地域リハビリテーションにおけるレクリエーション活動の実践
著者:
奥村愛泉
ページ範囲:P.670 - P.677
Ⅰ.初めに
日本のリハビリテーションが産声をあげて以来,理学療法の分野においてもその発展は著しいものがある.特に機能障害(impairment level)や能力障害(disability level)に対する評価や治療・訓練は理学療法の専門性とみなされ,マンツーマンによる援助で,より評価を得ている分野であろう.しかし,社会的不利(handicap level)の分野はどうであろうか?
スーパーバイザーとして学生の指導をする際,いつも気にかかることは補装具以外の社会的不利に対してあまりにも学生が無関心だということである.いや,もしかしたら無関心ということばは適切でないかもしれない.「患者に対応していて社会的不利分野が問題と判断しても,評価や具体的な指導を教えてもらったことも無いし,どのような指導プランを立てたら良いのか思い浮かばない」旨の回答が返ってくる.また,地域リハビリテーション活動の中で「理学療法の専門性が発揮できない」「レクリエーション指導は専門外だから,指導できない」などの意見を耳にすることが多い.察するに,われわれ理学療法士の専門分野は,機能障害・能力障害から回復を図ることに落ち着くようである.が,はたしてそれだけであろうか.
確かに理学療法における評価法として,機能障害レベルでは「MMT」「ROM・T」などがあり,能力障害レベルでは「ADL・T」があるが,社会的不利レベルについては「?」ではないだろうか.生活上の問題で「QOL」のだいじさが声高に叫ばれている現在なのだが…….また理学療法士の法的解釈にしても,「……人体の機能に必要な基本的運動を……」とあるが,それでは,「いったい,応用動作は誰が指導するのか?」「回復できなかった機能・能力障害を抱えたままで,在宅生活を始める人の指導は?」の問に対し,理学療法士はむざむざ白旗を掲げざるをえないのであろうか?
今各地の機能訓練事業では,マンツーマンではなくグループ活動を取り入れ,筋力やROM訓練ではなくレクリエーション活動を取り入れ,楽しそうな笑い声やざわめきの中で,障害老人がいきいきしている現実がある.
社会生活そのものの中にある障害―社会的不利に対し理学療法士としてかかわることを前提におきながら,乏しい筆者の経験であるが,地域リハビリテーションにおけるレクリエーション活動を考えてみたい.