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文献詳細

雑誌文献

理学療法ジャーナル25巻11号

1991年11月発行

文献概要

講座 老年医学・5

老年者の精神疾患;特にうつ病について

著者: 青葉安里1 諸川由実代1

所属機関: 1聖マリアンナ医科大学神経精神科

ページ範囲:P.773 - P.777

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 Ⅰ.初めに

 抑うつ感情は人間の正常心理の一部と言ってよい.特に,老年期においてはその社会的,身体的要因により老人を容易にうつ病に陥れ,またこれらの諸要因によって,そのうつ病像はさまざまに修飾されることになる.

 例えば,老年期になると,その加齢が生理的,病的を問わず,さまざまな身体機能の衰退が出現してくる.したがって,高齢者のうつ病の発症には身体的要因が大きく関与していること,そして,うつ病に罹病している高齢者は身体的有病性も高く,平均余命も短いことは広く指摘されているところである.高齢うつ病患者におけるこの身体的要因は,その病像に心気的な色彩を与えることになる.

 一方,社会的にみて,老年期は,これまでの人生の成否を自己に問いかけ,独立した子どもたちに,経済的にも精神的にも依存し,また,配偶者や友人と離別していく時期でもある.この社会的要因は,うつ病像に自責的,罪業的といった色彩を強めることになる.

 このように老年期は,人間関係,人生の目的,住居,経済力,健康などといった,これまで確実に自分を支えてきたものを,次々に失っていく時期である.うつ病を『損失体験に対する防衛』と解釈するならば,老年期はまさにうつ病発症のための要因をきわめて多く含んでいる時期と言えよう.したがって,老年期に発病した抑うつ状態,あるいはうつ病に対しては,これらの要因を配慮した特定のマネージメントが必要である.

 本論では,うつ病とはどういう状態を指すのか簡略にふれ,これまでの疫学的研究を基に,老年期のうつ病の出現頻度について述べる.さらに聖マリアンナ医科大学神経精神科にて過去5年間入院治療を受けた患者を年齢別に分け,老年期うつ病の症候論的特徴を明らかにする.また老年期うつ病の治療という観点から,これまで筆者らが行なってきた薬物動態学的な知見から,老年者に比較的使用しやすい抗うつ薬について概述する.最後に,筆者らがこれまで行ってきた老年期のうつ病患者に対する電撃療法の成績について報告する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1359

印刷版ISSN:0915-0552

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