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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻8号

1990年08月発行

文献概要

特集 ハイリスク・体力消耗状態

ハイリスク・体力消耗状態のリハビリテーション・プログラム―その効果と実際;東京大学病院の場合

著者: 大川弥生1 木村伸也1

所属機関: 1東京大学医学部附属病院リハビリテーション部

ページ範囲:P.506 - P.512

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 Ⅰ.初めに

 「重症ハイリスク疾患による全身体力消耗状態(以下「ハイリスク・体力消耗状態」と略す.)は,最近のリハビリテーション医療の対象患者の(疾患レベルにおける)重症化,(障害レベルにおける)重度化・重複化の傾向1,2)をもっとも先鋭に示す対象と言える.

 図1に示す入院患者の疾病分類からも明らかなように,東京大学医学部附属病院リハビリテーション部(以下東京大学病院リハビリテーション部)においては,このような患者は急激に増加している.実数で示すと,1977年には5人,1983年には4人にすぎなかったものが,1984年8人,1985年10人とやや増加し,その後は1986年41人,1987年39人,1988年51人,1989年54人と急激な増加を示しており,1986年以後はつねに入院患者の約2割強を占めるようになっている.

 このように急激に増加してきた経過をふり返ってみると,幾つかの時期に分けることができる.すなわち以下の四つである.①すでに15年以上前から,数は少ないもののハイリスク・体力消耗状態で運動障害を伴っている患者のリハビリテーション申し込みはあったが,そのころは「全身状態不良のため」あるいは「生命予後不良」などの理由で「リハビリテーション適応無し」と判断することが多かった.②しかししだいにそのような患者に対しても運動障害に対するアプローチは行なうようになったが,その内容は当初はROM訓練程度にとどまっていた.③しかしその後,当部における診療体制の変化,主に医師部門の態勢の変化によって,疾患レベルの状態をも詳細に確認しながらの,より密着した診療が可能になる中で,体力の低下が障害像の中核をなすことに気付き,そのことを念頭に置いて,後述するようなリハビリテーション・アプローチを行なうようになった.④その結果,運動障害だけでなく,体力低下に対してもリハビリテーションが有効であることが内科外科などの医師にも認識され,その後は廃用以外には運動障害は認めない純粋なハイリスク・体力消耗患者の申し込みが急激に増加するようになったのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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