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入門講座 理学療法プログラムの立てかた・6
神経難病疾患の理学療法プログラム
著者: 増本正太郎1 望月久2 笠原良雄1
所属機関: 1東京都立神経病院 2東京都立府中病院
ページ範囲:P.393 - P.400
文献購入ページに移動神経難病と一口に言っても,特に明確な疾患群として定義付けられているわけではない.一般に難病(intractable desease)とは原因不明で根治困難な予後不良の疾患を指すが,ここでは代表的神経難病である三疾患を取り上げることにする.それは黒質・線条体系を主な病変部とするParkinson病,小脳・脊髄系を侵す脊髄小脳変性症(SCD),運動ニューロン疾患である筋萎縮性側索硬化症(ALS)である.いずれも神経系変性疾患であり病状の進展が非常に緩徐なケースも存在するが,多くは進行性である.したがって,リハビリテーションの目的は,可能な限り機能的維持を図り能力障害の進行を最小限に食い止めることにある.こう書くと治療に熱心なセラピストにとって神経難病は魅力が無いばかりか,無力感さえ抱きかねない.確かに,急速な進行期や末期にあっては,機能面より社会的不利の軽減やQOLの向上を図ることが中心になることもある.しかし,われわれは期間は限られても能力障害のみならず機能的障害においても改善を示した例を経験している.それはParkinson病にみるように進歩した薬物療法の効果による場合もあるが,不活動な状況が機能的障害や能力障害を真の進行以上に修飾していると思わせる例が存在するからである.近年延命医療のnegativeな側面が取り上げられることが多くなったが,延命への努力無しには医療の進歩が無かったように,セラピストはあらゆる障害に対し絶えざる注意と努力を払い患者ニードを把握する必要がある.こうした諦めない姿勢が患者との信頼関係を築き,闘病への意欲を心理的に支持することにつながる.
本稿では,まず神経難病に対する理学療法プログラムを作成するに当たって留意すべき基本的な考えかたについてふれ,次に障害レベルに対応した各疾患別の取り組みかたを述べることにする.
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