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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻11号

1990年11月発行

雑誌目次

特集 整形外科;スポーツ傷害を中心に

投球動作による肩障害―分析および診断と治療

著者: 松本真一 ,   信原克哉 ,   立花孝

ページ範囲:P.728 - P.735

 Ⅰ.初めに

 投球動作は古典的には上肢を長いレバーとして使うやり投げ(javelin-throwing)や上肢筋力をスプリングのように用いる砲丸投げ(shot-put)などがあるが,小さなボールを投げる野球が肩ともっとも関連が深く(スポーツ肩障害の39%),現在ではもっとも一般的なものである.ことに投手は,ボールの動線から考えて投球動作の中心的位置を占めるため厳しい条件下に置かれることが多く,特有な肩の病変も観察され報告されている.

 今回,野球における投球動作を分析する機会を得たので,その結果と経験した肩障害の診断と治療とを併せて報告してみよう.

膝関節の損傷に対する理学療法

著者: 村井貞夫 ,   村宏樹 ,   加賀谷善教

ページ範囲:P.736 - P.740

 Ⅰ.初めに

 近年,スポーツの大衆化が進み,スポーツ人口の急増が著しい.これに伴いスポーツ外傷・障害の発生も多くなっており,中でも膝関節の損傷頻度は高い.当院スポーツ整形外科における外来患者の損傷部位別頻度を表1に示す.これからも理解できるように,膝関節の外傷・障害はスポーツ医学の分野で高い関心がもたれている.そこで,膝関節の構造と機能について簡単にふれ,代表的な膝関節のスポーツ外傷・障害および,それに対する理学療法について述べる.

テニス肘のスポーツ医学的病態生理と運動療法を中心とした治療

著者: 栗山節郎 ,   渡辺幹彦 ,   川島敏生 ,   川島昭彦

ページ範囲:P.741 - P.746

 Ⅰ.テニス肘の一般論

 1.テニス肘の名称

 テニスなどのラケット種目を行なっている選手にみられる,慢性の肘関節周辺の疼痛性疾患を総称して「テニス肘(tennis elbow)」と呼ぶ.

 原因は数多く考えられるが,慢性の使用または使い過ぎ(over use)による手関節および手指の伸筋(または屈筋)の付着部の炎症によるものが多い.医学的には「上腕骨外(または内),上顆炎」,「手指伸(または屈)筋炎」などと呼ぶ.

足関節・足部傷害の病態生理と理学療法

著者: 中山彰一 ,   井原秀俊

ページ範囲:P.747 - P.753

 Ⅰ.初めに

 今回与えられたテーマは,スポーツ傷害における足関節・足部傷害の病態生理と理学療法である.しかし従来から,これらについては数多くの成書や文献に記されているので割愛させていただいた.そこであえて本稿では,ほとんど注目されていなかった「関節は高感度センサー(超大規模集積回路)である」との観点より,以下

 Ⅱ.関節神経生理からみた足関節・足部の機能

 Ⅲ.身体姿勢制御機構からみた足関節・足部の機能

 Ⅳ.下肢の多関節連鎖機構からみた足部・足指の機能

 Ⅴ.地面支持における足部把持機能

 Ⅶ.関節神経生理からみた理学療法プログラムについて言及してみたい.

 以上の点を整理し見直すことで,おのずと足関節・足部のスポーツ傷害に好発する捻挫・Achilles腱断裂・足部アーチ変形などに対する理学療法と損傷予防のための基本的解答がみえてくると思われるのである.

疲労骨折の発生メカニズム

著者: 武田芳嗣 ,   井形高明

ページ範囲:P.754 - P.759

 スポーツは小児から高齢者に至る広い年齢層に親しまれている.それに伴うスポーツ障害が,現場のみならず医療の大きな課題となってきている.疲労骨折もその一つであり,いったん発生すると数か月ものスポーツ中止を余儀無くされることから,適切な診療はもとより発生防止が切望されている.本稿では,骨の力学的特性と疲労骨折の病態生理について述べるとともに,発生要因について検討を加える.

とびら

理学療法(士)の市民権

著者: 野本彰

ページ範囲:P.727 - P.727

 まず初めに,本誌のような学術誌にきわめて世間話的な内容になることをお許し願いたい.

 子どもの学校友だちの母親同士のお茶のみ話の中で父親の職業についての話題が出た際,妻が「うちは理学療法をしている」と言ったところ,数人いた奥様方から異口同音に「何をしている人?」と質問された.理学療法士の仕事を詳細に知らない妻がしどろもどろになりながら,いろいろと説明しているうちにリハビリテーションということがば出たときに,一同皆「あーあ,リハビリをしているの.」そして「リハビリって訓練やマッサージをしてたいへんなんでしょ.」と納得したそうである.

入門講座 関節の運動学と運動療法・5

肩関節

著者: 立花孝 ,   野島晃 ,   松岡俊哉

ページ範囲:P.761 - P.767

 Ⅰ.初めに

 上肢をどの方向に向けるかという一つの目的のために,肩周辺機構のうちではそれを構成する多くの関節が機能的に,巧妙に,そして均衡を保ちながら運動している.それらを分解してその個々の働きを知ることが肩の運動を理解する上では必要不可欠だが,ここでは日ごろよく経験する臨床症状を運動学的にとらえることに重点を置いて話を進めたい.

1ページ講座 福祉制度の手引き・11

ホームヘルパーの手続き・日常生活用具の手続き

著者: 山本和儀

ページ範囲:P.768 - P.768

 1.身体障害者家庭奉仕員派遣制度

 重度の身体上の障害などのため日常生活を営むのに支障のある在宅の身体障害者(児)に対し,適切な家事や介護などの世話や外出時の付き添いを行なうことによる身体障害者(児)の生活の支援のための制度です.

 1)ホームヘルパーの派遣

 家庭奉仕員が訪問して日常生活上のお世話(食事,洗濯,掃除,買い物など)や相談助言などを行います.

 2)ガイドヘルパーの派遣

 重度の視覚障害および脳性麻痺など全身性の障害のある人が,公的機関や医療機関に赴くなど社会生活上外出が必要な場合や社会参加のための外出時に付き添いを行なう家庭奉仕員が派遣されます.手続きは図1のとおり.

講座 人間関係論・5

学生と教師との人間関係―理学療法教育の立場から

著者: 中屋久長

ページ範囲:P.769 - P.774

 Ⅰ.初めに

 理学療法士の養成教育機関は短期大学(部)であれ専門学校であれ高等教育の範疇に入り,学生にとっては“自ら学ぶところ”である.したがって,およそ教育の主体者は学習者である学生であり,教授者である教師は第一義的には教育者であることの自覚の上に,あくまで学習者の助力者であることが前提であろう.その教育養成課程において臨床実習に入ると,さらに学習者の主体性は増す.臨床指導者の助言・指導の下に学内教育で学習した知識や技術,自己の能力の限界を駆使し患者や障害者の問題解決方法を学習する.そして卒業,国家試験合格後は臨床の場で患者や障害者・対象者の理学療法に関して責任を負うこととなり,以後自己学習を主とした生涯教育が続くこととなる.

 ただし現教育システムすなわち教育期間,教師の要件,学習者側の諸問題,教育カリキュラムの問題など“自ら学ぶ”環境について多々不十分な面がある.その条件の中で学生と教師との人間関係は如何に在るべきかはたいへんに難解なことと考える.

 本講においては,理学療法教育・学習者である学生・教授者である教師について知り,その人間関係を考えてみたい.

クリニカル・ヒント

関節可動域訓練に一くふうを

著者: 松永義博

ページ範囲:P.775 - P.776

 1.初めに

 理学療法治療の中で関節可動域訓練は通常の治療項目であることは言うまでも無い.しかし他動的関節訓練は痛みを伴い,患者も恐怖心でリラクセーションができず,“力を抜いてください”とことばをかけてもやはり精神的緊張感はそう簡単に取れるものではない.患者は痛いから全身に力を入れてしまう.力が入るからなかなか関節は動かない.動かないからセラピストは無理やり動かそうとする.そうするとますます痛みが増強する.こんな悪循環の繰り返しがよくある.そして究極には,患者が治療を拒否してしまうことすらある.

 われわれは医師ではないので麻酔剤が使えない.局所麻酔とか腰椎麻酔などが行なえたらどんなに楽であろうと思うことが,時々ある.しかし,現状ではどうすることもできない.そこで,できる限り痛みを最小限に抑えながら行なうための良い方法が無いものかと誰もが考えている.

 今回,筆者が現在施行している方法について述べてみたい.

プログレス

喫煙と脳

著者: 竹内郁男 ,   海老原進一郎

ページ範囲:P.777 - P.777

 1.初めに

 近年,喫煙と脳に関する,きわめて重要な疫学的研究の結果が相次いで報告されている.

 なかでも喫煙が脳血管障害の危険因子であることが明らかにされたことは,高齢化社会を迎え成人病予防の意義の増した今日,大きな意味をもつものである.

 一方,喫煙はParkinson病を予防する効果があることが推測されており,この点についても若干ふれておきたい.

PT最前線

新センター建設にアイディアを注ぐ―兵庫県士会の総本山を預かる 山下隆昭氏/<証言>「風林火山」

著者: 本誌編集室 ,   神沢信行

ページ範囲:P.778 - P.779

 九州リハビリテーション大学校の第0期生が一人居る.1946年4月20日生まれの,団塊の世代のはしり.兵庫県の西端で,岡山県と境を接する佐用郡に生まれ少年時代を過ごした,国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院第三期生,現兵庫県士会会長山下氏.

あんてな

専修学校四年制

著者: 中屋久長

ページ範囲:P.780 - P.780

 本学院が開設されたのは1968年3月である.母体の学校法人高知学園は幼稚園から高等学校,さらに短期大学を擁する総合学園である.当時短期大学の学科増設が検討され,衛生技術学科(臨床検査技師養成課程)とリハビリテーション学科(理学療法士養成課程)が提案された.リハビリテーション学科については学内外ともに理解が不十分で,難航したようである.特に文部省においては,前例(設置基準)が無いとの理由で短期大学としての開設を断念し,各種学校三年制度でスタートすることとなった.

資料

第25回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1990年度) 模範解答と解説・Ⅴ―共通問題(2)

著者: 大橋ゆかり ,   薄葉眞理子 ,   谷浩明 ,   藤井菜穂子 ,   竹井仁

ページ範囲:P.781 - P.784

実習レポート

脳室穿破を伴った被殻出血患者の理学療法評価/Comment

著者: 関川清一 ,   鶴見隆正

ページ範囲:P.785 - P.788

 1.初めに

 今回,初めて脳出血の患者を評価したので,ここにその内容を示す.

報告

冬期用新型ブーツおよび杖用先ゴムの試作

著者: 田中敏明

ページ範囲:P.789 - P.791

 Ⅰ.初めに

 理学療法を施行する上で下肢装具および杖の活用は,患者の独立歩行を獲得するための重要な手段の一つと言える.

 そこで,北海道のような寒冷地における患者の歩行の安定性の確保と患者の冬期間に低下しやすい機能・能力の維持および行動範囲の拡大とを目的として,防寒と滑りにくさとの両面を追究した下肢装具および杖を開発試行したので報告する.

学生から

国家試験を終えて!

著者: 日高正巳

ページ範囲:P.791 - P.791

 理学療法士への最終関門として「第25回理学療法士国家試験」が,先日終了した.国家試験対策をしながら,感じたことがいくつかあります.「学生のくせに・・・」と思われるかも知れませんが,どうかお許しください.

PTのひろば

当院で実施している集団屋外訓練/あなたのイラスト

著者: 大西昇一 ,   胡桃みるく

ページ範囲:P.776 - P.776

 当院では,約10年ほど前より春と秋の年2回,当院で運動療法を受けている患者とその付き添いを対象に集団での屋外訓練を実施している.

 集団屋外訓練を実施する目的は,

 ①屋外での実用的な歩行練習や車いす操作練習を行なう

 ②単調になりがちな療養生活に節目をつけるとともに,患者の気分転換を図り社会復帰への意欲を高める

 ③意見・情報交換など,患者間・付き添い間の親睦を図る場を提供する

 ということである.

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文献抄録

ページ範囲:P.792 - P.793

編集後記

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.796 - P.796

 北京でのアジア大会も終了し,次期大会は広島に決まった.それにしても,中国の金メダルの獲得数は驚異的であった.中国選手の筋はあたかも金線維で構成されているかの如くである.スポーツで成功するには種々の要素を必要とするが,傷害・障害の予防とその治療もたいせつな部分である.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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