icon fsr

文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル25巻1号

1991年01月発行

文献概要

特集 脳卒中;回復期以降の理学療法を中心に

回復期も,その後もいつも生活期

著者: 石田卓司1

所属機関: 1伊豆逓信病院理学診療科

ページ範囲:P.25 - P.26

文献購入ページに移動
 日常,私たちと時間を共有する脳卒中の人たちの様態は,千差万別である.発病後直ちに,必要にして十分な治療・看護が施され,続いてリハビリテーション・スタッフがそれぞれの役割を全うするといった,それこそ絵に描いたような治療を受けられる患者はそう多くない.少なくとも私たちが体験する現実は,そうである.脳卒中の初期のケアが重要だとする主張は,そうした実情によってあっけなく無化され,最初の3か月が勝負だ,いや6か月だという議論はしばしば空疎なものになる.

 回復期と呼ばれる時間を無為に過ごすことによる損失は,確かに大きい.この時期のケアの質が,ひとりの患者のその後の生を決定する場合も珍しくない.あだやおろそかにはできない道理である.しかし,そのことを承知で敢えて言うなら,そこに価値を置くあまり,回復期の,身体の機能性の変化だけに関心を注ぐ向きがなくはない.そして,要素的機能の改善が目立たなくなると,プラトーなる不可解なことばを登場させる.“プラトー!”と言えばこれは,セラピストの関心や興味が尽き,役割が終わり,いわゆるその後はもうどうでもよく,無きに等しいという意味であるらしい.したがって,急性期に続いてきたるべき事態について,ほとんど語ることが無いのである.「回復期以降」という奇妙な言いかたが当然のようになされている所以(ゆえん)であろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?