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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻4号

1990年04月発行

文献概要

特集 老人保健施設の理学療法

病院に設置された老人保健施設の現状と展望

著者: 矢内伸夫1

所属機関: 1南小倉病院

ページ範囲:P.219 - P.224

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 Ⅰ.初めに

 老人保健施設の歴史は浅く,モデル施設として早くからスタートした私どもの所でも,やっと,この4月で3年目を迎える段階である.したがって,一部の地域や関係者を除き,まだまだ一般の認識は乏しい.また,運営を開始した施設も,それぞれが新しい制度,新しい施設として,要援護老人のサービス拡充に取り組んではいるものの,地域差,施設差をはじめ,さまざまの条件克服に知恵絞りの努力を重ねてきているのが現状とも言えよう.

 この3年余を通し,老人保健施設に関心をもたれる方々から多くの質疑が寄せられもした.なかでも,採算性を危ぶむ声,老人病院や老人ホームとの整合性を問うもの,受益者負担の利用料導入を訝(いぶか)る声なども,その一つである.また,諸基準設定後は,病床転換とか,小規模施設開設の困難さ,あるいは,人員配置をめぐり,十分なケアができないのではないか,さらに,リハビリテーション重視の意義は認めても,専従の理学療法士,作業療法士確保が難しい現状を訴える声,はたまた,治療としての運動療法・作業療法と,老人保健法下の機能回復訓練との混同から,その方法論をめぐる質疑も後を絶たない.また,介護職の位置付けも,医療機関の中には不慣れとあって,若干の戸惑いさえみられるようである.

 一方,この施設のキイ・ワードとも言える「通過機能」とか,「在宅療養の拠点」を,初めから「無理難題」「理想を追いすぎる」と指摘する声もあるが,これこそ,老人保健施設の究極の努力目標なのである.

 確かに,どれ一つを取つても,決して容易なことではない.ことに,従来的な老人医療福祉の供給構造,家族の在りかたなどでは解決しにくい点も多いが,あえて,その障壁を乗り越える一方法として,老人保健施設は位置付けられたのである.

 今後の老人医療福祉は,この施設運用を標準杭として検討されるであろうし,すでに,その方向は一歩ずつ現実のものになっている.

 いずれにしろ,老人保健施設の取り組みは,「できないから,やらない」という観点でなく,「やらなければ,できない.そのためには」という現状打破の発想転換が必要となってくる.それだけに,各種条件の克服は厳しいが,マクロ的視点から老人医療福祉をとらえるにつれ,必ずや,療養者に安心と満足をサービスできる施設運営も可能だし,将来的展望は開かれるであろう.

 本稿に求められた病院併設例の場合,確かに利点が多く,比較的早期に軌道確保はできようが,逆に,親病院態勢の現状打破も課題となるだけに,決して荷が軽いとも言えないようである.

 そこで,都市型一般病院(内科・リハビリテーション科・整形外科・脳外科・精神神経科・麻酔科・泌尿器科,皮膚科,200床,特2類看護)としての南小倉病院に併設した老人保健施設「伸寿苑」150床の現状を中心に,若干の検討を加えてみたい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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