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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻10号

1990年10月発行

雑誌目次

特集 地域リハビリテーションにおけるグループ訓練

老人保健法における機能訓練事業の現状

著者: 青木龍哉

ページ範囲:P.656 - P.659

 Ⅰ.初めに

 老人保健法に基づく機能訓練事業は,現在制度発足後9年目を迎えています.その間の関係者の努力により,1988年度に全国2700か所で,延べ140万人以上の対象者に機能訓練が実施されています.しかしながら,高齢者の健康に対する関心が,単に寿命の延長という観点から,生活の質の確保という点に移ってきており,特に高齢者の生活の質を低下させる最大の原因である寝たきりは現在大きな問題となっています.そのため寝たきり老人対策は,21世紀の高齢化社会へのソフトランディングをするための今後10年間に取り組むべき施策についての十か年戦略(いわゆる高齢者福祉十か年ゴールドプラン)の中でも「寝たきり老人ゼロ作戦」として,大きな柱の一つに取り上げられています.このような時代背景を受けて,機能訓練の役割は,今後ともますます重要になってくると考えられます.

 ここでは,これまでの機能訓練事業の動向と機能訓練事業を取り巻く新しい動きとについて述べていきます.

地域リハビリテーションにおけるグループ訓練の課題

著者: 芝原修司 ,   香川幸次郎

ページ範囲:P.660 - P.664

 Ⅰ.初めに

 1983年度より老人保健事業の一環として,在宅障害老人などに対し,全国で,機能訓練事業が実施され,在宅での生活を基盤とした地域リハビリテーションの在りかたが検討されてきている.機能訓練事業の目的は,身体機能の維持回復とともに,自立生活への支援であり,これまでの報告を見ると,前者のみでなく,後者の効果により力点を置いて報告されている.そして,それは参加者の対人関係や行動場面での変容であると指摘されている.病院での治療や在宅訪問では認め難いこのような変化が,なぜ機能訓練事業の場で生じているのかは,おおいに関心のもたれるところである.

 われわれの臨床経験から参加者の変化の過程を追うならば,変化の契機は,機能訓練という集団の場に参加することにより生起するものと考えている.

 以上の関心を基に,横須賀市における機能訓練事業の現状を紹介しつつ,機能訓練事業における集団の意味と集団訓練の課題について述べてみたい.

保健所における機能訓練事業の実践

著者: 金沢成志

ページ範囲:P.665 - P.669

 Ⅰ.初めに

 東京都杉並区西保健所上井草保健相談所注1は,1985年5月に特別区では初めての機能訓練室を備えた保健所として開設され,同年10月から老人保健法に基づく機能訓練事業を開始し,現在に至っている.

 ここでは当保健相談所での機能訓練事業の具体的な内容を紹介し,業務を実践していく中で私たちが学んだことや明らかになったことなどについて述べてみたい.

地域リハビリテーションにおけるレクリエーション活動の実践

著者: 奥村愛泉

ページ範囲:P.670 - P.677

 Ⅰ.初めに

 日本のリハビリテーションが産声をあげて以来,理学療法の分野においてもその発展は著しいものがある.特に機能障害(impairment level)や能力障害(disability level)に対する評価や治療・訓練は理学療法の専門性とみなされ,マンツーマンによる援助で,より評価を得ている分野であろう.しかし,社会的不利(handicap level)の分野はどうであろうか?

 スーパーバイザーとして学生の指導をする際,いつも気にかかることは補装具以外の社会的不利に対してあまりにも学生が無関心だということである.いや,もしかしたら無関心ということばは適切でないかもしれない.「患者に対応していて社会的不利分野が問題と判断しても,評価や具体的な指導を教えてもらったことも無いし,どのような指導プランを立てたら良いのか思い浮かばない」旨の回答が返ってくる.また,地域リハビリテーション活動の中で「理学療法の専門性が発揮できない」「レクリエーション指導は専門外だから,指導できない」などの意見を耳にすることが多い.察するに,われわれ理学療法士の専門分野は,機能障害・能力障害から回復を図ることに落ち着くようである.が,はたしてそれだけであろうか.

 確かに理学療法における評価法として,機能障害レベルでは「MMT」「ROM・T」などがあり,能力障害レベルでは「ADL・T」があるが,社会的不利レベルについては「?」ではないだろうか.生活上の問題で「QOL」のだいじさが声高に叫ばれている現在なのだが…….また理学療法士の法的解釈にしても,「……人体の機能に必要な基本的運動を……」とあるが,それでは,「いったい,応用動作は誰が指導するのか?」「回復できなかった機能・能力障害を抱えたままで,在宅生活を始める人の指導は?」の問に対し,理学療法士はむざむざ白旗を掲げざるをえないのであろうか?

 今各地の機能訓練事業では,マンツーマンではなくグループ活動を取り入れ,筋力やROM訓練ではなくレクリエーション活動を取り入れ,楽しそうな笑い声やざわめきの中で,障害老人がいきいきしている現実がある.

 社会生活そのものの中にある障害―社会的不利に対し理学療法士としてかかわることを前提におきながら,乏しい筆者の経験であるが,地域リハビリテーションにおけるレクリエーション活動を考えてみたい.

老人のデイケアサービスとしてのグループ訓練・1

著者: 宮森達夫

ページ範囲:P.678 - P.680

 Ⅰ.初めに

 ここでは,あらかじめお断りする内容として,“老人”ということばを“高齢者”と呼び“訓練”ということばを“活動”ということばで表現している.この意味は,一般的に“老人”という概念を前期,中期,後期の三つの段階で異なった視点が必要と考えたことと,“訓練”を“活動”ということばで置き換えたのは社会的,心理的な観点を重視していこうとする意図によるものである.

 高齢者に対するデイケア活動の目的やその方法を考えた場合,私自身はこの活動の全体像を社会的リハビリテーション活動の中に位置付けられると考えてきた.その場合,対象となる高齢者のニーズや問題点がどの視点からとらえられるかによって,活動の内容は異なってくる.その意味で,グループ活動においても援助をする(される)対象としての高齢者というより,一般的な高齢者の意識を基礎においた視点から内容を検討する必要があると思われる.以前,グループ活動などのアンケートをデイケアの利用者にお願いしたことがある.選択する部分,自由回答などいくつかの設問を用意したが,結果は現在していることを是とする意見,続けてほしい要望などが主で,われわれが期待した新たな発想に結び付くヒントとなるような意見は無かった.

 こうした結果に対しては,運営する側としてはおおいに悩んでしまうところである.ある傾向なりが浮かんでくることを期待するものには,通常の手段では功を奏せず,ネガティブイメージしか残らないものになる.とすれば,前提となる高齢者理解に何か誤りがあることを想定して再検討する必要があろう.

老人のデイケアサービスとしてのグループ訓練・2

著者: 澤田金吾

ページ範囲:P.681 - P.683

 Ⅰ.初めに

 ますます深刻化する高齢化社会が到来する今日,老人に対する援護も老人福祉法で言う収容的施策(軽費老人ホーム,養護老人ホーム,特別養護老人ホームなど)から在宅福祉施策へと転換する兆(きざ)しが強まってきている.

 厚生省も在宅福祉施策として家庭奉仕員派遣制度,ショートステイ事業,在宅老人デイサービス事業などの充実を図るべく努力をしている.なかでも在宅老人デイサービス事業は,1986年に事業実施要綱を策定し,在宅虚弱老人に対する援護を開始した経過がある.

 この事業の目的は「在宅の虚弱老人などに対し,通所または訪問により各種のサービスを提供することによって,これらの者の生活の助長,社会的孤立感の解消,心身機能の維持,向上などを図るとともにその家族の身体的・精神的な負担の軽減を図ることを目的とする」としており,事業の内容は,①基本事業,②通所事業,③訪問事業から成っている.なお基本事業には,生活指導,日常動作訓練,養護,家族介護者教室,健康チェック,送迎の各業務があり,これは従来より実施されていた「デイホーム事業」を指すものである.

 さて,ここでは基本事業(デイホーム事業)として実施している老人のデイケア・サービスとしてのグループ訓練について,緑寿園地域ケアセンター(以下,ケアセンターと言う.)の実践状況を述べる.

老人のデイケアサービスとしてのグループ訓練・3

著者: 林幸治 ,   和田裕子

ページ範囲:P.684 - P.686

 Ⅰ.初めに

 厚生省は,1991年度「高齢者保健福祉推進10か年戦略」を打ち出した.この中には,「寝たきり老人ゼロ作戦」,「健康教育・健康指導の充実」などの項目も含まれており,中高齢者への運動指導の重要性も盛り込まれている.これは,超高齢化社会に向けて予防的視点に立つ地域リハビリテーションへの可能性を示唆するものと受け止められ,理学療法技術への期待と重要性を意図している.

 このような施策の下,老人の健康を守り機能を維持し,残存能力の開発を図りながら老人が居住する地塔の中で豊かな老後を送ることが望まれるようになってきた.すなわち地域レベルにおいて医療・保健・福祉の各分野それぞれの活動と連携が行なわれ始めている.

 本稿では,当院における理学療法の現状を紹介するとともに,グループ訓練について報告する.

とびら

PTのidentity

著者: 辛島修二

ページ範囲:P.655 - P.655

 一昨年の春,米国を訪れる機会を得た.そこでは多くの民族が暮らしていた.人々は貧しくても豊かでも自分たちの文化,宗教,言語に誇りをもって生きていた.誇りがなければ生きられないと思った.私は日本人であることを強く意識し,自分たちの文化,民族に誇りがもてるようにならなければならないと思った.

 私は理学療法士になって十数年になる.私は,いつ理学療法士であることを感じ,そのときどのような誇りをもったのであろうか.

入門講座 関節の運動学と運動療法・4

頸椎

著者: 林義孝 ,   中川法一 ,   米田稔彦

ページ範囲:P.687 - P.694

 Ⅰ.初めに

 運動療法を用いて,正常な範囲から逸脱した身体運動の改善を行なう理学療法士にとって,人間の身体に関する科学として位置付けられている身体運動学(Kinesiology)を理解することは必要不可欠であると同時に,運動療法への応用と関連して学問的興味を強く引かれる領域である.

 頸椎の運動メカニズムに関して,運動学(kinematics)および運動力学(kinetics)の研究成果は,機能解剖学に比較して運動療法に応用しうる知識は必ずしも多いとは言えない.例えば,頸椎の関節運動や頸部筋の機能では,特に頸部の安定性に関与する筋の協調性や,咀嚼,嚥下運動における咀嚼筋,舌骨上下筋群の協力関係など,運動療法にとって重要とされるところの十分な解明にはまだ多くの時間を必要とするようである.同様に,この分野の基礎的理論として受け入れられているHettingerに始まる筋力増強訓練における理論を,頸部の筋をはじめとした脊柱筋にも応用できるかは,検討を要するところであろう.

 ここでは頸椎の運動学と運動療法について述べるが,内容を教科書的なことから一歩踏み出し,頸椎疾患の運動療法を実際に行なう場合,つねに臨床的基礎知識として把握しておくべきものとした.

講座 人間関係論・4

院内における他職種との人間関係

著者: 大峯三郎

ページ範囲:P.695 - P.700

 Ⅰ.初めに

 リハビリテーションはチーム医療であることは周知のことである.患者を中心として,効果的かつ有機的なリハビリテーションサービスを行なうため,医師をはじめとして多数の関連職種によってチームが形成されている.このチーム医療の成果の成否はこれらに携わる関連職種の量的ならびに質的な能力もさることながら,チーム内の人間関係の在りかたによっておおいに左右されることも事実であり,このことを抜きにしてチーム医療を考えることはできない.また,医療以外においても,例えば臨床教育や臨床研究などの場面でも多くの領域の専門職種の人々とのかかわり合いが必要とされる.さらに,地域リハビリテーションサービス事業などにみられるごとく,院内のみならず,院外においても,好むと好まざるとにかかわらず多くのチーム・メンバーとかかわり合いながらリハビリテーションが遂行されている.

 このように,理学療法士に求められる役割の多様性と複雑化あるいは専門分化などに伴い幅広い場面において,人と人とのつながりが必要となり,協調性のある人間関係がつねに求められることになる.しかしながら,現実的にはスタッフの人間性や性格などのパーソナリティー,相互の役割の認識や理解力の不十分さ,コミュニケーション不足,運営機構上の問題など種々の要因により,すべての場面で好ましい人間関係を保つことは困難であり,不可能ではないかと思える.

 そのような状況下で,本講座では院内における他職種との人間関係について,大学病院に勤務する理学療法士の立場より,私どもの大学病院での在りかたを紹介するとともに,幾つかの私見を交えながら考察を加える.そして,これらの人間関係に関する場面設定も当然,リハビリテーションにおけるチーム・ワークの基盤としての観点から述べられるべきであると考えている.

プログレス

脊髄手術中の電気診断の進歩

著者: 安藤宗治 ,   玉置哲也

ページ範囲:P.701 - P.701

 Ⅰ.初めに

 近年の電子機器の進歩はすさまじいものがあり,医療の各分野における医用機器にも最新の技術が導入され,以前と比較すると格段の診断力や治療成績の向上がみられる.脊椎・脊髄外科の分野においても,電気生理学的手法を臨床応用して術中に脊髄機能や病変部位の電気診断を行なうことも可能となってきた.本稿では,電気診断の進歩に大きく貢献した記録装置および脊髄におけるいくつかの術中の電気診断法について述べてみたい.

PT最前線

もっと重力とのかかわりをみよう―工学的発想を理学療法に 冨田昌夫氏/<証言>大地が匂う

著者: 本誌編集室 ,   新保松雄

ページ範囲:P.702 - P.703

 神奈川リハビリテーション病院は私鉄の最寄駅からバスで小一時間.「これは建設当時の隔離政策思考のせいではないか.」とのこと.が,山懐に在るその広さは,今や市街地で信望めず,贅沢とも言える.患家の傍で,頻繁に利用できる施設とは違った役割を当然望まれる.

あんてな

在宅医療環境整備に関する検討委員会報告書

著者: 芳賀敏彦

ページ範囲:P.704 - P.704

 これは1988年より1989年にわたり2か年間,厚生省内に設置された委員会の報告書である.

 健康政策局を中心に委員は医師(医師会を含む),薬剤師,保健婦,公衆衛生学者,社会事業専門家(大学),法律家,医療評論家などより成っていた.著者も委員の1人.その概要を次に述べる.

雑誌レビュー

“Physiotherapy Canada”(1989年版)まとめ

著者: 千住秀明

ページ範囲:P.705 - P.708

 Ⅰ.初めに

 カナダの理学療法士協会誌である“Physiotherapy Canada”は,1989年でVol.41に達し,長い歴史をもっている.刊行は,年6回隔月刊の2か月間の合併号で,発行回数は日本の理学療法士協会の協会誌である『理学療法学』と同様である.1989年度版には,研究論文16編,症例報告1編,レビュー3編の計20論文が掲載されている.すべての論文を解説するのは著者の能力を超えているので,興味ある論文のみを紹介する.研究論文は,読者が活用しやすいように論文名,キーワード,論文の号数とページを表1にまとめた.

資料

第25回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1990年度) 模範解答と解説・Ⅳ―共通問題(1)

著者: 大橋ゆかり ,   薄葉眞理子 ,   谷浩明 ,   藤井菜穂子 ,   竹井仁

ページ範囲:P.709 - P.712

報告

求心性・遠心性収縮による膝屈・伸筋力低下の比較

著者: 市橋則明 ,   伊藤浩充

ページ範囲:P.713 - P.715

 Ⅰ.初めに

 大腿四頭筋とハムストリングスは,立ち上がり動作や歩行など日常生活を行なう下肢動作において非常に重要な筋である.また,動作時には求心性収縮や等尺性収縮だけでなく,遠心性収縮も必要と考えられる.特に,しゃがむ動作1)や階段昇降時2,3)には遠心性収縮が重要とされている.

 筋力評価の方法としては,近年,等速性筋力評価が健常者や患者における筋力特性を測定するために使用されている.過去の研究では,トルクと収縮速度の関係4~10)や主動作筋と拮抗筋のトルクの割合10-13)が健常者において報告されている.しかしこれらの報告の多くは,求心性収縮による筋力(以下,CON筋力)を測定しており,遠心性収縮による筋力(以下,ECC筋力)を報告したものは比較的少ない.ECC筋力の研究は,Doss14)らによって報告され,肘関節屈筋のECC筋力がCON筋力よりも約40%大きかったとしている.その後の研究によりECC筋力がCON筋力よりも大きいことは認められている6~8,12,15~21).しかし遠心性収縮の研究は,健常者を対象としたものが多く,患者を対象に求心性収縮と遠心性収縮との比較をなった報告は少ない.

 本研究の目的は,大腿四頭筋とハムストリングスの筋力低下を有している患者の求心性収縮と遠心性収縮による筋力を測定し,筋力低下の程度の違いを比較検討することである.

クリニカル・ヒント

骨粗鬆症と理学療法

著者: 大内二男

ページ範囲:P.717 - P.717

 トイレに行こうとして階段を降りるとき,最後の一段を踏み外して転落,背中を打って骨折を起こした.高齢になると骨が弱くなり骨折を起こしたことが原因で寝たきりの状態になることがよくある.骨折を起こさないように注意を払うことはたいせつだが,背景に骨粗鬆症があってちょっとした軽い圧迫でも骨折をしてしまう場合もある.高齢者の骨折では骨粗鬆症があるかどうかを確かめておくことは,治療に当たってたいせつなポイントであると考える.介護や理学療法の実施においても,それなりの配慮を要する.ここでは老人性骨粗鬆を取り上げて私見を述べてみる.

 医学大辞典によると,骨粗鬆症とは,骨の形態には変化無く,骨梁の減少,Havers管の拡大,骨皮質の薄くなった状態で骨髄腔が拡大されているものとあり,原因としては,①廃用性(長時間の安静・固定),②循環障害,③代謝障害④内分泌障害,⑤老人性など,と記してある.老人性骨粗鬆症では,生理的,加齢的に骨量が減少して,空洞の多い骨組織となっている.すなわち外力に対して骨の抵抗力が弱まり,少しの力でも容易にひび割れ,骨折を生じてしまうことになる.

1ページ講座 福祉制度の手引き・10

教育システムと手続き―障害児保育・障害児教育・諸制度と手続き

著者: 山本和儀

ページ範囲:P.719 - P.719

 「障害」の早期発見,早期治療が提起されて久しい.乳幼児の段階から「障害」児に対する療育の取り組みがなされ,現在では各市町村で一定の成果が見られています.例えば,市立療育センターが設置されたり,保育所・幼稚園などにおいて「障害」児保育が行われているなどしています.

 義務教育の場としては,養護教育諸学校と,地域の小・中学校がありますが,我が子を,どの教育機関に在籍させればよいのか?と,どの保護者も悩みをもたれます.

書評

『脳卒中・神経筋疾患のマネージメント;QOL向上のために』―横浜市立市民病医院 本多虔夫 伊豆菲山温泉病院 重野幸次著

著者: 中川充

ページ範囲:P.664 - P.664

 この本を一言で表現すれば,第一線で活躍している臨床家が臨床家のために書いた,practicalなmanualである.わかりやすい平易な文章で,実地医家に必要な内容がコンパクトにまとめてある.また,一般の教科書的な本には載っていない例外的な事例に対する対処のしかたや,診療のコツのようなものが各所にちりばめてある.

 第一章は,脳卒中,神経筋疾患とそのマネージメントである.脳卒中,Parkinson病,筋萎縮性側索硬化症などの主要な病気について,病態,症状はポイントを押さえ要領良くまとめ,予後,マネージメント中心に記述してある.

『地域医療の拠点を創る;医師会型老人保健施設の展望』―大阪大学教授 多田羅浩三 日本医師会常任理事 瀬尾摂編

著者: 村田欣造

ページ範囲:P.677 - P.677

 今回「地域医療の拠点を創る」多田羅先生と瀬尾先生編集の本を読み,私が感じたいくつかの強烈な印象を述べさせていただく.

 第一に,世の中あげて未知の世界,高齢化社会を迎えてと,各地で毎日たいへんな騒ぎである.私ももうすぐそんな年になり,自分が大騒ぎをすると思うが,同時にそんな暗い,希望の無い世界なのだろうか,もっと,あっけらかんとした世界かもしれない.どうしようと心配するだけでなく,すでに各地でそれを受け止め,敢然と立ち向かっている各地区医師会や,関係機関の方々がいることに誠に心強い感銘を受ける.

『リハビリテーション整形外科学』改訂第3版―国立療養所村山病院 大谷清著

著者: 渡辺英夫

ページ範囲:P.718 - P.718

 リハビリテーション医学の分野では,最近は脳卒中などの中枢神経疾患のリハビリテーションがフットライトを浴びているようではあるが,理学療法や作業療法の主体は運動器疾患であり,この分野のリハビリテーションでは,整形外科疾患が重要で,その知識が必須であることは言うまでもない.またリハビリテーション学院などでの臨床部門の講義の中では,整形外科学は講義時間がもっとも多いようである.

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あなたのイラスト

著者: 胡桃みるく

ページ範囲:P.669 - P.669

あなたのイラスト

著者: 胡桃みるく

ページ範囲:P.686 - P.686

文献抄録

ページ範囲:P.720 - P.721

編集後記

著者: 福屋靖子

ページ範囲:P.724 - P.724

 地域リハビリテーション・サービスにおいてグループ訓練の意義には,予想以上のものがあると感じている.地域リハビリテーションの重要性が認識されつつある中で,今月号ではそのサービス内容の一つとなっている“グループ訓練”に焦点を当ててみた.

 青木氏には高齢化対策の一環として推進されている老人保健法の機能訓練事業について解説していただいた.この事業発足以来8年間余りの試行錯誤のフィードバックから,施策としても‘リフト付きバスの整備’,‘リハビリテーションマニュアル作成’,‘住環境の整備’などを含む新たな保健・医療・福祉サービスの充実が「寝たきり老人ゼロ作戦」のために推し進められておることがわかり,第一線の声の反映の重要性を思い知らされた.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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