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雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻12号

1990年12月発行

雑誌目次

特集 いす

いすの人間工学

著者: 小原二郎

ページ範囲:P.800 - P.804

 Ⅰ.「食通」と「座り通」

 ヨーロッパやアメリカの有名ないすに腰掛けてみると,どこか一味違うなと思う.それは彼らが長い伝統の中で体得してきたこつであるから,この歴史の差はいかんとも為し難い.「ものを作ることができる」ということと,「ものを作ってきた」ということとは,似ているようだが,実は大きな違いがあるのである.

 日本におけるいすの歴史は何年かと聞かれたら,私は40年と答えることにしている.それはおかしい.日本にもすでに明治以来100余年のいすの歴史があるではないか,と反論される方もいるであろうが,私のいう意味は次のようなことである.

障害者といす

著者: 畠中泰司 ,   大川嗣雄 ,   伊藤利之

ページ範囲:P.805 - P.811

 Ⅰ.初めに

 人々が日常生活を送るなかで,もつとも基本的な姿勢には,立位,座位,臥位の三つの姿勢が挙げられる.このなかで座位姿勢は,一般的に疲れたら座る,座って仕事をする,座って話をするなど,いろいろな目的のための一つの姿勢である.また,座位にはいす座位と床上座位とがあり,これらは立位との中間的な姿勢としてもとらえることができる.この座位に対応する道具がいすであり,いすでの座位は,医学的リハビリテーションの場面で,基本的な姿勢の一つとして,治療手段や治療目的とされるなど,座位を支える道具としてのいすの果たす役割は,座位保持が困難な障害児・者にとって,機能維持や改善を図るばかりでなく,日常生活を送る上でも重要である.

 リハビリテーションの進歩に伴ない,重度障害児・者に対してもリハビリテーションサービスの供給が可能となり,多様なアプローチが行なわれるようになってきた.福祉機器と呼ばれるものもリハビリテーションアプローチの一つであるが,この分野では最近,座位を保持することができない,いわゆる座位保持障害に対して,座位を可能にするための座位保持いすの必要性が強調されてきた.この点で,1989年度から補装具の交付制度に新しく『座位保持装置』として座位保持いすが加えられたことは,座位保持障害児・者にとってこの上ない朗報である.

 特に,障害児に対する座位保持の有効性に関する報告は多いが,われわれも昭和40年代から多くの症例に座位保持いすを処方してきたので,その経験を踏まえて座位保持装置を中心に解説する.

重症心身障害児のいす

著者: 大津慶子

ページ範囲:P.812 - P.818

 Ⅰ.初めに

 重症心身障害児は1963年厚生省次官通達で、身体的精神的障害が重複し,かつ重症である児童と定義された.その後国立療養所に重症児病棟が設置されたのに伴い1966年の厚生省次官通達で,身体的・精神的障害が重複し,かつそれぞれの障害が重度である児童および満十八歳以上の者を重症心身障害児(者)と定義された.

在宅障害老人といす

著者: 森本栄 ,   松木秀行 ,   伊藤隆夫 ,   小笠原正 ,   國澤雅裕

ページ範囲:P.819 - P.823

 Ⅰ.初めに

 まず,在宅において生活している障害老人といすが,どのような関係の上に成り立っているかを考えたい.いすは本来坐位姿勢を取らせる道具であるが,坐位姿勢を保持することで総臥床時間を減少させ,機能の低下,合併症の誘発,心理的な荒廃などを防ぐことに役だつ.さらに,単に寝たきりになるのを防ぐだけでなく坐位からその状態に応じて活動範囲の拡大,介助量の軽減などへと展開していく出発点となる.

 一般的にいすには,その目的に応じてさまざまな形態や種類がある.障害老人がいすを使用する場合は,障害者個人の身体機能と使用目的(休憩,介護,訓練など)を考え,いすの形態(高さ,幅,機能など)を選択し適合させていくことが必要と考える.

 しかし,在宅ではそれに加え介護者の問題,生活環境の違いなどからその適応,目的,活用方法が異なってくるためさまざまな因子を考慮に入れ幅広い対応が必要である.近森リハビリテーション病院では退院患者に対し入院時からの機能を維持,継続した在宅生活が送れるように継続医療を実施し支援している.

 今回はこの活動を通じてかかわった在宅障害老人を対象に,在宅での坐位の確保といすとの関係,使用目的,いすを適用させるにはどうすれば良いかなどを再検討した.

リウマチ患者といす

著者: 横山正也 ,   安岡郁彦

ページ範囲:P.824 - P.828

 Ⅰ.初めに

 慢性関節リウマチ(以下,RA)は,非化膿性関節炎を主症状とする慢性進行性疾患であり,患者の辿る臨床経過が一様でなく,経過の型や終末像の推定が困難である.

 患者の過半数において,罹患年数を重ねるとともに障害の程度が強くなっていくということをつねに念頭に置き,理学療法を進める上でRA教育,生活指導にも重点を置くことが必要である.

 RA患者に対する生活指導では,和式生活から洋式生活への転換を勧めることが一般的である.

 和式生活における起居動作は,洋式生活に比較し,立ち座りなどの際に上下方向への重心移動が大きくなり,結果として下肢関節,特に膝関節に対し,多大な負荷を課すことになる.

 下肢の支持性や筋力の低下した患者が,そのような動作を日常生活の中で行なった場合,下肢の関節破壊を助長するだけでなく,上肢の支持をより必要とするため上肢の関節破壊をも助長し,結果として,動作そのものが不可能となる.

 寝たきり患者について考えた場合,“歩きたい”という願望は非常に強いものであるが,そのような患者では,骨破壊・骨粗鬆症・変形などが高度となっていることが多く,理学療法単独では対応に限界がある.

 しかしながら,近年,人工関節置換術をはじめとする整形外科領域の技術の進歩,内科・整形外科・リハビリテーション科などの合同した医療チーム・アプローチの発達などにより,歩行補助具を必要とすることはあっても,歩行能力の獲得は,実現性の高い治療目標となった.

 起き上がりに関しては,独力にて臥位から座位になることが不可能な患者でも,電動ベッドを使用することでその問題を解決することができる.

 歩行能力が獲得できた患者で,意外に問題となるのがいすでの立ち座りであり,この動作が不可能な患者では,歩行能力が獲得できたとしても歩行は実用的であるとは言えない.

 臨床経過からみてもいすでの立ち座りは,徐々に困難となっていきやすい動作であり,“RAといす”というテーマは,RA患者の理学療法を施行する際,避けて通れない問題である.

 市販されているいすの座面は,37~45cmで,40cmが平均的な高さであるが,最近,いすの座面の高さは低くなる傾向にある.病院の外来のいす,トイレの便座の高さなども配慮されているとは言い難く,不満を訴える患者も少なくない.患者に適していない高さのいすに座る場合,ゆっくり座ることができず,落下するような座りかたをすることが多く,椎体の圧迫骨折をきたす可能性も高いと考えられる.また,立ち上がる際,上肢の補助を必要とするばかりでなく,大腿,あるいは下腿後面でいすの前縁を押し付けるようにして立ち上がる患者もしばしば認められる.もし,そのとき,いすが動けば,転倒する可能性は大であろう.

 また,座った直後に立ち上がるよりも,長時間座位を保持した後に立ち上がるほうが,より困難であるということも,よく観察される事柄である.このことは,RA患者に特徴的な“こわばり”も,いすでの立ち座りを考えるときの要因となりうることを示唆するものと思われる.

 以上の如く,RA患者においていすは重要な問題であり,ここではRA患者にとって,立ち座りに最適ないすの高さという点を中心に現状を踏まえ検討したい.

とびら

理学療法士の活動の場として

著者: 林義孝

ページ範囲:P.799 - P.799

 最近特に,理学療法士の活動の場として医療と福祉を包括的にとらえた,地域医療と言われる分野への積極的な参加やその志向がみられる.このこと自体は,理学療法士のより広い範囲での社会活動として奨励されてよいものである.しかし,この参加への形態については少し検討しなければならないことがあるように思う.

 ひとつに,これら医療・福祉サービス体系にあって,理学療法士がもつ専門性がどの範囲まで有効に働き,他職種との役割分担をどうするのかを十分考えた上での参加が必要ではあるまいか.理学療法士が看護婦,保健婦をはじめ障害をもつ家族の教師のようにふるまい,それらの人々に理学療法技術を任そうとする傾向はないであろうか.もしそうであれば,理学療法が専門的な業務であることの理解が未だに不十分な現状で,われわれ自らが専門性を否定するという結果を招く危険がある.

入門講座 関節の運動学と運動療法・6

手の関節運動

著者: 奥村チカ子

ページ範囲:P.829 - P.834

 Ⅰ.初めに

 手は27個の小さな骨が集まり,関節を構成している.また,手は掌側凹のアーチの集合体と言える.手のアーチは把握物の形状に応じて手の形状を変え,多様な把持機能を創り出している.関節運動には,関節の形態や,関節靱帯,内在筋および外来筋が関与している.これらが複雑に組み合わさって,おのおのの関節を独自に単独で動かす一方,関節同士を連動させ,複数の関節に運動の同時性を与え,把握に合目的な運動を行なっている.

 手の外科術後,外傷,変形や障害を扱う上で,手の関節の機能および特徴を理解しておくことは非常に重要である.

講座 人間関係論・6

地域における他職種との人間関係

著者: 畠中泰司

ページ範囲:P.835 - P.840

 Ⅰ.初めに

 地域リハビリテーション活動は,保健・医療・福祉の各分野で行政主導の縦割り制度の下に展開されているのが現状であり,これら各分野が単独で同一の対象者にサービスを実施していく問題点は,種々指摘されているところである1)

 障害者とその家族にとっては,サービスを提供してくれる窓口は一つで,求めるサービスが適切に,そして,タイムリーに得られることが重要である2)

 要するに,われわれに求められている地域リハビリテーション活動は,これら保健・医療・福祉(図1)とリハビリテーション(以下,リハと略.)の理念や技術が同化したシステムを作り上げ,実行することであり,サービスの提供を統一し,その内容の質的,量的な充実を図ることである3)

 しかし,いくらシステムが確立されても,背景の異なる各分野の機関とスタッフの相互の理解や協力が得られない限り,生きたシステムとはならず,機関およびスタッフ間のより良い関係を築くことが,実効ある活動を導き出す基盤である.

1ページ講座 福祉制度の手引き・12

所得保障

著者: 山本和儀

ページ範囲:P.841 - P.841

 1.特別障害者手当(月額22760円)

 身体または精神に著しく重度で永続する障害があるため,日常生活において常時特別の介護を要する在宅の20歳以上の方に特別障害手当が支給されます.

 1)支給条件

 身体障害者手帳のおおむね1級または2級程度以上の異なる障害が重視している方,またはこれらの障害と日常生活での動作および行動が困難であり常時の介護を必要とする精神の障害(精神能力の全般的発達の遅滞の程度が最重度とされる精神簿弱を含む)が重複している方など,日常生活を行なうのに著しい困難がある人.

クリニカル・ヒント

ホームエクササイズを有効に―セラバンドの効用

著者: 花岡利安 ,   宮下かおる ,   塚越美智子

ページ範囲:P.843 - P.844

 1.初めに

 頸,腰,肩,膝などの慢性疼痛性疾患に対して近年,マニュアルセラピー,AKAといったいわゆる徒手療法が多く用いられている,これは時に著効を示すこともあるが,反面,セラピストへの依存性が強まる傾向にあり,疾患の自己管理やホームエクササイズについての再考が必要と思われる.

 適当なホームエクササイズの指導により,治療期間の短縮や,患者負担の軽減を図ることができるが,現実問題としてホームエクササイズが必ずしも有効に実施されていない状況を実感している.その原因には各種のものが考えられている.

 われわれは,ホームエクササイズを可能にする条件として,次のことを挙げて指導に当たっている.

 ①治療の主役は自分自身であることを十分理解させること.

 ②方法が単純で運動の種類が少ないこと.

 ③病院で行なう治療の一部をそのまま家でも実施できること.

 ④安価な道具を使うこと.

 ⑤訓練の効果が具体的に判定できること.

 ⑥定期的にフォローすること.

 今回は,肩関節疾患(いわゆる五十肩,肩周辺の外傷後,乳房切除術後,他)を例として,セラバンドを用いてのホームエクササイズの実際を紹介する.

プログレス

人工腱の進歩

著者: 多田浩一

ページ範囲:P.845 - P.845

 腱移植の材料として人工腱を利用したいという思いは古くからあったようである.良い人工腱が入手できないために同種移植腱(死体あるいは切断肢より採取した他人の腱)を移植腱として用いた報告は古くからみられ,一定の成績をあげている.しかし,人工材料(生体材料)を用いて腱を作製し,それを臨床に応用したのは1965年Hunterが報告したsilastic implantがもっとも代表的なものである.初期は恒久的な移植腱として計画されたらしいが,シリコンと生体組織はいくら長時間待っても癒合するわけでなく,絶えず張力がかかる異物と生体との接点においてimplantの破綻が必発であることなどの理由により一時的なtendon spacerとして用いられるようになっている.

 ここではいわゆるHunter tendonについて詳述するが,シリコン以外の材質による人工腱についても多少述べてみる.

PT最前線

生活の場に在る人間像を追って―職場に根ざした強固なボランティア団体を生んだ 公文香代氏/<証言>「地域リハビリ」実践の同僚として

著者: 本誌編集室 ,   小嶋裕

ページ範囲:P.846 - P.847

 「突っ走る性格ですから」とおっしゃる.思い詰めて,居ても立ってもいられなくなって自ら信ずるところを実践する.当初の若気のはやりは,周囲の助力も得て,何より患者の真の姿を追う努力とともに地域リハビリテーションへの道を自分の方式で歩ませてきた.

あんてな

急増する私的病院チェーン

著者: 二木立

ページ範囲:P.848 - P.848

 我が国の私的病院の構造的再編成が急速に進んでいる.従来,病院は個々に独立したものと考えられてきたし,現在でも数の上ではそのような病院が多数を占めている.しかし,我が国でも,一法人が複数の病院を開設している私的「病院チェーン」は近年,急増し続けている.

 表1は,筆者が,各種病院名簿の分析と電話調査により作成した,1988年の私的病院チェーンの総括表である(医療法人のみは1984年).

雑誌レビュー

“Physiotherapy”(1989年版)まとめ

著者: 岩崎富子

ページ範囲:P.849 - P.853

 Ⅰ.初めに

 英国の理学療法士協会が発行する“Physiotherapy”の1989年度版の総論文数は96編である.総説的論文が多く,研究論文が少ない.分野は多岐にわたり,分類すると,物理療法関係4編,スポーツ関係4編,痛み・ストレス関係6編,マニプレーション8編,片麻痺関係4編,整形疾患の運動療法6編,肺理学療法4編,その他の運動療法12編,車いす・補助具・機器紹介・用具考案14編,教育関係5編,管理・運営,理学療法業務11編,その他18編である.研究論文は6編(目的,方法が明確で,結果のデータが記載され,考察もなされている論文を研究論文とした.)で,基礎実験的研究は皆無で,臨床に密接したテーマの研究である.

 特集は痛みとストレス,片麻痺,マニプレーション,スポーツにおける理学療法の4題目についてであった.以下に分野別の論文を紹介する.文中の[( ) ]は論文の掲載号数とページ数を示す.

資料

第25回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1990年度) 模範解答と解説・Ⅵ―共通問題(3)

著者: 大橋ゆかり ,   薄葉眞理子 ,   谷浩明 ,   藤井菜穂子 ,   竹井仁

ページ範囲:P.854 - P.857

豆知識

医学論文の書きかた:「内容と欄名」編/医学論文の書きかた:「執筆時の心得」編/あなたのイラスト

著者: 本誌編集部 ,   奈良勲

ページ範囲:P.857 - P.858

 研究論文

 論文にまとめる価値があるもの:内容が新しく,かつ重要性があるもの.あるいは以前に発表された論文の論旨をさらに発展させたもの.

報告

在宅脳卒中患者の家族関係評価と機能訓練事業への応用について

著者: 伊藤日出男 ,   須藤恵理子 ,   伊藤和夫

ページ範囲:P.859 - P.863

 Ⅰ.初めに

 地域リハビリテーションは,障害者および家族に対して,障害から少しでも解放されるように援助する有力な手段である.このことは,最近の理学療法士による地域リハビリテーション(以下,地域活動と言う.)に関する勝れた実績報告や,事業の紹介などから知ることができる.しかしながら,地域活動の領域における評価に関する研究は少ない.

 われわれは,従来の日常生活動作(以下,ADLと略.)検査や運動機能の評価方法だけでは,在宅障害者の変化を的確に把握できないことを感じていた.そこで地域活動の効果をよりいっそう高めるために,評価の視点を障害者と家族との二者関係に置く「在宅障害者家族関係評価表」1)(以下評価表と略.)を考案した.

 この評価表は,障害者と家族に対して六項目の指標を設定し,各指標に対して5点を満点とする(最低1点)得点を与えて,総得点から家族関係の状態を把握しようと試みたものである.さらに得点の結果を,観察しやすいように六角形の図形に示した(図1).

 この評価表を使用して,1987年に保健婦の協力を得て青森県内の農村地域に存在する脳卒中後遺症(以下,障害者と言う.)50人とその家族(主な介護者)を対象とする面接調査を実施した.面接の結果はおおむね次のとおりであった2)

 1)障害者と家族の関係には,家族が障害者をよく受け入れている(障害者が家庭生活へよく適応している)ものから,逆に家族の障害者に対する受け入れに問題がある(障害者が家庭生活に適応していない.)ものまで,四群に分類することができる.

 2)この家族関係は固定したものではなく,発病後の期間や,地域活動などの社会的サービスを受けることによって変化する.すなわち身体機能の改善や,家族の障害者に対する過保護的な態度が改善するのに伴い,家族としての機能が発達し,社会的な活動にも参加するようになる.

 3)一方,家族関係にまったく変化のみられない事例もあり,それは発病以前からの家族の在りかたによって規定され,外部から影響を受けることはほとんど無い.すなわち障害者の性格が生活態度,あるいは家族の障害者に対する受け止めかたによって決定されている.

 このような家族関係の分類は,保健婦による各家族の観察結果からかなり妥当性のあるものと考えられた.しかし,観察事例が限られていたことや,評価法に対する信頼性の検討を行なっていなかったために,仮説の域に留まるものであった.

 今回は,この評価表による評価の際に使用した障害者と家族の指標に対するおのおのの得点から,指標間の相関性を検査した.また,本評価表を使用して地域の機能訓練事業(以下,リハビリ教室と言う.)の参加者を対象とする面接調査を行ない,総得点の変化を検討したので報告する.

書評

『腰痛のマネジメント』MANAGING LOW BACK PAIN(second Edition)―Kirkaldy-Willis WH ed 富山医科薬科大学教授 辻陽雄監訳

著者: 蓮江光男

ページ範囲:P.804 - P.804

 腰痛を主症状とする変性性腰椎疾患は,整形外科を中心とする日常臨床のcommon diseaseの一つであるが,その診療がつねに科学的根拠に基づいた,合理的かつ効果的なものであるとは,残念ながら断言できない.腰痛の発症機序には依然不明確な面が多く,その臨床的評価や効果的な治療手段についても,多くの問題点が残されている.国の内外を問わず,腰痛に関する学会や研究会がしばしば開催され,またこの方面の出版物が次々に出版される現状は,この間の事情をよく物語っている.

 このほど辻陽雄教授により出版された,Kirkaldy-Willis WH編者の「腰痛のマネジメント」第2版は,一読して他書と異なる特徴を有することがよくわかる.

「明日を創る」頸髄損傷者の生活の記録―上村数洋著

著者: 奈良勲

ページ範囲:P.844 - P.844

 1981年12月,雪のちらつく冬の夜,勤務先から車で帰宅中の上村さんは,峠の下り坂でスリップしてブレーキがきかなくなり谷川に転落,第三頸椎脱臼骨折による四肢麻痺となる.働き盛りの34歳であった.種々の医学的治療・管理を受けながら障害受容の段階を経過し,1983年10月に退院.当初は四畳半の和室に電動GatchベッドとTVだけの生活で,空間が狭くリフターも使えないため,車いすでの外出もままならない状態であった.

『地域医療の拠点を創る;医師会型老人保健施設の展望』―大阪大学教授 多田羅浩三 日本医師会常任理事 瀬尾摂編

著者: 小野昭雄

ページ範囲:P.853 - P.853

 要介護老人対策の「切り札」として老人保健施設が創設され,現在,164施設,12,798床が稼動している.

 本格的な高齢化社会を迎え,老人や老人を取り巻く人々のニーズが多様化し,従来の施設・サービス体系では十分な対応をしえなくなってきたことが老人保健施設創設の背景にある.その意味では,老人保健施設は既成の概念にとらわれること無く,地域のさまざまなニーズに柔軟に対応していくことが望まれる.

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文献抄録

ページ範囲:P.864 - P.865

編集後記

著者: 福屋靖子

ページ範囲:P.868 - P.868

 1990年の最後の号,第24巻第12号である.

 ‘いす’は人体の姿勢を保持し,動作への移行の拠点として機能している.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

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