとしている.これはあたかも,30数年前までの脳卒中患者に対する理学療法は電気刺激やマッサージ,水治療法(温泉療法を含む)が中心であったのが4),長い時間をかけ,現在の運動療法を中心とした理学療法プログラムに進歩したことに匹敵しそうな転換である.しかし,現在でも30数年前の理学療法が行なわれている病院もあり4),多くの研究成果を実際の臨床の場に生かすためには,解決すべき問題が多いようである.

 脳卒中片麻痺患者の理学療法プログラムの再検討に関しては,10数年前三好5)がHirschbergの方法を紹介し,片麻痺の歩行には非麻痺側下肢の正常筋力維持と麻痺側下肢の変形予防とが重要で,麻痺肢へのファシリテーション・テクニックの効果は決して大きくはなく,片麻痺のリハビリテーションの基本である早期起立を否定するような技術論は,たとえ論理的には優れたものであれ有害だと述べ,理学療法士が麻痺肢の回復にのみ注目していることに対し警告を行なっている.

 最近では上田2)が歴史のあるリハビリテーション専門病院において平均水準以上の理学療法,作業療法,リハビリテーション・ナーシングを受けている患者でも,片麻痺「非麻痺肢」の廃用性筋力低下を予防できていないし,戸外歩行が完全自立している患者でも「体力」低下があることを具体的データを示して指摘し,リハビリテーション関係者に反省を迫るものだと述べている.さらに,脳卒中片麻痺患者の予後予測が一部可能になったことをふまえ,従来の「やってみなければわからない」といういわば手探りのリハビリテーションから,科学的に基礎づけられた「やってみなくてもわかる」という見通しをもったリハビリテーションへの転換が可能になったと述べ,プログラムの層別化を提案していることは注目すべきことである.

 このように脳卒中片麻痺患者の理学療法プログラムをより科学的に再検討する一つの課題として非麻痺肢機能の解明がある.

 ここでは,非麻痺肢筋の廃用萎縮の問題を検討し,自験例を用いて非麻痺肢筋力の経時的変化の検討を行なう.

脳卒中片麻痺患者の循環機能障害

著者: 間嶋満

ページ範囲:P.13 - P.18

 Ⅰ.初めに

 脳卒中片麻痺患者(以下,片麻痺患者と略す.)の循環機能障害については,運動療法の施行に際してのリスク管理という立場から多くの報告がなされている.筆者らは,社会復帰を果たした片麻痺患者の中に,何ら合併症が無いにもかかわらず,著しい疲労を訴えるものが少なからず認められることから,この原因として体力低下を考え,運動生理学的側面から片麻痺患者の循環機能障害に関する検討を行なってきた1~3).本稿では,これまでに筆者が得た知見と諸家の報告とを基に,片麻痺患者の運動生理学的側面からとらえた循環機能障害の評価・実態・要因ならびにその予防について述べてみたい.

退院後の維持的リハビリテーションと生活指導

著者: 福屋靖子

ページ範囲:P.19 - P.24

 Ⅰ.初めに

 脳血管障害者のリハビリテーションにおいて,退院後も維持的サービスが必要なケースは少なくない.

 維持的リハビリテーションという語の定義はまだ明確にはされておらず,曖昧に用いられているように思う.入院中に予測し設定された退院後の“リハビリテーション目標が,退院後に実現でき,心身の機能低下が起こらずに生活が維持できるために必要なリハビリテーション援助”を指してここでは“維持的リハビリテーション”の語を用いることにする.

 しかしながら,在宅障害者の実態からみて文字どおり維持されていると思われる人も概略的に眺(なが)めた場合には皆無ではないが,多くの場合一定の所にとどまっておらず,改善するか低下するかのどちらかに分けられるように感じている.impairementレベルからみた評価だけは可能かとも思われるが,在宅生活においては心身の機能と生活能力とが相互に絡み合い,評価法においても分けることが困難な現状にある.というのは,impairementレベルの評価にはWHOの国際障害分類試案1)によるまでもなく,耐久力や睡眠や精神機能や心理的状態までが含まれてくるからである.

 機能低下が起こらないように生活を組み立てて軌道に乗ると,結果的にみると筋力や耐久力がつき精神機能や心理的状態にも良い影響が出て改善がみられることが多い.

 したがって,維持的リハビリテーションということばは実状においては,“心身の機能や生活の機能が低下しないように行なうリハビリテーションサービス”を意味していることと解釈して用いることにする.

高齢脳卒中患者の社会参加への私のくふう

地域に善き支え手を

著者: 山本和儀 ,   野村典子 ,   伊藤晴人 ,   吉岡善隆 ,   岩城晴美 ,   大道弘子

ページ範囲:P.25 - P.26

 1.初めに

 われわれの目指している地域リハビリテーションは,地域で生活している障害者や老人が障害をもちながらもごく普通に人間らしく,健やかに,楽しく,安心して生活できるようにしていくことだと考えている.そのためには,直接かかわりをもつわれわれだけでなく,住民全体の取り組みとなる必要があると考えている.そのためのわれわれの役割としては,高齢脳卒中患者が退院後地域で生活するために,本人および家族に対しては,身体・精神機能の維持や日常生活動作の訓練指導を行なっている.そして障害者や高齢者の周囲の人々に対しては,地域社会で支えていくための援護態勢の充実を図っている.つまり,障害者の理解を深めるための市民への啓発活動や具体的には介護の方法などの指導も行なっている.

 われわれは地域リハビリテーションの目標をADLの維持とともにQOLの向上に置き,できるだけ生活の場を広げる努力をしている.また障害者の社会参加にはノーマライゼーションの思想がたいせつと考え,関係機関への働きかけや,市民啓発を積極的に行なっている.

 以下,具体的実践について紹介する.

「病院内における共同生活の場」へ

著者: 名嘉淳

ページ範囲:P.27 - P.28

 『人はパンのみによって生きるにあらず,神の口から出る一つ一つの言(ことば)で生きるものである』~聖書~.

 人は神の言(ことば)によって養われ支えられて初めて,真の命(いのち)に生きるものであるというのが,オリブ山病院におけるリハビリテーションの考えの中心であり,霊的ケア(朝の礼拝)と呼ばれているものです.

「役割」への働きかけ

著者: 長﨑香代

ページ範囲:P.29 - P.29

 私は理学療法士になってより13年になる.

 就職した当時は,機能改善やADL能力向上のためにただひたすら訓練を実施していた.家族指導と言えばROM訓練と少々の介護指導のみで,そこには老人の社会参加など考えも及ばなかった.地域のリハビリテーション教室に参加しているにもかかわらず,である.

寒冷地での実情

著者: 花田隆

ページ範囲:P.30 - P.30

 高齢脳卒中患者の多くは,発症前にすでに内科的基礎疾患を有している可能性が高く,加えて,加齢による身体機能の全般的な低下や既存の身体障害を有している場合も多い.そのため,それがリハビリテーション・プログラム施行時に運動療法を施行する際の質的・量的制限となってしまう.そこで高齢者では,退院に際してある程度の障害が残存し,家庭での家族による介助を要する条件の下で家庭復帰しなければならないケースが珍しくない.

 その際,患者本人が高齢であれば,家庭で介護に当たるであろう妻や嫁,娘もそれなりの高齢であるので,体力的にもきつい労作を強いられることになる.特に残存障害が重度の場合には,家族にとっては精神的にも肉体的にもほんとうに重労働となる.高齢化社会の進行が喧伝される中で,このような傾向はますます強まってゆくと予想される.

とびら

年頭に当たって

著者: 安藤徳彦

ページ範囲:P.3 - P.3

 明けましておめでとうございます.読者諸兄も新しい計画を胸に描いて,新年を迎えておいでのことと思います.新生『理学療法ジャーナル』1月号のとびらで福屋氏は,本誌を理学療法の専門誌として確立したいと述べ,そのためには理学療法の目指す目標,幅広いニーズへの対応,求められる義務と責任を果たすことが課題だと抱負を語っています.また,松村氏は理学療法をヘルスサイエンスの重要な方法論だと位置づけ,学問として科学的進歩を図ることが必要だと将来を展望し,特集で述べられた多くの提言を念頭において,本誌の編集を進めると述べています.それから1年が経過しました.

 本誌を理学療法に関する総合雑誌として,学会誌とは異なる多くの有益な情報を提供する価値あるものにしたいと,編集担当者一同は張り切って作業を進めてきました.学術性が高く,新しい知識と技術の普及に役だち,最新の関連情報を網羅し,学生を含めた広い世代の自由な意見を反映し,誰からも親しまれる,そんな欲張った方針でいます.これからもその方針は引き継がれます.

入門講座 理学療法プログラムの立てかた・1

理学療法プログラムの立てかた

著者: 鶴見隆正

ページ範囲:P.31 - P.36

 1.初めに

 理学療法は医師からの処方箋,依頼箋を受けてから開始され,その過程は評価(evaluation),目標設定(goal setting),理学療法プログラムの立案(program-ming),そしてプログラム実施へと展開される.

 この一連の過程の中で,評価がもっとも重要視されており,これまでに評価の意義,位置づけ,方法論といった概念を含めた検討が繰り返され,本誌1~3)においても何回か取り上げられるなど,つねに理学療法を進める上での要となっている.しかし日常の臨床現場で,評価のみに終始していたのでは円滑な業務遂行とはならず,評価から理学療法までを速やかに施行できることが求められているが,この一連の過程を臨床現場に即した観点で検討した報告は少ない4,5).そこで今回「理学療法プログラムの立てかた」と題して,6回シリーズで講座に取り上げ具体的な方法論を中心に,専門の諸先生に執筆していただくことになった.

 第1回の本稿では理学療法施行までを総論的に述べ,また近年,アメリカの理学療法分野で診断,プログラム立案などに導入され始めた医学判断学5~12)(Medical Decision Making)についても紹介する.

講座 リハビリテーションと住宅改造・1

住宅改造における理学療法士の役割と課題

著者: 福屋靖子

ページ範囲:P.37 - P.41

 1.初めに

 身体の機能障害(impairment)のために起居・移動動作が制限されることは,その人の生活を制限するのみではなく,生存をも危うくする虞(おそ)れを孕(はら)んでいる.

 社会的存在としての人間にとっては,ある程度の生活圏を確保し,家族や地域社会における仲間同士の交流を保ち,お互いに役割や存在を認め合いながら生きていくことが,孤独から脱却するために必須であり,そのためには,歩いて移動できなければならなかった.

 人が歩くことに対していかに強い執着をもっているかは,発表されている調査結果を見るまでもなくよく理解できるが,その欲求の強さにたじたじとさせられ悩んだ経験は理学療法士だったら誰でももっていることと思う.

 リハビリテーション医学の進歩に伴い,リハビリテーション工学の協力を得て義肢,装具,杖,歩行器などの歩行補助機器が開発され,機能障害はもちながらもある程度歩行が可能となる人が生まれてきた.そしてまた,歩行に代わる移動方法として車いすが広く活用されるようになり,身体障害者のリハビリテーションに革命的な広がりがみられるようになってきた.

 しかしながら,人間の二足歩行の巧妙さは平地,敷居,溝はもとより,坂道,凸凹道の歩行,段の昇降や走行,ジャンプ,スキップまでもやってのけるが,補助機器を用いての移動はおのずから限界があると同時に,環境による制約を回避することができない.

 補助機器を使用しない歩行でも,たとえ軽度の障害であっても,物理的環境いかんによってその人の移動能力は大きく左右される.すなわち,物理的環境がその人のdisabilityやhandicapを一義的に規定してしまっていると言っても過言ではないケースが少なくない.

 したがって,住宅改造を含む物理的生活環境は身体障害者のリハビリテーションの要となる重要な要素となっている.

クリニカル・ヒント

プレゼンテーションについて―スライド作りの手引き

著者: 稲垣稔 ,   野島晃

ページ範囲:P.42 - P.44

 1.初めに

 今回,クリニカル・ヒントと言うには少し外れた内容ではあるが,学会発表の準備を進めておられることと思い,これを記してみた.

 最近,よくプレゼンテーションということばを聴く.プレゼンテーションとは,贈呈,演出,紹介,提示などの意味である.

 TV,新聞などのコマーシャル(CM)は,その内容によって商品の売れ具合いを大きく左右する.CMは社運をかけたプレゼンテーションであると言える.短い時間で売り込む商品に対していかに印象付けをするか,つまり,画像の美しさやわかりやすさそしてインパクトが有るか否かなどによって内容が決定される.

 多少意味合いが異なるかもしれないが,学会の場でも似たようなことが言えるのではないだろうか.学会発表の内容でもちょっとプレゼンテーションのしかたをくふうすることによって発表がぐっと引き立って,聴きたいという気にさせられるものになろう.

 その効果の媒体となるものにスライドがある.一般にスライド作成用乾式ジアゾ・フィルム(CBスライド)のものは,手軽に作れるが変化が少なく単調で,目の疲れを覚えることさえもある.学会の発表のものは短時間であるからこそ余計,見やすく理解されやすいものにしたいものだ.すっきりしたしかも美しいスライドを見ながら聴くと,学会や講演は退屈しない.

 ここでは筆者が,これまで得てきたスライドの作りかた(特に作図)の手順について紹介する.

プログレス

心肺蘇生法の新しい考えかた・1

著者: 山本保博

ページ範囲:P.45 - P.45

 最近の救急センターでは,DOA(dead on arrival,入室時心肺停止患者)が目だつようになってきた.高齢化社会の到来,救急情報システムの発達,また最近では心停止状態で発見され社会死状態の患者でも救急隊員が心肺蘇生を施行しながら何とか医療機関に搬送しようと努力することにも理由があるのだろうか.東京における病院担送後7日目の生存率は,昭和63年のデータでは,病院前心肺停止(prehospital cardiopulmonary arrest)患者の蘇生成功率はすでに6.7%を越えている.

 心肺蘇生は,古くて新しい問題を多く含んでいる.胸骨を圧迫すると何故心臓から血液が駆出するというメカニズムが,まだ十分解明されていない.それゆえ,閉胸式が良いのか,開胸式心肺蘇生にしたほうが良いのかも論議のあるところである.

PT最前線

地域リハビリテーションの草分け―実践を教育に生かす 伊藤日出男氏/「北海道からの便り」

著者: 本誌編集室 ,   神山麻生

ページ範囲:P.46 - P.47

 「定年退官後も,多分地域で理学療法の仕事をやっている.」とおっしゃった.今は短期大学部で,御自分のお子さんより若い世代を相手に,“すぐやる課”の長としてエネルギッシュに動いておられる,伊藤日出男氏をお訪ねした.

あんてな

Community Based Rehabilitation(CBR)Service

著者: 高橋孝文

ページ範囲:P.48 - P.48

 “リハビリテーション”とは,もともと,機能不全を負った人々の精神的,身体的機能を最良のレベルにもっていく手だてを意味し,その手法はもっとも“効果的”たるべきであり,これにかかわる多くの社会資源を確保しつつ誰でも利用可能な地域単位の効率的なサービスとして提供される,ということは論を俟(ま)たない.

 しかし,現在もなお貧しい社会的,環境的,経済的条件下にある多くの途上国(Developing Countries)では,“施設ケア(Institutional Care)”を基盤として発展してきたいわゆる先進国型地域リハビリテーションの手法はなじみ難い地域性をもっている.リハビリテーション施設の建設や専門スタッフの養成,確保もままならない途上国では普遍性と低経費性とを両立させた“生活密着型リハビリテーション”を実践していくことが現実的な手だてであり,この問題は,1988年東京で開催された第16回障害者リハビリテーション世界会議や,仙台での第4回西太平洋脳性まひ会議でもリハビリテーション国際協力の“今日的課題”として多くの関心が寄せられた.またそれは,CBRのもともとの発想が,地域の人々に簡単な知識と技術を与え,障害者が地域の中で生きる,というリハビリテーションの原点,その啓蒙普及の根本理念をあらためて印象づけさせるものであった.

原著

健常者におけるF波の特性―等尺性収縮時および安静時における比較

著者: 鈴木俊明 ,   武田功 ,   藤原哲司

ページ範囲:P.49 - P.52

 Ⅰ.はじめに

 中枢神経疾患の理学療法にはさまざまな方法があり,その中において神経生理学的アプローチの有効性については賛否両論がある.三好1,2)は神経生理学的アプローチは非科学的であると報告しているが,柳沢ら3,4),藤原ら5)は,H波を利用して神経筋促通手技の効果判定を電気生理学的に説明している.筆者らも,神経生理学的アプローチの中での多くの促通および抑制手技を電気生理学的に説明することを目的として,今回はF波を用いて検討を行なった.

 F波は,1950年Magladeryら6)により報告された.当時は多シナプス性反射波と考えられていたが,その後の動物実験において脊髄後根を切除してもF波が消失しないこと7),また健常者において,純粋な運動神経である顔面神経からF波が導出されること8)や,その他の研究9)などから,現在では運動神経を逆行性に上行したインパルスが脊髄前角細胞を経て再び運動神経に戻り,支配領域の筋から導出されると考えられている.

 筆者らは前報で,健常者における安静時F波についての基礎的研究を発表した10).今回は導出筋を収縮させた場合の神経機能を検討するために収縮時F波を検索し,さらに健常者の対象数を増して安静時F波との比較を行なったので報告する.

短報

有限要素法による靴べら式プラスチック短下肢装具の応力解析

著者: 辻下守弘 ,   鶴見隆正 ,   川村博文

ページ範囲:P.53 - P.55

 Ⅰ.初めに

 従来,脳卒中片麻痺患者に対する短下肢装具は,金属支柱付き装具が主流であったが,近年では軽量で,外観の良いプラスチック装具の処方が大部分を占めるようになった1).プラスチック装具については,新しいデザインが各種発表されているが,その基本形である靴べら式プラスチック短下肢装具(以下,SHBと略す.)が多く用いられている2)

 これまでSHBに関する研究は,SHB装着時の歩行への影響について床反力計を用いた研究や片麻痺患者の機能とSHBとの関係についての研究が中心に行なわれてきた.また,最近ではSHBの耐久性について,歪(ひずみ)ゲージを用いた力学的な検討も行なわれている.われわれはSHBの可撓(とう)性と耐久性とに着目して,SHB装着によるしゃがみ動作や坂道歩行における足関節の角度変化と歪ゲージによる材質の歪パターンとについて報告した3).しかし,歪ゲージではSHB全体の歪や応力を定量的に把握することは困難であった.

 そこで,今回われわれは,有限要素法(Finite Element Method;以下,FEMと略す.)と応力塗料を用いてSHBの応力解析を行ない,SHBの可撓性と耐久性との関係を明らかにして,SHBの理想的なデザイン設定の基礎資料を得る目的で実験し若干の結果を得たので報告する.

実習レポート

症例報告 先天性多発性関節拘縮症の症例について/Comment

著者: 松本明子 ,   吉尾雅春

ページ範囲:P.56 - P.58

 1.初めに

 今回の臨床実習において,6例の症例を担当させていただいた.その中の5例については中枢性の疾患であり,残り1例のみが整形外科疾患であった.担当した症例の中で唯一の整形外科疾患であること,また訓練として接する時間が長かった(週4回)ということで,先天性多発性関節拘縮症の本症例について報告する.

1ページ講座 福祉制度の手引き・1

児童相談所・家庭児童相談室・福祉事務所

著者: 山本和儀

ページ範囲:P.59 - P.60

 今回,理学療法士が福祉制度について最低知っておくべき事柄について,書く機会をいただきました.臨床で,地域で,知っていれば有用な諸制度がありますから,この1ページ講座を障害者福祉制度の手引として活用していただければ幸いです.

学会印象記

第6回国際義肢装具連盟国際会議―国際学会への参加のお誘いも含めて

著者: 森中義広

ページ範囲:P.61 - P.62

 1.初めに

 国際義肢装具連盟(International Society for Prosthetics and Orthotics;ISPO)は,世界の義肢装具,開発医療機器,リハビリテーション工学分野などの専門職種に行政を含めた国際的な組織である.決して医師や義肢装具士がリーダーシップをとっているのではなく,理学療法士,作業療法士が重要なメンバーとして位置づけられている.

 この世界会議は,1974年,第1回目がスイスのモントルーで開催され,続いてニューヨーク,ボローニア,ロンドン,コペンハーゲンで5回の世界会議が行なわれてきた.

 この経緯の中で日本に対する国際的期待が高まり,今回,日本(神戸)で第6回ISPO世界会議が開催された.

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文献抄録

ページ範囲:P.64 - P.65

編集後記

著者: 松村秩

ページ範囲:P.68 - P.68

 新春を寿ぐとともに,未だお屠蘇気分の醒めやらぬ日に新年1月号をお届けします.

 年頭に当たり,本誌が『理学療法ジャーナル』と銘打って新生し,1周年を迎えることができましたことを,まず編集子として,読者諸氏ともどもにお慶びしたいと思います.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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