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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻3号

1990年03月発行

文献概要

特集 苦労した症例報告集

―小児―側彎を伴った脳性麻痺児―症例における経時的変化

著者: 香月眞佐美1

所属機関: 1大手前整肢学園訓練課

ページ範囲:P.160 - P.167

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 Ⅰ.初めに

 新生児医学や周産期医療の進歩,あるいは脳性運動障害の早期発見・早期治療によって,脳性麻痺の発生率は減少していると言われている.確かに核黄疸の減少により従来のようなアテトーゼの発生率は減少し,脳性麻痺の病像のスペクトルムには変化はみられるが,発生率についてはその統計の発表はいろいろで一定していない.しかし医療の進歩とは逆に,脳性麻痺の重症化については意見が一致している.

 脳性麻痺は非進行性の脳疾患であると言われている.出生直後では先天性の脳奇型を除き,骨格や筋肉,関節などの解剖学的形態に異常は無いと思われる.しかし,加齢とともに運動・姿勢の発達障害によって,臨床的には悪化してゆく症例が多い.

 その運動・姿勢の発達障害の中で,歩行可能な脳性麻痺であれば二次的障害による変形・拘縮のため尖足によるAchilles腱の手術や,鋏状歩行のため腸腰筋や内転筋・ハムストリングスの手術などを受けている.また,症例によって四肢の変形のみならず体幹に側彎症を生じ,側彎改善のための手術を受ける場合もある.

 寝たきりの重症の脳性麻痺では,原始反射が残存し非対称性緊張性頸反射様の肢位をとることが多い.顔は一側に向け頸椎の前彎が著しく,燕下障害を伴い経管栄養を必要とする場合もある.また体幹では胸郭や脊柱の変形,Hurison溝や腹直筋の解離が存在し,呼吸機能の障害を生じることもあり,呼吸機能の低下により肺炎を生じ亡くなる重症児も多い.下肢においては,股関節脱臼を生じ観血的に脱臼整復手術を受ける児もいる.

 重症児では,特に股関節脱臼と側彎の発生率が高いことはよく知られれている.

 特に重症脳性麻痺児の場合,二次的障害により患者自身のみならず介護者の負担も大きくなる.

 さらに二次的障害を放置すると,頸椎症や腰痛などの疼痛を生じる場合もある.

 そこで今回,移動能力が腹這い以下の側彎を伴った幾つかの症例を経時的に追跡することで,症例より勉強できたことを述べみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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