icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻8号

1990年08月発行

雑誌目次

特集 ハイリスク・体力消耗状態

特集に当たって―ハイリスク・体力消耗状態の概念とそのリハビリテーションの基本的な考えかたについて

著者: 上田敏

ページ範囲:P.504 - P.505

 その概念について

 「ハイリスク・体力消耗状態」とは「重症ハイリスク疾患による全身体力消耗状態」をやや簡略にしたものである1).この場合「重症ハイリスク疾患」あるいは略して「ハイリスク」とは疾患レベルの特徴を規定することばであり,「全身体力消耗状態」あるいは「体力消耗状態」とは障害レベルの特徴,すなわち主たる機能障害が麻痺や拘縮などではなく,「体力」の著しい低下にあることを示すことばである.すなわちこれは疾患と障害の両面から規定されている概念であり,本来一つのことばでは言い表せないものと言ってよい.

 この場合の「ハイリスク」とは従来のリハビリテーション医療の場で言われてきたリスクとは桁違いに高いものであり,生命の危険と紙一重とも言うべき高度の危険をはらんだ状態である.疾患の種類から言えば,癌,それも全身各所に転移して多彩な症状を示しているもの,あるいは白血病,リンパ腫のような全身性の悪性腫瘍で同じく多様な症状を示しているものがその典型である.それに次いで心血管系の手術直後の状態,重症の心不全,腎不全,肝不全などで同じく生命の危険の大きいもの,その他の重症疾患が含まれる.

ハイリスク・体力消耗状態のリハビリテーション・プログラム―その効果と実際;東京大学病院の場合

著者: 大川弥生 ,   木村伸也

ページ範囲:P.506 - P.512

 Ⅰ.初めに

 「重症ハイリスク疾患による全身体力消耗状態(以下「ハイリスク・体力消耗状態」と略す.)は,最近のリハビリテーション医療の対象患者の(疾患レベルにおける)重症化,(障害レベルにおける)重度化・重複化の傾向1,2)をもっとも先鋭に示す対象と言える.

 図1に示す入院患者の疾病分類からも明らかなように,東京大学医学部附属病院リハビリテーション部(以下東京大学病院リハビリテーション部)においては,このような患者は急激に増加している.実数で示すと,1977年には5人,1983年には4人にすぎなかったものが,1984年8人,1985年10人とやや増加し,その後は1986年41人,1987年39人,1988年51人,1989年54人と急激な増加を示しており,1986年以後はつねに入院患者の約2割強を占めるようになっている.

 このように急激に増加してきた経過をふり返ってみると,幾つかの時期に分けることができる.すなわち以下の四つである.①すでに15年以上前から,数は少ないもののハイリスク・体力消耗状態で運動障害を伴っている患者のリハビリテーション申し込みはあったが,そのころは「全身状態不良のため」あるいは「生命予後不良」などの理由で「リハビリテーション適応無し」と判断することが多かった.②しかししだいにそのような患者に対しても運動障害に対するアプローチは行なうようになったが,その内容は当初はROM訓練程度にとどまっていた.③しかしその後,当部における診療体制の変化,主に医師部門の態勢の変化によって,疾患レベルの状態をも詳細に確認しながらの,より密着した診療が可能になる中で,体力の低下が障害像の中核をなすことに気付き,そのことを念頭に置いて,後述するようなリハビリテーション・アプローチを行なうようになった.④その結果,運動障害だけでなく,体力低下に対してもリハビリテーションが有効であることが内科外科などの医師にも認識され,その後は廃用以外には運動障害は認めない純粋なハイリスク・体力消耗患者の申し込みが急激に増加するようになったのである.

重症ハイリスク疾患による全身体力消耗状態のリハビリテーション―横浜市立大学病院の現状

著者: 半澤直美 ,   大川嗣雄 ,   隆島研吾 ,   小倉秀子

ページ範囲:P.513 - P.517

 Ⅰ.初めに

 最近数年間の当科初診患者の動向をみると,従来のリハビリテーション医学の対象疾患の中に分類しきれない患者群の増加が目だってきている.これらの患者の多くは原疾患自体が重症で,重度の廃用症候群を伴い生命予後も悪く,対応に苦慮することが多い.そしてこの問題については,最近2,3年の間にいくつかの報告もなされるようになった1~3).この小論では,過去6年間の当科における,上記患者群に対するリハビリテーションの現状をまとめ,その効果と意義について考えてみたい.

 まず対象の選択に当たっては,上田4),大川1)らの「重症ハイリスク疾患による全身体力消耗状態」(以下「ハイリスク・体力消耗状態」と略す.)の定義に沿って行なった.その定義は,①原疾患自体が重症で生命の危険が大きく,全身の体力を消耗させる,②このような状態の継続によって廃用症候群が加わっている,③原疾患に対する治療もまた体力を消耗させる,などが重要な点として挙げられている.さらに今回は,原疾患が直接の原因である運動機能障害が有り,それが障害の主体をなす場合は除外した.

骨髄移植のリハビリテーション―その効果と実際

著者: 豊倉穣 ,   石田暉 ,   林克郎 ,   及川由香 ,   村上恵一

ページ範囲:P.518 - P.524

 Ⅰ.初めに

 従来,根本的治療は困難とされた白血病,再生不良性貧血などに対し,骨髄移植は画期的治療法として発展してきた.当院では1981年,臨床,基礎,看護,栄養課など各専門分野のメンバーに,当リハビリテーション科も加わった骨髄移植チームが結成された.当大学病院の骨髄移植の詳細についてはすでに成書1)も出版され,リハビリテーションの有用性についての報告も行なってきた2-5)

 リハビリテーションの立場から骨髄移植を考えた場合,疾患そのものによる障害よりも,抗癌剤・免疫抑制剤の使用,放射線全身照射,無菌室への長期隔離などによって必然的に生じてくる,言わば医源性の廃用症候群,体力消耗状態への対応がもっとも重要となる.しかも,これらのアプローチは骨髄抑制という,ハイリスク状態の中で展開されなければならない.骨髄移植後のリハビリテーションの目的は,諸々の問題点を十分把握し,廃用症候群の合併を極力防ぐことによって,退院後の社会生活における高いQOLを実現させることにある.

 今回,「ハイリスク・体力消耗状態」の特集において,骨髄移植という特殊な状況下でわれわれの行なっているリハビリテーションアプローチの実際を紹介する.なお本プログラムは,理学療法,作業療法が車の両輪のごとくタイアップして遂行されるものであり,作業療法プログラムについても適宜ふれていくことにしたい.

ハイリスク・体力消耗状態のリハビリテーション・1―九州労災病院の場合

著者: 林克二 ,   小林英範

ページ範囲:P.525 - P.527

 Ⅰ.初めに

 「ハイリスク・体力消耗状態のリハビリテーション」という概念は,現在,明確な定義は困難で,当院においても,特に,このような概念に基づいたリハビリテーションプログラムは行なっていないのが現状である.『総合リハビリテーション』17(5),1989の特集における,上田,大川らの定義を基に,当科における,「ハイリスク・体力消耗状態」の症例について検討し,現時点における問題点,今後の課題につき考案した.

ハイリスク・体力消耗状態のリハビリテーション・2―慶應義塾大学病院の場合

著者: 三和真人

ページ範囲:P.528 - P.529

 Ⅰ.初めに

 最近,当院リハビリテーション科に他科から依頼されるハイリスク・体力消耗状態と考えられる患者は年々増加しており,リハビリテーションに占める割合が非常に高くなっている.リハビリテーションの対象は,急性期の脳血管障害や心筋梗塞などの救命を必要とする疾患で,関節拘縮や呼吸障害などのImpairmentレベルからDisabilityレベル範囲の障害をもっている.さらに,臓器癌や転移による脳腫瘍片麻痺,全身症状を呈する急性白血病や悪性リンパ腫など悪性腫瘍,各臓器不全を伴った膠原病,心疾患を伴った片麻痺などの予後のあまり良くない疾患が,最近多くみられるようになってきている.患者の高年齢化も加わることからもリハビリテーションの重要性が明かである.今回われわれが特にハイリスク患者に接することの多い一般集中治療室を取り上げると同時に,リハビリテーション訓練室でのリスク管理を中心に,現状と今後の課題について検討を行ないリハビリテーションの適応を考えたい.

ハイリスク・体力消耗状態のリハビリテーション・3―帝京大学病院の場合

著者: 長屋崇 ,   滝野勝昭

ページ範囲:P.530 - P.532

 Ⅰ.初めに

 我が国にリハビリテーション医学が導入されてから20年以上経過し,それに伴い対象となる疾患も広範囲にわたり,また重複障害をもった患者が増加する傾向にある.その背景には医療技術の進歩,高齢者の増加,リハビリテーション思想の普及などがあると思われる.

 当院は1971年に開院し,リハビリテーション部は当初,物療室として開設した.当時,理学療法を依頼された入院患者の大半が整形外科,内科からのもので,内容も骨折の後療法や脳血管障害に対するものが中心であった.1977年より,リハビリテーション部となり理学療法士,作業療法士の定員枠が拡がるに伴い各科より依頼される患者数も急増し,疾患の内容も複雑化してきている1)

 本稿では,上田の定義による「ハイリスク・体力消耗状態のリハビリテーション」2)に該当する症例を紹介し,当院の現状を述べ問題点などを検討する.

とびら

ハラスメント

著者: 田村茂

ページ範囲:P.503 - P.503

 昨年,1989年のキーワードの一つに「セクシャルハラスメント」が挙げられる.このキーワードはわれわれの医療分野とまったく関係が無い別の世界と思われるが,はたしてそうでしょうか.

 ある重度障害の患者さんが,どんなことが辛いですかと尋ねられて「苛(いじ)めです.他の患者さんからの苛めではなく,ある医療職員による苛めで,口では言えないことをいいことに障害をからかわれた.」とのことでした.私はこれを聞いて胸が痛みました.具体的にこれと形は異なっているが,私たちの身近な所で耳にするからです.

入門講座 関節の運動学と運動療法・2

膝関節

著者: 小柳磨毅

ページ範囲:P.533 - P.541

 Ⅰ.初めに

 運動学(Kinesiology)は身体運動に作用する“力”を対象とする運動力学(Kinetics)と,力や質量とは関係無く運動を「変位」,「速度」,「加速度」の変量から幾何学的に取り扱う骨・関節運動学(Kinematics)に分類される.近年,こうした身体運動の研究では構造や機能を工学的な手法などを用いて明らかにするBiomechanicsの概念が提唱され,特に膝関節についてはその研究業績の進歩が目覚ましい.本稿ではこれらの知見を踏まえ,臨床における運動療法への応用について紹介する.

講座 人間関係論・2

患者・家族と理学療法士との人間関係

著者: 桝田康彦

ページ範囲:P.542 - P.545

 Ⅰ.初めに

 理学療法学は,自然科学を基礎とした学問である.自然科学は自然を対象とし,それに働きかけ,それを変化させることを合理的・合法則的に考え,理解しようとする.同じく,理学療法学は,障害をもった人を対象とし,それに働きかけ,それを変化させることを合理的・合法則的に考え,理解しようとする体系と言える.

 しかし,われわれが対象とする人間は,科学的・論理的な思考とは別に,もともと非論理的思考をもつ存在である.そして,この非論理的思考が,潜在的な形で人間の活動に個性を与え,個々の人間性を彩っているのである.同様に,われわれ理学療法士も人間として,非論理的思考をもつ存在である.したがって,われわれのもっとも基本的行為である,科学的な理学療法を患者に提供するとき,それを,より効果的にするためには,より良い患者と理学療法士との人間関係を築くことがたいせつであることは言うまでも無い.

 患者と治療者との関係については,医療が始まった時代から注目されてきた課題の一つである.ギリシャ時代の聖医と言われているHippocratesが,熟練した医療技術によって患者の信頼を勝ちえたことは歴史的事実である.しかし,この技術だけが唯一の理由ではなかった.彼らが残した著書1)の一つに,医者が患者の信頼を得るために必要な非科学的基準が詳細に述べられている.「医者の服装は上品で清潔でなければならないし,品の良い香水をふりかけておいたほうが良い.…医者は正直な規則的な生活をいとなまねばならないし,まじめな態度を保ち,思いやり深くしなければならない.また,こっけいな,あるいは不公平な態度や極度の貧困生活は避け,…」「面接に際しては厳粛で,しかも飾り気無しに鋭敏に対処し,解答は速やかに為し,反論は確信をもって行ない,機知がよく働き,愛想う良くすべての人に気嫌良く対応し,困難に直面しても沈着に行動し…」等々内容は細部にまでわたっており,彼らが,いかに治療を効果的に行なうために,患者から信頼されることをつねに心がけていたかがよくわかる.

 近年においては,医師の専門分化,技術優先の医療への反省,慢性疾患の増加,QOL思考の広まりなどから,患者と治療者との人間関係の重要性の認識が高まり,これに関する文献も数多く出版され,患者と治療者との人間関係が科学的に分析され,臨床の場に応用されつつある.しかし,理学療法士の教育機関のカリキュラムには,臨床心理学の科目はあるものの,基礎的知識の講義に留まることが多く,臨床場面において必要な,患者および治療者の心理,さらには患者と治療者とのコミュニケーションの取りかた・技術まで教授している所は少ないようである.これらについてはもっぱら自己の体験を通して学び,徐々に修得せざるをえないのが実情である.これは,患者の立場からみれば,不満要素の一つであろう.しかし,われわれは,このような現状に甘え,患者との成熟した人間関係の修得を怠ってはならない.

クリニカル・ヒント

下肢装具療法の一説

著者: 森中義広

ページ範囲:P.546 - P.548

 1.初めに

 1987年からプラスチック継手を用いた下肢装具製作を経験している.

 近年,長下肢装具の有用だとか,従来からの短下装具の良いところなど,装具処方の見直しがなされている.このような現状で,私どもが常日頃よく体験する症例を紹介するとともに,本プラスチック装具の一説について述べてみたい.

プログレス

正常圧水頭症の治療

著者: 三倉剛

ページ範囲:P.549 - P.549

 正常圧水頭症(Normal Pressure Hydrocephalus.以下NPH)は治療可能な痴呆を呈する疾患として有名であるが,その手術適応に関しては議論が多い.1964年,1965年にHakimおよびAdamsが痴呆・歩行障害・尿失禁を三主徴として脳室拡大はあるが髄液圧が正常で髄液短絡術が有効な疾患としてこの疾患を報告して以来,現在まで広く髄液短絡術が行なわれてきたが,それ以外の新しい発想に立った治療法は未だ開発されていない.それ故現在のNPHの治療の問題点は,NPHと診断される群の中から髄液短絡術が有効な群を捜し分けること,すなわち真の手術適応を決定することにある.

PT最前線

“職人”の味を濃く残す臨床家―見込まれた指の力を伝授しようと 伊藤直榮氏/<証言>情熱の魂

著者: 本誌編集室 ,   大竹朗

ページ範囲:P.550 - P.551

 英語をしゃべる外人の子どもを見て,英語に慣れればいいのだと悟り,500の短文を暗記したら成績はぐんとUP.体力英語だとおっしゃった.臨床家,実践家としての活躍が耳に入る伊藤氏を,「生体肝移植」取材スタッフの常駐する信州大学のキャンバスにお尋ねした.

あんてな

ホームヘルプ・サービス

著者: 古瀬徹

ページ範囲:P.552 - P.552

 1.在宅サービスの基盤

 ホームヘルプ・サービスは,在宅福祉サービスの基盤として最近その役割が注目されている.1962年度から国の制度として予算化され,1963年度から老人福祉法により市町村の事業として「老人家庭奉仕員派遣事業」が位置付けられた.最近では「奉仕」という名称に伴う語弊を避けるためもあり,厚生省では「ホーム・ヘルパー(訪問し介護を行う者)」という表現を使っている.

 1989年度のホームヘルパーの国の予算上の定数は,31405人となっている.この数字には,老人を担当するホームヘルパーだけではなく,身体障害者や心身障害児を担当するホームヘルパーも含んでいる.予算上の定数は,常勤換算の数字であるが,1988年度の厚生省報告例によれば,25870人(常勤・非常勤の区分はされていない.)となっている.

雑誌レビュー

“Physical Therapy”(1989年版)まとめ

著者: 小川克巳 ,   福屋博子 ,   横山芳子 ,   山元総勝

ページ範囲:P.553 - P.556

 Ⅰ.初めに

 アメリカ理学療法士協会(APTA)設立以来,協会誌として,あるいは学術誌として評価の高い“Physical Therapy”は表紙をブルーに,ページ付けなどの構成に新しい工夫を加えて版を重ね,1989年で第69巻となる.

 第69巻の掲載論文は,研究(Research)48編,実践(Practice)23編,管理(Administration)14編,特集(7月号,12月号)29編,その他3編の,総数117編である.以下,これらの論文を従来の例にならい,物理療法関係,運動学・運動療法関係,検査・測定関係,教育・管理関係,その他に分類して,筆者らの興味を引いたものを中心になるべく多くの論文を紹介したいと思う.なお,論文名の後に付けた〔〕は掲載号とページを示し,本誌あるいは他誌に抄録掲載がなされているものについては,本文中から内容を割愛し,検索に便宜を図るためその旨付記した.

1ページ講座 福祉制度の手引き・8

難病・特定疾患医療,その他の制度

著者: 山本和儀

ページ範囲:P.557 - P.557

 Ⅰ.難病・特定疾患医療

 1.対象

 原因が不明で,治療方法が確立しない,いわゆる難病のうち表1の特定疾患については,治療がきわめて困難であり,その医療費も高額なものとなっています.特定疾患治療研究事業として都道府県レベルでこの事業が推進されており,特定疾患に関する医療の確立普及を図るとともに患者の医療費の負担の軽減が図られています.

 対象者は特定疾患に罹患した人であって,医療保険の適応を受けていて,医療費自己負担のある人で,その自己負担が都道府県から治療研究を行なうに適当な医療機関に対して,対象患者の治療研究に必要な費用として交付されます.

学会印象記 〈第25回日本理学療法士学会〉

彼我の格差は歴然とあり―一里塚として成果も多い

著者: 濱出茂治

ページ範囲:P.558 - P.559

 1.初めに

 第25回日本理学療法士学会は5月24日,25日の両日,札幌市において開催された.学会が札幌で開催されるのは,第12回学会に次いで二度目であるが,筆者にとってはそのとき以来,13年振りに訪れた札幌ということもあって感概も一入(ひとしお)であった.

 学会前日こそ「これがリラ冷えというものか」と驚くほどの寒さで,冬に舞い戻ったかのような錯覚に陥るほどの気温であったが,学会当日は,一転して快晴の学会日和となった.札幌市内のあちこちにはライラックの薄紫の花が咲きほろこび,われわれの学会を盛り上げてくれるように思われた.

 本学会は「四半世紀の歩み;新たなる展開の視点」というテーマの下で,我が国に理学療法士が誕生して二十五年が過ぎたこれまでの歴史を振り返って整理し,二十一世紀に向けての理学療法の方向性を探ろうという意図で企画された.総演題数は405題と過去最多で,その内,口述306題,ポスター94題,ビデオ5題が札幌市教育文化会館,北海道厚生年金会館の二会場に分かれて発表された.

私の学会顛末期―順序をとばした質問にドキリ

著者: 藤川尚美

ページ範囲:P.560 - P.561

 5月25日の札幌は,初夏のように晴れわたった日でした.しかし,私には,満開のライラックを楽しむ余裕はまったくありませんでした.全国学会に演題発表するという大胆な,また身の程知らずなことをしてしまう日だからです.

 臨床経験3年目で,まだまだわからないことだらけの素朴な疑問から出た未熟な発表演題でした.人前で発表したことも,学会の協同演者としても立ったことが無く,今回の学会は何から何まで初めてでした.目的・方法の選択・データの収集・整理・分析,そして原稿にいたるまで詰めが甘かったため,混乱の連続でした.筋道を立て,まとめて,さらにそれを人に伝えて,わかってもらうことの難しさと,現在の自分の到達点,普段行なっていることの意味をじっくりと考え日ごろの不勉強を反省しました.

教科書を読み直し,文献にも目を通し―いつも問題意識をもち続けよう

著者: 佐藤哲哉

ページ範囲:P.562 - P.563

 1990年5月24日,25日の両日にわたり,第25回日本理学療法士学会が,ライラックの花咲く北海道札幌市にて開催されました.日本に理学療法士が誕生して25年ということから「四半世紀の歩み」を学会テーマに行なわれたわけですが,25年という歳月は私の年齢とほぼ同じであり,その歴史の重みを改めて感じました.プログラム内容はアメリカ合衆国理学療法士協会会長であるJane S Mathews女史およびNHK解説委員の行天良雄氏を迎えての特別講演,福田修学会長による基調講演「四半世紀の歩みと展望」をテーマとしたシンポジウムなど今後の日本理学療法士協会の行方(ゆくえ)を占う意味で興味深い内容のものばかりでした.また一般演題数も過去最高の405題と充実した二日間でした.さらに私にとっては,前回の盛岡市での学会に続いて2回目の学会参加だったのですが,今回は演題発表という理学療法士の経験4年目にして初めての体験ということから,生涯忘れえぬ非常に意味のある学会となりました.

 今回の演題発表の準備を振り返ってみると,苦労したことばかり思い出されます.応募締め切り数週間前から病院で日付変更線を越える毎日が続き,演題申し込み郵送のため大阪中央郵便局に駆け込んだのは締め切り日の11月30日午後11時50分でした.そんな辛い日々ではありましたが,代わりに得たものは多かったように思います.

〈第24回日本作業療法学会〉

新たなる展開への意気込み

著者: 木山喬博

ページ範囲:P.564 - P.565

 1.初めに

 東海地区は,織田信長をはじめ日本の三大武将を世に送り出した,歴史的にはよく知られた地である.その中心都市名古屋で第24回日本作業療法学会が,柴田澄江学会長をはじめ多くの関係者の御努力により,成功裏に終了しました.6月20日のナイトセミナーを皮切りに6月22日までの3日間,内容豊富で充実した学会でした.名古屋は高温多湿で過ごしにくい地で,特に6月21日と22日は猛暑とも言える真夏日にもかかわらず,約4,000名の会員のうち約1,200名が参加し,実に3人に1人が出席し,盛会であったと聞いております.会員一人一人の意識の高さを反映しているものと推察致します.

資料

第25回理学療法士・作業療法士国家試験問題(1990年度) 模範解答と解説・Ⅱ―理学療法(2)

著者: 大橋ゆかり ,   薄葉眞理子 ,   谷浩明 ,   藤井菜穂子 ,   竹井仁

ページ範囲:P.566 - P.570

--------------------

文献抄録

ページ範囲:P.572 - P.573

編集後記

著者: 上田敏

ページ範囲:P.576 - P.576

 ほとんどカラ梅雨同然だった涼しい日々が続いた後,梅雨明けとともに急に猛暑が訪れて暑い日が続いている.今年は何年ぶりかの暑さだそうである.これはしかし,地球的にみればエルニーニョ現象などの影響でここ数年日本では冷夏が続いていたために,余計に今年の暑さが厳しく感じられるということでもあるらしい.つまり,本来の「うだるような」と言われる日本の夏が戻ってきたと言える.体調を崩さずに夏を乗り切るよう十分御注意をお願いしたい.

基本情報

理学療法ジャーナル

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1359

印刷版ISSN 0915-0552

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?