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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル24巻9号

1990年09月発行

文献概要

講座 人間関係論・3

理学療法部門における人間関係―管理職者の役割

著者: 神内拡行1

所属機関: 1東海大学医学部付属大磯病院リハビリテーション室

ページ範囲:P.623 - P.629

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 Ⅰ.初めに

 リハビリテーション医療が患者を全人的にとらえてアプローチすることは,いまやリハビリテーションに携わる人々の常識と言える.そしてアプローチ上,患者および家族の人間関係や心理社会的問題について,容赦無く土足で踏み込んでいることを,「全人的」あるいは「信頼関係」ということばに保護されて,医療者自身,気付いていないのではないだろうか.医療の対象が患者という人間であり治療者もまた人間である以上,当然そこに何らかの人間関係が存在し,治療者側の構造的・心理的状況が,患者の行動に影響を及ぼしていることは容易に想像できる.また,このことは医療の場としての病院やリハビリテーション部門を小さな社会集団と考えれば,その社会集団は構成員でもある患者たちの行動に少なからず影響を与えているものである.このような医療者・患者関係を社会心理学的立場からとらえる考えかたは,1950年前後から病院精神医学の分野で発展してきたが1~4),筆者の知る限り,本邦リハビリテーション分野での発展は残念ながら立ち遅れているといってよいであろう.そこで,才藤ら5,6)が指摘したように,リハビリテーションがチーム(組織・集団)として機能する以上,そこに社会心理学で扱う「集団力動論」や「役割理論」的視点から医療者間関係や医療者・患者関係をとらえることがチームワーク達成(チームの成熟)にとって有益である,という意見が重要になってくるのである.

 1990年度日本理学療法士協会代議員会資料に,日本における理学療法士の所属する施設数と一施設当たりの理学療法士数についての報告が載せられている.この資料によると一人職場は1357施設(人数比18.4%)であり,その他1650施設(人数比81.6%)は複数の職場ということになる.複数の人間が集まったものを集団と呼ぶことができるが,実に8割以上の理学療法士が理学療法部門,すなわち集団の一員として働いていることになる.そこで,本稿では理学療法部門を一集団としてとらえ,その中での人間関係について管理的立場も含めて考えてゆきたいと思う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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