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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻12号

1990年12月発行

文献概要

報告

在宅脳卒中患者の家族関係評価と機能訓練事業への応用について

著者: 伊藤日出男1 須藤恵理子2 伊藤和夫3

所属機関: 1弘前大学医療技術短期大学部 2公立金木病院 3津軽保健生活協同組合健生病院

ページ範囲:P.859 - P.863

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 Ⅰ.初めに

 地域リハビリテーションは,障害者および家族に対して,障害から少しでも解放されるように援助する有力な手段である.このことは,最近の理学療法士による地域リハビリテーション(以下,地域活動と言う.)に関する勝れた実績報告や,事業の紹介などから知ることができる.しかしながら,地域活動の領域における評価に関する研究は少ない.

 われわれは,従来の日常生活動作(以下,ADLと略.)検査や運動機能の評価方法だけでは,在宅障害者の変化を的確に把握できないことを感じていた.そこで地域活動の効果をよりいっそう高めるために,評価の視点を障害者と家族との二者関係に置く「在宅障害者家族関係評価表」1)(以下評価表と略.)を考案した.

 この評価表は,障害者と家族に対して六項目の指標を設定し,各指標に対して5点を満点とする(最低1点)得点を与えて,総得点から家族関係の状態を把握しようと試みたものである.さらに得点の結果を,観察しやすいように六角形の図形に示した(図1).

 この評価表を使用して,1987年に保健婦の協力を得て青森県内の農村地域に存在する脳卒中後遺症(以下,障害者と言う.)50人とその家族(主な介護者)を対象とする面接調査を実施した.面接の結果はおおむね次のとおりであった2)

 1)障害者と家族の関係には,家族が障害者をよく受け入れている(障害者が家庭生活へよく適応している)ものから,逆に家族の障害者に対する受け入れに問題がある(障害者が家庭生活に適応していない.)ものまで,四群に分類することができる.

 2)この家族関係は固定したものではなく,発病後の期間や,地域活動などの社会的サービスを受けることによって変化する.すなわち身体機能の改善や,家族の障害者に対する過保護的な態度が改善するのに伴い,家族としての機能が発達し,社会的な活動にも参加するようになる.

 3)一方,家族関係にまったく変化のみられない事例もあり,それは発病以前からの家族の在りかたによって規定され,外部から影響を受けることはほとんど無い.すなわち障害者の性格が生活態度,あるいは家族の障害者に対する受け止めかたによって決定されている.

 このような家族関係の分類は,保健婦による各家族の観察結果からかなり妥当性のあるものと考えられた.しかし,観察事例が限られていたことや,評価法に対する信頼性の検討を行なっていなかったために,仮説の域に留まるものであった.

 今回は,この評価表による評価の際に使用した障害者と家族の指標に対するおのおのの得点から,指標間の相関性を検査した.また,本評価表を使用して地域の機能訓練事業(以下,リハビリ教室と言う.)の参加者を対象とする面接調査を行ない,総得点の変化を検討したので報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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